異世界妖魔大戦〜転生者は戦争に備え改革を実行し、戦勝の為に身を投ずる〜

金華高乃

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第7章一冬(ひとふゆ)の戦間期と祝福の結婚披露宴編

第6話 出迎えてくれたのはにこやかふくよか国防大臣

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 ・・6・・
 12の月3の日
 午前10時半
 ロンドリウム協商連合・ドゥーター市ドゥーター軍港

 「さすがは海軍国家、ロンドリウム協商連合。出迎えの艦隊の威容の誇りようはすごいね」

 「我が国は陸軍国だからな。ここまではやれんよ」

 「ちょっと無理よねえ」

 連合王国海軍使節艦隊がオランディアを発って約一日半。幸い天候は落ち着いていたから予定通りにロンドリウム協商連合南部一の大都市、ドゥーター市にあるドゥーター軍港に到着した。天気はロンドリウム協商連合らしい寒々しい曇天だけど、連合王国よりは少し温かい。
 そこで僕達を迎えたのは、人類諸国で一番の海軍を誇るロンドリウム協商連合海軍艦隊だった。
 礼砲を送ったのは通称南部艦隊の第二艦隊旗艦ドゥーター型装甲戦艦『ドゥーター』。この街の名前が着いた装甲戦艦で、外見からして乗艦している『アルネシー』程はあった。連合王国海軍は来年にようやく『アルネシー』の二番艦が完成するけれど、連合王国はこのサイズの装甲戦艦を既に六隻も保有していた。こればかりかは陸軍国家のウチと海軍国家の協商連合の違いなんだろうね。
 送られた礼砲は十七発だった。乗艦しているのが大将のマーチス侯爵と、外務大臣のエディン侯爵だからだ。
 どうやらこの世界でも礼砲の送る数は前世のそれと同じらしい。こんな所でも共通点があったりするんだけれど、理由はバカスカ撃つのが勿体ないからってのも前世とちょっとだけ似ているんだよね。
 ドゥーター軍港に到着した連合王国使節艦隊は、『ドゥーター』や同型装甲戦艦『ブリストル』等の乗員から敬礼を受けて接岸した。
 上陸すると、おかでの出迎えはロンドリウム協商連合陸軍だ。規律の取れた敬礼と捧げ銃を受けて、僕達は答礼する。いくら外国でも報道されたとはいえ、やはりというかふよふよと浮いているエイジスを連れている僕は注目されていた。
 ドゥーター軍港への滞在時間は殆どなく、そのままドゥーター市街中心部にあるロンドリウム鉄道ロンドドゥー線の南端駅、ドゥーター・セントラル駅へ馬車で向かう。
 ドゥーター軍港からドゥーター・セントラル駅まではおよそ三十分で到着した。
 そこで僕達を待っていたのは。

 「やあやあ、マーチス軍部大臣! 二年振りだねえ! ようこそ協商連合へ!」

 「おお、これはエリアス国防大臣! 久方ぶりだな! 元気そうで何よりだ!」

 「はははっ! お陰でまーたでっぷり太っちゃたよー。マーチス軍部大臣はそろそろ五十を迎えるのに引き締まった体をしていて凄いよねえ」


 顔を合わせるやいなや、マーチス侯爵はエリアス国防大臣と呼んだ人物と勢いよく両手で握手を交わす。
 エリアス・オールドフィールド。五十七歳。見かけは街にいる、陽気で人の良さそうなグラスホルダーが付いた丸眼鏡をかけたおじさんみたいで、黒のコートが少し膨らんで見えるくらいに肥満体型だけどこれでも立派なロンドリウム協商連合国防大臣。階級はマーチス侯爵と同じだけど、あちらは海軍の方の大将だ。
 連合王国で軍を含めた改革が行われてからやや遅れて協商連合も改革を始めたんだけど、それらを主導したのはこの人で国内外からかなりの有能と言われている。
 軍人にも関わらず人の良さと外見から「まんまるおじさん」「でっぷり大将」「見た目で判断しちゃいけない典型」などと国民からは親しまれているんだよね。
 そのまんまるおじさんは、僕達の方にも気付くと。

 「君がアカツキ・ノースロード准将だね! 写真で顔を見たことあるからよーく覚えているよう。うんうん、会えて嬉しいよ!」

 「初めまして、エリアス国防大臣。アルネシア連合王国陸軍准将のアカツキ・ノースロードです。国防大臣にお会いできて光栄です。」

 「エリアス国防大臣、お久しぶりですわ。私、今は苗字が変わりまして、リイナ・ノースロードになりましたの」

 「リイナさんも久しぶりだねえ。今は中佐になったんだって? おめでとう!」

 「ありがとうございます。また会えて嬉しいですわ」

 いつもと違って営業モードになっていたリイナはどうやら父親のマーチス侯爵が会っている関係で彼女もまた国防大臣と顔見知りらしく、そのような挨拶になる。
 ニコニコと笑顔を絶やさないエリアス国防大臣は、僕とリイナに挨拶をしてから遅れて現れた外務大臣にも同じようににこやかにして、早速専用列車まで案内するねえ。と僕達の横に並んで歩く。要人だらけとあって連合王国軍と外務省関係者、協商連合軍や関係者がぞろぞろと動いていく。地元の市民達は有難い事に歓迎してくれていた。
 駅に入ろうとする頃に、エリアス国防大臣は。

 「エディン外務大臣。こちらの外務大臣は忙しくてドゥーターまで来れなくて申し訳ないと言っていたよ。ワタシが代わりに伝えておいてくれって言われてねえ」

 「ご配慮痛み入る、エリアス国防大臣。受け入れる側であるから致し方あるまいよ。むしろエ
 リアス国防大臣の出迎えに驚いたくらいだ」

 「いやあ、今回はアカツキ准将に会えるなら是非って要望を出したらエディン外務大臣は快諾してくれたでしょう? 起きてしまった大戦の英雄に会えると思ったらいてもたってもいられなくてねえ、スケジュールを調整してやってきたわけさあ」

 「国防大臣だけでなく、他の方々からも要望があったんだろう? だったら応えねばなるまい。それに、此度の会談の提案者は何を隠そうアカツキ准将であるからな」

 エディン外務大臣がちらりとこちらを見てエリアス国防大臣に言う。忙しくさせてごめんなさい、外務大臣……。

 「なるほどね! だったらエディン外務大臣としても連れていきたい訳だ。――よーし、専用列車に到着だね。外務大臣は外務省割り当ての三号車だねー。別々で良かったのかい?」

 「首都ロンドリウムまでは六時間程かかるのでな。最終調整などをしておきたいのだ。申し訳ない」

 「とんでもない。色々と大変だねえ。で、アカツキ准将の隣で浮いているのが召喚武器のエイジスだったかな?」

 「肯定。マスターの召喚武器、自動人形のエイジスです。以後お見知りおきを、エリアス国防大臣」

 「ほほー、我が国にも召喚武器はあるけれどどの国含めても初の喋る召喚武器って凄いねえ。まるで人間みたいな人形だ。これからよろしくね、エイジスくん」

 「サー、国防大臣閣下」

 「はははっ、所作まで流麗で完璧だ。アカツキ准将とエイジスくん、マーチス軍部大臣とリイナ中佐はワタシと同じ二号車へどうぞ。それじゃあ、エディン外務大臣またあとでー」

 「こちらこそ、エリアス国防大臣」

 エディン外務大臣は護衛と共に三号車に乗り、僕達はエリアス国防大臣と一緒に二号車へ乗った。
 車内は連合王国でも専用列車は豪華なように、協商連合も豪華な作りをしていた。
 高価な調度品に囲まれ立派なテーブルと椅子に僕達は座る。三号車側には左から僕、マーチス侯爵、リイナ。二号車側にはエリアス国防大臣が座った。彼の側近は色々と仕事があるようで、座らずにそのまま退室していった。
 ここからは鉄道での移動になり、出発時間は十二時ちょうど。到着時間は十八時を予定しているからエディン外務大臣の言うように二百キーラ先のロンドリウムまで六時間の行程だね。専用列車だからとダイヤ調整して最速で着くようにしているらしい。
 魔石蒸気機関車は高い音の警笛を鳴らして定刻通りドゥーター駅を出発。景色はゆっくりと動き出し、徐々にスピードを増していった。
 最初の内は昼食として提供されたロンドリウム料理――イギリスとドイツのハイブリッドみたいな連合王国と違い、イギリスとそっくりの協商連合の料理は前世のせいで少し身構えてしまったけれど、見た目も良くて普通に美味しかった――を食べながら四人で歓談していたけれど、ドゥーターを出て一時間半が経過したあたりでエディン外務大臣の秘書がマーチス侯爵に声をかけた。

 「マーチス様。エディン様がご相談があるそうです。今よろしいでしょうか?」

 「ん? 構わないが長くなりそうか?」

 「最終調整で確認したい要項があるとのこと。大体一時間から二時間になるそうです」

 「了解した。すぐ行くと伝えてくれて」

 「御意に。そのようにお伝えいたします」

 「ああ、よろしく。――という訳でせっかくの談笑を打ち切ってすまないな、エリアス国防大臣」

 「打ち合わせなら仕方ないさあ。ロンドリウム到着後、夜からは歓迎のレセプションがあるからその時に今話していたワタシも軍部大臣も集めているワインの話でもー」

 「ああ、是非とも。夜を楽しみにしているぞ」

 「ワタシも楽しみしているよー」

 マーチス侯爵はそう言うと、エディン侯爵のいる号車へと移っていった。
 エリアス国防大臣は紅茶の入ったティーカップをゆっくりと傾けて一口飲むと相変わらずにこやかな表情で。

 「そういえば、二人ともようやく結婚式を挙行するんだってねえ。開戦しちゃったからいつになるかと待ち遠しかったし心配だったけれど、決まったみたいで本当に良かったよー」

 「ありがとうございます、エリアス国防大臣。今後を鑑みて、マーチス大将閣下から来年の二月にとなりまして」

 「私はとても嬉しいですの。やっと、旦那様と結婚式を挙げられますから」

 「だよねえ。二人を見ていると仲睦まじいの分かるからさあ。有能な軍人同士でもあるキミ達の未来にさらなる栄光があることを祈ってるよー」

 「感謝の極みです。国外でも親交のある方には招待状を送る予定でして、国防大臣もリストに入っておりますからじきに届くと思いますよ」

 「本当かい!? それは嬉しいなあ」

 「マーチス大将閣下が仰っておりましたから、間違いございません」

 「ようし、予定は絶対に空けなきゃ」

 「ふふっ。エリアス様のお喜びの様子、私も嬉しく思いますわ」

 「だって連合王国の英雄達の結婚式だもの。今から楽しみで仕方ないよー。――さて、そんな若い君達に一つ二つと質問をしたいんだけれど、いいかな? マーチス軍部大臣が戻るまでの間の話題としてね」

 「なんでしょうか?」

 ニコニコとしたままのエリアス国防大臣はしかし、瞳の奥の鋭さが増した気が僕はする。表情は変わらないけれど、纏う雰囲気も変化していた。やっぱりこの人、ただの温厚なおじさんじゃないね。
 それを察知した僕とリイナは少し姿勢を正す。
 エリアス国防大臣はこう言った。

 「未来を見据えたような頭脳を持つアカツキ准将、副官として彼を支えるリイナ中佐に聞こう。我が国、我が軍についてどう思う?」
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