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第12章 ブカレシタ攻防戦決着編
第10話 主が目を覚ます時、視線の先にあるは見蕩れる程に美しい自動人形。
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・・10・・
遠くから。とても遠くから声が聞こえる。
視界は真っ黒で、何も見えない。だけど、声だけはぼんやりと聞こえた。
何を言っているのかは分からない。けれど、響きから悲痛な叫びであるのだけは分かった。
ここはどこだろうか。
僕は、どうなっているんだろうか。
……………………。
ああ、そうか。僕は青の王にやられたのか。あの巨腕によって、吹き飛ばされたのだろう。
直前に誰かが法撃をした気がする。あれは庇う為だったのかもしれない。
けれど、今僕は生きているか死んでいるか分からない。
叫び声は相変わらず曖昧で誰かが判別出来ない。
もしかしたらリイナかもしれない。
ごめん、ごめんよリイナ。君を救いたいから僕は自分の身を犠牲にした。だけど君にとってだって僕は大切な人だって知っている。
これじゃあ本末転倒だ。
僕はエイジスと共にするようになってから強くなったはずなのに。SSランク召喚武器持ちになったのに。
そうだ。エイジスは。エイジスはどうしているんだろう。
青の王の目前にいた時、彼女の声も聞こえていた。
僕はダメな主だ。エイジスを使いこなせていない。もっと取るべき手があったかもしれないのに。
何の為の召喚武器なんだ。
「…………様! …………な様!」
声がようやくはっきりとしてきた。この声は、間違いなくリイナ。泣いている。
エイジスとの相互情報共有のリンクが外れている。リンクアウトしたという事は、僕がダメージを受けているということ。やっぱり死んだのか?
これは、僕の身体と魂が分離しようとしているから?
戦争はまだ途中なのに、山脈すら越えていないのに戦死?
「…………を…………て、…………す」
…………いいや、違う。
エイジスの声が聞こえた。
その声音は、いつもの彼女が放つ冷静なものでは無い。感じるのは、怒り。
大切な人を傷つけられたという純粋な感情。
彼女は自動人形という呼称にしては心を持つという人間に近しい存在だった。けれど、学習蓄積の浅い内はアンドロイドのような感情に乏しいものだった。
でも、一緒に過ごしてきたから分かる。彼女は最早人間と変わりない感情を手に入れていた。理解しているかどうかまでは分からないけれど、僕にはそう見えていた。
「…………え。…………たまえ。…………を。…………します。――」
彼女は何かを宣言した。
瞬間、真っ暗だった視界が白い光に包まれる。
とてつもない力を、魔力を感じる。
温かい。とても、温かい。これは、エイジスの魔力の波だ。
でもおかしい。エイジスの魔力はこんなにも大きくない。第一解放ですら、こんな力は無かったはず。
一体、何が起きているというんだ。
「……」
「……んな様! 旦那様! 目を、覚まして」
『マイマスター。聞こえているかは分かりませんが、ワタクシは貴方を守る為に、貴方の大切な人を守る為に戦います。この力で、倒してみせます。だからどうか、目を覚ましてください。奥様を心配させては、いけませんよ?』
ああ、聞こえているよ。エイジス。君の、優しく叱る声が。
そうか、聞こえるということは生きているんだ。回復魔法で癒されているのも感じた。
僕の為に、誰かが治療してくれている。
リイナはずっと僕を呼んでくれている。
そして、主に代わってエイジスは戦おうとしている。
全てが分かったその時、五感は急速に蘇る。
痛い。そこらじゅうをぶつけているから全身が痛い。
でも、起きないと。そろそろ、目を覚まさないと。
重い瞼が開く。視界はぼやけている。
そこに写っていたのは、リイナの泣き顔だった。
「…………旦那様!」
「りい、な」
「良かった! あああああ、良かった……! アカツキ様……!」
「おは、よう……?」
「おはようじゃ、ないわよ……! あんな事を、して! 私を助けるからって、旦那様は……!」
リイナはぼろぼろと泣いていた。瞳から沢山の涙を流していた。チャイカ姉妹との二度目の戦いの時に無茶しないと約束したのに、僕があんな事をしたから怒っていた。でも何より、僕が目を覚ましたのに喜んでいて、安心していて、泣いていた。
もし僕が目を覚まさなかったら彼女はずっとずっと罪悪感を抱きながら過ごすことになったのだろう。
だから、僕はこの言葉しか、言えなかった。
「ごめん、リイナ。心配かけて……。でも、リイナが無傷で良かった……。綺麗な君の顔が、身体が傷つくのは、嫌だから……」
「もう……! こうなっても私を第一に心配するなんてアナタって人は……! けれど、目を覚ましてくれて、本当に、良かった……!」
リイナはぎゅう、と強く強く僕を抱きしめる。実感を、確かめるように。
「いたた、いたたたた」
「知らない……! 私にアナタを感じさせてよ……!」
「水を差すようで誠に申し訳ございませんがリイナ大佐。アカツキ少将閣下は負傷者ですので、程々にしてください。簡易診断をさせて頂けませんか……?」
発言通り申し訳なさそうに声を掛けてきたのはやや若さを感じるさせる声の男性だった。リイナは、そうね。ごめんなさい。診断をしてあげて。というと僕を離す。それで声の主が分かった。魔法軍医だった。
「アカツキ少将閣下、魔法軍医のホフマンです。意識が回復して良かったです。自分の声が分かりますか? はっきり聞こえますか?」
「うん。ごめんよ、ホフマン少佐、かな? はっきり聞こえてる」
「はい。階級は少佐です。――診断を続けます。少将閣下、指は何本に見えますか?」
「三本」
「正解です。複数箇所の負傷がありますが治療中ですのでご安心を。ただ、頭痛はありますか?」
「まだ、頭がちょっと痛いかな。けれど、気持ち悪さはないよ」
「驚きました。簡易診断だけではありますが、目撃証言とエイジスさんの診断報告から脳にダメージがあると思っていましたが、ほとんど無いようですね。やはり少将閣下は、神に愛されている英雄です」
ホフマン魔法軍医は目を見開いて言う。慣れた手つきで簡易診断を終えると、回復魔法を施している他の衛生兵もびっくりしていた。
回復魔法を得意とする魔法能力者は治療している者の容態をよく理解して行っている。事前にどんな状態かも聞いているはずだから、僕の解答が予想外だったんだろう。特に心配していたはずの、頭部へのダメージ。包帯がされているから出血はあるけれど脳への衝撃は自分の身体だからよく分かる。軽い頭痛と、視界がまだ水平ではないけれどそれも急速に回復しつつある。
それを彼等は、神に愛されていると言った。現実的な判断を下す医療従事者が精神論で物を語るのだから、よっぽどだ。
「神に……? 確かにオーガ・キングの攻撃を受けて吹っ飛ばされたにしてはやけに軽いケガで済んでいるけれど」
「旦那様。私も驚愕したけれど、彼等の言う通りアナタは神様に愛されているわよ。だって今、アナタの為に宣言通り神の代行者が舞い降りたのだから」
「ええ。あの御姿はまさに神の代行者に相応しいです」
リイナにホフマン魔法軍医、皆が同じ方角に視線を向ける。僕は後ろからリイナに抱えられ、起こされた事でようやくどうなっているかを理解した。
ここは戦場だから激しい銃声と砲声、法撃音が響いているのはとっくに知っていた。
「…………キレイ、だ」
けれど、僕の目に映っていたのは思わず声に漏らしてしまう程に美しい姿だった。
青の王と激しい戦闘を繰り広げているのは純白の衣を身に纏い、背中から六枚の白翼をはためかせ、白銀の剣を振るいつつ凄まじい法撃で敵を圧倒する見蕩れる程に綺麗な女性だった。
彼女はアレン大尉達を下げさせて一人で戦っていた。
そして、僕はあの顔を知っている。間違えるはずもない。
だってあそこにいるのは。
「エイジス……?」
「そう、エイジスよ。新たな力を発現して、第二解放『神の代行者装束』になった彼女」
「第二解放? 『神の代行者装束』?」
「どうしてそうなったのかは私も分からない。でも確かなのは、エイジスはアナタが傷つけられて許せなかった。怒っていた。人間と何ら変わらない感情を抱いて、仇敵を討とうとしていた。だから、新しい力を得たのかもしれないわね。自動人形として、そして人としても進化したから」
「エイジスが、そんな風に……」
既に手負いだった青の王は、純白のエイジスに圧倒されていた。
彼女の声はここからでもよく聞こえた。
「ウドの大木ですね。遅い、遅すぎます」
どれだけ大斧を振り回した所でかすりもしない。
体術を駆使して一撃を与えようとも、エイジスは全てを躱し続けていた。
まるで数秒先を読む神の瞳を持っているかのような、全く無駄のない流麗な動作。
「ワタクシは主の剣。魔を切裂く者」
青の王の攻撃の合間を縫って、エイジスは反撃していた。僕達があれだけ苦労してようやく傷をつけていた硬い皮膚を白銀の剣はまるで布を裂くかのように斬り、軽微なダメージしか与えられなかったはずなのに彼女の法撃は確実に激しい痛覚を与えていた。
「ワタクシは主の杖。魔を焼き払い、聖風が切り刻み、大地をも支配する」
容赦が無い。炎属性で焼き、風属性で切り裂き、土属性で作り上げられた拳は青の王の腹部にめり込む。
「邪神ノ使イメガ! 我ノ前二姿ヲ現スナド……!」
「ワタクシは貴様が宣う邪神の使いではありません。神の代行者の装束を身に纏っていますが、ワタクシは主の盾で、主の剣で、主の杖であるだけです」
「主、アノニンゲンカ! 小賢シイ! ニンゲン共二、負ケルナド! 王ガ負ケルナドアッテハナラヌ!」
「黙りなさい。主に刃を向けた時点で万死に値します。『多重聖光弾』」
エイジスが冷徹に言い放ち、白銀の剣を横に薙いで出現したのは多数の白く輝く魔法陣。魔法陣の数だけ放たれたのは光の弾丸。
「グオオオオオオオオオオ!!!!」
光の弾丸は青の王の全身を容易く貫き、致命傷を与えた。それでもなお、青の王は立っている。
王であるが故の意地か。それとも気力だけで持ちこたえているのか。
でも、新たな力が芽生えたエイジスを前には、万に一つも勝機は無かった。
「そろそろくたばってください。ワタクシは主のもとへ戻らねばならないのです。そう、目を覚ましてくださった主のもとへ」
ちらりと、エイジスは微笑んで僕を見る。彼女は僕の意識が回復したのを知っていたんだ。情報共有をせずとも、彼女だから分かっていたんだろう。
「ニンゲンゴトキガッッ!! ニンゲンニ使ワレル邪神ノ使イゴトキガッッ!!」
「耳障りです。とても耳障り。だから、終わりにしましょう。死になさい、主に仇なす輩よ。極刑を下しましょう」
「ナァァァ!?!?」
エイジスが言い終えた時には、彼女はもう青の王の背後にいた。
「――『断魔一閃』」
エイジスが唱えると、白銀の剣は魔を滅する光に包まれる。
そして、一刀両断。青の王は断末魔を放つ事も許されず命を絶たれた。
圧勝。その一言に尽きる光景。
「天罰完了」
エイジスは青の王の死体を前に、白銀の剣に付着した血液を血振りし着剣すると、高らかに宣言した。
遠くから。とても遠くから声が聞こえる。
視界は真っ黒で、何も見えない。だけど、声だけはぼんやりと聞こえた。
何を言っているのかは分からない。けれど、響きから悲痛な叫びであるのだけは分かった。
ここはどこだろうか。
僕は、どうなっているんだろうか。
……………………。
ああ、そうか。僕は青の王にやられたのか。あの巨腕によって、吹き飛ばされたのだろう。
直前に誰かが法撃をした気がする。あれは庇う為だったのかもしれない。
けれど、今僕は生きているか死んでいるか分からない。
叫び声は相変わらず曖昧で誰かが判別出来ない。
もしかしたらリイナかもしれない。
ごめん、ごめんよリイナ。君を救いたいから僕は自分の身を犠牲にした。だけど君にとってだって僕は大切な人だって知っている。
これじゃあ本末転倒だ。
僕はエイジスと共にするようになってから強くなったはずなのに。SSランク召喚武器持ちになったのに。
そうだ。エイジスは。エイジスはどうしているんだろう。
青の王の目前にいた時、彼女の声も聞こえていた。
僕はダメな主だ。エイジスを使いこなせていない。もっと取るべき手があったかもしれないのに。
何の為の召喚武器なんだ。
「…………様! …………な様!」
声がようやくはっきりとしてきた。この声は、間違いなくリイナ。泣いている。
エイジスとの相互情報共有のリンクが外れている。リンクアウトしたという事は、僕がダメージを受けているということ。やっぱり死んだのか?
これは、僕の身体と魂が分離しようとしているから?
戦争はまだ途中なのに、山脈すら越えていないのに戦死?
「…………を…………て、…………す」
…………いいや、違う。
エイジスの声が聞こえた。
その声音は、いつもの彼女が放つ冷静なものでは無い。感じるのは、怒り。
大切な人を傷つけられたという純粋な感情。
彼女は自動人形という呼称にしては心を持つという人間に近しい存在だった。けれど、学習蓄積の浅い内はアンドロイドのような感情に乏しいものだった。
でも、一緒に過ごしてきたから分かる。彼女は最早人間と変わりない感情を手に入れていた。理解しているかどうかまでは分からないけれど、僕にはそう見えていた。
「…………え。…………たまえ。…………を。…………します。――」
彼女は何かを宣言した。
瞬間、真っ暗だった視界が白い光に包まれる。
とてつもない力を、魔力を感じる。
温かい。とても、温かい。これは、エイジスの魔力の波だ。
でもおかしい。エイジスの魔力はこんなにも大きくない。第一解放ですら、こんな力は無かったはず。
一体、何が起きているというんだ。
「……」
「……んな様! 旦那様! 目を、覚まして」
『マイマスター。聞こえているかは分かりませんが、ワタクシは貴方を守る為に、貴方の大切な人を守る為に戦います。この力で、倒してみせます。だからどうか、目を覚ましてください。奥様を心配させては、いけませんよ?』
ああ、聞こえているよ。エイジス。君の、優しく叱る声が。
そうか、聞こえるということは生きているんだ。回復魔法で癒されているのも感じた。
僕の為に、誰かが治療してくれている。
リイナはずっと僕を呼んでくれている。
そして、主に代わってエイジスは戦おうとしている。
全てが分かったその時、五感は急速に蘇る。
痛い。そこらじゅうをぶつけているから全身が痛い。
でも、起きないと。そろそろ、目を覚まさないと。
重い瞼が開く。視界はぼやけている。
そこに写っていたのは、リイナの泣き顔だった。
「…………旦那様!」
「りい、な」
「良かった! あああああ、良かった……! アカツキ様……!」
「おは、よう……?」
「おはようじゃ、ないわよ……! あんな事を、して! 私を助けるからって、旦那様は……!」
リイナはぼろぼろと泣いていた。瞳から沢山の涙を流していた。チャイカ姉妹との二度目の戦いの時に無茶しないと約束したのに、僕があんな事をしたから怒っていた。でも何より、僕が目を覚ましたのに喜んでいて、安心していて、泣いていた。
もし僕が目を覚まさなかったら彼女はずっとずっと罪悪感を抱きながら過ごすことになったのだろう。
だから、僕はこの言葉しか、言えなかった。
「ごめん、リイナ。心配かけて……。でも、リイナが無傷で良かった……。綺麗な君の顔が、身体が傷つくのは、嫌だから……」
「もう……! こうなっても私を第一に心配するなんてアナタって人は……! けれど、目を覚ましてくれて、本当に、良かった……!」
リイナはぎゅう、と強く強く僕を抱きしめる。実感を、確かめるように。
「いたた、いたたたた」
「知らない……! 私にアナタを感じさせてよ……!」
「水を差すようで誠に申し訳ございませんがリイナ大佐。アカツキ少将閣下は負傷者ですので、程々にしてください。簡易診断をさせて頂けませんか……?」
発言通り申し訳なさそうに声を掛けてきたのはやや若さを感じるさせる声の男性だった。リイナは、そうね。ごめんなさい。診断をしてあげて。というと僕を離す。それで声の主が分かった。魔法軍医だった。
「アカツキ少将閣下、魔法軍医のホフマンです。意識が回復して良かったです。自分の声が分かりますか? はっきり聞こえますか?」
「うん。ごめんよ、ホフマン少佐、かな? はっきり聞こえてる」
「はい。階級は少佐です。――診断を続けます。少将閣下、指は何本に見えますか?」
「三本」
「正解です。複数箇所の負傷がありますが治療中ですのでご安心を。ただ、頭痛はありますか?」
「まだ、頭がちょっと痛いかな。けれど、気持ち悪さはないよ」
「驚きました。簡易診断だけではありますが、目撃証言とエイジスさんの診断報告から脳にダメージがあると思っていましたが、ほとんど無いようですね。やはり少将閣下は、神に愛されている英雄です」
ホフマン魔法軍医は目を見開いて言う。慣れた手つきで簡易診断を終えると、回復魔法を施している他の衛生兵もびっくりしていた。
回復魔法を得意とする魔法能力者は治療している者の容態をよく理解して行っている。事前にどんな状態かも聞いているはずだから、僕の解答が予想外だったんだろう。特に心配していたはずの、頭部へのダメージ。包帯がされているから出血はあるけれど脳への衝撃は自分の身体だからよく分かる。軽い頭痛と、視界がまだ水平ではないけれどそれも急速に回復しつつある。
それを彼等は、神に愛されていると言った。現実的な判断を下す医療従事者が精神論で物を語るのだから、よっぽどだ。
「神に……? 確かにオーガ・キングの攻撃を受けて吹っ飛ばされたにしてはやけに軽いケガで済んでいるけれど」
「旦那様。私も驚愕したけれど、彼等の言う通りアナタは神様に愛されているわよ。だって今、アナタの為に宣言通り神の代行者が舞い降りたのだから」
「ええ。あの御姿はまさに神の代行者に相応しいです」
リイナにホフマン魔法軍医、皆が同じ方角に視線を向ける。僕は後ろからリイナに抱えられ、起こされた事でようやくどうなっているかを理解した。
ここは戦場だから激しい銃声と砲声、法撃音が響いているのはとっくに知っていた。
「…………キレイ、だ」
けれど、僕の目に映っていたのは思わず声に漏らしてしまう程に美しい姿だった。
青の王と激しい戦闘を繰り広げているのは純白の衣を身に纏い、背中から六枚の白翼をはためかせ、白銀の剣を振るいつつ凄まじい法撃で敵を圧倒する見蕩れる程に綺麗な女性だった。
彼女はアレン大尉達を下げさせて一人で戦っていた。
そして、僕はあの顔を知っている。間違えるはずもない。
だってあそこにいるのは。
「エイジス……?」
「そう、エイジスよ。新たな力を発現して、第二解放『神の代行者装束』になった彼女」
「第二解放? 『神の代行者装束』?」
「どうしてそうなったのかは私も分からない。でも確かなのは、エイジスはアナタが傷つけられて許せなかった。怒っていた。人間と何ら変わらない感情を抱いて、仇敵を討とうとしていた。だから、新しい力を得たのかもしれないわね。自動人形として、そして人としても進化したから」
「エイジスが、そんな風に……」
既に手負いだった青の王は、純白のエイジスに圧倒されていた。
彼女の声はここからでもよく聞こえた。
「ウドの大木ですね。遅い、遅すぎます」
どれだけ大斧を振り回した所でかすりもしない。
体術を駆使して一撃を与えようとも、エイジスは全てを躱し続けていた。
まるで数秒先を読む神の瞳を持っているかのような、全く無駄のない流麗な動作。
「ワタクシは主の剣。魔を切裂く者」
青の王の攻撃の合間を縫って、エイジスは反撃していた。僕達があれだけ苦労してようやく傷をつけていた硬い皮膚を白銀の剣はまるで布を裂くかのように斬り、軽微なダメージしか与えられなかったはずなのに彼女の法撃は確実に激しい痛覚を与えていた。
「ワタクシは主の杖。魔を焼き払い、聖風が切り刻み、大地をも支配する」
容赦が無い。炎属性で焼き、風属性で切り裂き、土属性で作り上げられた拳は青の王の腹部にめり込む。
「邪神ノ使イメガ! 我ノ前二姿ヲ現スナド……!」
「ワタクシは貴様が宣う邪神の使いではありません。神の代行者の装束を身に纏っていますが、ワタクシは主の盾で、主の剣で、主の杖であるだけです」
「主、アノニンゲンカ! 小賢シイ! ニンゲン共二、負ケルナド! 王ガ負ケルナドアッテハナラヌ!」
「黙りなさい。主に刃を向けた時点で万死に値します。『多重聖光弾』」
エイジスが冷徹に言い放ち、白銀の剣を横に薙いで出現したのは多数の白く輝く魔法陣。魔法陣の数だけ放たれたのは光の弾丸。
「グオオオオオオオオオオ!!!!」
光の弾丸は青の王の全身を容易く貫き、致命傷を与えた。それでもなお、青の王は立っている。
王であるが故の意地か。それとも気力だけで持ちこたえているのか。
でも、新たな力が芽生えたエイジスを前には、万に一つも勝機は無かった。
「そろそろくたばってください。ワタクシは主のもとへ戻らねばならないのです。そう、目を覚ましてくださった主のもとへ」
ちらりと、エイジスは微笑んで僕を見る。彼女は僕の意識が回復したのを知っていたんだ。情報共有をせずとも、彼女だから分かっていたんだろう。
「ニンゲンゴトキガッッ!! ニンゲンニ使ワレル邪神ノ使イゴトキガッッ!!」
「耳障りです。とても耳障り。だから、終わりにしましょう。死になさい、主に仇なす輩よ。極刑を下しましょう」
「ナァァァ!?!?」
エイジスが言い終えた時には、彼女はもう青の王の背後にいた。
「――『断魔一閃』」
エイジスが唱えると、白銀の剣は魔を滅する光に包まれる。
そして、一刀両断。青の王は断末魔を放つ事も許されず命を絶たれた。
圧勝。その一言に尽きる光景。
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