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第10章 リチリア島の戦い編

第3話 フィリーネの考案した作戦

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 「水際作戦が得策ではないとは、どういった理由からでしょうか。フィリーネ少将閣下」

 「一般火力はともかくとして、魔法火力・兵力差・海軍力を鑑みた結果よ。水際作戦は作戦初期に大きく兵力を失いかねないもの」

 法国軍が上陸を仕掛けてくる妖魔帝国軍に対して用いる予定である水際作戦を否定したフィリーネ。しかしテオドーロ大佐は否定された側にも関わらず、反感を持ったような表情は出さなかった。発言の主がフィリーネだからである。
 法国軍が戦略として行う水際作戦とはなんなのか。
 水際作戦とは、海岸に砲列を敷き地雷・機雷・鉄条網などを敷設して水際陣地を構築。敵の上陸用舟艇には砲撃を加え、敵兵が上陸してきたら銃撃と歩兵の突撃で敵を撃滅するというものである。敵を国土に誘引することで地の利を得られるし、ゲリラ戦術などを効果的に行える上、遊兵を減らすことも出来る。ただし欠点として敵を誘引するからこそ国土が荒廃し結果として一般市民の犠牲が増えるというものがある。
 それでも本作戦の長短を加味した上で、フィリーネやアカツキの前世の歴史では伝統的に用いられてきた。
 ただし水際作戦にはある危険を孕む。代表的な例が第二次世界大戦における日米の戦いだ。この時日本軍は極めて強大な火力、兵站を持つ米軍に対して水際作戦を用いたが圧倒的な兵力と艦砲射撃によって配備した兵力に著しい損害を与えられた。結果としてこの反省から日本軍は後の硫黄島の戦いや沖縄戦において伝統を放棄して内陸持久へと転換している。
 この世界のこの時代の火力は、第二次世界大戦に比べるなくも無く劣っているがフィリーネにとっては無視出来ない面があった。

 「なるほど……。ええ確かに、我々は兵力においても海軍力においても、魔力面においても不利な立場に立たされていますね」

 「でしょう? もしここに海軍力がある程度あるのならば対抗手段はあったし戦力を減じられたかもしれない。けれど、今自由に動かせるのは私の国の先遣艦隊のみよ」

 「海軍側から申させて頂きますが、我々は既に正面からの戦闘をするつもりはありません。瞬殺されるからです。襲来するヴォルティック艦隊は推定で五個艦隊と上陸する約四万から六万と推定される大規模な陸軍輸送艦隊を引き連れて現れます。これは歴史上最大規模です。我々先遣艦隊がマトモにやれる相手ではありません。本国艦隊を待つしかないわけです」

 「そういう事。だから、上陸前の戦力漸減は不可能よ。海軍には期待しているけれど、ヴォルティック艦隊はともかく上陸陸軍にまで損害を出させるのは難しいでしょうね」

 「悔しい限りですが、フィリーネ少将と同じ考えを我々の海軍指揮官は持っています。無論、タダで上陸させるつもりはありませんが」

 負け前提の話だが、ロート大佐は至極冷静に語った。
 フィリーネが無視出来ない要素とは海軍力もさることながら今の話にもあったように、前世には無かった魔法火力である。一般火力だけならば、例え兵力差にある程度の不利――協商連合軍は連合王国からもたらされたジトゥーミラ・レポートにある、今回襲来するヴォルティック艦隊及び付随する上陸陸軍輸送艦隊の規模と兵站能力からしておよそ四万から六万、それも高等的な作戦の性質上魔人のみ編成と分析している。すなわち彼我の兵力差は二倍。――があったとしても敵は上陸する側だから有利な立場にある。しかし、この世界には魔法があり魔法火力は馬鹿に出来ないのだ。自身が持つ召喚武器で実感しているし、魔人の魔力は人類比五倍。末端の兵士に至るまで加味すると恐るべく火力となるだろう。ここに海軍力が圧倒的に不利という面を加えれば尚更だ。
 他にもいくつか理由はあるが、故にこそフィリーネは水際作戦に反対の立場なのである。
 そのいくつかの理由もフィリーネは話そうとしていた。法国軍指揮官たるテスラ少将は黙って聞いている。

 「では自分から質問を。フィリーネ少将閣下は水際作戦に反対とのお立場ですがどのような作戦をお考えですか? 現在の進捗であればまだ方針転換は可能ですから、是非ともお聞きしたい」

 「私の作戦は水際作戦とは正反対の、内陸持久作戦よ」

 「なるほど、内陸持久ですか。詳細をお教えください」

 「分かったわ。じゃあ一つずつ話していくわね」

 フィリーネはそう言うとクリス大佐から資料と指揮棒を受け取り、後ろに控えていた参謀は用意していた畳んであった地図を広げる。それはこの時代というより、例外は何点かあるものの第一次世界大戦以降ではお馴染みのやり口だった。

 「まず敵が上陸する前。恐らく相手は艦砲射撃で徹底的に沿岸砲台及び上陸部付近、特にこの街を潰しにかかるわ。あっちに制海権があるのをいいことにね。となると、要塞化されている沿岸砲台はかなり生き残るにしても、後者は大損害。キャターニャは奴等が後々拠点で使いたい部分を除いて焼け野原になるでしょうね」

 「既にその可能性を含めて検討しております。市街地に構築した塹壕が深めにしてあるのは実際にお目にかかられたでしょう?」

 「ええ。あれなら艦砲射撃に耐えられるでしょうね。でも、確率論は忠実なものよ。まったくいらないとは言わないけれど、どれだけかは使い物にならない可能性は考えていて?」

 「はい。市街戦は起こりうるでしょうから用意しないといけません。無論、犠牲も承知です」

 「ならいいわ。ただし、私としては上陸部からこの街までは距離があるから市街戦移行前まで
 は後ろに控えさせておくことね」

 「同様に考えておりましたのでご心配なく」

 「ふうん、やっぱり貴方はただの毒舌じゃないみたいね。――話を続けましょう」

 フィリーネは二点目を話し始める。

 「次は敵が上陸してから。港の規模からして、ヴォルティック艦隊は港を占領しないから上陸地点からやや離れた、沿岸砲台の射程外程度に碇を降ろすはず。その辺りから、上陸用船艇が大挙してやってくるわ。普通ならここで沿岸砲台なり、カノン砲や野砲で攻撃するけれど、指揮官の命令があるまで一切しない。これは厳命よ」

 フィリーネのこの発言には法国軍側からどよめきが起きた。当然である、人力かせいぜい風魔法機関のみの脚の遅い上陸用の船艇など生き残った沿岸砲台やカノン砲、野砲にとっては格好の的だからだ。ここで敵に損害を与えずいつ与えるという話である。
 これに反論したのは、法国軍作戦参謀次長だった。

 「待ってください、フィリーネ少将閣下。それでは最大の好機を失いかかねません」

 「そうかしら? こちらは包囲されたらそれ以上の補給は受けられず後は目減りするだけの立場よ? 例えば、沿岸砲台や重砲が上陸用船艇を狙ったとする。上陸用船艇は整った縦列でやってくるから感覚も開いているわ。貴方、全て狙える自信はあって?」

 「仰る事は十分理解しております。それでは、少将閣下がお持ちになった二個師団にしては過剰な野砲やカノン砲をいつ使われるのですか? あれだけあれば当てられますよ?」

 「まあまあ、話は最後までお聞きなさいな。せっかちな男は嫌われるわよ?」

 蠱惑的な笑みを見せるフィリーネに、作戦参謀次長はどぎまぎさせられながらも黙って聞くことにした。相手がどこの馬の骨か分からない少将ならともかく、ここにいるのはフィリーネだからである。助けに来てくれた側というのもあった。

 「私達の二個師団は、一部に急な編成を伴うから若干の不安はあるけれど重砲火力に厚みを持たせたものになっているわ。クリス大佐、説明してあげなさい」

 「はっ。我々協商連合陸軍はこの度の防衛戦において使用する全一般火力は、一般的な協商連合陸軍と比較して二倍を誇ります。砲兵隊の数は三割増し、敵襲来直前まで本土南部から輸送される分も含めて保有弾数は基準値を大幅に上回るものです」

 クリス大佐の言葉に法国軍人からは、おお、と声が上がる。いかんせん急な作戦故に数こそ三割増しだがそれでも三割だ。砲兵特化の師団として遜色ない。ましてや協商連合の重砲は連合王国と比較しても同等に近い性能を持っているし、最新鋭のカノン砲や野砲が多い。彼らからしたら頼もしいの一言に尽きるであろう。

 「ヴォルティック艦隊が襲来するまで、つまりは制海権を取られる前までに可能な限り武器弾薬は輸送させるわ。砲火力だけでなくガトリング砲や小銃の弾薬に至るまで全て。これには本作戦の引き換えとして法国からの輸送艦艇の提供と前半は協商連合輸送艦艇を用いるわ。また、本国から当地までの輸送は連合王国を経由。鉄道を使って持ってきた方が早いもの。本件は連合王国国王陛下は快諾なさってくれたわ。連合王国にも感謝しなさいよ?」

 「はは、僕達はあの国にお世話になりっぱなしだねえ……。かの英雄に怒られそうだ」

 「もう怒ってるかもね。今彼はブカレシタでそれどころじゃないでしょうけど。話を続けるわね。これらを輸送したら、安全な後背地に弾薬庫を設定し速やかに前線に届けられる体制を構築。時間が限られているから限界はあるけれど、そこは人海戦術で重砲類を隠蔽保護する簡易的な掩体壕を造るわ。それが無理なら自然を利用するまでよ。既にいくつかは作成済みでしょう、テオドーロ大佐?」

 「ええ、協商連合軍が大砲を相当多く持ってきているのは事前通告を受けておりましたし、水際作戦でダメだった場合の為に用意しておましたので」

 「柔軟にやっていてくれて助かったわ。さて諸君? その砲類はどこに配置するかと言うと、ここと、ここと、ここよ。他にも配置するし予備も残しておくけれど、メインは今言った場所」

 フィリーネが指揮棒で軽く叩いたのは、いずれも敵の上陸部か後々侵攻してくる部分をそれぞれの砲が重複して射程に収めている箇所だった。これらが一斉に火を噴いた時の威力は、敵は恐るべき死体の山を築く事になるのは想像に難くなかった。

 「かなり東に偏っていますね。しかもこれなら戦線を後退しても移動可能な野砲は速やかに下げられます」

 「そういう事。では、これをいつ使うかだけれど」

 「何となく予想がついてきましたよ。これは、凄まじい事になります……。新しいやり方だ……」

 どうやら作戦参謀次長はフィリーネの意図に気付いたらしく、敵がどうなるのかを想像して無自覚に口角を若干上げていた。

 「伊達に作戦参謀次長はやっていないようね。この位置から分かる通り、上陸部、早い話が平時は海水浴客で賑わう大きな砂浜海岸を重点としているわ。敵にとってここは上陸にもってこいの場所。この地点から橋頭堡を築くでしょう。でも、そうするまでが大変よ。だって、上陸直後に広がるのは南北幅にも広い、足の取られる砂場。大勢の魔人共。狙って、狙って、狙い澄まして、ドン! よ」

 フィリーネは部下の参謀が置いた妖魔帝国陸軍を意味する黒い木の型を強く叩く。
 彼女がやろうとしているのは、ある意味では硫黄島の戦いの日本側の手口だ。あちらは地下坑道で耐え忍んでいたが、今回の作戦ではそんな時間的余裕はない。なので心許ないが掩体壕や塹壕で防護して温存し、妖魔帝国上陸軍が足場の取られる砂地で動きがままならない所を一斉砲火で叩くというものである。法国が元からリチリア島に設置してある沿岸砲台と重砲類、フィリーネが持ち込んだ二個師団にしては異常とも言える砲火力。これが合さった時、砂浜海岸は妖魔帝国兵達の血で染まることとなる。
 この説明に、法国軍人達はこの点において反対する理由は無かった。全員が納得している。

 「早とちりをしてしまい、申し訳ありませんフィリーネ少将閣下。素晴らしい案です。持久戦にはもってこいでしょう」

 「いいのよ、作戦参謀次長。だって、私が考案したものだもの」

 「『敵の島嶼部強襲上陸に対する有効戦略と考える、新持久戦の可能性』だよね。フィリーネ少将」

 「あら、ニコラ少将。私の論文を読んでくれていたのね。嬉しいわ」

 「僕は貴女や連合王国のアカツキ少将のような才能なんて無いし、むしろ無能の類だって自覚があるんだ。だから、優れた軍人が執筆している論文は必ず読むようにしているのさ。頭の硬直化が一番いけないからね。まあ、学んでも活かせてないのだから意味無いんだけど……」

 「そんな事ないわ。貴方は立派な軍人よ。事実こうやって、今貴方はここにいる。それだけで十分よ。部下が証明もしているでしょう?」

 「そうかな……?」

 ニコラ少将は自分の部下達を見回すと、誰も彼もが微笑んで首肯していた。
 同時にまいったな。とも思う。ニコラ少将は確かに戦略家としては優れた部類にはいない。自分に自信もない。だが、人の心を読むのは自己防衛策として優れていたから気付いたのだ。
 このフィリーネ少将は、わずかな時間で自分をも利用して結束力を高めようとしていると。自身の上官を、実績のある本人が褒めることによって得られる成果を知っていると。結果、今やフィリーネ少将は手初めとしては法国軍の高級士官クラスから良い印象を持たれていた。

 「さて、話を続けて上陸した敵を叩いた後だけれども」

 フィリーネが言うと、しかし一つの懸念を忘れずにニコラ少将は伝えようとした。

 「ちょっと口を挟んでもいいかい、フィリーネ少将」

 「ええ、構わないわ。おそらくは非戦闘員に関する事でしょう?」

 「あはは、読まれてたか」

 「私だって多少は気にするもの。非戦闘員は現在避難の途上だったわね?」

 「ああ。特に女子供に関して優先して行っているよ。持てる荷物には制限をかけているけどね」

 「ならよし。避難については島から離れたい者については兵器類を輸送した船舶が復路で本土に戻る時に乗ってもらうわ。ただし、期間によっては希望者全員まで運べるかどうかは保証しかねるけれどもね」

 「避難計画は事前に送られたもので八割は確実にいけると僕は判断している。可能ならば、ギリギリまでやってもらいたい」

 「善処するわ。ああでも、志願して戦う者は別よ。練度はともかく、私はそれらに対しては兵として扱うからその辺よろしく」

 「了解したよ。彼らはこの島を守りたいから決意した人達だ。とっくに覚悟は出来ているはず」

 「そうでしょうね。市民兵については銃を持って戦えとは言わない。輸送など後方を担当してつもりよ。まあ、防衛戦も後半になると分からないけれどね」

 「なるべく避けたいけど、避けられないだろうねえ……」

 フィリーネは端から志願した市民兵を兵力の頭数として捉えていなかったが、しかし輸送面では戦力として考えていた。彼等には消費が激しくなる砲弾や銃弾に食料などを輸送してもらう予定でいる。無論、銃は持たせるがそれらは法国軍で手配するらしい。

 「では話を戻しましょうか。敵が上陸して砲火力で叩いてからの持久戦だけれど、ここからはひたすらじりじりと下がりつつ本国の援軍が現れるまで耐えるのみよ。詳細はこれからさらに詰めていきましょう。その為に先に話した通り豊富に砲弾薬は揃えてある。ただし、気をつけるべきは私達と貴方達法国の兵器類の違いと弾薬の違いね。はっきりと言うけど、規格に違いがあるわ。なので各担当、砲類小銃類から砲弾薬に至るまでごちゃごちゃにならないように。協同で動く際には融通は不可能だもの。共通化していればいいんだけれど、まあ無理な話しね。そこで、私が到着する前に送ったリストから歩兵一個連隊分選抜してくれたかしら?」

 フィリーネが心配していたのは二カ国が戦うにあたって兵器の質に違いがあり、それ故に生じる兵站の問題だった。
 最たる例は協商連合軍と法国軍の使う小銃が違う点にある。整備部品もそうだが使用弾薬の規格が違うから共通化できないのである。これでは万が一どちらかの陣地に逃げて立て直しとなった時どうにも出来ない。なのでフィリーネは時間がもっとあればいっその事、法国師団に丸々協商連合の小銃を貸与して共通化させたかった――訓練だけでなく整備面も含まれるので時間は相当かかる――のだが期間は僅かに一ヶ月。とてもそんな余裕は無い。
 そこで、苦肉の策としてフィリーネは予め関係書類を送って法国から練度の高い一個連隊だけでも共通化させて急ごしらえになるが訓練と整備を訓練――十全とはいかないが、訓練と整備訓練をする者は一切の雑務を免除として集中してもらい、使えるようにする――を施して一個連隊分は緊密な協同をさせられるようにしたのだ。
 当然こんな急ぎなので何らかの不都合が生じるだろうが、協商連合軍の小銃ならば一丁あたりの火力投射量は法国軍のそれを凌駕するので、少なくとも使えるようになれば戦力増強となる。
 理想は綿密な訓練の後だが、時間的制約の中で行えるベターをフィリーネは取ったわけである。

 「あのリストの事かな。師団内で比較的高練度の歩兵部隊を出してという」

 「それよ。本当は選抜でなくて全部にしたかったけれど、とにかく時間が足らないから戦力増強策はこれが限界。その歩兵一個連隊については、私達協商連合の新式小銃を使ってもらうから訓練もさせるし、整備兵には時間を見つけて研修させるし、戦闘となれば弾薬補給もウチと共通化させる。期間は一ヶ月弱。出来るかしら、ではなくて、やれと命じたいのだけれど」

 「選ばれた者達は頼もしい武器が手に入って喜ぶだろうし、選ばれなかった方も一人あたりの使用可能弾数が増えるから安心は出来るだろうね。まあ何らかの意見は出るだろうけど、僕から言っておくさ。それに、法国の小銃だって悪くないよ? 連発性では劣るけれど、信頼性には優れてる。使い慣れているからね」

 無論、法国軍にもメリットはある。ニコラ少将の言うように選ばれた側は選抜された意識から士気も上がるし戦果を上げられる。選ばれなかった方も、一個連隊分の弾薬が丸々浮くのだから一人あたりが使用可能な弾薬量が増えるので悪いことは少ない。士気面についてはニコラ少将達の手腕に任せるしかないが、そこはどうにかしてくれるとフィリーネは思っていた。そうでないと困るとも思っているが。

 「配慮助かるわ、ニコラ少将。選ばれた一個連隊は私達と似た水準で戦えるようにみっちり働いてもらう。訓練の代わりに雑務は一切免除させるから」

 「なるほどね。僕らは各方面調整や準備に多忙極まるけれど、これなら戦えるさ」

 「砲兵についてまでは手が回らなかったけれど、何かとどうしようもない点ばかりだから、頑張ってちょうだい」

 「元々沿岸砲台などが多い所であるし、罪滅ぼしの為なのかようやく法国も生産を始めた貴女達の国よりはやや劣るけれど最新式の野砲も届いたから早速訓練させているさ。砲弾も極力輸送させるって」

 「現場は優秀なのが多いみたいね。流石に本土南の島が奪われかねないとなれば軍でも頭のいいのだけは意識は高いってことかしら」

 「だろうね。ああでも、この決定をした輸送関連に携わっているのは出世した同僚のお陰かもしれないね。さぞ同情されているのかも」

 「同情だろうと何だろうと、届くならそれに越したことはないわ。――よし、ひとまず今日話す分はここまでにしておきましょう。明日以降はさらに詳細を意見交換していき、一ヶ月後に備える。その形でいきましょう」

 「うん、了解したよ。よろしくお願いするね、フィリーネ少将」

 「任せなさい。私が、私の部下達が来たからには負けはありえないわ」

 「はははっ、とても頼もしい人達が来てくれたものだよ」

 この初日の作戦会議で、法国軍は負けない自信がついた。協商連合軍は不利な戦いにも関わらずフィリーネがいるからと勝利――ここでは本国援軍が到着するまで耐えるのが勝利条件である――を確信している。
 一ヶ月には繰り広げられるであろう死闘を前に、二カ国の軍人や兵達は現状尽くせる限りの策を張り巡らせようと事を進めていった。
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