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第三十三話 地下室

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髭面の大男は、何も無い壁を指さします。
そこには地下へ続く隠し扉がありました。

ローズは髭面の大男のあごをつかみ、その体をぶらぶらさせながら、足は引きずったまま階段を降りていく。
その後ろを、僕とユーリさん、アクエラさんの順でついていく。

「うわあ、これは酷い」

一体だけと思っていたら、広い部屋の中に幼いドラゴンの体が四体置いてあった。
幼いドラゴンと言っても、体長七メートルはありそうだ。

「全部死んでいますね」

その体から鱗は剥がされ、腹からは内蔵も取り出され、頭も切り落とされていた。
思わず僕は手を合わせていた。
そして、回りを見渡すと、檻が四つあった。
エルフが二人入った檻。獣人が二人入った檻、人間が入った檻が二つ、それぞれ八人ずつ入った檻がある。
全員女性だった。

「ぬし様、どうしますか」

「僕の腕の慰謝料として、もらっていきましょう」

僕たちが檻を開放しようとしていると、後ろから声がしました。

「おいおい、何勝手なことをしているんだよー。しかし上の連中は、十人以上いてこんな女子供にやられたのかー。情けないねー」

そこには、刀のようなそりのある武器を持った女が三人いた。
最終防衛ラインを守るのだから、ここでは最強の三人なのだろう。

「大丈夫だとは思いますが、実力が分かりません、気を付けて下さい」

「はーーい」

三人の声がそろった。
いつもの駄目な返事だ。

「てめーら舐めているのかー」

三人が斬りかかってきた。
手に持っている武器は、ドラゴンの材料で鍛えてあるものだ。
ユーリさんは、それを腕で受けた。
幼いドラゴンの材料では、ユーリさんを傷つけることは出来ないようだ。

「嘘だろ!! 鉄でも切り裂くドラゴンソードだぞ」

ユーリさんがニヤリと笑い、殴り飛ばした。
ローズとアクエラさんは、警戒して避けた。
すると敵の二人は、僕に斬りかかって来た。

ドスッ、ドスッ

一人の攻撃は僕の目を突き刺し、もう一人の攻撃は心臓を貫いた。

バシュ

僕の顔からでた体液を敵の二人は顔に浴びた。
その瞬間ゾンビになった。
魔力が何も無いようだ、めちゃめちゃゾンビ化が速い。

「ノコ様」
「ぬし様」

「ふふふ、大丈夫だよ、僕は元々死んでいますからね」

二人がほっとしています。

「ローズ、一人だけ仲間外れもかわいそうなので、三人とも西のダンジョンに転送して下さい」

「はい」

「じゃあ、この子達を助けて帰りましょうか」

僕たちは、エルフ二人、獣人二人、人間十六人を家に連れ帰ることにした。
わざと歩いてのんびり家に向かう。

案の定、僕たちの後を付けてくる人影があった。

「あれで隠れているつもりなのでしょうか」

ローズが心配している。

「まあ、隠れる気もないのでしょう」





はあ、忙しい一日でした。
家に帰ると、全員お風呂に入ってもらい、可憐で可愛い服を着てもらった。
特にエルフは美しかった。
僕は席についてじっと眺めてしまった。

「ふーー、美しいねーー」

つい、つぶやいてしまった。

「えーーっ」

二十人からの「えーーっ」は、結構大きくて、鼓膜がビリビリした。いったい何に驚いたんだ。

「あ、あの」

「なに?」

「ノコ様が一番美しいと思います」

「えーーーっ」

こんどは僕が驚いた。
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