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第7章一冬(ひとふゆ)の戦間期と祝福の結婚披露宴編
第9話 レセプションを終えた後は
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・・9・・
同日・午後11時45分
協商連合首都・ロンドリウム特別市中心街
アカツキ達滞在のホテルの五階、アカツキとリイナに用意されたスィートルーム
定刻通りに専用列車は午後六時に到着。その足でそのまま宿泊するホテルであり、明日からの会談の場所でもあり、これから行われるレセプション会場へ僕達は向かった。ドレスコードはリイナ含めて僕達は軍服だ。あくまで公の歓迎式典って扱いだからね。でも会談四日目――帰国前日になる日――には別にパーティーが開かれるらしく、それ用にリイナはドレスを持ってきているらしい。僕は燕尾服だ。
そのレセプションなんだけど開始時刻は午後七時。立食形式で華々しく開かれたそれは僕にとっては楽しかったけれど、大変な目に遭った。
それが今の状態な訳で……。
「んぁー、飲まされすぎたぁ……」
「上機嫌なお父様にもだけど、エリアス国防大臣の他に協商連合の人達にたっぷりと飲まされていたものねえ」
「あんな量に付き合うのはぁー、無理だってぇー……」
僕はあったかい冬用の寝巻きに着替えてキングサイズベッドに体を沈みこませ、うつ伏せになって弱々しく心境を吐露する。ちなみにエイジスは偵察がてらにと一人で空中を浮きながらこのホテルを見て回っているらしい。まあ関係者以外立ち入り厳禁になっているこのホテルなら大丈夫だろう。
さて、主役である僕達連合王国関係者が登場した時点で大喝采と大歓声で始まったレセプション。そこには僕を呼ぶことを希望した協商連合軍首脳陣や連合王国政府関係者、果ては今回の会談を見越してか軍需民需関わらず会社関係者が大勢参加しており、お酒も振る舞われた事もあって大層盛り上がった。
そう、盛り上がったから飲まされたわけなんだ!
「あの人達、全員が酒豪すぎる……。訳わかんない……」
「お父様とエリアス国防大臣は趣味で語らいあえる程のお酒好きで、協商連合の上層部の人達も飲める人達ばかりだもの」
「だとしてもさぁ……」
協商連合陸軍総司令官、参謀本部長、海軍総司令官からは人類諸国の英雄に乾杯とまずワインを、酒の肴に英雄譚を話してくれとせがまれ明日からの会談ではどうぞ御手柔らかにと言われ――こっちのセリフだよ!――、それを聞きつけた協商連合政府関係者が自分達にも話してくれとやってくる。で、またワイン。終いには協商連合で著名な企業の経営陣が顔合わせと今後もどうぞよろしくと挨拶。そしてワイン。
僕も一応飲めない口では無くてある程度はいける方だけど限度がある。後半からはみっともない姿を見せられないと果実水や水に切り替えて何とか乗り越えたわけなんだ……。
しかしかなりの飲酒をしている故にある程度酔いが醒めてシャワーを浴びれたのがレセプションが終わってから一時間後の十時半すぎ。そうして今に至るわけ……。
明日から会談があるっていうのに、はっきり言ってもうくったくただった……。
「リイナは凄いよね……。あれだけ飲んでも平気なんだもん……」
僕はううぅ、と小さく唸りながらリイナの方をちらりと見る。彼女は僕の倍以上飲酒をしたというのに、いつもと同じ顔をしていた。マーチス侯爵が強いんだから、遺伝的には当然かぁ……。
「あの程度なら気分は良くなっても平然と歩けるわよ?」
「尊敬する……」
「あら、もっと尊敬していいのよ?」
くすくすと笑うリイナ。対して僕は完全にグロッキーだった……。
「仕方の無い旦那様ね。ほら、シーツの上では部屋は暖房が効いていても外は寒いんだから寝冷めするわよ? こっちに来なさいな」
「ううぅん……、わかっ、たぁ……」
リイナはふっかふかのベッドに用意されたあったかそうな布団に入り、僕に向かって優しく微笑んで手招きする。こっちに来いということだろうから、僕は素直にずるずると動いて彼女の方へ体を動かす。
「こっちよこっち」
「あい……」
体をゆっくりと引っ張られて案内されたのは、リイナの前。すると彼女は後ろから僕をふんわりと抱き締めた。
思考回路が回らないし頭がぼんやりしている所に、風呂上がりのリイナからはいい匂いがするしぽかぽかしている。ああこれはダメだ力が入らない……。
「普段はかっこいい旦那様が、無抵抗でとっても可愛いわ……」
「ひぁ、耳元で囁くのはやめろぅ……」
「ふふっ、本当に可愛い旦那様……」
リイナさては顔は平気でもなんだかんだ酔ってるな!?
「……食べていいかしら?」
「いやダメでしょ!?」
「えぇ……。確かに初夜は結婚式にって取っているけれどもぉ、……耳くらいはダメかしら?」
「ダメ! 耳はやめて!」
何言ってんのかなあこの人は!
…………待てよ。今、僕はとんでもない口滑らせをしたのでは?
「へえ……」
「あ、の……。リイナ、さん……?」
「薄々勘づいてはいたけれど、あんまり触らせたがらないのはそういうことなのねえ……」
「…………」
アカツキはにげだそうとした!
しかしリイナの両腕からは逃れられない!
「……んふふふふ、んふふふふふ」
「笑い声が怖いよリイナ……」
「いただきまあす」
「は、え、ちょ、ひぁぁ!?」
かぷり、と言う音の後にリイナは僕の左耳を甘噛みする。背筋にぞくりと何かが走り、逃げ出そうとした時に出した力はあっという間に抜けきってしまった。
「おいひいわね……」
「耳噛みながら、喋る、なぁ!」
「ふぇ? なになに、もっと食べていいってぇる」
「ひゃえ……っ、ひっ、はぇ、や、やめ、ろぉ……!」
「いやよ」
「そん、ひぁ!」
「ああ、本当に全部食べちゃいたいわ……」
再び耳元で息をゆっくりと吹きかけるようにささやくリイナ。蠱惑的なその声に、完全に僕はリイナのペースに飲まれていた。
しばらくの間、甘噛みどころかぺろりと舌で舐められ、まさにいいようにされてしまう。
が、しかし。
「ふふふっ、ごちそうさまでした。今日はここまででおしまいね」
「はぁ、はぁ、はぁ……。ひぇ……?」
息を上げながら僕は顔を上に向けると、それはもう大変満足していらっしゃったリイナがいた。
するだけされて終わりとはこれいかに……!
「だってここから先は本気でそうなるわよ?」
「…………まあ、ね」
「さっきも言ったけど、初めては結婚式のあとに。それまでは絶対にしないのは私達で決めた約束でしょう?」
「……うん、確かに決めた」
「だから、ちょっといじわるかもしれないけれどおしまいってわけ」
「ぐぬぅ……、散々弄ばれただけなのは悔しい……」
「ふふっ、私は楽しかったわよ。本音はもうちょっと楽しみたかったけれど、明日は昼からとはいえ会談よ。だからゆっくり眠って、英気を養わないといけないわ。それに、ほら、あっち」
「あっち?」
リイナがニコニコしながら指差した先。そこにいたのは。
「エ、エイジスぅ!?」
いつの間にか部屋に入ってきたエイジスがそこにいた!
いやいやちょっと待ったいつから!?
「マスターの心拍数上昇を確認した為帰還。なお、マスターが女性のような嬌声を上げられている時点からワタクシはおりました」
「はぁぁぁぁぁ!? うっそだろ!?」
「否定。ワタクシはマスターにウソをつきません」
「ふふふっ、しっかり見られちゃっていたわね」
「うぁ、うぁぁぁぁ……」
なんてこった! なんて、こった……。
「もう婿にいけない……」
「何言ってるのよアナタは私の旦那様じゃない」
「そうですとも、そうですとも……」
「これまでの学習蓄積によるマスターへの助言。ごゆっくりお楽しみでしたね?」
無表情のまま首を傾げて言うエイジス。完全に追い討ちでしか無かった!
「…………寝る。もうやだ……」
「ちょっと怒って頬を膨らます旦那様も愛らしいわぁ」
そう言いつつもいつも通り僕を抱き枕にするリイナ。僕がこういう時にリイナに勝てる時はくるのだろうか……。
ふて寝した僕はリイナに抱きしめられ、エイジスも僕の隣にさりげなく潜り込んで眠りの世界へと入るのだった。
見られたのがエイジスだったのは本当に幸いだと思うよ……。うん……。
同日・午後11時45分
協商連合首都・ロンドリウム特別市中心街
アカツキ達滞在のホテルの五階、アカツキとリイナに用意されたスィートルーム
定刻通りに専用列車は午後六時に到着。その足でそのまま宿泊するホテルであり、明日からの会談の場所でもあり、これから行われるレセプション会場へ僕達は向かった。ドレスコードはリイナ含めて僕達は軍服だ。あくまで公の歓迎式典って扱いだからね。でも会談四日目――帰国前日になる日――には別にパーティーが開かれるらしく、それ用にリイナはドレスを持ってきているらしい。僕は燕尾服だ。
そのレセプションなんだけど開始時刻は午後七時。立食形式で華々しく開かれたそれは僕にとっては楽しかったけれど、大変な目に遭った。
それが今の状態な訳で……。
「んぁー、飲まされすぎたぁ……」
「上機嫌なお父様にもだけど、エリアス国防大臣の他に協商連合の人達にたっぷりと飲まされていたものねえ」
「あんな量に付き合うのはぁー、無理だってぇー……」
僕はあったかい冬用の寝巻きに着替えてキングサイズベッドに体を沈みこませ、うつ伏せになって弱々しく心境を吐露する。ちなみにエイジスは偵察がてらにと一人で空中を浮きながらこのホテルを見て回っているらしい。まあ関係者以外立ち入り厳禁になっているこのホテルなら大丈夫だろう。
さて、主役である僕達連合王国関係者が登場した時点で大喝采と大歓声で始まったレセプション。そこには僕を呼ぶことを希望した協商連合軍首脳陣や連合王国政府関係者、果ては今回の会談を見越してか軍需民需関わらず会社関係者が大勢参加しており、お酒も振る舞われた事もあって大層盛り上がった。
そう、盛り上がったから飲まされたわけなんだ!
「あの人達、全員が酒豪すぎる……。訳わかんない……」
「お父様とエリアス国防大臣は趣味で語らいあえる程のお酒好きで、協商連合の上層部の人達も飲める人達ばかりだもの」
「だとしてもさぁ……」
協商連合陸軍総司令官、参謀本部長、海軍総司令官からは人類諸国の英雄に乾杯とまずワインを、酒の肴に英雄譚を話してくれとせがまれ明日からの会談ではどうぞ御手柔らかにと言われ――こっちのセリフだよ!――、それを聞きつけた協商連合政府関係者が自分達にも話してくれとやってくる。で、またワイン。終いには協商連合で著名な企業の経営陣が顔合わせと今後もどうぞよろしくと挨拶。そしてワイン。
僕も一応飲めない口では無くてある程度はいける方だけど限度がある。後半からはみっともない姿を見せられないと果実水や水に切り替えて何とか乗り越えたわけなんだ……。
しかしかなりの飲酒をしている故にある程度酔いが醒めてシャワーを浴びれたのがレセプションが終わってから一時間後の十時半すぎ。そうして今に至るわけ……。
明日から会談があるっていうのに、はっきり言ってもうくったくただった……。
「リイナは凄いよね……。あれだけ飲んでも平気なんだもん……」
僕はううぅ、と小さく唸りながらリイナの方をちらりと見る。彼女は僕の倍以上飲酒をしたというのに、いつもと同じ顔をしていた。マーチス侯爵が強いんだから、遺伝的には当然かぁ……。
「あの程度なら気分は良くなっても平然と歩けるわよ?」
「尊敬する……」
「あら、もっと尊敬していいのよ?」
くすくすと笑うリイナ。対して僕は完全にグロッキーだった……。
「仕方の無い旦那様ね。ほら、シーツの上では部屋は暖房が効いていても外は寒いんだから寝冷めするわよ? こっちに来なさいな」
「ううぅん……、わかっ、たぁ……」
リイナはふっかふかのベッドに用意されたあったかそうな布団に入り、僕に向かって優しく微笑んで手招きする。こっちに来いということだろうから、僕は素直にずるずると動いて彼女の方へ体を動かす。
「こっちよこっち」
「あい……」
体をゆっくりと引っ張られて案内されたのは、リイナの前。すると彼女は後ろから僕をふんわりと抱き締めた。
思考回路が回らないし頭がぼんやりしている所に、風呂上がりのリイナからはいい匂いがするしぽかぽかしている。ああこれはダメだ力が入らない……。
「普段はかっこいい旦那様が、無抵抗でとっても可愛いわ……」
「ひぁ、耳元で囁くのはやめろぅ……」
「ふふっ、本当に可愛い旦那様……」
リイナさては顔は平気でもなんだかんだ酔ってるな!?
「……食べていいかしら?」
「いやダメでしょ!?」
「えぇ……。確かに初夜は結婚式にって取っているけれどもぉ、……耳くらいはダメかしら?」
「ダメ! 耳はやめて!」
何言ってんのかなあこの人は!
…………待てよ。今、僕はとんでもない口滑らせをしたのでは?
「へえ……」
「あ、の……。リイナ、さん……?」
「薄々勘づいてはいたけれど、あんまり触らせたがらないのはそういうことなのねえ……」
「…………」
アカツキはにげだそうとした!
しかしリイナの両腕からは逃れられない!
「……んふふふふ、んふふふふふ」
「笑い声が怖いよリイナ……」
「いただきまあす」
「は、え、ちょ、ひぁぁ!?」
かぷり、と言う音の後にリイナは僕の左耳を甘噛みする。背筋にぞくりと何かが走り、逃げ出そうとした時に出した力はあっという間に抜けきってしまった。
「おいひいわね……」
「耳噛みながら、喋る、なぁ!」
「ふぇ? なになに、もっと食べていいってぇる」
「ひゃえ……っ、ひっ、はぇ、や、やめ、ろぉ……!」
「いやよ」
「そん、ひぁ!」
「ああ、本当に全部食べちゃいたいわ……」
再び耳元で息をゆっくりと吹きかけるようにささやくリイナ。蠱惑的なその声に、完全に僕はリイナのペースに飲まれていた。
しばらくの間、甘噛みどころかぺろりと舌で舐められ、まさにいいようにされてしまう。
が、しかし。
「ふふふっ、ごちそうさまでした。今日はここまででおしまいね」
「はぁ、はぁ、はぁ……。ひぇ……?」
息を上げながら僕は顔を上に向けると、それはもう大変満足していらっしゃったリイナがいた。
するだけされて終わりとはこれいかに……!
「だってここから先は本気でそうなるわよ?」
「…………まあ、ね」
「さっきも言ったけど、初めては結婚式のあとに。それまでは絶対にしないのは私達で決めた約束でしょう?」
「……うん、確かに決めた」
「だから、ちょっといじわるかもしれないけれどおしまいってわけ」
「ぐぬぅ……、散々弄ばれただけなのは悔しい……」
「ふふっ、私は楽しかったわよ。本音はもうちょっと楽しみたかったけれど、明日は昼からとはいえ会談よ。だからゆっくり眠って、英気を養わないといけないわ。それに、ほら、あっち」
「あっち?」
リイナがニコニコしながら指差した先。そこにいたのは。
「エ、エイジスぅ!?」
いつの間にか部屋に入ってきたエイジスがそこにいた!
いやいやちょっと待ったいつから!?
「マスターの心拍数上昇を確認した為帰還。なお、マスターが女性のような嬌声を上げられている時点からワタクシはおりました」
「はぁぁぁぁぁ!? うっそだろ!?」
「否定。ワタクシはマスターにウソをつきません」
「ふふふっ、しっかり見られちゃっていたわね」
「うぁ、うぁぁぁぁ……」
なんてこった! なんて、こった……。
「もう婿にいけない……」
「何言ってるのよアナタは私の旦那様じゃない」
「そうですとも、そうですとも……」
「これまでの学習蓄積によるマスターへの助言。ごゆっくりお楽しみでしたね?」
無表情のまま首を傾げて言うエイジス。完全に追い討ちでしか無かった!
「…………寝る。もうやだ……」
「ちょっと怒って頬を膨らます旦那様も愛らしいわぁ」
そう言いつつもいつも通り僕を抱き枕にするリイナ。僕がこういう時にリイナに勝てる時はくるのだろうか……。
ふて寝した僕はリイナに抱きしめられ、エイジスも僕の隣にさりげなく潜り込んで眠りの世界へと入るのだった。
見られたのがエイジスだったのは本当に幸いだと思うよ……。うん……。
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