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終章 人類諸国の英雄と終焉の堕天戦乙女
第5話 バケモノの正体
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・・5・・
「クソッタレ、司令部至近でソズダーニアのそれも三型なんてシャレにならない!! 急いで向かうよ!!」
「ええ!」
「サー」
「了解しました閣下!」
『了解!』
僕は瞬脚を三重展開にして、リイナやエイジス、たまたま近くにいたアレン大佐と一個小隊を引き連れて現場に急行する。エイジスの情報共有には、既に味方に数名の戦死者と負傷者が出ていることを表していた。
敵との距離は約九〇〇。いつもならアレン大佐達にはそろそろ小隊統制射撃をするけれど、今回は出来ない。
「くそ、遠距離攻撃は難しいな……。司令部施設を巻き込みかねない……。仕方ない。エイジス、距離約三〇〇で切断系風魔法を発動。ただし数は数発程度。多重でぶつけるのは危ない」
「サー、マスター」
「アレン大佐、小隊統制射撃は距離一五〇から。僕達が突っ込むから、後方援護射撃。その後、対象の敵視先が僕達に向くようにコントロールを。これ以上の司令部施設への被害は看過できない」
「了解しました」
「リイナ、僕の背中を頼んだ」
「任せなさいな」
簡単な作戦を皆に伝える頃には三型との距離は五〇〇。やや遠目からでも、派手な音とソズダーニアの咆哮から事態が悪化しているのは一目瞭然だった。
距離三〇〇。三型が見えてきた。
「エイジス!」
「サー。モードオフェンス、属性、切断系風魔法。ロックオン」
「撃て」
「発動、発射」
エイジスの傍に現れた魔法陣から切断系風魔法の刃が放たれる。
エイジスの魔法は針に糸を通すかの如く正確だ。全てが三型に命中する。しかし。
「三型へのダメージ、軽微。魔法障壁に命中」
「だと思った。これだから三型は……」
距離、約一五〇。
「リイナ、エイジス、突っ込むよ!」
「了解よ!」
「サー」
「小隊行進間統制射撃、属性風魔法! 撃てェ!」
僕達がさらに加速すると、すぐ後方からアレン大佐の声。直後に魔法銃の弾丸がソズダーニアを襲う。
「命中。ただし魔法障壁の八割破壊に留まりました」
「十分だ。とにかく障壁を壊してダメージを与えないと」
「あの三型やたらと硬いわね。でも、これなら!」
リイナは僕も抱いていた違和感を口に出すけれど、すぐに呪文の詠唱を始める。僕も、この距離まで近付いた事で司令部施設への巻き込みの可能性は著しく減ったからと爆発系火属性魔法の詠唱を始めた。
「鋭き氷の鋒は数多。一つ残さず、穿ち殺しなさい。氷剣乱舞!」
「炎球よ、舞え! 『炎球乱舞』!!」
リイナが放った氷の剣とそれか、やや遅れて飛翔する僕の炎の球は、ソズダーニアに全弾命中する。魔法障壁は完全破壊した。
多少のダメージが通ってくれると期待したけれど。
「魔法障壁破壊後全弾命中。ただし、目視によるダメージはあまり見られず。ソズダーニア、目標をワタクシ達へ変更」
「ほんっと、信じられないほど硬いわ」
「三型だとしても、これは厳しいね……」
煙が晴れてから現れた大してダメージを受けてなさそうなソズダーニアは、こちらを強く睨んでいた。まるで憎しみを込めるかのように。
三型ともなると僅かばかり理性が残っている可能性があるとは聞いていたけれど、これはどういう事だろう。
まあいい。今は目の前の戦闘に集中しよう。
「ソズダーニア相手に歯が立たない者は退避!! ここは僕達に任せて!! ただし高位能力者を呼ぶように! Aランク以上の魔法能力者はこの場に残って援護! 相手は三型だ! 気を抜くと死ぬぞ!」
僕の呼び掛けに、三型に敵わないと感じている者達は退避を始め、僅かに残った数名のAランク以上能力者達はこれ以上の被害を防ごうとソズダーニアと距離を起きつつも包囲をする。
「エイジス、恐らく今のままだと埒が明かない。第一解放を許可する」
「サー、マスター」
エイジスはすぐに第一解放の姿に変わり、左手には黒い片手剣を持つ。情報共有画面には第一解放の活動限界時間の表示が加わった。あと三時間半。何度かの戦闘経験蓄積で、時間が少し伸びていた。
「エイジス、容赦無く殺れ。場合によっては第二解放も許可する」
「サー。討伐、開始」
「リイナ、行くよ」
「了解」
エイジスが先に三型に向かい、その後をリイナとツインリルを抜剣した僕が続く。
「グルァァァァ!!!!」
「刃は万物を通す凶器、剣に風を纏い主に仇なす不遜の輩に誅罰を」
エイジスは殺気を放ちながら三型に黒剣を振るう。
だけど、三型はその図体に似合わない程軽やかな動きで剣戟を回避するか硬い外皮を活かして腕で受け流す。さては表皮ギリギリに薄く魔法障壁を展開ひているのか?
ソズダーニアはこんなにも理性的かつ経験豊富な動きをするだろうかという疑問が強くなった。
「リイナ、エイジスの攻撃の合間を狙うよ」
「分かったわ」
「瞬脚、四重展開。風斬、発動」
「刃に絶対零度を、遍く全てを凍てつかせ。冷斬発動」
僕、リイナの順に魔法を発動。自分が持つ得物に属性を纏わせる。同時に魔法障壁も最大限展開する。
「エイジス、半歩下がれ」
「サー」
「行くよリイナ」
「ええ!」
エイジスが半歩下がった直後、僕とリイナは三型に突撃。三型だろうと関係なく弱点となる脚の関節部やその周辺を狙おうとする。まずはこいつの動きを鈍らせないと厳しい。
「『アイズズビァァ』!!」
「甘い!」
「その程度なら避けられるわよ!」
三型の氷属性初級魔法を僕とリイナは避け、僅かに生まれた隙を見逃さずに肉薄。
「でやぁぁぁ!!」
「はぁぁぁぁ!!」
僕は右側を、リイナは左側の脚部を狙って斬撃。
けれども魔法障壁が割れる音と、外皮が斬撃に対して抵抗する音が発せられるだけで手応えが無い。
クソッ、僕やリイナでは付与魔法を重ねがけしないと無理か……。
「マスターとリイナ様に気を取られたら死にますよ」
「ダァァァ!!」
僕とリイナの攻撃からすぐ、エイジスは力を込めて黒剣を振り上げ、下ろす。威力を増すために風魔法付与を三重に展開していた。
しかし。
「ゴノデイドォォォ!!」
「なっ……!」
三型は頭部を庇うように両腕を出し、器用なことに魔法障壁を集中展開して防いでみせた。
魔法障壁は全て破壊され硬い皮膚を少し貫いて出血こそしたものの、大したダメージは与えられていない。
エイジスは僅かに目を見開き、すぐにバックステップ。間合いを取ることとなる。
僅かばかり奇妙な沈黙が生まれる。僕はその間にアレン大佐に隙を狙って狙撃するように。と作戦の変更を手信号で伝える。
『マスター、リイナ様。明らかにこれまでの三型と違います。身のこなし、攻撃の効率性、防御の仕方、いづれも素人ではありません』
相手に悟られないよう、エイジスは思念通話で自らの推測を伝えてきた。
『妙よね。これまでのソズダーニアは戦闘経験の無い素人のような動きがほとんど。なのにこの化け物はまるで手練みたいな戦い方をする。おかしいわ』
『僕も同じことを感じた。ソズダーニア特有の力押しじゃなくて、テクニックを用いているよね。不味いな、あまり長引かせたくないのに素体がプロだったなんてシャレにならないよ』
これまでのソズダーニアは素体のほとんどが素人か良くて一般的な兵士であろう動きをするものだった。けど、今回は明らかに違うのは少し戦闘を行ってすぐに気付いた。
恐らくだけどアレの中身は軍人の中でも相当手練。それもアレン大佐だとか僕が直轄で動かしている大隊の兵士のような、近接戦にも長けた特殊部隊に属するようなヤツ。
普通の野戦でも極めて厄介な三型だというのに、中身が猛者だったとしたら、司令部周辺にいる普通の兵士じゃ瞬殺される。
思わず舌打ちをしていると、驚くべきことに相手から僕達の推測の答えが帰ってきた。
「ユルザナイ!! リシュカサマ二アダナズギザマラヲ、ユルザナイ!! ワダシノウデヲトバジダオンナ、ドグニギザマハ!!」
…………今なんて言った?
リイナに向かって、『腕を飛ばしたオンナ』って?
おいおい、嘘だろ……。
心当たりは一人しかいないぞ。
「不味いわよ、旦那様。アイツ、戦ったことがあるヤツよ」
「うん、僕も思い出した。あの三型の中身、よりにもよってリシュカの片腕、『パラセーラ』だ」
「クソッタレ、司令部至近でソズダーニアのそれも三型なんてシャレにならない!! 急いで向かうよ!!」
「ええ!」
「サー」
「了解しました閣下!」
『了解!』
僕は瞬脚を三重展開にして、リイナやエイジス、たまたま近くにいたアレン大佐と一個小隊を引き連れて現場に急行する。エイジスの情報共有には、既に味方に数名の戦死者と負傷者が出ていることを表していた。
敵との距離は約九〇〇。いつもならアレン大佐達にはそろそろ小隊統制射撃をするけれど、今回は出来ない。
「くそ、遠距離攻撃は難しいな……。司令部施設を巻き込みかねない……。仕方ない。エイジス、距離約三〇〇で切断系風魔法を発動。ただし数は数発程度。多重でぶつけるのは危ない」
「サー、マスター」
「アレン大佐、小隊統制射撃は距離一五〇から。僕達が突っ込むから、後方援護射撃。その後、対象の敵視先が僕達に向くようにコントロールを。これ以上の司令部施設への被害は看過できない」
「了解しました」
「リイナ、僕の背中を頼んだ」
「任せなさいな」
簡単な作戦を皆に伝える頃には三型との距離は五〇〇。やや遠目からでも、派手な音とソズダーニアの咆哮から事態が悪化しているのは一目瞭然だった。
距離三〇〇。三型が見えてきた。
「エイジス!」
「サー。モードオフェンス、属性、切断系風魔法。ロックオン」
「撃て」
「発動、発射」
エイジスの傍に現れた魔法陣から切断系風魔法の刃が放たれる。
エイジスの魔法は針に糸を通すかの如く正確だ。全てが三型に命中する。しかし。
「三型へのダメージ、軽微。魔法障壁に命中」
「だと思った。これだから三型は……」
距離、約一五〇。
「リイナ、エイジス、突っ込むよ!」
「了解よ!」
「サー」
「小隊行進間統制射撃、属性風魔法! 撃てェ!」
僕達がさらに加速すると、すぐ後方からアレン大佐の声。直後に魔法銃の弾丸がソズダーニアを襲う。
「命中。ただし魔法障壁の八割破壊に留まりました」
「十分だ。とにかく障壁を壊してダメージを与えないと」
「あの三型やたらと硬いわね。でも、これなら!」
リイナは僕も抱いていた違和感を口に出すけれど、すぐに呪文の詠唱を始める。僕も、この距離まで近付いた事で司令部施設への巻き込みの可能性は著しく減ったからと爆発系火属性魔法の詠唱を始めた。
「鋭き氷の鋒は数多。一つ残さず、穿ち殺しなさい。氷剣乱舞!」
「炎球よ、舞え! 『炎球乱舞』!!」
リイナが放った氷の剣とそれか、やや遅れて飛翔する僕の炎の球は、ソズダーニアに全弾命中する。魔法障壁は完全破壊した。
多少のダメージが通ってくれると期待したけれど。
「魔法障壁破壊後全弾命中。ただし、目視によるダメージはあまり見られず。ソズダーニア、目標をワタクシ達へ変更」
「ほんっと、信じられないほど硬いわ」
「三型だとしても、これは厳しいね……」
煙が晴れてから現れた大してダメージを受けてなさそうなソズダーニアは、こちらを強く睨んでいた。まるで憎しみを込めるかのように。
三型ともなると僅かばかり理性が残っている可能性があるとは聞いていたけれど、これはどういう事だろう。
まあいい。今は目の前の戦闘に集中しよう。
「ソズダーニア相手に歯が立たない者は退避!! ここは僕達に任せて!! ただし高位能力者を呼ぶように! Aランク以上の魔法能力者はこの場に残って援護! 相手は三型だ! 気を抜くと死ぬぞ!」
僕の呼び掛けに、三型に敵わないと感じている者達は退避を始め、僅かに残った数名のAランク以上能力者達はこれ以上の被害を防ごうとソズダーニアと距離を起きつつも包囲をする。
「エイジス、恐らく今のままだと埒が明かない。第一解放を許可する」
「サー、マスター」
エイジスはすぐに第一解放の姿に変わり、左手には黒い片手剣を持つ。情報共有画面には第一解放の活動限界時間の表示が加わった。あと三時間半。何度かの戦闘経験蓄積で、時間が少し伸びていた。
「エイジス、容赦無く殺れ。場合によっては第二解放も許可する」
「サー。討伐、開始」
「リイナ、行くよ」
「了解」
エイジスが先に三型に向かい、その後をリイナとツインリルを抜剣した僕が続く。
「グルァァァァ!!!!」
「刃は万物を通す凶器、剣に風を纏い主に仇なす不遜の輩に誅罰を」
エイジスは殺気を放ちながら三型に黒剣を振るう。
だけど、三型はその図体に似合わない程軽やかな動きで剣戟を回避するか硬い外皮を活かして腕で受け流す。さては表皮ギリギリに薄く魔法障壁を展開ひているのか?
ソズダーニアはこんなにも理性的かつ経験豊富な動きをするだろうかという疑問が強くなった。
「リイナ、エイジスの攻撃の合間を狙うよ」
「分かったわ」
「瞬脚、四重展開。風斬、発動」
「刃に絶対零度を、遍く全てを凍てつかせ。冷斬発動」
僕、リイナの順に魔法を発動。自分が持つ得物に属性を纏わせる。同時に魔法障壁も最大限展開する。
「エイジス、半歩下がれ」
「サー」
「行くよリイナ」
「ええ!」
エイジスが半歩下がった直後、僕とリイナは三型に突撃。三型だろうと関係なく弱点となる脚の関節部やその周辺を狙おうとする。まずはこいつの動きを鈍らせないと厳しい。
「『アイズズビァァ』!!」
「甘い!」
「その程度なら避けられるわよ!」
三型の氷属性初級魔法を僕とリイナは避け、僅かに生まれた隙を見逃さずに肉薄。
「でやぁぁぁ!!」
「はぁぁぁぁ!!」
僕は右側を、リイナは左側の脚部を狙って斬撃。
けれども魔法障壁が割れる音と、外皮が斬撃に対して抵抗する音が発せられるだけで手応えが無い。
クソッ、僕やリイナでは付与魔法を重ねがけしないと無理か……。
「マスターとリイナ様に気を取られたら死にますよ」
「ダァァァ!!」
僕とリイナの攻撃からすぐ、エイジスは力を込めて黒剣を振り上げ、下ろす。威力を増すために風魔法付与を三重に展開していた。
しかし。
「ゴノデイドォォォ!!」
「なっ……!」
三型は頭部を庇うように両腕を出し、器用なことに魔法障壁を集中展開して防いでみせた。
魔法障壁は全て破壊され硬い皮膚を少し貫いて出血こそしたものの、大したダメージは与えられていない。
エイジスは僅かに目を見開き、すぐにバックステップ。間合いを取ることとなる。
僅かばかり奇妙な沈黙が生まれる。僕はその間にアレン大佐に隙を狙って狙撃するように。と作戦の変更を手信号で伝える。
『マスター、リイナ様。明らかにこれまでの三型と違います。身のこなし、攻撃の効率性、防御の仕方、いづれも素人ではありません』
相手に悟られないよう、エイジスは思念通話で自らの推測を伝えてきた。
『妙よね。これまでのソズダーニアは戦闘経験の無い素人のような動きがほとんど。なのにこの化け物はまるで手練みたいな戦い方をする。おかしいわ』
『僕も同じことを感じた。ソズダーニア特有の力押しじゃなくて、テクニックを用いているよね。不味いな、あまり長引かせたくないのに素体がプロだったなんてシャレにならないよ』
これまでのソズダーニアは素体のほとんどが素人か良くて一般的な兵士であろう動きをするものだった。けど、今回は明らかに違うのは少し戦闘を行ってすぐに気付いた。
恐らくだけどアレの中身は軍人の中でも相当手練。それもアレン大佐だとか僕が直轄で動かしている大隊の兵士のような、近接戦にも長けた特殊部隊に属するようなヤツ。
普通の野戦でも極めて厄介な三型だというのに、中身が猛者だったとしたら、司令部周辺にいる普通の兵士じゃ瞬殺される。
思わず舌打ちをしていると、驚くべきことに相手から僕達の推測の答えが帰ってきた。
「ユルザナイ!! リシュカサマ二アダナズギザマラヲ、ユルザナイ!! ワダシノウデヲトバジダオンナ、ドグニギザマハ!!」
…………今なんて言った?
リイナに向かって、『腕を飛ばしたオンナ』って?
おいおい、嘘だろ……。
心当たりは一人しかいないぞ。
「不味いわよ、旦那様。アイツ、戦ったことがあるヤツよ」
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