異世界妖魔大戦〜転生者は戦争に備え改革を実行し、戦勝の為に身を投ずる〜

金華高乃

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第12章 ブカレシタ攻防戦決着編

第1話 作戦の最終確認とラットン中将の要件

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 10の月16の日
 午後六時前
 ブカレシタ西部郊外・三カ国軍総司令部


 秋も深まる十の月も半ばになった頃の夜。既に一ヶ月半が経過したブカレシタの戦いはようやく外縁部の全域占領に至り、作戦は次段階へと移ろうとしていた。
 三カ国軍総司令部では僕やリイナにエイジスを含めて各国軍の指揮官クラスの面々が勢揃いし、総司令部内の大会議室で作戦会議が行われていた。

 「――以上のように、作戦次段階を円滑かつ確実に遂行する為の『ブカレシタ要塞攻略戦』第一段階がようやく完了。敵の推定累計損害は約七〇〇〇〇にまで増えましたが、我々三カ国軍の累計損害も約一二〇〇〇まで増加しております。合同参謀本部では想定内の数字とはいえ、本大戦においてリチリア島を除き最大の死傷者かつ長期的戦闘にあると鑑み、また歴史を塗り替えるに確実な砲弾薬消費量を加味すると、本作戦次段階において徹底的に妖魔帝国軍を叩き遅くとも年内までにはブカレシタを攻略。本戦をもって旧東方領全域の奪還としたいと考えております」

 「ご苦労だった。ライゾン協商連合陸軍作戦参謀。さて、諸君。このように各国軍将兵の絶え間ぬ努力によりブカレシタは残す所星型要塞のみとなった。東側はあえて空けてあるように軍を展開しているが、これはわざと空白を作り出しているまでで、包囲戦が開始されれば速やかに埋められる上に敵に逃亡ルートが残っているようには一応は見せている。事前段階である外縁部攻略に一ヶ月半とやや手間取った感があるが、概ね順調であると言えるだろう」

 協商連合の作戦参謀の報告を聞いた後、マーチス侯爵は発言し、全員が頷く。
 僕はそれを目の前にある資料を見つめながら聞いていた。
 外縁部の攻略は作戦参謀の言うように若干苦戦させられつつも、全域を攻略するまでになった。九の月末までは火力投射量をやや控えめにしていたけれど予定よりやや遅れて到着した『L1ロケット』や『ボビンドラム』、それに各種砲弾薬が到着したので火力が増加した僕等側は攻勢を強めていった。
 それからは次々と後方から遠慮せずに使える分だけの武器弾薬が届けられていたので敵軍の激しい抵抗の中で死傷者を出しながらもようやく外縁部攻略と相成ったわけだ。

 「となると、後は一挙に畳み掛けるだけじゃな」

 「ええ。この作戦が成功すれば人類側の二百五十年越しの悲願である、旧東方領全域奪還となるわけです」

 「そういうことだな。マルコ大将、ラットン中将。では、その次段階作戦を我らが誇るアカツキ少将に話してもらおうか。この作戦も、合同参謀本部のアドバイザーとしてアカツキが立案に加わっている。アカツキ」

 「はっ。皆様と兵達が成し遂げた外縁部攻略により、次段階作戦『鉄と魔法の光と業火作戦』がようやく発動出来るまでとなりました。まずは、感謝を」

 僕が起立しそう言うと、会議室内から大きな拍手が巻き起こる。しばらくそれが続くと、マーチス侯爵が手で制止を促したところで止む。発言する前はいつもこうなるのだけど、流石にもう慣れた僕は息を軽く吸うと作戦概要の説明と再確認を始めた。

 「それでは、『鉄と魔法の光と業火作戦』について最終確認をしていきます。皆様の手元にある資料をご覧下さい。段階概略は三ページ目です」

 「最初に見た時も今も完璧な作戦だ」

 「ああ。これだけの鉄の火と魔法の火、妖魔帝国軍はもう耐えられまい」

 「不測の事態が起きたところで無駄な足掻きよな」

 「無論、慢心はせんが。ここで躓くわけにはいかんからな」

 「全くもって同意だ」

 紙をめくる音が聞こえてから、会議室内のあちこちから自信に満ちた声が聞こえる。全てが整った状態で臨む作戦だ。指揮官達の発言に僕も同じように思っていた。

 「では、まず作戦第一段階からです」

『鉄と魔法の光と業火作戦』なんだけれど、この作戦は次のような段階で遂行される。

 1、これまで要塞へ侵入するルートを確保する為の戦いであったが、以下の作戦に最大効力を持たせられる形が作り上げられた為本作戦は遂行される。作戦開始時刻は十七の日、午前十一時。

 2、作戦開始と同時に『L1ロケット』の大量投射を行う。既に二〇〇〇〇発が準備されており、本段階では半数の一〇〇〇〇発を要塞中心部と西側を中心に発射する。

 3、召喚士攻撃飛行隊による一斉爆撃も開始。こちらも要塞中心部を主に目標とし、2と併せて敵司令部機能へ打撃を加える。この際にエイジスによる攻撃飛行隊護衛及び対地魔法攻撃も行われる。

 4、2及び3の直後にカノン砲及び野砲の一斉砲撃を開始。最大分速投射量に近い水準を一時間継続。以降も魔法無線装置による支援砲撃要請があれば逐次行う。

 5、4が行われる中でボビンドラム投入。星型要塞は空堀であるが、空堀を転がり落ちてから駆け上がる際に推進最大に。要塞壁の下部に損傷を与える。

 6、5の段階まで遂行した所で、マーチス大将による独自魔法『神光閃火かみのいかづちをここに』を発動。使用するパターンは収束型。これにて要塞西側の壁を完全に破壊しつつ西側展開の妖魔帝国軍に対して壊滅的打撃を与える。

 7、総突撃開始。なお、北側と南側ではラットン中将による独自魔法『死神大隊召喚リーパー・バタリオン』を発動。敵軍が西側の対応に追われている隙を狙い戦術級魔法を安全圏内で発動し城壁を破壊後、死神大隊を突破口とし西側と東側両面から要塞内部へと侵入する。

 「――これが本作戦の全段階となります。空から降り注ぐ圧倒的な一般火力、マーチス大将閣下による魔法の光、ラットン中将閣下による『死神大隊』の衝撃力、そして全将兵の複合火力ドクトリンを体現した攻撃。これは我々連合王国軍が用いてきた『複合火力ドクトリン』に協商連合軍の火力、法国軍の魔法火力が集結した旧東方領戦集大成の戦いです。私は確信しております。ここでも我々は、勝利すると。二百五十年来の悲願を達成すると。我々を侮ってきた妖魔帝国軍はようやく我々を見下す事をやめようとしています。だが、遅い。遅すぎた。その代償を払ってもらい、旧東方領から連中を駆逐してやりましょう! 以上です。ありがとうございました」

 「見事! 見事なり!」

 「ロイヤル・アルネシアに栄光を!」

 「ロンドリウムに栄光を!」

 「神の御加護は我らにあり! 人類諸国に栄光を!」

『人類諸国に栄光を!』

 説明を終えると、会議室内にいた指揮官達は立ち上がって拍手を、各々から高らかな声が上がる。
 参謀本部がこれまでの戦いの経験によって蓄積された全てを用いて立案した作戦に、最高潮に達した士気、何よりもこの戦いで勝利すれば長年占領されていた旧東方領全域を再び人類側が取り戻すという事実が会議室を湧かせていた。
 僕は立ち上がったままで、リイナの方を向くと微笑んで頷いていた。マーチス侯爵やラットン中将、マルコ大将の方を見ると、彼等も笑んでいる。
 リチリア島の報告には困惑させられる場面もあったけれど、目の前の戦いに集中力が向けられた今、僕達は今回も勝利するという自信に満ち溢れていた。
 作戦会議は非常に良い形で終え、細かい部分の調整などが話し合われてから午後7時過ぎには終了し各自解散となった。
 マーチス侯爵やマルコ大将と雑談を交えながらも、明日からの作戦を頼んだぞと激励を貰った。
 各指揮官クラスの人達からは、

 「貴官がいるのだから何も心配はいらない」

 「アカツキ旅団には今回も世話になるが、頼りにしている」

 「エイジスには命救われた者も多い。此度も敵を震撼させる力を見せつけてくれ」

 「戦神の貴官がこの場にいるのだ。勝利以外はありえない」

 「そうだ。全力で臨んで勝利を掴もう」

 と言葉を交わしていた。
 それらも終わったのは午後七時半前。人もかなりいなくなったし、僕もリイナ達とひとまずは自分の執務室に戻ろうかと思っていた時だった。

 「相変わらずお主は大人気じゃのお。声を掛けづらかったが、ようやく話せたわい」

 「申し訳ありませんでした、ラットン中将閣下。仰って頂ければすぐにご要件をお伺いできたのですが。好意的に話されるととても無碍には出来ませんし、ほとんどが上位階級者ですから」

 「分かっておるから気にせんでよいよ。儂も水を差しとうなかったからの。ところでアカツキ少将や、この後時間はあるかの?」

 「確かこの後は特に何もないはずです。リイナ、僕が忘れてるスケジュールとか入ってる?」

 「いいえ、私がこの手帳に記してある分でも予定はないわ。自由時間よ」

 「そっか。なら良かった。というわけですので、私は大丈夫です。明日が控えているので余り遅くまではお付き合い出来ませんが」

 「ならば良かったわい。儂もお主と同様に明日からが控えておるからの、そう遅くはならんはずじゃ。夕飯は作戦前に全員早めに食うておるし」

 「そうですね。ちなみに要件的には、一対一の方がよろしいですか?」

 「そうじゃの。リイナ大佐とエイジスには悪いが、そうしてもらえるかの?」

 「了解しました。リイナ、先に戻っていてくれるかな?」

 「分かったわ。まだ少し雑務が残っているから片付けておくわね」

 「いつも助かるよ。ありがとう」

 「気にしないで。旦那様はこうやっていつも労いの言葉をくれるのだからそれで十分よ。じゃあ、また後でね。エイジスも一緒に行きましょ」

 「サー、リイナ様」

 「うん。また後で」

 リイナはひらひらと柔和に微笑しながら手を振って、エイジスはぺこりと一礼すると会議室を後にしていった。

 「すまんのお、アカツキ少将。夜が明けて昼前になれば慌ただしくなるから夫婦の時間も大切じゃろうに」

 「いえ、ラットン中将閣下きっての頼みであれば断る理由がありません。リイナは大切な人ですが、その前に私達は軍人ですから」

 「儂もこんな出来た孫が欲しいもんじゃ」

 僕の返答に羨むように言うラットン中将。完全におじいちゃんの表情だ。

 「ラットン中将閣下にも立派な息子と可愛らしいお孫さんがいらっしゃるではありませんか」

 「息子は軍人では無く官僚に、孫も学校へ通っておるが、そうじゃけどのお。――いや、求めるのは余りにも酷か。いかんいかん」

 「国を支える官僚ならば素晴らしいですよ。何せ私のような軍人はいつもお世話になりっぱなしですから」

 「ほほっ、確かにの。財務官僚のあやつには苦労をさせておるわい。と、立ち話はこれくらいにしておこうか。話は儂の執務室でしたいのじゃが、良いかの?」

 「ええ。ラットン中将の執務室には美味しいコーヒーと茶菓子があると聞いておりますので楽しみです」

 「おお、そういえばお主もコーヒー通の紅茶通。茶菓子も好きであったな。良い、とびっくりのを出してやろう」

 「やった! ありがとうございます、ラットン中将閣下」

 僕が笑むと、ラットン中将は孫に向けるような柔らかく暖かい表情になる。
 僕はラットン中将の執務室へと二人で向かった。
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