異世界妖魔大戦〜転生者は戦争に備え改革を実行し、戦勝の為に身を投ずる〜

金華高乃

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第6章『鉄の暴風作戦』

第7話 ジトゥーミラの戦い3〜これまでと違う妖魔軍に連合王国軍は手こずる〜

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・・7・・
9の月23の日
午後1時20分
連合王国軍前線総司令部

 19の日に連邦軍からもたらされた報告に、僕達は想定が現実となってしまったと顔を曇らせた。作戦の最終段階は破綻してしまい、連合王国軍のみで戦わざるを得なくなってしまった為にここに来て作戦そのものを変更しないといけなくなった。
 まずはジトゥーミラ攻略の全段階前倒しだ。20の日の朝に即日司令部の中枢メンバーは全会一致。その日の昼から濃密な砲撃支援の元で妖魔軍の防衛ラインに突撃を開始した。
 今日までに連合王国軍が攻略したのは次のようだった。
 二十の日。準備は整っていたので早速外側の防衛ラインの中でも南と西は突破。北は敵の抵抗が強く一部に留まる。
 二十一の日。南方面と西方面については内側防衛ラインの敵と衝突。魔人召喚士によるオーク・ギガント――オークの中でも大型に部類される巨体の呼称――が召喚され、一時攻勢が弱まる。これについては集中砲火により対処。北方面は敵増員もあって引き続き抵抗が激しく、外側防衛ラインでの戦闘が続く。
 二十二の日。妖魔軍拠点ダボロドロブからの増援は再度可能性が無いと確認された為、包囲決行。この日に東方面含めての完全包囲が完了。さらに南方面西方面は内側防衛ラインを突破。旧城壁部まで迫る。北方面はようやく外側防衛ラインを突破し内側防衛ラインにて戦闘を開始。
 二十三の日正午現在。北方面は内側防衛ラインを間もなく突破。西方面と南方面、東方面では市街戦に突入。
 こんな感じで援軍がやってくる北部を除いて大きな遅れは無くジトゥーミラ包囲戦は進んでいた。
 けれど、これらの経過に対して僕達は決して楽観視出来なかったんだ。
 到着時より前進した司令部から戦いの様子を見守っていた僕とリイナ、アルヴィンおじさんとルークス少将は揃って憂慮していた。というのも。

「思ったよりきっちいな……。まず北部は頑強な抵抗に遭ってようやく内側の防衛ラインを突破……。三師団で攻勢をかけているが、連中も北部にかなり寄越してきてやがるからな……」

「西方面と南方面は市街戦に入った途端に進みが遅くなったね……。砲撃は誤射しちゃいけないから精密さを求められてさいしょのころのようにはやれないし……」

「東方面も似たようなものね……。で、これらに共通するのが……」

 アルヴィンおじさん、ルークス少将、リイナの順に言い、そこへ僕が口を開く。

「魔人連隊による一撃離脱と進行妨害を兼ねた魔法攻撃や召喚魔法で各方面の侵攻速度低下と犠牲者が出ています。決死の覚悟で中級・上級魔法を放たれて魔法兵科の負担もかなり増えていますし、非魔法能力者より魔法能力者の死傷者が多いですね……。さらに市街戦になってからは路地や建物からの攻撃、建物を壊せば瓦礫をバリケードにしてまた攻撃。開始早々に一区画を争う事態になっています。瓦礫をバリケードにするのは予測の範囲内ですが、とはいえこうならないために砲撃と追加の空爆をしたかったんですが……」

「まさにクソッタレの所業のせいで前準備が短くなっちまった。お陰でこれだ。しかも想定以上に弾薬は消費してるし、この後もっと必要になる。後方にゃ申し訳ねえけど追加で輸送して貰わないといけなくなったしよ……。それとだ。レイトン情報参謀長、こちら側の死傷者はどれだけだ?」

「はっ。昨日までで既に二千百十名です。その内、死者は千二十九名。ただ、今はもっと増えていまして死傷者は三千人を越えるのではないかと……」

「良くないね。いくらここまで火力で敵を屠り推定で五万二千まで減らしても、まだ五万二千いるんだからな。アカツキくん、包囲したから奴らは食糧確保は市内の備蓄のみだ。水の確保も外側防衛ラインを全てこちらの手中にしたから井戸だけになったけれど」

「織り込み済みではありますが、逆効果になる可能性が高いですね。敵の備蓄状況にもよりますが初期の空爆で食料庫を吹き飛ばしてます。さらに連続爆撃の時点で何度もダボロドロブ方面からの敵の補給部隊を襲って兵站線も寸断しておきましたから、おそらく数日分程度しか残ってないかと。しかし、数日あれば奴らにとっては十分ですね……」

 そう、ジトゥーミラにいる妖魔軍はあと数日持ち堪えればいいんだ。北部戦線から撤退してやってくる方の妖魔軍は数を減らしたとはいえおよそ三万八千。包囲戦でも継続して行う予定だった召喚士攻撃隊の一部を北からやってくる軍勢に向け、到着を遅らせる為にやっているけれど一個飛行隊では限度があってせいぜい半日しか稼げない。敵の援軍到着予定は九の月末から十の月初頭は変わらなかった。
 ルブリフや法国の時とは違って僕達は手こずらされている。それはきっと。

「敵の司令官は今までと違ってかなり頭が回りやがるな……。魔物の扱い方も段違いに上手いときた。そりゃ戦争も数ヶ月経過すれば連中にもこっちがどう戦うかは流石に情報が入ってくるだろうよ。でも奴らは装備がかなり劣っている中でベストの選択肢を取って、大きな犠牲を出しつつも俺らに抵抗し、結果がこれだ。明らかに時間稼ぎをされてる。それも死にものぐるいでだぞ。何がそうさせんのか分かんねえけど、厄介極まりねえ」

「最前線からの報告は私も聞いたわ。追い詰められたらあいつら、魔物は肉壁の囮にして魔人が最後の力を振り絞るように攻撃してくるって。酷いのだと、高笑いしながら自爆もあったって……。信じられないわ……」

「自分達との作戦会議でアカツキ参謀長も沈痛な面持ちをされましたが、完全に我々にとって想定外です。繰り返されれば我が軍の犠牲も大きくなります。抵抗が激しくなれば、比例して弾薬の消費も激しくなります。兵站線の圧迫は避けられませんよ……」

「レイトン情報参謀長の懸念も最もだ。このままだと砲弾薬が心許なくなり、複合優勢火力ドクトリンが活かせなくなるわけだ……」

「はい、その通りですルークス少将閣下」

 勝てない戦ではない。事実、現状は有利ではあるんだ。だけれども、今喋った誰もが重苦しい雰囲気になっていた。僕も口を開かずにずっと黙ったままだ。
 今市街地で妖魔軍が繰り広げているのは、消耗戦と化した市街戦と、果てには旧日本軍の如く玉砕覚悟の突撃と白兵戦、そしてまさに玉砕の自爆だ。
 消耗戦は市街での戦いではこの奪還作戦立案時から想定されている。白兵戦自体も絶対に発生するものだ。でも、まさか妖魔軍の魔人達が命を散らすのが必須な攻撃までしてくるとは思わなかった。しかも最前線の兵からの報告では、皇帝陛下万歳もあったけれど父母や兄弟、戦友の名を叫んで死んだ魔人の方が多いらしい。粛清がどうだとか、恨み節を遺して爆死したのもいたと聞く。
 あくまで僕の推測だけど、たぶん魔人達は故郷に戻れないんだろう。粛清という言葉がその証拠だ。
 となれば、きっとこの戦争に勝てば許されるとか甘言を囁かれているはず。
 つまり彼等は退けないんだ。勝たないといけないんだ。負けたら死ぬし、降伏したとしても、命からがら逃げ帰ったとしても処刑。生き残るのは一つだけ。勝つのみ。
 だったらこの激しい抵抗も頷ける。奴らは援軍が到着することで僅かな可能性かもしれなくても、勝つのに賭けているんだろう。だから命を捨ててでも時間稼ぎをしている。
 でもだ。だからって僕は決して感情にほだされてたりはしない。何度でも言うけど、これは殺すか殺されるかの戦争で僕は軍人。国を守り、大切な人達を守る為に勝たなければいけない。故に、敵に同情の余地なんてあるわけないんだから。
 暗い空気が漂う中、僕はいつも通りに冷静でいながら口を開く。

「アルヴィン中将閣下。今は北部戦線側の妖魔軍を迎え撃つ作戦も考えましょう。敵はジトゥーミラだけではありません」

「…………そう、だな。でもよアカツキ准将。未だに対敵援軍へどれだけ兵力を振り分けるか決まってないんだぞ。四万は分け過ぎでジトゥーミラ攻略にさらに手間取っちまう。だからって二万じゃ少なすぎる。弾薬に不安のねえ国内ならいいが、今はただでさえ兵站に負担がかかってる。到着までは手持ちと運ばれる予定で何とかするしかねえ。運ばれるのが要求量の七割ってのが痛えんだよな……」

「要するにです。敵の希望を打ち砕けばいいんです。その為の案はありますよ、アルヴィン中将閣下」

「ねえねえ、わたし達の事を忘れてないかなー?」

「ほら、ぴったしのタイミングで現れました」

 僕が笑んで振り返った先にいたのは暗い空気と雰囲気に光を射すように現れた、いつも通り朗らかにニコニコとしているアレゼル中将だった。
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