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第25章 帝国皇后クーデターと落日の堕天戦乙女編
第6話 叛逆者と化したリシュカに統合軍とアカツキは
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・・6・・
四の月一八の日から一九の日にかけても戦争の状況は大きく変化をしていっていた。
帝都ではルシュカが完全に権限を掌握し、彼女の派閥が多く存在している北部軍集団には少しずつではあるものの一時停戦命令が届きつつあり、勅令という絶対命令というのもあって従うものがほとんどだった。
対してリシュカが率いる南部軍集団は、ルシュカの勅令が届いた直後に勢力範囲内であるセヴァストゥーポラなど南部を中心に、ルシュカは乱心していることなどを理由に勅令を拒否するように命令。半数近くは勅令が絶対であることからリシュカの命令を拒否したものの、結果として南部軍集団の残り半数はリシュカに従うことになり、帝国は早くも大きく二つに割れる状態となってしまった。
その南部方面に展開していた帝国軍のうち、リシュカの敗走を文字通り命がけで行った第八軍のうち一部の部隊等は統合軍に対して抵抗をしたもののわずか半日でおおよその勝敗は決する。この時該当地域に展開していた統合軍の数は一○○○○○。対して帝国軍は三〇〇〇〇であったし、士気や武装などの差は言うまでもない状況で当然の結果であった。
結果として、ムィトゥーラウ周辺に展開していた帝国軍を易々と蹴散らし残敵掃討のみとなった統合軍はムィトゥーラウ入りを果たし、アカツキ達も夜には市街入りをしていた。
・・Φ・・
4の月19の日
午後1時過ぎ
帝国領・ムィトゥーラウ市街地
人類諸国統合軍・仮設司令部
大反転攻勢作戦が開始してまだ一週間も経過していないというのに、僕の周辺の環境や入ってくる戦況はめまぐるしく、
把握するのも大変なくらいに変わっていっていた。
北部方面軍が侵攻中の地域からは、帝国軍が各師団単位で勅令を受け取り次第、一時停戦の申し出てきたり降伏勧告を受け入れる
か向こうから降伏を申し出てくるという情報が相次いで入ってきていた。
これは勅令という絶対的な命令が出されたことが一番の原因だけれども、名将シェーコフが戦死したという情報によるところもかなりあるみたいだった。軍集団においての最上級指揮官は死に、勅令まで出されれば当然だと思う。
北部方面軍はこんな様子だから進軍については予想以上に順調。しかし、帝国軍の多数が捕虜になってしまったことで、彼らをどうするべきか。これだけ多数の捕虜を抱えることになるから場所や食料はどうするのかといった想定外の問題に悩まされているらしい。
さて、対して僕のいる南部方面軍はというと、侵攻という面ではムィトゥーラウまでは北部方面軍と同様に順調だった。
今のところムィトゥーラウに到着した一〇〇〇〇〇は周辺地域の帝国軍残敵掃討を行ったり司令部機能の構築に忙しいくらいで当初予想していた戦闘はかなり少なく済んでいる。後を追ってきている本隊の約三〇〇〇〇〇も三日後までには全部隊が到着する
ということで、ムィトゥーラウにいる高級士官達は順調すぎるくらいに勝利を重ねていることをかなり喜ばしく感じていた。
だけど、僕や一部の参謀本部の面々に高級士官は、今現在起きていることを、その根幹をさっぱり掴めていなかった。
それはもちろん、この一時停戦や発せられた勅令、それを発した主についてだった。
僕やリイナにエイジス、南部方面軍の総指揮官であるランメル大将や参謀達は仮設司令部の一室にある大きなテーブルに置かれた戦況図を見ながら現状確認の話し合いをしていた。
「突然のクーデターに、首謀者である皇后ルシュカの勅令。それによる一時停戦命令と、ここ二、三日で様々なことが起きすぎて頭が痛くなってくるな……。アカツキ中将、貴官もそうであろう?」
「はっ。はい、正直に申しまして状況理解にしても、何もかもが追いついてません。そもそもここに来てクーデター自体が予想しておりませんでしたし、しかもクーデターの首謀者が皇后とは……。もしこのような事態があるとしたら軍の中で不満を持つ者くらいとだと思っておりました。しかもその可能性も現段階では限りなく低いものと……」
「であろうな。本国情報部も似たような様子だ。そもそも皇后ルシュカなど、悪いが全く眼中になかった」
「ランメル大将閣下に同意です。自分もマークはほとんど……。クーデター発生時点で至急情報部と内情に詳しい諸種族連合共和国へ問い合わせと調査依頼をかけましたが、まだ届いておらず……」
「当然といえば当然か……」
ランメル大将だけでなく参謀の面々もため息をつく。戦況が芳しくない理由でのため息ではないからまだいいんだけど、誰もがこのクーデターとその首謀者に理解できていないんだ。しかもそれが成功しているときたらなおさらの話で、僕も可能な範囲で分析しているけど情報が少なすぎてとても使えそうな推測はできていなかった。
「ただ、一つだけ確実に言えることは皇后ルシュカがクーデターを起こし成功させたことで、我々統合軍は戦争に対するあらゆる出費を減らすことができる点だろうな。作戦参謀長、今現在の北部方面軍の状況はどうなっている?」
「はっ。現在北部方面軍はムィトゥーラウとの連絡線構築および、帝国軍に対する包囲環形成を行っている状況にあります。また最進出部隊はコルロフカから西一〇〇キーラ地点まで進んでおり、以前東進中。これは正式に停戦合意がなされていないこともありますが、総司令部と北部方面軍とのやりとりでは正式な一時停戦合意を目指して行われる会談がコルロフカであり、ならばその手前であるツォルク川まで前進する必要があるからとのこと。帝国軍は魔法無線通信で一時停戦合意のための接触を図ってきたようで、会談場所の希望がコルロフカでした。なお、この会談には帝国軍参謀本部参謀総長や陸軍総司令官が出席するとのこと」
「北部方面軍は随分と順調なようだな。しかも帝国軍の最高指揮官クラスが出席ならば連中は一時停戦交渉に本気だろう。朗報だな」
「はっ。はい。総司令部もこの情報については朗報と考えており、犠牲が減らせるのならば一時停戦交渉には前向きのようです。こちらからはマーチス元帥閣下などが出席とのこと。ただし、本国の許可が必要ですから即日回答は無理のようで」
「当然だろうな。この話は連合王国だけでなく、法国や連邦に共和国などの許可も必要になる。多少は時間がかかるだろう。ただどの国も一時停戦に反対はせんだろう」
ランメル大将の考えに僕も含めこの部屋にいる全員が首肯する。
僕隊は単一の国動いている軍ではなく、多国籍軍だ。ともなれば、派遣した兵力に比例した発言力になるとはいえ軍を動かしている国のそれぞれの意見は聞かなければならない。この点については僕もランメル大将と同じようにあまり心配はしていない。何せ帝国軍の攻勢によってどの国の軍も少なくない犠牲が生じていて、多大な戦費を払っている。連合王国の財政でもあと三年戦うのが限界なんだから、他国はもっとタイムリミットが短い。
となると、反対する理由が少ないんだからどれくらいかけて結論を出すのかは差異があるにしても行き着く先は同じだろう。
それこそ、ブカレシタの時の休戦のようにね。
「さて、北部方面軍については帝国軍の師団単位で停戦の申し出や降伏勧告の受け入れが進んでいるようだが、作戦参謀長。我々南部方面軍はどうだ?」
「はっ。はい。我々南部方面軍は先行する我々に加えて本隊も三日後には到着。ムィトゥーラウを再び一大拠点にしていきます。ただ、北部と大きく事情が変わってくるのが我々南部統合軍の大きな課題かと。ムィトゥーラウから先については、南部方面軍については北部と違い保留状態です。今回の件で総司令部からは進軍一時停止となっていますから……」
「叛逆者、リシュカ・フィブラか……。既に情報は入っているが、いくら主権を失った皇帝も同意の上とはいえ、やはりクーデター首謀者の勅令など無視する。と来たか……」
「はっ。はい。我々が向かう予定であったドエニプラとホルソフのうち、どうやらリシュカ大将相当官はホルソフにいるようです。奴は勅令を無視した上にホルソフだけでなくセヴァストゥーポラなど周辺の帝国軍を自分の勢力下においたようです。その数、約三〇〇〇〇〇。ただ、今後どう動いてくるかは掴めておりません。少なくとも現段階ではムィトゥーラウに向かってくる気配はありません。何せ、こちらから無線を送っているにも関わらず無視されておりますから」
「厄介極まりないな……。北部では着々と交渉が進んでいるというのに、南部がこれとは……。総司令部は帝国側の主権はルシュカにあると判断し、交渉はすべてそちら側しかしないつもりでいる。よってリシュカ側が何か送ってきたとて、受け付けられるのは停戦に関わることのみにしろ。それ以外の交渉はするつもりはない」
「はっ。了解いたしました」
ランメル大将と情報参謀長の二人は、やや呆れた様子で終始この話題については話していた。
僕も、いくらあの人といえど何を考えているんだと少し呆たし、本当にあの人は真逆に変わってしまったんだと改めて感じた。
そもそも勅令を拒否した点からしてまずいし、ホルソフやセヴァストゥーポラ周辺と南部の一部地域を自分の勢力下に置いた事に至っては最悪の一言に尽きる。
恐らく、戦争継続派の最先鋒であるあの人からしたら一時休戦なんてありえないし従う気はサラサラない。というのが言い分だろうけれど、だとしてもだ。
これではあの人は僕達統合軍が進軍を再開してホルソフへ向かったら勝ち筋はほぼ無いだろうから負け戦になる。帝国側からしても、あの人が従わないばかりに僕たち統合軍に占領地域の拡大の大義名分を与えることになるから今後の交渉に確実に悪影響を及ぼすことになる。そうなるのはわかりきっている帝国は間違いなく彼女に対して何らかの処分を下すだろう。
例えば、賊軍扱いとするとか。反逆者扱いとして、帝国側が捕縛しても極刑に処すとか。きっと、こんな感じに。
しかし、まだ総司令部は彼女に対してどう出るかを決めていないし、帝国側からも彼女に関係する情報は届いていない。
果たしてどうなるか、こればかりかは僕も分からないでいた。
どうやらランメル大将も似たような考えでいるらしく、一通り話が終わると僕たちにこう告げた。
「ひとまずリシュカ大将相当官と奴が率いる軍については総司令部より新しい命令が届くまでは、奴らが我々に攻撃を加えてきた時点で反撃する、に留めておく。総司令部からはムィトゥーラウで一旦進軍停止となっているからだ。よって、当面はムィトゥーラウ周辺の防衛施設の構築や整備、帝国軍の情報収集に各位は努めるように。総司令部と帝国側の交渉の結果を待つとしよう。ただし、ホルソフ方面への警戒は厳とし、航空偵察は続けよ。以上だ」
『了解!!』
四の月一八の日から一九の日にかけても戦争の状況は大きく変化をしていっていた。
帝都ではルシュカが完全に権限を掌握し、彼女の派閥が多く存在している北部軍集団には少しずつではあるものの一時停戦命令が届きつつあり、勅令という絶対命令というのもあって従うものがほとんどだった。
対してリシュカが率いる南部軍集団は、ルシュカの勅令が届いた直後に勢力範囲内であるセヴァストゥーポラなど南部を中心に、ルシュカは乱心していることなどを理由に勅令を拒否するように命令。半数近くは勅令が絶対であることからリシュカの命令を拒否したものの、結果として南部軍集団の残り半数はリシュカに従うことになり、帝国は早くも大きく二つに割れる状態となってしまった。
その南部方面に展開していた帝国軍のうち、リシュカの敗走を文字通り命がけで行った第八軍のうち一部の部隊等は統合軍に対して抵抗をしたもののわずか半日でおおよその勝敗は決する。この時該当地域に展開していた統合軍の数は一○○○○○。対して帝国軍は三〇〇〇〇であったし、士気や武装などの差は言うまでもない状況で当然の結果であった。
結果として、ムィトゥーラウ周辺に展開していた帝国軍を易々と蹴散らし残敵掃討のみとなった統合軍はムィトゥーラウ入りを果たし、アカツキ達も夜には市街入りをしていた。
・・Φ・・
4の月19の日
午後1時過ぎ
帝国領・ムィトゥーラウ市街地
人類諸国統合軍・仮設司令部
大反転攻勢作戦が開始してまだ一週間も経過していないというのに、僕の周辺の環境や入ってくる戦況はめまぐるしく、
把握するのも大変なくらいに変わっていっていた。
北部方面軍が侵攻中の地域からは、帝国軍が各師団単位で勅令を受け取り次第、一時停戦の申し出てきたり降伏勧告を受け入れる
か向こうから降伏を申し出てくるという情報が相次いで入ってきていた。
これは勅令という絶対的な命令が出されたことが一番の原因だけれども、名将シェーコフが戦死したという情報によるところもかなりあるみたいだった。軍集団においての最上級指揮官は死に、勅令まで出されれば当然だと思う。
北部方面軍はこんな様子だから進軍については予想以上に順調。しかし、帝国軍の多数が捕虜になってしまったことで、彼らをどうするべきか。これだけ多数の捕虜を抱えることになるから場所や食料はどうするのかといった想定外の問題に悩まされているらしい。
さて、対して僕のいる南部方面軍はというと、侵攻という面ではムィトゥーラウまでは北部方面軍と同様に順調だった。
今のところムィトゥーラウに到着した一〇〇〇〇〇は周辺地域の帝国軍残敵掃討を行ったり司令部機能の構築に忙しいくらいで当初予想していた戦闘はかなり少なく済んでいる。後を追ってきている本隊の約三〇〇〇〇〇も三日後までには全部隊が到着する
ということで、ムィトゥーラウにいる高級士官達は順調すぎるくらいに勝利を重ねていることをかなり喜ばしく感じていた。
だけど、僕や一部の参謀本部の面々に高級士官は、今現在起きていることを、その根幹をさっぱり掴めていなかった。
それはもちろん、この一時停戦や発せられた勅令、それを発した主についてだった。
僕やリイナにエイジス、南部方面軍の総指揮官であるランメル大将や参謀達は仮設司令部の一室にある大きなテーブルに置かれた戦況図を見ながら現状確認の話し合いをしていた。
「突然のクーデターに、首謀者である皇后ルシュカの勅令。それによる一時停戦命令と、ここ二、三日で様々なことが起きすぎて頭が痛くなってくるな……。アカツキ中将、貴官もそうであろう?」
「はっ。はい、正直に申しまして状況理解にしても、何もかもが追いついてません。そもそもここに来てクーデター自体が予想しておりませんでしたし、しかもクーデターの首謀者が皇后とは……。もしこのような事態があるとしたら軍の中で不満を持つ者くらいとだと思っておりました。しかもその可能性も現段階では限りなく低いものと……」
「であろうな。本国情報部も似たような様子だ。そもそも皇后ルシュカなど、悪いが全く眼中になかった」
「ランメル大将閣下に同意です。自分もマークはほとんど……。クーデター発生時点で至急情報部と内情に詳しい諸種族連合共和国へ問い合わせと調査依頼をかけましたが、まだ届いておらず……」
「当然といえば当然か……」
ランメル大将だけでなく参謀の面々もため息をつく。戦況が芳しくない理由でのため息ではないからまだいいんだけど、誰もがこのクーデターとその首謀者に理解できていないんだ。しかもそれが成功しているときたらなおさらの話で、僕も可能な範囲で分析しているけど情報が少なすぎてとても使えそうな推測はできていなかった。
「ただ、一つだけ確実に言えることは皇后ルシュカがクーデターを起こし成功させたことで、我々統合軍は戦争に対するあらゆる出費を減らすことができる点だろうな。作戦参謀長、今現在の北部方面軍の状況はどうなっている?」
「はっ。現在北部方面軍はムィトゥーラウとの連絡線構築および、帝国軍に対する包囲環形成を行っている状況にあります。また最進出部隊はコルロフカから西一〇〇キーラ地点まで進んでおり、以前東進中。これは正式に停戦合意がなされていないこともありますが、総司令部と北部方面軍とのやりとりでは正式な一時停戦合意を目指して行われる会談がコルロフカであり、ならばその手前であるツォルク川まで前進する必要があるからとのこと。帝国軍は魔法無線通信で一時停戦合意のための接触を図ってきたようで、会談場所の希望がコルロフカでした。なお、この会談には帝国軍参謀本部参謀総長や陸軍総司令官が出席するとのこと」
「北部方面軍は随分と順調なようだな。しかも帝国軍の最高指揮官クラスが出席ならば連中は一時停戦交渉に本気だろう。朗報だな」
「はっ。はい。総司令部もこの情報については朗報と考えており、犠牲が減らせるのならば一時停戦交渉には前向きのようです。こちらからはマーチス元帥閣下などが出席とのこと。ただし、本国の許可が必要ですから即日回答は無理のようで」
「当然だろうな。この話は連合王国だけでなく、法国や連邦に共和国などの許可も必要になる。多少は時間がかかるだろう。ただどの国も一時停戦に反対はせんだろう」
ランメル大将の考えに僕も含めこの部屋にいる全員が首肯する。
僕隊は単一の国動いている軍ではなく、多国籍軍だ。ともなれば、派遣した兵力に比例した発言力になるとはいえ軍を動かしている国のそれぞれの意見は聞かなければならない。この点については僕もランメル大将と同じようにあまり心配はしていない。何せ帝国軍の攻勢によってどの国の軍も少なくない犠牲が生じていて、多大な戦費を払っている。連合王国の財政でもあと三年戦うのが限界なんだから、他国はもっとタイムリミットが短い。
となると、反対する理由が少ないんだからどれくらいかけて結論を出すのかは差異があるにしても行き着く先は同じだろう。
それこそ、ブカレシタの時の休戦のようにね。
「さて、北部方面軍については帝国軍の師団単位で停戦の申し出や降伏勧告の受け入れが進んでいるようだが、作戦参謀長。我々南部方面軍はどうだ?」
「はっ。はい。我々南部方面軍は先行する我々に加えて本隊も三日後には到着。ムィトゥーラウを再び一大拠点にしていきます。ただ、北部と大きく事情が変わってくるのが我々南部統合軍の大きな課題かと。ムィトゥーラウから先については、南部方面軍については北部と違い保留状態です。今回の件で総司令部からは進軍一時停止となっていますから……」
「叛逆者、リシュカ・フィブラか……。既に情報は入っているが、いくら主権を失った皇帝も同意の上とはいえ、やはりクーデター首謀者の勅令など無視する。と来たか……」
「はっ。はい。我々が向かう予定であったドエニプラとホルソフのうち、どうやらリシュカ大将相当官はホルソフにいるようです。奴は勅令を無視した上にホルソフだけでなくセヴァストゥーポラなど周辺の帝国軍を自分の勢力下においたようです。その数、約三〇〇〇〇〇。ただ、今後どう動いてくるかは掴めておりません。少なくとも現段階ではムィトゥーラウに向かってくる気配はありません。何せ、こちらから無線を送っているにも関わらず無視されておりますから」
「厄介極まりないな……。北部では着々と交渉が進んでいるというのに、南部がこれとは……。総司令部は帝国側の主権はルシュカにあると判断し、交渉はすべてそちら側しかしないつもりでいる。よってリシュカ側が何か送ってきたとて、受け付けられるのは停戦に関わることのみにしろ。それ以外の交渉はするつもりはない」
「はっ。了解いたしました」
ランメル大将と情報参謀長の二人は、やや呆れた様子で終始この話題については話していた。
僕も、いくらあの人といえど何を考えているんだと少し呆たし、本当にあの人は真逆に変わってしまったんだと改めて感じた。
そもそも勅令を拒否した点からしてまずいし、ホルソフやセヴァストゥーポラ周辺と南部の一部地域を自分の勢力下に置いた事に至っては最悪の一言に尽きる。
恐らく、戦争継続派の最先鋒であるあの人からしたら一時休戦なんてありえないし従う気はサラサラない。というのが言い分だろうけれど、だとしてもだ。
これではあの人は僕達統合軍が進軍を再開してホルソフへ向かったら勝ち筋はほぼ無いだろうから負け戦になる。帝国側からしても、あの人が従わないばかりに僕たち統合軍に占領地域の拡大の大義名分を与えることになるから今後の交渉に確実に悪影響を及ぼすことになる。そうなるのはわかりきっている帝国は間違いなく彼女に対して何らかの処分を下すだろう。
例えば、賊軍扱いとするとか。反逆者扱いとして、帝国側が捕縛しても極刑に処すとか。きっと、こんな感じに。
しかし、まだ総司令部は彼女に対してどう出るかを決めていないし、帝国側からも彼女に関係する情報は届いていない。
果たしてどうなるか、こればかりかは僕も分からないでいた。
どうやらランメル大将も似たような考えでいるらしく、一通り話が終わると僕たちにこう告げた。
「ひとまずリシュカ大将相当官と奴が率いる軍については総司令部より新しい命令が届くまでは、奴らが我々に攻撃を加えてきた時点で反撃する、に留めておく。総司令部からはムィトゥーラウで一旦進軍停止となっているからだ。よって、当面はムィトゥーラウ周辺の防衛施設の構築や整備、帝国軍の情報収集に各位は努めるように。総司令部と帝国側の交渉の結果を待つとしよう。ただし、ホルソフ方面への警戒は厳とし、航空偵察は続けよ。以上だ」
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