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第7章一冬(ひとふゆ)の戦間期と祝福の結婚披露宴編
第11話 交渉は滞りなく
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・・11・・
午後1時5分
ロンドリウム二大臣級会談が始まると、場の空気は相応しいものへと変化する。同時に会場内には半数くらい喫煙を始める者もいた。
十九世紀半ばの水準のこの世界では分煙という概念は当然無くて、こういった公の会談でも喫煙は行われる。ちなみに紙タバコは少数派で、かなりの人数がパイプか葉巻だ。エリアス国防大臣や陸海軍総司令官は葉巻、マーチス侯爵やエディン侯爵は紙巻きだった。
僕? 前世では吸ってたけれど、転生してからは吸う気があんまり無いんだよね。外見に引っ張られているのもあるけれど、リイナもいるし。どうにも前世の喫煙マナーが頭にちらつくから、非喫煙者のリイナといると自ずと喫煙というのはするつもりはないんだ。
ともあれ、会場内の煙が風魔法の魔導具で換気される中、エリアス国防大臣は葉巻から口を離すと。
「結論から言わさせてもらうと、我が協商連合軍は古くからの同盟条項とアルネシア連合王国の要請を受諾し派兵するつもりだよ。規模は一個軍集団、五個師団だねえ」
「おおお!」
「五個師団もか!」
「非常に心強い話だ!」
教会の司祭のような暖かい笑みで、エリアス国防大臣が派遣軍を出すことを伝えると連合王国側からは安堵と嬉しさの声が上がる。
五個師団、つまりは五万人規模の派兵はいくら人類諸国側でも最大規模を誇る連合王国軍でもかなり負担が軽減される上々の提案だ。僕はマーチス侯爵やリイナと顔を合わせて笑顔を交わす。
だけど、当然五個師団も派兵してくれるということはタダではないわけで、今度はフェリシア外務大臣が口を開く。
「ただし、協商連合軍一個軍集団の派遣には条件がありましてよ? これだけの派兵です。相応の条件を連合王国に提示致しますわ」
「ふむ。事前調整でも話は出ていたが、再確認といこうか。協商連合の条件とはなんだね?」
「皆様のお手元にある、資料の十一枚目をご覧下さいませ。そちらが条件になりますの。読み上げますわね」
エディン外務大臣の発言に、フェリシア外務大臣が読んだ条件とは次のようになっていた。
1、第二次妖魔大戦におけるロンドリウム協商連合から妖魔帝国側への個別賠償請求権。
2、貴国と我が国が来春から実行予定の第二攻勢において、奪還した後に復興する都市における我が国への商業的な優先権及び域内に存在する可能性が高い魔石鉱山の一部利権の獲得。
3、貴国と我が国の結束をより強固にする二国間条約の締結。
4、キース・ワルシャー・シュペティウ・ジトゥーミラに我が国の兵站拠点の設置場所提供と必要な資材の一部提供。
5、4に関係する物資鉄道輸送において鉄路の使用許可。並びに一部車両の使用許可。
6、我が国の新規戦時国債発行における、貴国の購入枠の設定。ただしこれに関しては両国財務大臣会談で詳細を決定するものとする。
「以上でありますの」
「ふうむ。まあ、可もなく不可もなくという所ではあるな」
「条件は当たり障りないものにしましたわ。お互いにとっては悪くないでしょう?」
フェリシア外務大臣が言った条件というのは対等な国同士らしい条件だった。
要するに、軍は出すし戦費もこっちで出す。物資も武器弾薬もこっちで負担する。だけど輸送で使う鉄道の線路は使わせてね。車両もまだ開通したばかりで不足するウチの国だから車両も一部貸してね。
利権は共同統治でいいけど、鉱山はちょっとくださいな。
もっと軍を動かしやすくするように条約を結ぼう。それと、戦時国債を買ってね? もちろん規定の年数が経てば利子つけて返すよ。
というとこかな。僕も事前調整の文面は見たけれど、無理は言っていないけれど自分達も得するような形になっていた。
「そうであるな。では、詳細を詰めていこうか。まずは一つ目からであるな」
連合王国外務省側はとりあえずはこちらが受け入れられそうな条件だなという面持ちであったけれど、エディン外務大臣は詳しい話を聞く態勢に変える。
「個別賠償請求権についてですわね。こちらは我が国の財務省と共同での考案ですの。戦争に参加するからには、我が国にも賠償金の請求は必要でしょう? 勝利の際にはロンドリウム協商連合も妖魔帝国に賠償請求を致します。こちらは追々になりますけれども」
「まだ戦争は始まって半年であるからな。こちらに関しては特に何も言うことはない」
「では、二つ目に移りますわね。二つ目は我が国が得る利権に関連するものですの。二百五十年前の地図しか無いのが心許ないですが、貴国旧東部領は手付かずの魔石鉱山などが多いと聞きます。妖魔帝国はあまり開発を行っていないということですから、残っている可能性が高い。そして、我が国は貴国のように本国のみで魔石を自給しておりません。なので、将来の安定供給を目指したものになりますわ」
「正直旧東部領は広大で我が国だけでは開発しきれん。協商連合に鉱山を渡しても我が連合王国には随分と手元に残って十分な利益が出る。しかし、輸送はいかがする?」
「我が国の利権になった鉱山の魔石のみ、関税を免除してくださいまし。鉄道が貴国によって敷設されるのならば相応の金額を支払いましょう。これらは今後の交渉になりますわね」
「復興都市の優先権に関しては?」
「こちらで指定させて頂きますのは、貴国南部領に近い都市ですの。復興に際して必要な経費は払いますわ。代わりに我が国の企業が進出する際の優先権をくださいまし。山脈以西を奪還し、戦況が安定して安全が確保出来れば法国にも近い地ですから、経済省では利益が望めるとの事ですので」
「了承した。必要な法律に関しては両国法務省にて別途会談という事にしよう。といっても既に事前の相談は始めているようだがね」
「法国も近いうちに奪還に動くと聞きましたの。しかし、その前に我が国は連合王国に対して行動をしようと思いまして」
「うん? 法国には持ちかけないのであるか? あちらが奪還に動くのは海もある方で、貴国植民地と交易ルートを結べるが」
「当然我が協商連合にも法国とはどうするかという話が上がりましたの。ただ、あの国はとかく宗教がなんだのとうるさいですから……。ヨルヤ教はわたくし達の国にもありますが、百六十年前の宗教改革で貴国と同様宗派を変えておりますし……」
「ああ……。古典派とプロック派であるな……」
前世でもあったように、この世界のヨルヤ教にも宗教改革があったんだよね。経緯もまったく同じ。そこで新しく生まれたのがプロック派で改革を掲げた人の名前から来ている。ちなみに僕達連合王国と協商連合に連邦がプロック派、法国と共和国と王国が古典派だ。軍人間では気にしてもいないけれど、宗教内部では未だにちょっとだけとはいえわだかまりが残っているんだよなあ……。
「ですのでいくら法国においても利益が見込めても手間のかからない貴国ですの。時は金ですから。それに、軍の水準の違いもありますわ。万が一の際の安全度具合は法国と貴国では段違いですから」
「だそうだぞマーチス軍部大臣」
「我が軍をかってくれて大変嬉しいな。しかし、完全な保障は出来んぞ?」
「当然ですわ。絶対はありませんの。でも、安全な方がいいでしょう?」
「間違いない。オレが貴国なら同じようにしている」
「ええ。ですので、ここまでは今のような話になりますの。そして、ここからは最後の点を除いて軍同士の話になりますわね。エリアス国防大臣」
「はいさあ。じゃあ、マーチス軍部大臣。四点目の話に進もうか」
「了解した」
軍以外の要素については話が終わったので、エディン外務大臣とフェリシア外務大臣は一息つき、交渉は軍同士に移る。僕とリイナも視線をフェリシア外務大臣からエリアス国防大臣へと変える。
「マーチス軍部大臣、まずは条約に関してなんだけれどこれは貴国の軍と我が国の軍の結びつきを強固にする為のものだよ。既に軍部省には話がいっているものだね。今後予想される海戦に向けての連合艦隊を組むとして必要な合同演習や、交流も含まれてるかな。他にも連合軍を組むんだから兵站面での提携なども含まれているよ」
「海軍に関しては非常に心強い。陸軍国の我が国に比べて、精強な艦隊を多く持つ協商連合海軍とより強く手を結べるのならば、これ以上に嬉しい話はないな」
「うんうん。恐らくは冬は凍る場所もある極北海より法国南部での艦隊決戦が予想されるけれど、ほら、法国の艦隊は旧式化しつつあるからさあ……。もしもがあったら結局は我が国対処になるだろうし……」
「妖魔帝国海軍が果たしてどれ程の勢力なのかは分からんが、法国独力だけでは無理だろう。となると、二国で協調して法国にも持ちかけて置く必要も出るな」
法国の艦隊は弱い訳ではない。だけど、妖魔帝国は南部にも大きな勢力を持っていて第一次妖魔大戦でもかなりの規模を出してきているから相応かそれ以上の艦隊を保有していると連合王国軍も協商連合軍も予想している。となると、連合王国海軍が協商連合海軍と連合で共和国王国経由で決戦地に回航させることになるわけだ。となると二国間で連携力を高める為には合同演習は必要だし、いざとなった時には法国にも連絡を入れないといけないのはまさに話の通りだね。
「まあねえ。これについては後々の話になりそうだから、とりあえずは次の点に移ろうかあ。新条約にも関わってくる陸軍が主になる話だねえ」
「分かった。キース・ワルシャー・シュペティウ・ジトゥーミラにおいて兵站拠点の設置場所提供と資材一部提供だな。場所に関しては問題ない。復興途上で場所ならいくらでもある。資材提供は一部とあるが、どれくらいだ?」
「半分とは言わないから、三十五パルセントだねえ」
「三十五はやや厳しい。我が国は春季攻勢を行うにあたり資材を必要とする。三十パルセントはどうだ?」
「三十かあ。まあ、いいかな。二十五よりは全然いいねえ」
「なら三十でいこう。次は鉄道輸送についてだな」
「そうだねえ。海路は艦船を使うからともかくとしてキースからワルシャーまで兵員輸送と物資輸送を行うけれど、鉄路を使わせて欲しいのと、輸送車両を一部貸出してほしいんだ。我が国は貴国より少し後の鉄道開業で、まだ車両を全部回せる程に生産もされてなくてねえ」
「具体的には?」
「半分だねえ。もう半分だけで手一杯だからさあ」
「了解した。我が国もまだ開業半年であまり余裕がない。予定に余裕を取ることで対処しよう」
「助かるよー。じゃあそれでいこうかあ」
「アカツキ准将。貴官は鉄道面でも改革で携わっていた。予定を早めるとなると、どれくらいからになる?」
マーチス侯爵は質問をしてきたので、僕は事前に用意してあった資料を見ながら。
「春季攻勢における兵員及び資材の輸送については複数案の想定があり、五万人規模も入っています。余裕を加味するとなると、従来より二週間から二十日の前倒しならば滞りなく進むかと思われます。ですので、三の月上旬からの開始になるかと」
「だそうだ。我が国の作戦計画は現在策定中であるが予定としては四の月下旬が攻勢開始。手配などは間に合いそうか、エリアス国防大臣」
「今が十二の月上旬でしょう? 中旬から下旬に動くとしても問題ないねえ」
「よし、では予定より二週間程度前倒しでいこう」
「分かったよー。そのように協商連合軍も動こうかー」
「あいわかった。軍としては以上だな。細かい詰め合わせを含めては明日以降としよう。最後については外務大臣に」
軍が主に関連する話が終わると、話は再び外務大臣へと移る。マーチス侯爵は一息つき、発言の他にはメモ書きなどしていた僕も水を飲んで肩の力を少しだけ抜いた。
「うむ。さて、最後だが国債であったか。この件については文面の通り財務大臣会談の話だな。既に事前の話し合いは進んでいるようだが」
「ええ。我が国の財務省が動いておりまして、連合王国財務省からも色の良い返事が頂けそうですから、含まさせて頂きました。参戦にあたって戦費は確保出来ますが、ジトゥーミラ・レポートの件もありますから念の為の調達ですわね」
「ならば詳細は互いに専門家に任せよう。疎い訳では無いが、自信を持って語る程に通じている訳では無いからな」
「ええ。つつがなく。では、以上で条件交渉の大枠が纏まったところですし一度休憩を挟みましょうか」
「うむ。話しておれば時間が過ぎるのは早い。既に午後三時半だ。休憩を挟んで今日中に行える細かい点の調整を進めるとしよう。それでいいか、マーチス軍部大臣?」
「構わん。前もって進めておいたお陰で会談は順調だからな。リラックスしてから明日以降の予定が厳しくならないように話し合いをすればいいいだろう」
「という訳だ、フェリシア外務大臣。一旦終わりとしよう」
「ええ。エディン外務大臣」
会談初日は終始揉めることなく、休憩を挟んだ後に午後六時半まで行われ無事終わった。
僕は立場的にあまり話すことは無かったけれど、アンネリオン中将との参謀本部所属同士での会談も行われ、いい経験になった充実した一日を過ごせたと感じたかな。
さて、明日以降は四日目午後以降と最終日を除いて会談は大臣や官僚達に任せることになり僕は協商連合軍や関連施設の見学が待っている。しっかりと仕事を果たさないとね。
午後1時5分
ロンドリウム二大臣級会談が始まると、場の空気は相応しいものへと変化する。同時に会場内には半数くらい喫煙を始める者もいた。
十九世紀半ばの水準のこの世界では分煙という概念は当然無くて、こういった公の会談でも喫煙は行われる。ちなみに紙タバコは少数派で、かなりの人数がパイプか葉巻だ。エリアス国防大臣や陸海軍総司令官は葉巻、マーチス侯爵やエディン侯爵は紙巻きだった。
僕? 前世では吸ってたけれど、転生してからは吸う気があんまり無いんだよね。外見に引っ張られているのもあるけれど、リイナもいるし。どうにも前世の喫煙マナーが頭にちらつくから、非喫煙者のリイナといると自ずと喫煙というのはするつもりはないんだ。
ともあれ、会場内の煙が風魔法の魔導具で換気される中、エリアス国防大臣は葉巻から口を離すと。
「結論から言わさせてもらうと、我が協商連合軍は古くからの同盟条項とアルネシア連合王国の要請を受諾し派兵するつもりだよ。規模は一個軍集団、五個師団だねえ」
「おおお!」
「五個師団もか!」
「非常に心強い話だ!」
教会の司祭のような暖かい笑みで、エリアス国防大臣が派遣軍を出すことを伝えると連合王国側からは安堵と嬉しさの声が上がる。
五個師団、つまりは五万人規模の派兵はいくら人類諸国側でも最大規模を誇る連合王国軍でもかなり負担が軽減される上々の提案だ。僕はマーチス侯爵やリイナと顔を合わせて笑顔を交わす。
だけど、当然五個師団も派兵してくれるということはタダではないわけで、今度はフェリシア外務大臣が口を開く。
「ただし、協商連合軍一個軍集団の派遣には条件がありましてよ? これだけの派兵です。相応の条件を連合王国に提示致しますわ」
「ふむ。事前調整でも話は出ていたが、再確認といこうか。協商連合の条件とはなんだね?」
「皆様のお手元にある、資料の十一枚目をご覧下さいませ。そちらが条件になりますの。読み上げますわね」
エディン外務大臣の発言に、フェリシア外務大臣が読んだ条件とは次のようになっていた。
1、第二次妖魔大戦におけるロンドリウム協商連合から妖魔帝国側への個別賠償請求権。
2、貴国と我が国が来春から実行予定の第二攻勢において、奪還した後に復興する都市における我が国への商業的な優先権及び域内に存在する可能性が高い魔石鉱山の一部利権の獲得。
3、貴国と我が国の結束をより強固にする二国間条約の締結。
4、キース・ワルシャー・シュペティウ・ジトゥーミラに我が国の兵站拠点の設置場所提供と必要な資材の一部提供。
5、4に関係する物資鉄道輸送において鉄路の使用許可。並びに一部車両の使用許可。
6、我が国の新規戦時国債発行における、貴国の購入枠の設定。ただしこれに関しては両国財務大臣会談で詳細を決定するものとする。
「以上でありますの」
「ふうむ。まあ、可もなく不可もなくという所ではあるな」
「条件は当たり障りないものにしましたわ。お互いにとっては悪くないでしょう?」
フェリシア外務大臣が言った条件というのは対等な国同士らしい条件だった。
要するに、軍は出すし戦費もこっちで出す。物資も武器弾薬もこっちで負担する。だけど輸送で使う鉄道の線路は使わせてね。車両もまだ開通したばかりで不足するウチの国だから車両も一部貸してね。
利権は共同統治でいいけど、鉱山はちょっとくださいな。
もっと軍を動かしやすくするように条約を結ぼう。それと、戦時国債を買ってね? もちろん規定の年数が経てば利子つけて返すよ。
というとこかな。僕も事前調整の文面は見たけれど、無理は言っていないけれど自分達も得するような形になっていた。
「そうであるな。では、詳細を詰めていこうか。まずは一つ目からであるな」
連合王国外務省側はとりあえずはこちらが受け入れられそうな条件だなという面持ちであったけれど、エディン外務大臣は詳しい話を聞く態勢に変える。
「個別賠償請求権についてですわね。こちらは我が国の財務省と共同での考案ですの。戦争に参加するからには、我が国にも賠償金の請求は必要でしょう? 勝利の際にはロンドリウム協商連合も妖魔帝国に賠償請求を致します。こちらは追々になりますけれども」
「まだ戦争は始まって半年であるからな。こちらに関しては特に何も言うことはない」
「では、二つ目に移りますわね。二つ目は我が国が得る利権に関連するものですの。二百五十年前の地図しか無いのが心許ないですが、貴国旧東部領は手付かずの魔石鉱山などが多いと聞きます。妖魔帝国はあまり開発を行っていないということですから、残っている可能性が高い。そして、我が国は貴国のように本国のみで魔石を自給しておりません。なので、将来の安定供給を目指したものになりますわ」
「正直旧東部領は広大で我が国だけでは開発しきれん。協商連合に鉱山を渡しても我が連合王国には随分と手元に残って十分な利益が出る。しかし、輸送はいかがする?」
「我が国の利権になった鉱山の魔石のみ、関税を免除してくださいまし。鉄道が貴国によって敷設されるのならば相応の金額を支払いましょう。これらは今後の交渉になりますわね」
「復興都市の優先権に関しては?」
「こちらで指定させて頂きますのは、貴国南部領に近い都市ですの。復興に際して必要な経費は払いますわ。代わりに我が国の企業が進出する際の優先権をくださいまし。山脈以西を奪還し、戦況が安定して安全が確保出来れば法国にも近い地ですから、経済省では利益が望めるとの事ですので」
「了承した。必要な法律に関しては両国法務省にて別途会談という事にしよう。といっても既に事前の相談は始めているようだがね」
「法国も近いうちに奪還に動くと聞きましたの。しかし、その前に我が国は連合王国に対して行動をしようと思いまして」
「うん? 法国には持ちかけないのであるか? あちらが奪還に動くのは海もある方で、貴国植民地と交易ルートを結べるが」
「当然我が協商連合にも法国とはどうするかという話が上がりましたの。ただ、あの国はとかく宗教がなんだのとうるさいですから……。ヨルヤ教はわたくし達の国にもありますが、百六十年前の宗教改革で貴国と同様宗派を変えておりますし……」
「ああ……。古典派とプロック派であるな……」
前世でもあったように、この世界のヨルヤ教にも宗教改革があったんだよね。経緯もまったく同じ。そこで新しく生まれたのがプロック派で改革を掲げた人の名前から来ている。ちなみに僕達連合王国と協商連合に連邦がプロック派、法国と共和国と王国が古典派だ。軍人間では気にしてもいないけれど、宗教内部では未だにちょっとだけとはいえわだかまりが残っているんだよなあ……。
「ですのでいくら法国においても利益が見込めても手間のかからない貴国ですの。時は金ですから。それに、軍の水準の違いもありますわ。万が一の際の安全度具合は法国と貴国では段違いですから」
「だそうだぞマーチス軍部大臣」
「我が軍をかってくれて大変嬉しいな。しかし、完全な保障は出来んぞ?」
「当然ですわ。絶対はありませんの。でも、安全な方がいいでしょう?」
「間違いない。オレが貴国なら同じようにしている」
「ええ。ですので、ここまでは今のような話になりますの。そして、ここからは最後の点を除いて軍同士の話になりますわね。エリアス国防大臣」
「はいさあ。じゃあ、マーチス軍部大臣。四点目の話に進もうか」
「了解した」
軍以外の要素については話が終わったので、エディン外務大臣とフェリシア外務大臣は一息つき、交渉は軍同士に移る。僕とリイナも視線をフェリシア外務大臣からエリアス国防大臣へと変える。
「マーチス軍部大臣、まずは条約に関してなんだけれどこれは貴国の軍と我が国の軍の結びつきを強固にする為のものだよ。既に軍部省には話がいっているものだね。今後予想される海戦に向けての連合艦隊を組むとして必要な合同演習や、交流も含まれてるかな。他にも連合軍を組むんだから兵站面での提携なども含まれているよ」
「海軍に関しては非常に心強い。陸軍国の我が国に比べて、精強な艦隊を多く持つ協商連合海軍とより強く手を結べるのならば、これ以上に嬉しい話はないな」
「うんうん。恐らくは冬は凍る場所もある極北海より法国南部での艦隊決戦が予想されるけれど、ほら、法国の艦隊は旧式化しつつあるからさあ……。もしもがあったら結局は我が国対処になるだろうし……」
「妖魔帝国海軍が果たしてどれ程の勢力なのかは分からんが、法国独力だけでは無理だろう。となると、二国で協調して法国にも持ちかけて置く必要も出るな」
法国の艦隊は弱い訳ではない。だけど、妖魔帝国は南部にも大きな勢力を持っていて第一次妖魔大戦でもかなりの規模を出してきているから相応かそれ以上の艦隊を保有していると連合王国軍も協商連合軍も予想している。となると、連合王国海軍が協商連合海軍と連合で共和国王国経由で決戦地に回航させることになるわけだ。となると二国間で連携力を高める為には合同演習は必要だし、いざとなった時には法国にも連絡を入れないといけないのはまさに話の通りだね。
「まあねえ。これについては後々の話になりそうだから、とりあえずは次の点に移ろうかあ。新条約にも関わってくる陸軍が主になる話だねえ」
「分かった。キース・ワルシャー・シュペティウ・ジトゥーミラにおいて兵站拠点の設置場所提供と資材一部提供だな。場所に関しては問題ない。復興途上で場所ならいくらでもある。資材提供は一部とあるが、どれくらいだ?」
「半分とは言わないから、三十五パルセントだねえ」
「三十五はやや厳しい。我が国は春季攻勢を行うにあたり資材を必要とする。三十パルセントはどうだ?」
「三十かあ。まあ、いいかな。二十五よりは全然いいねえ」
「なら三十でいこう。次は鉄道輸送についてだな」
「そうだねえ。海路は艦船を使うからともかくとしてキースからワルシャーまで兵員輸送と物資輸送を行うけれど、鉄路を使わせて欲しいのと、輸送車両を一部貸出してほしいんだ。我が国は貴国より少し後の鉄道開業で、まだ車両を全部回せる程に生産もされてなくてねえ」
「具体的には?」
「半分だねえ。もう半分だけで手一杯だからさあ」
「了解した。我が国もまだ開業半年であまり余裕がない。予定に余裕を取ることで対処しよう」
「助かるよー。じゃあそれでいこうかあ」
「アカツキ准将。貴官は鉄道面でも改革で携わっていた。予定を早めるとなると、どれくらいからになる?」
マーチス侯爵は質問をしてきたので、僕は事前に用意してあった資料を見ながら。
「春季攻勢における兵員及び資材の輸送については複数案の想定があり、五万人規模も入っています。余裕を加味するとなると、従来より二週間から二十日の前倒しならば滞りなく進むかと思われます。ですので、三の月上旬からの開始になるかと」
「だそうだ。我が国の作戦計画は現在策定中であるが予定としては四の月下旬が攻勢開始。手配などは間に合いそうか、エリアス国防大臣」
「今が十二の月上旬でしょう? 中旬から下旬に動くとしても問題ないねえ」
「よし、では予定より二週間程度前倒しでいこう」
「分かったよー。そのように協商連合軍も動こうかー」
「あいわかった。軍としては以上だな。細かい詰め合わせを含めては明日以降としよう。最後については外務大臣に」
軍が主に関連する話が終わると、話は再び外務大臣へと移る。マーチス侯爵は一息つき、発言の他にはメモ書きなどしていた僕も水を飲んで肩の力を少しだけ抜いた。
「うむ。さて、最後だが国債であったか。この件については文面の通り財務大臣会談の話だな。既に事前の話し合いは進んでいるようだが」
「ええ。我が国の財務省が動いておりまして、連合王国財務省からも色の良い返事が頂けそうですから、含まさせて頂きました。参戦にあたって戦費は確保出来ますが、ジトゥーミラ・レポートの件もありますから念の為の調達ですわね」
「ならば詳細は互いに専門家に任せよう。疎い訳では無いが、自信を持って語る程に通じている訳では無いからな」
「ええ。つつがなく。では、以上で条件交渉の大枠が纏まったところですし一度休憩を挟みましょうか」
「うむ。話しておれば時間が過ぎるのは早い。既に午後三時半だ。休憩を挟んで今日中に行える細かい点の調整を進めるとしよう。それでいいか、マーチス軍部大臣?」
「構わん。前もって進めておいたお陰で会談は順調だからな。リラックスしてから明日以降の予定が厳しくならないように話し合いをすればいいいだろう」
「という訳だ、フェリシア外務大臣。一旦終わりとしよう」
「ええ。エディン外務大臣」
会談初日は終始揉めることなく、休憩を挟んだ後に午後六時半まで行われ無事終わった。
僕は立場的にあまり話すことは無かったけれど、アンネリオン中将との参謀本部所属同士での会談も行われ、いい経験になった充実した一日を過ごせたと感じたかな。
さて、明日以降は四日目午後以降と最終日を除いて会談は大臣や官僚達に任せることになり僕は協商連合軍や関連施設の見学が待っている。しっかりと仕事を果たさないとね。
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その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。
そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。
それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。
これが、悪役転生ってことか。
特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。
あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。
これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは?
そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。
偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。
一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。
そう思っていたんだけど、俺、弱くない?
希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。
剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。
おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!?
俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。
※カクヨム、なろうでも掲載しています。
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