モンスターのいない世界で私の作るゴーレムだけがモンスター扱いでした。仲間だけレベルアップさせ巣立たせたら仲間達が世界の頂点に立っちゃいました

覧都

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第一話 私は異世界転生者

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「うっうう……」

 暗い深夜の船倉にすすり泣く声が漏れてきます。
 小さな窓からは光が何も見えません。恐らく曇っていて星も月も顔を出していないのでしょう。
 船倉は真っ暗で、目を開いていても閉じていてもまるで変わらないそんな暗闇です。
 私のまわりには、大勢の同じ境遇の少女が横になっています。
 私達は、極東のジャングという国から奴隷として売られ、西洋へと輸送されていく途中なのです。

「大丈夫?」

「う、うん。レイカ姉」

「恐い夢でも見たのですか?」

「はい。おっとうが目の前で殺されて、おっかあとねえちゃと私が連れ去られる夢」

「そうですか。でも大丈夫。私がついています。安心して眠って下さい」

「はい」

 私には、この異世界にレイカとして生まれる前の記憶が少しだけあります。
 日本という国、そして大都市大阪にいたという記憶があります。
 ただ、すべて思い出したわけではありません。
 それでもずいぶん記憶はよみがえっています。
 ですが誰だったのか、どんな生活をしてきたのか、という肝心な個人の事が思い出せていません。

 私がこの世界で生まれたのは極東のジャングという国です。
 時代はまさに戦国時代でした。
 戦争で敵国の住民を捕まえて、西洋の国へ武器と交換に奴隷として売り飛ばしているそんな世界です。
 私も売り飛ばされた一人です。
 この船には、四百人程の女性が乗せられています。

 男は、もう一艘の船に男だけで乗せられています。
 男達は敵国の捕虜の武士です。
 捕虜を、武器に換えるため売り飛ばします。
 いずれにしても、結果は奴隷です。
 まともに生きられる未来はないでしょう。



「起きろーー!! めしだーー!!」

 私は、いつの間にか眠っていたようです。
 六歳児の私の頭すら通らない細長い窓に光が差し込んでいます。
 それでも、真っ暗な船倉に慣れた目には眩しく感じます。
 食事は、ドロッとした味の無い白い物体です。
 それをバケツで運んで来て、手の上に直にレードルで配ります。
 美味しくはありませんが、それなりに栄養はあるようです。

 皆、受け取るとがっつくように食べます。
 こんな食事が一日二回と水が配られます。
 私と、私のまわりの子供達は余りがっつきません。
 なぜなら、夜中こっそり、船員達の美味しい食事をいただいているからです。

「ちっ!! こいつはもう駄目だ! 運び出せ!!」

 食事の準備をする船員は、奴隷達の様子も見ていきます。
 起き上がれない子や、下痢の子供を探して連れて行きます。
 連れて行って、生きたまま海に投げ捨てます。
 とにかく疫病が恐いので可能性はすぐに排除していきます。
 海に落ちた人は皆サメの餌食になります。
 そのため奴隷船の後ろには、腹を空かせたサメたちがついてまわります。

 この世界は、異世界のはずなのにゴブリンもドラゴンもいません。
 でも、魔法はあります。
 私の住んでいた村では、皆がそれぞれ魔法を使っていました。
 私にはゴーレム魔法が使えました。
 今、私のまわりには、小バエが飛び回っています。
 実はこれが私のゴーレムです。
 小バエだけでなく、ネズミのゴーレムが船内を至るところでチョロチョロしています。

 この子達の見てきた物を共有して、私は船倉にいながら、船の状態が誰よりも良くわかっています。
 そして、船員の食べ物をネズミたちが運んで来てくれるのです。
 パンや干し肉などを、少しだけ分けてもらって食べています。
 余り減らすとバレてしまうので気付かれない程度少しずつ奪っています。

「きゃあああーーーーー!!!!!」
「うぎゃあああああーーーーーー!!!!」

 パシン、パシンというムチの音と共に悲鳴が船内に響きます。
 見せしめの為、毎日誰かがムチで打たれます。
 耳をふさいでも聞こえてくる、とても嫌な声です。
 こんな声を一日中聞かされると、夜寝るときにも悪夢でうなされてしまいます。

「外に出ろ!!」

 毎日、一時間ほど運動の時間があります。
 いつも、おなかを空かした栄養失調の奴隷達にはとてもつらい時間です。
 ですが、素直に従わないと、次にムチで打たれるのは自分という事になります。
 全員黙って従います。

「う、ううううっ」

 船倉ではまた、つらくて誰かが泣いています。
 泣いても誰も助けてはくれませんが、我慢が出来ないのでしょう。
 私は、ムチで打たれる人の悲鳴と、誰かがすすり泣く声、そしてこの薄暗い船倉がとても恐くて不安です。

 死んでしまいたい。
 海に飛び込みたいと思っても、鋼鉄製の手かせ、足かせが、他の人とつながっています。だから、それすらも出来ません。

「レイカ姉。また誰かが泣いているよ」

 私より年下のヒジリ五歳が話しかけてきました。
 昨日の夜、自分も泣いていたのに、他人が泣くのは恥ずかしい事と考えているようです。

「そっとしておきましょう。ほ……」

 本当は私も泣きたい。
 そう言いそうになりました。

「うん」

「いい子」

 私はヒジリの体を抱きしめて、頭を目一杯撫でました。

「レイカ姉」

「なあに、シノブ」

「私もそっちへ行ってもいいですか」

「いいですよ」

 シノブは八歳で二歳年上ですが、私をレイカ姉と呼んでいます。
 私が年上に感じるそうです。
 そうでしょうね。
 だって私は、二度目の人生を送る異世界転生者なのですから。
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