モンスターのいない世界で私の作るゴーレムだけがモンスター扱いでした。仲間だけレベルアップさせ巣立たせたら仲間達が世界の頂点に立っちゃいました

覧都

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第四十一話 卒業試験

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「さあ、レイカ姉!! もう、ここには用は無くなった。さっさとヤマト村へ帰ろう!!」

 イサちゃんの話し方に強い自信を感じます。
 敵将ドウカンとの戦いはイサちゃんをひと回りもふた回りも成長させたようです。

「そうね。アサちゃんの事も気がかりです。一度帰りましょう」

「レイカねぇー様ぁぁーー!!」

 お城の方から声がします。
 必死で手を振りながら美しいドレスの女性が走って来ます。

「あら、イオちゃん。どうしました」

「イオちゃんって、まさかイオ王女様!?」
「そうだ!! イオ王女様だーー!!」
「レイカ姉様と言ったぞ!」
「王女様が様を付けている!!」
「ひょっとして、あのチビ、ものすごいお方なのかーー????」

 受験生がまたザワザワしています。
 それはいいけど、チビ言うなしぃーーーーっ!!!!

「はぁーーっ! はあぁーーっ!! ふうーーっ!! ふーーっ!! レイカ姉様!!」

「そんなに慌ててどうしたのですか?」

「いま、報告を聞きました。イサ様が敵将ドウカンを倒してお戻りになったと」

「ふふふ」

 イサちゃんが少し上機嫌で笑っているみたいです。
 鎧で顔が見えませんが、きっと鼻の穴がおっぴろがっていますね。

「あの、レイカ姉様、お願いがあります。イサ様をサイシュトアリ国に残していただきたいのですが、駄目でしょうか?」

「イサちゃん、イオちゃんがこう言っていますがどうしますか?」

「はい、せっかくのお誘いですが、俺はレイカ姉の側を離れないと決めています。それにこの国にはアーサーがいる。もうじき、ひと回り強くなって帰って来る。待ってやって欲しい」

「そ、そうですね。残念ですが……あっ、そうだ、それはそうと……レイカ姉様……」

「はい??」

「あの、鉄人を私にも一人譲っていただけませんか??」

「えっ!?」

「お、お願いします。この通りです」

 一国の姫様がこんなおチビさんに頭を下げています。

「そうですか……、仕方がありませんね。イサちゃんの件を断ってしまったし、鉄人程度ならいいかなあ」

「ほ、本当ですか!!」

 ぱあっと顔が明るくなりました。
 美しい顔ですね。さすがは一国のお姫様です。

「あーでも……」

「えっ、でも……何ですか??」

「材料がありません。鉄をください」

「そんなことですか。二週間ください。大量の鉄をご用意します」

「そそそそ、それなら、俺にも、俺にも一人ください。王女様より大量の鉄を用意します」

「ゾングさんまで……ですか。まあ、いいでしょう」

「おおおおおおーーーーーーっ!! やったぁーー!!!! やったぁーーーー!!!! やったぞぉぉぉぉーーーーっ!!!!!!」

 いい年したおじさんが踊り出しました。
 世界一のお金持ちがこんなに喜ぶなんて。
 鉄人なんて、それほど大した物ではありませんよぉ。恥ずかしくなってきました。

「あーー鉄は、捨てるようなゴミでかまいませんからね」

「はい!!」
「はっははーー!!」

「じゃあ、二週間後にお会いしましょう」

 私達はいったん王都を出てヤマト村に戻りました。



「レイカ姉ーー……ぉかぇりぃーー!!」

 ヤマト村に着くとアサちゃんが出迎えて……。
 なんだか様子が変です。
 フラフラしています。

「ど、どうしたのですか????」

「えーーっ!? どうもしていませんよぉーー」

「まさか!?」

 どうやら、アサちゃんは、夜寝る間を惜しんで二十四時間戦っていたみたいです。
 母屋のドアを開けて様子を見たら、床に回復剤の空の容器が沢山転がっています。

「すごーーい。休まずにやっていたんだ」

 チマちゃんが驚いています。
 ブラック企業じゃないんだからー。

「アサちゃん!! かたきはうった!!」

 鎧を脱ぎ捨てたイサちゃんが、自慢そうに言いました。

「えっ!? 殺してしまったのか?」

「うふふ、それは出来なかった。倍返ししただけで逃げられてしまった」

「そうかーー。でもそれで充分だな」

 アサちゃんは、どこかさみしそうに言いました。

「では、いよいよ卒業試験ですね。その前に美味しいご飯を食べて、ゆっくり眠りましょう」

「はーーーーい!!」

 私はその夜、アサちゃんに抱っこをされて眠りました。



「うわあっ、お、重い!! これは無理だ。持てない。」

 翌日の朝、卒業試験のためにイサちゃんが、紫の大剣をアサちゃんに渡しましたが、どうやら重すぎて装備出来ないようです。

「では、これですね」

 チマちゃんが、紫龍刀を渡しました。

「うん、これなら、使いこなせそうだ」

 数回素振りをすると、青いゴーレムのリルちゃんと向かい合いました。

「では、始めてください」

「うりゃああぁぁぁぁーーーーーー!!」

 アサちゃんが、リルちゃんに斬りかかります。
 自分の力量を確かめるようにリルちゃんに紫龍刀を打ち付けます。
 既に鉄人を易々と倒すアサちゃんにとって、リルちゃんの動きは見切ることの出来る範囲内のようです。

「さすがです」

 見ている子供達が、感心しています。
 そうですね。
 ここにいる間、どれだけ必死に鉄人と戦っていたのかがわかります。
 リルちゃんの動きは鉄人とは比べものにならない位素速いのです。

「でやああぁぁぁっ!!!!」

 アサちゃんが気合いを込めた一撃を加えました。
 リルちゃんの体が胸のあたりで斜めに少しずつずれていきます。
 ポトリとリルちゃんのコアである魔石が地面に落ちました。
 両手で包み込めないほどの魔石が地面で赤く輝いています。

「見事ですね。これで、アサちゃんは卒業です」

「ありがとうございます!!」

 深々と頭を下げてくれるアサちゃんに、私は情けなさがこみ上げてきました。

「私にもっと力があれば、リルちゃんを量産して、レベル上げをさせてあげることが出来るのですが、今の私の魔力はリルちゃんとハルちゃんを出すだけで一杯一杯です。これ以上の魔力の使用は、私の体を小さくしてしまいます。いたらない私を、許してください」

 私はここまで、魔力について一生懸命検証してきました。
 私の魔力の総量は、木人多数と鉄人多数、そしてミスリル製のゴーレムリルちゃん、オリハルコン製のゴーレムハルちゃんで90%程を常時使っています。ひょっとするとここが100%かもしれません。
 この状態以上の魔力使用は出来るのですが、体調を崩します。最初は気持ちが悪くなり気絶をしたり、最悪の場合命を落とすかもしれません。
 さらに最悪なのは、体が幼くなります。

 感覚的には、50%までなら、体に負荷はかかりません。それを越えたあたりから体に変化が現れます。
 最初は歳を段々取らなくなり90%で完全に止まります。その先は年齢を失い幼くなっていくのです。
 だから、今の私には、このゴーレム達で限界なのです。
 ただ、年齢と引換えに良いこともあります。
 それは、飛躍的に魔力の上限が上がることです。
 日々上がっているのが実感出来るほどです。

 でも、それでも、私が生きている間にリルちゃんやハルちゃんを量産出来るとは思えません。これが私の限界なのです。

「何を言うんだ。レイカ姉のおかげで俺はここまで来られたんだ。感謝しても仕切れない。それに、きっとレイカ姉のことだから、もうじき一体、また一体とリルちゃんの量産をしていくんだろ。期待しているよ」

 二週間、私達はヤマト村でのんびり過ごしました。
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