異世界妖魔大戦〜転生者は戦争に備え改革を実行し、戦勝の為に身を投ずる〜

金華高乃

文字の大きさ
50 / 390
第3章第二次妖魔大戦開戦編

第15話 ルブリフ丘陵の戦い6〜完勝の連合王国軍とかの国の悲劇〜

しおりを挟む
・・15・・
ルブリフ丘陵
連合王国軍東部統合軍前線司令本部


「第六飛行隊より報あり! 『我、奇襲に成功せり! 敵司令部たる魔人召喚士部隊の全滅を確認!』です!」

「前線から次々と妖魔軍の動きが止まったと報告が! え、コマンダーが消失して後退を始めた!? 訂正します! 妖魔軍コマンダーが消失し、全軍が後退開始!」

「よっしっ! 第六飛行隊へよくやったと伝えて。帰投命令もね」

「了解です!」

 司令要員が敵を奇襲した第六飛行隊の報告を読み上げると、この場にいた全員から喝采が起きる。
 そして僕の予測は当たっていた。
 第六飛行隊『サモナーアタッカーズ』によるこの世界初の空爆により敵司令部は機能を失い、召喚されたコマンダーは召喚士死亡により魔力供給を絶たれ消失。一種の洗脳に近い絶対的な命令が解かれた為に眼前の光景に戦慄した魔物軍団は一斉に敗走しだしたんだ。
 当然、この好機をアルヴィンおじさんやルークス少将が見逃すはずが無かった。

「敵が逃げ出した今が突撃の時だ! 全軍、吶喊とっかん!」

「お待たせしたね、魔法兵科と召喚武器持ちの諸君達。君達の力を見せつけろ!」

 二人の命令はそのまま司令要員から伝えられ、連合王国五個師団は一斉に追撃戦を始めた。
 開戦からしばらくはサポートに回っていた魔法兵科や召喚武器持ち達も待ってましたと言わんばかりに統制魔法射撃やBランクAランクの召喚武器持ちは独自魔法ユニークマジックを無抵抗の魔物達に撃ち込んで歩兵達の援護射撃を行う。中には近接武器系統の召喚武器持ちが勇猛果敢に突撃し、次々と魔物を切り伏せていく姿も見られた。
さらに魔法兵科と同様に集中砲火で動けなかった騎兵達も突撃。騎兵部隊は帯剣しつつも主要武装はライフルの竜騎兵や、馬上で魔法攻撃を行う魔法騎兵で組織されている為、彼らは高機動力を活かしてさらに魔物共を蹴散らしていった。
 対して魔物達は撤退しようにも前方に魔石地雷によって形成されたクレーターから転げ落ちるかこれを迂回しなくちゃならず、砲兵隊のいい的になるか歩兵隊の銃弾や着剣されている銃剣の餌食になっていった。
 そうして数時間後。連合王国軍にとって大戦初の戦い、『ルブリフ丘陵の戦い』は連合王国軍側の圧倒的勝利で終結したのだった。後々僕達が頭を悩ませたのは被害ではなく、戦場に残された大量の魔物の死体をどう処理するか。という点であるあたり、いかに完勝だったのかが分かる情景だった。
 戦闘が始まったのが朝の七時半。終わったのは太陽が傾き始めた午後四時半。五万対九万二千の大会戦にも関わらずわずか九時間で終わったわけで、僕は時間の要素だけをくり抜けばまるで関ヶ原のようだなと思った。

「戦闘終了です! 約数千は取り逃しましたが、国境線からは完全に駆逐しました」

「東部統合軍第三師団は警戒の為に国境線付近に駐屯を開始したとのこと。撃ち漏らした魔物の捜索も行っています」

「第四師団も麾下きかの旅団の一部を国境線に向けたと報告」

 夕方を迎える頃には魔法無線通信も落ち着き、入ってくるのはわざと後退させていた戦線を国境線まで前進させ警戒にあたらせるなど、戦いの後によくあるものばかりだった。
 ようやく一息つけるようになった頃、アルヴィンおじさんは僕に話しかけてきた。

「アカツキ、お疲れさん! 完全勝利だな!」

「アルヴィン中将閣下もお疲れ様でした。こんなにもあっさりと終わったのには予想外でしたけどね」

「それもこれも最新鋭の兵器を使いこなした兵達とサモナーフライヤーズ、あとはサモナーアタッカーズだっけか? 彼等のお陰だな」

「サモナーアタッカーズが想定より早く魔人達を発見した上、あちらが油断していてくれて助かりましたよ。魔法障壁を構築されていたら全滅させられなかったかもしれませんから」

「それについては同意だな。連中の魔力は馬鹿にならねえ。多重で張られたらわかんなかっただろうな」

「相手の注意が空に向いてなかったからでしょうね」

「ったりめーよ。誰も空から魔石が爆弾になって降ってくるなんて思わねーって。ったく、とんでもねえ発案しやがって!」

「いたっ、痛いですってアルヴィン中将閣下」

 アルヴィンおじさんはそう言いつつも笑顔で僕の肩をバシバシと叩く。彼だけじゃない。戦勝ムードに包まれた司令部内や布陣した軍全体は笑顔にあふれていた。

「ところでアカツキくん。あんな使い方、どうやって思いついたんだい? 魔石に大きな衝撃が加われば魔石が割れて、内包された魔力が落下したエネルギーを起因として爆発を起こす。という現象は誰でも知っているけれど、それを空から落として爆弾にする、空爆だっけ? そんな発想よく考えついたなと思ってさ」

「魔石地雷を作っている時点でふと考えついたんです。僕も魔石の特性については知っているので、これをサモナーフライヤーズの中でも持たせられる重量が大きいミニマムドラゴンに運ばせ、目標に落下させたら空から攻撃可能じゃないかって。あくまで魔人がこちらのようにフライヤーズを運用していない前提ではありましたけれど」

「わたし、アカツキ大佐からこの話を聞いた時はとてもびっくりしましたけれど、使い方は至ってシンプルなんです。少し大きめの魔石に魔力を注入して、後は空高くから落とすだけ。魔石地雷のような術式もいりません。ぽい、ってするだけです」


 前世では空軍があって空爆は常識です。とはとてもじゃないけど言えるわけがないので聞かれた時の為に用意した内容を僕は答え、ルナ中尉が補足する。
 そもそもサモナーフライヤーズの運用自体が前世の空軍を代用したものだから、魔石の特性が頭に入っていればすぐに空爆は思いつく。
 ただし、この世界では画期的で効果的な軍の運用手法であるのは間違いない。今後は召喚士の中でも空を飛ぶ動物をサモンする魔法能力者は前世の空軍パイロットのように憧れの的になる日も来るかもしれないね。

「本当にアカツキ君の発想には恐れ入るよ。けれど、君の数々の発案のお陰でほとんど損害を出さずに戦いに勝つ事が出来たよ。しかも初戦だ。軍全体の士気は上がるし、国民達にもいい影響になるだろうね」

「残念ながら死者と負傷者は出ちまったが、それぞれ二百四十二と四百七十三らしい。けどよ、相手は統率の取れた九万を越える魔物だったんだ。もし従来の戦い方だったらこんなん比じゃねえくらい死んでたし、下手したらルブリフが失陥してた可能性すらある。お前の戦略によって多くの命と連合王国の土地が守られたんだ。ノースロード家、いや、連合王国の誇りだぜ」

「旦那様はいよいよ国の英雄の道を歩み始めるわけね。ここから帰ったら間違いなく大声援が待ってるわよ?」

「アカツキ大佐のお役に立てて光栄でした! 研究の成果が形になって皆さんの命を助けられて、本当に良かったです……!」

 ルークス少将、アルヴィンおじさん、リイナ、ルナ中尉の順に讃えられる僕は、少し恥ずかしくて照れ隠しで笑いながら。

「ありがとうございます。僕は提案したまでで、本当の英雄達は兵達ですよ。でも、勝てて良かった。これで妖魔帝国に負けないという心意気の下地が作れます。周辺諸国にも好影響を与えられるでしょう」

 今思えば、僕のこの言葉は自身でも気が付かずにフラグを立ててしまったのかもしれない。
 そもそも連合王国軍は人類諸国の中でも強い軍隊を保有し、僕はそれを改革によって分野によっては五十年先の軍になるよう提案したのであり、この結果を生み出せるのは現状では連合王国だけなんだ。しかも魔人が主体の軍隊では無く、魔物ばかりの軍団。
 だけど、みんながみんな連邦や法国も少なくとも拮抗した戦況を作り出せるだろうと思っていた。
 その報告が入ったのは、そろそろ夕食でも摂ろうかという時間になった頃だった。
 すっかり安心しきっていて、魔石地雷の術式発動の際にそこそこ魔力を消費したから程々の疲労感があった僕は、司令部内で休憩を取っていた。
 司令要員の一人である女性士官がリイナとの馴れ初めを聞いてきたのでその雑談に付き合っていた時、別の司令要員の男性士官が二つの情報を受信する。

「アカツキ大佐、中央から速報が入りました……」

「どうしたの、顔を青くして。僕等は勝ったんだよ?」

「ええ、自分達は、です……」

「…………まさか」

「読み上げます」

 男性士官は直前までの和やかな雰囲気が一変、声を震わせてこう言った。

「連合王国軍統合情報管理司令本部発。本日一六三〇ひとろくさんまる時頃スカンディア連邦南東部国境地帯にて、妖魔軍魔物軍団約五万五千が侵攻を開始」

「いよいよ連邦にもか……」

「はい。しかし、問題はこちらではなく……」

「……続けて」

「さらにイリス法国駐在大使館ルートから速報。本日推定一七〇〇ひとななまるまる時頃。法国東部ウィディーネ市周辺を防衛していた法国三個師団が壊滅。ウィディーネ、陥落です……」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

ステータス画面がバグったのでとりあえず叩きます!!

カタナヅキ
ファンタジー
ステータ画面は防御魔法?あらゆる攻撃を画面で防ぐ異色の魔術師の物語!! 祖父の遺言で魔女が暮らす森に訪れた少年「ナオ」は一冊の魔導書を渡される。その魔導書はかつて異界から訪れたという人間が書き記した代物であり、ナオは魔導書を読み解くと視界に「ステータス画面」なる物が現れた。だが、何故か画面に表示されている文字は無茶苦茶な羅列で解読ができず、折角覚えた魔法なのに使い道に悩んだナオはある方法を思いつく。 「よし、とりあえず叩いてみよう!!」 ステータス画面を掴んでナオは悪党や魔物を相手に叩き付け、時には攻撃を防ぐ防具として利用する。世界でただ一人の「ステータス画面」の誤った使い方で彼は成り上がる。 ※ステータスウィンドウで殴る、防ぐ、空を飛ぶ異色のファンタジー!!

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

処理中です...