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第九話 六枚の金貨
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わたしは、キキちゃんとまなちゃんと分かれてから、少し試したいことがあって、アド商会の裏でシャムちゃんが出てこないか待っていた。
さすがに、貧民がお店の中に入るのは、シャムちゃんの迷惑になるので、大人しく待っている。
「あいちゃん何でまだ、そんなボロを着ているニャ」
「余った金貨で服位買えたはずニャ」
先にあいを見つけたシャムが声を掛ける。
「家族に薬を買ったら全部無くなったの」
「薬って高過ぎね」
「それで家族は良くなったのかニャ」
「それが、全く良くならないの」
「それは完全にだまされているニャ」
「貧民の格好をしていればそうなるニャ」
「そもそも、薬なんていらないニャ」
「あいちゃんなら自分の魔法で治せるはずニャ」
「あっ、気づかなかった」
シャムは頭を抱えている。
「シャムちゃん湖に行きたいの、魔法符あるかな?」
「イネスのアド商会は品揃えが充実しているニャ、支店長が優秀だからニャ」
「何処がいいニャ」
「人の来ない所がいいのだけど」
「じゃあ竜のいるイネス湖がいいニャ」
「一枚金貨五枚ニャ」
「えーー高いよ」
「まあ、あいちゃんは原価でいいニャ、十枚の移動符で銀貨一枚ニャ」
「嘘でしょ」
「世の中そんなもんニャ」
シャムは金貨五枚の薬など、銀貨一枚の値打ちもないと、教えるつもりだったがあいに伝わったっかどうか。
符を受け取るとあいの姿はすぐに消えた。
イネス湖は、首都イネスの北西にある山奥の湖である。
切り立った崖に囲まれた湖で、ダム湖の様な形状である。
「よくこんな所の移動符があるわね」
「さてはじめますか」
あいは対岸の壁を見つめ
「浮上」
崖の角が割れ宙に浮いた、その大きさは、巨大な高層ビル程もある。
わたしの最低魔力がこの位なのか。これ以下の岩では蓋が無いと、飛んでいってしまうんだわ。
「消去」
あいは巨大な岩を消した。
その後色々な大きさの岩を浮かせては次々消去した。
次は水ね。
「水浮上」
湖の水が浮上し巨大な水の玉になる。
先程の高層ビルとほぼ同じ体積だ。
これが今の私の操作出来る最低の大きさ、練習してもっと細かいものを動かせるようにしないと使い物にならない。
「凍結」
水の玉が一瞬で凍り付く。
「治癒」
今度は水に戻る。
「消去」
この後、水の玉を幾つか作ると次々消去した。
アド商会に戻りアドちゃんを見つけ抗議した。
「アドちゃん竜なんていなかったよ」
「見た人がいると言う話ニャ、まあ世の中そんなもんニャ」
翌日、
いつもの狩場であいはいつものように荷物番をしていた。
林の奥では四人が狩りをしている。
「嘘でしょ」
今日はいつもと少し様子が違っている。
巨大な猪が四人の前に現れたからである。
大型のダンプほどの大きさの猪が赤い目で襲いかかろうとしている。
猪が突進してくる、レイとメイは左右に分かれ避けたが、ガイとロイは猪の前に立ちはだかった。猪の進路にあいがいるためだ。
高速で走るダンプ(猪)にぶつかられ二人ははじき飛ばされた。ガイは体の左側、ロイは右側が猪にぶつかり、重傷である。重傷を負いながらガイはレイに指示する。
「あいちゃんのところへ」
メイがガイとロイのケガの上に手を置き治癒の魔法を掛けている。
レイがあいの所へ駆け出すと、巨大な岩が猪の上に落ちていく所をみた。
あいは、突然現れた猪に驚き、昨日消去した岩を猪の上に出現させてしまった。
猪はぺちゃんこになっていた。尻尾だけ岩の外に出ていてピクピク痙攣していた。岩の隙間から大量に赤い物が染みだしていた。
「これ、あいちゃんがやったの」
「はい、そうなります」
「凄い、聞きたいことは色々あるけど、まずは魔封石」
「ちょっと取って来るわね」
レイが取りに行ったのは金貨五枚分の魔力を集められる魔封石である。
団を結成したときに、グエン商会から貸し出される特典の一つである。
今はリーダーのガイが持っている。
戻ってくるとレイは、青ざめた顔をしてあいをみた。
「ガイさんが危ないの、こっちに来て」
「ガイさんとロイ君があいちゃんを守ろうとさっきの猪を止めようとしたの」
「ガイさんは体の左半分がグチャグチャになっていてもう持たないって、メイさんが言っているの」
レイは泣いていた。
メイが必死で治癒をしていたが、効果は出ていなかった。
あいがガイとロイの二人を見つめる。
「治癒、回復」
「わたしは猪さんを直してきます」
「待ってわたしも行く」
涙を拭きレイが付いてきた。
「浮上、消去、治癒」
「ぶひー」
子猪が林の中へ走っていった。猪の魔獣の正体はなんと子猪だった。
「信じられない、あいちゃんは死んだ猪でも生き返らせることが出来るの」
「それは、出来ません、どこかが生きていたから直ったのだと思います」
この世界には魔法で出来ないことが幾つもある。出来ないように北の魔女が、呪いを掛けているからだ。死んだ者を生き返らせることは、魔女の呪いのため出来ない。
「岩を出していたみたいだけど」
「それも出来ません、しまっておいた物をだしただけです」
無から有の錬金魔法はこれも魔女の呪いで、できないのだ。
五人の姿がグエン商会にあった。
受付嬢が嬉しそうに言う。
「すごいじゃないですか、金貨六枚ですよ」
さすがに、貧民がお店の中に入るのは、シャムちゃんの迷惑になるので、大人しく待っている。
「あいちゃん何でまだ、そんなボロを着ているニャ」
「余った金貨で服位買えたはずニャ」
先にあいを見つけたシャムが声を掛ける。
「家族に薬を買ったら全部無くなったの」
「薬って高過ぎね」
「それで家族は良くなったのかニャ」
「それが、全く良くならないの」
「それは完全にだまされているニャ」
「貧民の格好をしていればそうなるニャ」
「そもそも、薬なんていらないニャ」
「あいちゃんなら自分の魔法で治せるはずニャ」
「あっ、気づかなかった」
シャムは頭を抱えている。
「シャムちゃん湖に行きたいの、魔法符あるかな?」
「イネスのアド商会は品揃えが充実しているニャ、支店長が優秀だからニャ」
「何処がいいニャ」
「人の来ない所がいいのだけど」
「じゃあ竜のいるイネス湖がいいニャ」
「一枚金貨五枚ニャ」
「えーー高いよ」
「まあ、あいちゃんは原価でいいニャ、十枚の移動符で銀貨一枚ニャ」
「嘘でしょ」
「世の中そんなもんニャ」
シャムは金貨五枚の薬など、銀貨一枚の値打ちもないと、教えるつもりだったがあいに伝わったっかどうか。
符を受け取るとあいの姿はすぐに消えた。
イネス湖は、首都イネスの北西にある山奥の湖である。
切り立った崖に囲まれた湖で、ダム湖の様な形状である。
「よくこんな所の移動符があるわね」
「さてはじめますか」
あいは対岸の壁を見つめ
「浮上」
崖の角が割れ宙に浮いた、その大きさは、巨大な高層ビル程もある。
わたしの最低魔力がこの位なのか。これ以下の岩では蓋が無いと、飛んでいってしまうんだわ。
「消去」
あいは巨大な岩を消した。
その後色々な大きさの岩を浮かせては次々消去した。
次は水ね。
「水浮上」
湖の水が浮上し巨大な水の玉になる。
先程の高層ビルとほぼ同じ体積だ。
これが今の私の操作出来る最低の大きさ、練習してもっと細かいものを動かせるようにしないと使い物にならない。
「凍結」
水の玉が一瞬で凍り付く。
「治癒」
今度は水に戻る。
「消去」
この後、水の玉を幾つか作ると次々消去した。
アド商会に戻りアドちゃんを見つけ抗議した。
「アドちゃん竜なんていなかったよ」
「見た人がいると言う話ニャ、まあ世の中そんなもんニャ」
翌日、
いつもの狩場であいはいつものように荷物番をしていた。
林の奥では四人が狩りをしている。
「嘘でしょ」
今日はいつもと少し様子が違っている。
巨大な猪が四人の前に現れたからである。
大型のダンプほどの大きさの猪が赤い目で襲いかかろうとしている。
猪が突進してくる、レイとメイは左右に分かれ避けたが、ガイとロイは猪の前に立ちはだかった。猪の進路にあいがいるためだ。
高速で走るダンプ(猪)にぶつかられ二人ははじき飛ばされた。ガイは体の左側、ロイは右側が猪にぶつかり、重傷である。重傷を負いながらガイはレイに指示する。
「あいちゃんのところへ」
メイがガイとロイのケガの上に手を置き治癒の魔法を掛けている。
レイがあいの所へ駆け出すと、巨大な岩が猪の上に落ちていく所をみた。
あいは、突然現れた猪に驚き、昨日消去した岩を猪の上に出現させてしまった。
猪はぺちゃんこになっていた。尻尾だけ岩の外に出ていてピクピク痙攣していた。岩の隙間から大量に赤い物が染みだしていた。
「これ、あいちゃんがやったの」
「はい、そうなります」
「凄い、聞きたいことは色々あるけど、まずは魔封石」
「ちょっと取って来るわね」
レイが取りに行ったのは金貨五枚分の魔力を集められる魔封石である。
団を結成したときに、グエン商会から貸し出される特典の一つである。
今はリーダーのガイが持っている。
戻ってくるとレイは、青ざめた顔をしてあいをみた。
「ガイさんが危ないの、こっちに来て」
「ガイさんとロイ君があいちゃんを守ろうとさっきの猪を止めようとしたの」
「ガイさんは体の左半分がグチャグチャになっていてもう持たないって、メイさんが言っているの」
レイは泣いていた。
メイが必死で治癒をしていたが、効果は出ていなかった。
あいがガイとロイの二人を見つめる。
「治癒、回復」
「わたしは猪さんを直してきます」
「待ってわたしも行く」
涙を拭きレイが付いてきた。
「浮上、消去、治癒」
「ぶひー」
子猪が林の中へ走っていった。猪の魔獣の正体はなんと子猪だった。
「信じられない、あいちゃんは死んだ猪でも生き返らせることが出来るの」
「それは、出来ません、どこかが生きていたから直ったのだと思います」
この世界には魔法で出来ないことが幾つもある。出来ないように北の魔女が、呪いを掛けているからだ。死んだ者を生き返らせることは、魔女の呪いのため出来ない。
「岩を出していたみたいだけど」
「それも出来ません、しまっておいた物をだしただけです」
無から有の錬金魔法はこれも魔女の呪いで、できないのだ。
五人の姿がグエン商会にあった。
受付嬢が嬉しそうに言う。
「すごいじゃないですか、金貨六枚ですよ」
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