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第20章 絶望の帝国冬季大攻勢編
第4話 復讐の堕天戦乙女はドエニプラに姿を現す
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・・4・・
12の月8の日
午前8時50分
ドエニプラより東北東30キーラ地点
妖魔帝国軍前線司令本部
妖魔帝国軍が『鉄槌と復讐と蹂躙と』作戦を開始して一週間が経過した。
帝国軍が投入した圧倒的戦力を前にアルネセイラの惨劇もあってか統合軍は成す術もなく後退を余儀なくされる。その中には三個軍を引き連れて絶望の最中にいたアカツキも含まれていた。
統合軍がこれまでの攻勢が嘘かのように戦線を後退させているのに対して、帝国軍は水を得た魚のように侵攻に侵攻を重ねていた。
南部方面はホルソフ奪還が目の前に、中部方面は南北遮断作戦を、そして北部方面はドエニプラに着々と近付いていた。
さて、これら作戦のほぼ全てを考案しシェーコフ大将の助けもあって帝国軍を手足のように動かしている妖魔帝国軍服のリシュカはというと、第八軍を率いてドエニプラより東北東二十五キーラ地点の前線にまで出向いていた。
気分は上々。まるで遊園地を楽しんでいるかのような雰囲気で暖かい紅茶を飲みながらクッキーに舌鼓をし、煙草を吸っていた。
「南部方面侵攻軍はホルソフ奪還は間もなくとのこと。あと三日もあればやれるそうです。人類諸国統合軍は既に敗走している部隊もあるようで」
「あっちは法国軍中心だっけか。狂信者共とはいえ、多勢に無勢じゃ無理でしょ。あったりまえだけど」
「中部方面侵攻軍は二手に分かれて左方は南北遮断作戦を遂行中。右方展開はドエニプラで我々北部と合流予定です」
「よしよし。例の敗走の軍は無理そうだけど、包囲環を形成して引き潰せ」
「はっ」
「我々北部方面侵攻軍はドエニプラまで五キルラ地点まで迫りました。一個軍など恐るるに足りません」
「むしろこれだけいて一個軍に押されるようじゃ恥でしょ。でもま、あのマーチスの古参部下ブリック相手だから油断はしないように。連中、降伏がやたら少ないから全滅覚悟だよ」
「御意。慢心しないよう徹底させます」
「よろしく」
リシュカは次々と入ってくる報告に対して的確な指示を飛ばしていっていた。
最初はまるで子供のような外見の指揮官に戸惑ったものだが、今や誰もが見慣れた光景で、リシュカ自身が皇帝の右腕に相応しい手腕を見せているからか尊敬の眼差しも持たれるようになっていた。
「いやー、思ったより作戦は上手くいってるねえ。たった一週間で北部方面も三十キルラ前進。南部に至っちゃ六十キルラでしょ」
「本土だけならともかく南方大陸でも侵攻、さらには敵の中央にも大打撃を与えましたからね。リシュカ閣下の慧眼には恐れ入ります」
「アルネセイラのは毒系が不発したのは不満が残るけれど十分だね。作戦は概ね成功。順調過ぎるくらいだよ」
「これまでの鬱憤を晴らすかの如くでありますね」
「そりゃそーでしょ、オットー少将。今までずっと敗北しか知らなかった兵達にとって用意周到のこの作戦での勝利は甘美な味だもん。お陰で士気は最高潮よ」
「リシュカ閣下の作戦は完璧でございますから」
「何言ってんのよオットー少将。あんたも協力してくれたじゃない。それに、シェーコフ大将の存在も大きいよ」
「恐れ入ります、閣下」
深く礼をするオットーに、リシュカは機嫌良く頷く。
ただ唯一、彼女にとって残念な点があった。
「しっかし、あんのクソ英雄はやっぱ逃げたかー」
「連合王国のアカツキでございますか」
「うん。ドエニプラの一個軍を見捨てて三個軍を引き連れて逃げやがった。まあ、アレは不本意な形で後退したんだろうけど」
「閣下曰く、マーチスの命令でしたか」
「たぶんね。あのクソ英雄の事だから、命令じゃない限りドエニプラは離れないはず。三個軍での後退なら、確定事項でしょ。大方、英雄の喪失が怖くてマーチスが三個軍の後退を名目にドエニプラから退避させた。ってとこかな。私がマーチスなら同じ事をするよ。象徴的人物の損失ってゆうのはね、ある意味では一個軍の損失よりも恐ろしいからね」
「確かに、我々で例えるのならば閣下を失うようなものですからね」
「私にそこまでの価値があるとは、いや、うんごめんってそんな顔しないでよ」
「閣下は陛下の特別相談役だけではありません。我々にとっての軍神でありますから」
「へいへい。そりゃどーも」
リシュカはそこそこ長い間知識を授け続けた部下に対してやり過ぎたかなあと思いながら返答する。オットーがリシュカを見つめるその瞳は最早信者のそれと変わらなかったからだ。
とはいえ、悪い気分はしない。同じような目で見てくる彼女が直々に育てた師団や特殊部隊にしても、自分の思い通りに動かせる者が多ければ多いほど都合がいいからだ。
「まー、あのクソッタレはメインディッシュで取っておけばいーか。今はね」
「その前に目の前で前菜でございますね」
「そそ。目障りな一個軍を滅ぼさないと。ってわけで、前線に行くよオットー少将」
「御意に」
リシュカは煙草を吸い終えると、部屋に掛けてあった光龍刀を腰に据えて外に出る。
「リシュカ大将相当官閣下に、敬礼!」
「ご苦労。楽にしてよし」
「はっ!」
外で控えていたのは第八軍を構成する一つ、妖魔帝国軍きっての精鋭師団第八近衛師団の師団長いか幕僚達である。
「今から私が第八近衛師団を率いてドエニプラで狩りを始める。ついてきなさい」
『御意に!』
「モルトフ師団長、私が特別に命じるもの以外は好きにやってよし。虐殺しなさい」
「御意。慈悲などかける価値もない相手です。閣下のお気に召すままに」
「よろしく。パラセーラ大佐」
「はい、閣下」
リシュカがパラセーラと呼んで答えたのは若い女性佐官だった。銀髪に長身の寡黙な美人。本名をパラセーラ・グドリャナ。彼女が隣に並ぶとリシュカと対局的な女性である。
彼女は没落貴族の貧乏士官だったが、光る才能を感じたリシュカが休戦期間中に拾って面倒を見ていたのである。
厳しい訓練だったものの、それらを乗り越えたパラセーラはリシュカが設立した特務大隊『断頭大隊』隊長に選ばれ今に至る。
パラセーラもまた、リシュカの信者だった。
「貴女は私の背中を守りなさい。あーでも戦闘となったら好きなだけ敵の首は跳ねていいから」
「御意に、閣下」
リシュカの命令に仄暗い笑みを浮かべるパラセーラ。
リシュカは満足気に笑むと、
「さあ、出撃しよっか」
『御意!!』
号令を掛けて、司令部から進軍を始めた。
第八近衛師団は高位能力者による機動火力と、ソズダーニア銃砲兵や妖魔帝国ではまだ貴重な機械化牽引野戦砲など機動的かつ重火力を中心とした師団である。
その為、他の師団に比べると師団展開能力が優れている上に火力も申し分ない。この世界において先進的かつ統合軍にとっては脅威的な師団というわけだ。
リシュカはこれらを率いてすぐさま前線へ向かう。
元々第八近衛師団が前線司令部より西に予め展開していることもあり、その日の午後二時過ぎには最前線地域から三キーラもない地点に到達することが出来ていた。
「おー、やってるやってるー。いいねえ、素晴らしいねぇ。統合軍の馬鹿共の悲鳴がここからでも聞こえてきそうだよ」
「第八軍も展開しておりますし、間もなく北部軍集団も到着しますから兵站を気にせず次々と重火力を投入していますからね。さながら畑を耕すかの如くであります」
「うんうん、これでこそ妖魔帝国軍だねモルトフ師団長。数は正義だよ」
「仰る通りであります、リシュカ閣下」
リシュカが到着した地点からも、絶えず妖魔帝国軍の砲撃音が聞こえる。上空には洗脳化光龍飛行隊。『ロイヤル・フライヤーズ』と比較すれば精度には欠けるものの、この際それは二の次だった。
妖魔帝国軍が作戦を発動するまでは信じられない程の火力がドエニプラに注がれている。ドエニプラ残留の統合軍が一発砲を放てば、妖魔帝国軍が十発放つという状態だった。
「オットー少将、ここから統合軍の司令部推定地は西に四キルラ程度だよね」
「はっ。はい、恐らくは」
「となると、ブリックの奴もそのあたりかな? 昨日の夜から探らせてる位置は割れた?」
「上空偵察と強行偵察によると、大体この辺りだという報告は入っております。今いる位置からですと、三キルラ半から四キルラ地点でしょうか」
「前線寄りかー。ここ数日の攻勢であっという間に押されて、遂に頭が直々に戦闘してるんだからそろそろだね」
「あと一日半もあれば中心市街地を制圧出来るかと。ですが、そのおつもりではないようで」
「当たり前でしょ。まずはコイツの首をはねるっての」
リシュカの堂々たる発言に、おお! と声が上がる。
「てわけで、モルトフ師団長。手筈通り逃げ道を防ぐよう攻勢を」
「御意」
「オットー少将はモルトフ師団長の補助に。連絡はいつでも私に繋がるようにしておいて」
「御意に、閣下」
「パラセーラ大佐。大隊を連れて一緒に行くよ」
「はい、閣下」
「よーし。なら出発ー」
「行ってらっしゃいませ、閣下」
「ほーい」
リシュカはピクニックへ行くような様子で返答をし、最前線へパラセーラ達大隊と共に向かう。
リシュカは前線に到着すると、戦う将兵へ声をかける。
彼等はリシュカの姿に気が付くと、彼女を知らない者はどうして子供がと戸惑うが、知る者が伝えると大歓声が湧き上がった。
「黒い津波の諸君等よ! 復讐の時は今まさに来たれり! 飲まされ続けた苦汁を今こそ人類共に味合わせてやれ! 私は諸君等といつ何時も共にあり! 鏖殺を始めなさいっ!! 皇帝陛下、万歳っっ!!」
『皇帝陛下、万歳!!』
統合軍と相対する部隊は銃砲で答え、これより突撃する者はリシュカが雪空の下で掲げ振り下ろした光龍刀を合図に突撃を開始する。
リシュカやパラセーラ達も挨拶代わりの統制射撃と法撃で統合軍の兵士達を蹴散らしながら彼等の戦線を侵食していく。
それから一時間も経たないうちだった。
リシュカは目標の人物を見つけた。ブリック大将だ。
彼女は口角を曲げて嗤い、口を開く。
「ミィツケタ」
と。
12の月8の日
午前8時50分
ドエニプラより東北東30キーラ地点
妖魔帝国軍前線司令本部
妖魔帝国軍が『鉄槌と復讐と蹂躙と』作戦を開始して一週間が経過した。
帝国軍が投入した圧倒的戦力を前にアルネセイラの惨劇もあってか統合軍は成す術もなく後退を余儀なくされる。その中には三個軍を引き連れて絶望の最中にいたアカツキも含まれていた。
統合軍がこれまでの攻勢が嘘かのように戦線を後退させているのに対して、帝国軍は水を得た魚のように侵攻に侵攻を重ねていた。
南部方面はホルソフ奪還が目の前に、中部方面は南北遮断作戦を、そして北部方面はドエニプラに着々と近付いていた。
さて、これら作戦のほぼ全てを考案しシェーコフ大将の助けもあって帝国軍を手足のように動かしている妖魔帝国軍服のリシュカはというと、第八軍を率いてドエニプラより東北東二十五キーラ地点の前線にまで出向いていた。
気分は上々。まるで遊園地を楽しんでいるかのような雰囲気で暖かい紅茶を飲みながらクッキーに舌鼓をし、煙草を吸っていた。
「南部方面侵攻軍はホルソフ奪還は間もなくとのこと。あと三日もあればやれるそうです。人類諸国統合軍は既に敗走している部隊もあるようで」
「あっちは法国軍中心だっけか。狂信者共とはいえ、多勢に無勢じゃ無理でしょ。あったりまえだけど」
「中部方面侵攻軍は二手に分かれて左方は南北遮断作戦を遂行中。右方展開はドエニプラで我々北部と合流予定です」
「よしよし。例の敗走の軍は無理そうだけど、包囲環を形成して引き潰せ」
「はっ」
「我々北部方面侵攻軍はドエニプラまで五キルラ地点まで迫りました。一個軍など恐るるに足りません」
「むしろこれだけいて一個軍に押されるようじゃ恥でしょ。でもま、あのマーチスの古参部下ブリック相手だから油断はしないように。連中、降伏がやたら少ないから全滅覚悟だよ」
「御意。慢心しないよう徹底させます」
「よろしく」
リシュカは次々と入ってくる報告に対して的確な指示を飛ばしていっていた。
最初はまるで子供のような外見の指揮官に戸惑ったものだが、今や誰もが見慣れた光景で、リシュカ自身が皇帝の右腕に相応しい手腕を見せているからか尊敬の眼差しも持たれるようになっていた。
「いやー、思ったより作戦は上手くいってるねえ。たった一週間で北部方面も三十キルラ前進。南部に至っちゃ六十キルラでしょ」
「本土だけならともかく南方大陸でも侵攻、さらには敵の中央にも大打撃を与えましたからね。リシュカ閣下の慧眼には恐れ入ります」
「アルネセイラのは毒系が不発したのは不満が残るけれど十分だね。作戦は概ね成功。順調過ぎるくらいだよ」
「これまでの鬱憤を晴らすかの如くでありますね」
「そりゃそーでしょ、オットー少将。今までずっと敗北しか知らなかった兵達にとって用意周到のこの作戦での勝利は甘美な味だもん。お陰で士気は最高潮よ」
「リシュカ閣下の作戦は完璧でございますから」
「何言ってんのよオットー少将。あんたも協力してくれたじゃない。それに、シェーコフ大将の存在も大きいよ」
「恐れ入ります、閣下」
深く礼をするオットーに、リシュカは機嫌良く頷く。
ただ唯一、彼女にとって残念な点があった。
「しっかし、あんのクソ英雄はやっぱ逃げたかー」
「連合王国のアカツキでございますか」
「うん。ドエニプラの一個軍を見捨てて三個軍を引き連れて逃げやがった。まあ、アレは不本意な形で後退したんだろうけど」
「閣下曰く、マーチスの命令でしたか」
「たぶんね。あのクソ英雄の事だから、命令じゃない限りドエニプラは離れないはず。三個軍での後退なら、確定事項でしょ。大方、英雄の喪失が怖くてマーチスが三個軍の後退を名目にドエニプラから退避させた。ってとこかな。私がマーチスなら同じ事をするよ。象徴的人物の損失ってゆうのはね、ある意味では一個軍の損失よりも恐ろしいからね」
「確かに、我々で例えるのならば閣下を失うようなものですからね」
「私にそこまでの価値があるとは、いや、うんごめんってそんな顔しないでよ」
「閣下は陛下の特別相談役だけではありません。我々にとっての軍神でありますから」
「へいへい。そりゃどーも」
リシュカはそこそこ長い間知識を授け続けた部下に対してやり過ぎたかなあと思いながら返答する。オットーがリシュカを見つめるその瞳は最早信者のそれと変わらなかったからだ。
とはいえ、悪い気分はしない。同じような目で見てくる彼女が直々に育てた師団や特殊部隊にしても、自分の思い通りに動かせる者が多ければ多いほど都合がいいからだ。
「まー、あのクソッタレはメインディッシュで取っておけばいーか。今はね」
「その前に目の前で前菜でございますね」
「そそ。目障りな一個軍を滅ぼさないと。ってわけで、前線に行くよオットー少将」
「御意に」
リシュカは煙草を吸い終えると、部屋に掛けてあった光龍刀を腰に据えて外に出る。
「リシュカ大将相当官閣下に、敬礼!」
「ご苦労。楽にしてよし」
「はっ!」
外で控えていたのは第八軍を構成する一つ、妖魔帝国軍きっての精鋭師団第八近衛師団の師団長いか幕僚達である。
「今から私が第八近衛師団を率いてドエニプラで狩りを始める。ついてきなさい」
『御意に!』
「モルトフ師団長、私が特別に命じるもの以外は好きにやってよし。虐殺しなさい」
「御意。慈悲などかける価値もない相手です。閣下のお気に召すままに」
「よろしく。パラセーラ大佐」
「はい、閣下」
リシュカがパラセーラと呼んで答えたのは若い女性佐官だった。銀髪に長身の寡黙な美人。本名をパラセーラ・グドリャナ。彼女が隣に並ぶとリシュカと対局的な女性である。
彼女は没落貴族の貧乏士官だったが、光る才能を感じたリシュカが休戦期間中に拾って面倒を見ていたのである。
厳しい訓練だったものの、それらを乗り越えたパラセーラはリシュカが設立した特務大隊『断頭大隊』隊長に選ばれ今に至る。
パラセーラもまた、リシュカの信者だった。
「貴女は私の背中を守りなさい。あーでも戦闘となったら好きなだけ敵の首は跳ねていいから」
「御意に、閣下」
リシュカの命令に仄暗い笑みを浮かべるパラセーラ。
リシュカは満足気に笑むと、
「さあ、出撃しよっか」
『御意!!』
号令を掛けて、司令部から進軍を始めた。
第八近衛師団は高位能力者による機動火力と、ソズダーニア銃砲兵や妖魔帝国ではまだ貴重な機械化牽引野戦砲など機動的かつ重火力を中心とした師団である。
その為、他の師団に比べると師団展開能力が優れている上に火力も申し分ない。この世界において先進的かつ統合軍にとっては脅威的な師団というわけだ。
リシュカはこれらを率いてすぐさま前線へ向かう。
元々第八近衛師団が前線司令部より西に予め展開していることもあり、その日の午後二時過ぎには最前線地域から三キーラもない地点に到達することが出来ていた。
「おー、やってるやってるー。いいねえ、素晴らしいねぇ。統合軍の馬鹿共の悲鳴がここからでも聞こえてきそうだよ」
「第八軍も展開しておりますし、間もなく北部軍集団も到着しますから兵站を気にせず次々と重火力を投入していますからね。さながら畑を耕すかの如くであります」
「うんうん、これでこそ妖魔帝国軍だねモルトフ師団長。数は正義だよ」
「仰る通りであります、リシュカ閣下」
リシュカが到着した地点からも、絶えず妖魔帝国軍の砲撃音が聞こえる。上空には洗脳化光龍飛行隊。『ロイヤル・フライヤーズ』と比較すれば精度には欠けるものの、この際それは二の次だった。
妖魔帝国軍が作戦を発動するまでは信じられない程の火力がドエニプラに注がれている。ドエニプラ残留の統合軍が一発砲を放てば、妖魔帝国軍が十発放つという状態だった。
「オットー少将、ここから統合軍の司令部推定地は西に四キルラ程度だよね」
「はっ。はい、恐らくは」
「となると、ブリックの奴もそのあたりかな? 昨日の夜から探らせてる位置は割れた?」
「上空偵察と強行偵察によると、大体この辺りだという報告は入っております。今いる位置からですと、三キルラ半から四キルラ地点でしょうか」
「前線寄りかー。ここ数日の攻勢であっという間に押されて、遂に頭が直々に戦闘してるんだからそろそろだね」
「あと一日半もあれば中心市街地を制圧出来るかと。ですが、そのおつもりではないようで」
「当たり前でしょ。まずはコイツの首をはねるっての」
リシュカの堂々たる発言に、おお! と声が上がる。
「てわけで、モルトフ師団長。手筈通り逃げ道を防ぐよう攻勢を」
「御意」
「オットー少将はモルトフ師団長の補助に。連絡はいつでも私に繋がるようにしておいて」
「御意に、閣下」
「パラセーラ大佐。大隊を連れて一緒に行くよ」
「はい、閣下」
「よーし。なら出発ー」
「行ってらっしゃいませ、閣下」
「ほーい」
リシュカはピクニックへ行くような様子で返答をし、最前線へパラセーラ達大隊と共に向かう。
リシュカは前線に到着すると、戦う将兵へ声をかける。
彼等はリシュカの姿に気が付くと、彼女を知らない者はどうして子供がと戸惑うが、知る者が伝えると大歓声が湧き上がった。
「黒い津波の諸君等よ! 復讐の時は今まさに来たれり! 飲まされ続けた苦汁を今こそ人類共に味合わせてやれ! 私は諸君等といつ何時も共にあり! 鏖殺を始めなさいっ!! 皇帝陛下、万歳っっ!!」
『皇帝陛下、万歳!!』
統合軍と相対する部隊は銃砲で答え、これより突撃する者はリシュカが雪空の下で掲げ振り下ろした光龍刀を合図に突撃を開始する。
リシュカやパラセーラ達も挨拶代わりの統制射撃と法撃で統合軍の兵士達を蹴散らしながら彼等の戦線を侵食していく。
それから一時間も経たないうちだった。
リシュカは目標の人物を見つけた。ブリック大将だ。
彼女は口角を曲げて嗤い、口を開く。
「ミィツケタ」
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