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第十九話 謎金属の価値
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「くっくっくっくっ……」
四人が顔を下に向けて表情が見えない様にして肩を揺らしています。
私が、イサミちゃんの顔をのぞき込むと顔は笑顔ですが、大粒の涙がポタポタひざに落ちています。本気泣きのようです。
どうしたのでしょうか?
「チビ、ありがとう。レイカ姉が、こんなに可愛い表情をするのを見たのは初めてだ。いつも難しい顔をして、おばあさんみたいだった。レイカ姉のこんな可愛い顔がみられるなんて……こんなにうれしいことはない。チビこの恩は忘れない。なにか困った事があったら俺達の事を思い出してほしい。必ず力になると約束しよう。俺はヤマト村のイサミ」
「俺はチマ」
「俺はシノブ」
「俺はヒジリだ」
「忘れないでくれ!!!!」
全員がチビに頭を下げた。
「よせやい。ただ思ったことを言っただけだよ。冷めるといけないから食べようぜ」
チビは、照れくさそうにスープを口に運んだ。
美味しそうに目を細めました。
私もチビにならって口に運びました……が、これは……!!??
私は四人の顔を見た。
四人とも目を大きく見開いています。
――まずーーい!!!!
恐ろしくまずいです。
肉に腐敗臭がして、それをごまかすためスパイスが一杯使われている。
でも、ごまかしきれていなくて、腐敗臭のする肉の味がとても気持ち悪い。
もう、飲み込むことすら拷問です。
でも、吐き出すのはチビに悪くて何とか飲み込みました。
昔、日本にいたときに西洋では、スパイスが金と等価交換だったというのを思い出しました。
肉が腐らないようにして、長期保存をする為に必要だったと聞きました。
でもきっと腐った肉の味をごまかすためにも使っていたのでしょう。
ヤマト村では、冷蔵庫があるので、いのししや鹿の肉は新鮮なまま食べています。
ここで生活する人達は、この味が標準なのでしょう。
ですが私達にこれは、食べることが無理なようです。
「……」
私達五人は、スープを見つめ固まりました。
「なんだ、いらないのか? じゃあ、しょうが無いなあー。全部俺がもらうよ。ふふふ」
チビは全部食べられるのがうれしいのか、上機嫌で全員分の皿を自分の前に持って行きました。
私は心の中で、このご恩はお忘れしませんと手を合せました。
他の子達を見たら瞳をウルウルさせてチビを見つめています。
全員同じような事を考えているのが分かりました。
その後私達は、小鳥のようにパンを少しずつかじりました。
パンは焼きたてなのかとても美味しく感じました。
「ああーーっ!!!!」
私は声を上げました。
全員が少しイスから飛び上がりました。
「ど、ど、ど、どうしたんだよう! レイカ姉ーー!!??」
「チビーー!!!! 私、あなたからこの金属のことをまだ教えてもらっていなーーい!!!!」
スープが余りにもまずくて、すっかり記憶から吹っ飛んでいました。
危うく聞くのを忘れるところでした。
私はもう一度金属のカケラを、手のひらの上に乗せて前に出しました。
「こ、これかーー!! これは……た、大変な金属なんだ」
「や、やっぱり」
「そ、そうさ。これはダメなんだ」
「ですよね。大変な金属ですよね。ダメですよね」
「うん、こいつはだめさ。加熱しても打っても加工が出来ないんだ。やばい金属さ」
「あの、この金属がほしいの、どうしたらいいですか?」
「こ、この金属がほしいだってーー!!!!」
チビはすごく驚いています。
やっぱり、とんでも無く高いのでしょう。
子供の私には買えないのかもしれません。
でも、子供達の為に何が何でも必要なのです。
「はい、どうしても必要なの、いくらくらいするのか教えて?」
「あーはっはっはっ!!」
とうとうチビは笑い出しました。
これは、私達が手に入れる事が笑い事のように不可能と言うことなのでしょう。
「……」
私は目に涙が溜まって来ます。
そのまま黙って、チビの次の言葉を待ちました。
「その金属の名前は……」
「はい。名前は……」
「ゴミっていうのさ」
「えっ、ゴミ??」
な、なにを言っているのでしょうか?
この金属がゴミ!!
「ふふふ、ゴミだよ。鉄の精錬の時に出て来て邪魔なんだ。ほら街の東に湖があるだろ、そこに捨てているから大量に沈んでいるよ。だからこんな物はタダだよ、ゴミなんだから。そんなのを買いたいなんて言ったら、悪い奴ならお金をだまし取られちゃうぜ」
「ええーー!! ほ、本当ー!!」
「本当に本当。しかも二千年分ぐらいあるから、大量にあるはずだぜ」
「チ、チビーー!!!!」
私は思わずチビに抱きついてしまいました。
「や、やめろよなーー!! ふへへへ」
「あ、そうだ!」
「な、何だよ。もう元に戻るのかよ」
私は素に戻ると、チビに金を見せました。
「これをお金に交換できないかしら?」
「な、なんだよ。レイカ姉はお金持ちなのか。出来るよ。この先の商館でやってくれるよ」
「ありがとう。これは一個チビにあげるわ」
「ええーーーっ!!!! 無理無理、もらえねえよ!! こんな高価な物ーー!!」
「いいのよ、もらって。その位、感謝しているの。じゃあね、本当にありがとう。また、いつか縁があったら会いましょう」
この金属がタダなら、金はもう必要がないと言っても良いくらいです。
チビに全部あげても良いくらいです。
私はうれしくて、天にも昇る気分です。
「なんだよ。もう行っちまうのか。元気でなー」
チビはさみしそうな顔をしましたが、すぐにスープに視線を向けるとうれしそうに食べ始めました。
お子様ですね。
私達はうれしそうに食事をするチビと別れ、お店を後にしました。
四人が顔を下に向けて表情が見えない様にして肩を揺らしています。
私が、イサミちゃんの顔をのぞき込むと顔は笑顔ですが、大粒の涙がポタポタひざに落ちています。本気泣きのようです。
どうしたのでしょうか?
「チビ、ありがとう。レイカ姉が、こんなに可愛い表情をするのを見たのは初めてだ。いつも難しい顔をして、おばあさんみたいだった。レイカ姉のこんな可愛い顔がみられるなんて……こんなにうれしいことはない。チビこの恩は忘れない。なにか困った事があったら俺達の事を思い出してほしい。必ず力になると約束しよう。俺はヤマト村のイサミ」
「俺はチマ」
「俺はシノブ」
「俺はヒジリだ」
「忘れないでくれ!!!!」
全員がチビに頭を下げた。
「よせやい。ただ思ったことを言っただけだよ。冷めるといけないから食べようぜ」
チビは、照れくさそうにスープを口に運んだ。
美味しそうに目を細めました。
私もチビにならって口に運びました……が、これは……!!??
私は四人の顔を見た。
四人とも目を大きく見開いています。
――まずーーい!!!!
恐ろしくまずいです。
肉に腐敗臭がして、それをごまかすためスパイスが一杯使われている。
でも、ごまかしきれていなくて、腐敗臭のする肉の味がとても気持ち悪い。
もう、飲み込むことすら拷問です。
でも、吐き出すのはチビに悪くて何とか飲み込みました。
昔、日本にいたときに西洋では、スパイスが金と等価交換だったというのを思い出しました。
肉が腐らないようにして、長期保存をする為に必要だったと聞きました。
でもきっと腐った肉の味をごまかすためにも使っていたのでしょう。
ヤマト村では、冷蔵庫があるので、いのししや鹿の肉は新鮮なまま食べています。
ここで生活する人達は、この味が標準なのでしょう。
ですが私達にこれは、食べることが無理なようです。
「……」
私達五人は、スープを見つめ固まりました。
「なんだ、いらないのか? じゃあ、しょうが無いなあー。全部俺がもらうよ。ふふふ」
チビは全部食べられるのがうれしいのか、上機嫌で全員分の皿を自分の前に持って行きました。
私は心の中で、このご恩はお忘れしませんと手を合せました。
他の子達を見たら瞳をウルウルさせてチビを見つめています。
全員同じような事を考えているのが分かりました。
その後私達は、小鳥のようにパンを少しずつかじりました。
パンは焼きたてなのかとても美味しく感じました。
「ああーーっ!!!!」
私は声を上げました。
全員が少しイスから飛び上がりました。
「ど、ど、ど、どうしたんだよう! レイカ姉ーー!!??」
「チビーー!!!! 私、あなたからこの金属のことをまだ教えてもらっていなーーい!!!!」
スープが余りにもまずくて、すっかり記憶から吹っ飛んでいました。
危うく聞くのを忘れるところでした。
私はもう一度金属のカケラを、手のひらの上に乗せて前に出しました。
「こ、これかーー!! これは……た、大変な金属なんだ」
「や、やっぱり」
「そ、そうさ。これはダメなんだ」
「ですよね。大変な金属ですよね。ダメですよね」
「うん、こいつはだめさ。加熱しても打っても加工が出来ないんだ。やばい金属さ」
「あの、この金属がほしいの、どうしたらいいですか?」
「こ、この金属がほしいだってーー!!!!」
チビはすごく驚いています。
やっぱり、とんでも無く高いのでしょう。
子供の私には買えないのかもしれません。
でも、子供達の為に何が何でも必要なのです。
「はい、どうしても必要なの、いくらくらいするのか教えて?」
「あーはっはっはっ!!」
とうとうチビは笑い出しました。
これは、私達が手に入れる事が笑い事のように不可能と言うことなのでしょう。
「……」
私は目に涙が溜まって来ます。
そのまま黙って、チビの次の言葉を待ちました。
「その金属の名前は……」
「はい。名前は……」
「ゴミっていうのさ」
「えっ、ゴミ??」
な、なにを言っているのでしょうか?
この金属がゴミ!!
「ふふふ、ゴミだよ。鉄の精錬の時に出て来て邪魔なんだ。ほら街の東に湖があるだろ、そこに捨てているから大量に沈んでいるよ。だからこんな物はタダだよ、ゴミなんだから。そんなのを買いたいなんて言ったら、悪い奴ならお金をだまし取られちゃうぜ」
「ええーー!! ほ、本当ー!!」
「本当に本当。しかも二千年分ぐらいあるから、大量にあるはずだぜ」
「チ、チビーー!!!!」
私は思わずチビに抱きついてしまいました。
「や、やめろよなーー!! ふへへへ」
「あ、そうだ!」
「な、何だよ。もう元に戻るのかよ」
私は素に戻ると、チビに金を見せました。
「これをお金に交換できないかしら?」
「な、なんだよ。レイカ姉はお金持ちなのか。出来るよ。この先の商館でやってくれるよ」
「ありがとう。これは一個チビにあげるわ」
「ええーーーっ!!!! 無理無理、もらえねえよ!! こんな高価な物ーー!!」
「いいのよ、もらって。その位、感謝しているの。じゃあね、本当にありがとう。また、いつか縁があったら会いましょう」
この金属がタダなら、金はもう必要がないと言っても良いくらいです。
チビに全部あげても良いくらいです。
私はうれしくて、天にも昇る気分です。
「なんだよ。もう行っちまうのか。元気でなー」
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お子様ですね。
私達はうれしそうに食事をするチビと別れ、お店を後にしました。
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