魔王

覧都

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第十五話 最初の戦い

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ダンジョン地下三十階層

「うわあああーーーー」

叫び声が聞こえる。

「君達は、な、なにをしている」

逃げてきたA級冒険者が驚いている。
立ち止まったA級冒険者の後ろを、同じパーティーのメンバーが必死で走り抜けている。
これだけでも緊急事態というのがわかる。

「モンスターの狩りに来ました」

フォリスさんが美しい女神の様な笑顔で答えた。
A級冒険者の顔が赤くなった。
ふふふ、こいつはフォリスさんの美しさがわかるようだ。
すごく親近感が湧く。

「ここは危険だ、逃げたほうがいい」

優しい冒険者なのだろう、初めてあった俺たちを気遣っている。

「心配は、いりません」

丁寧に答えて俺は、上級冒険者達が逃げている方向とは反対の方向へ走った。
エリアマスターのモンスターが暴れていた。
可哀想に冒険者が四人倒れている。
胸の階級章を見ると、S級二人とA級二人だった。

エリアマスターはキングホワイト十体。
全身真っ白で、目がクリッとしたぬいぐるみのようなモンスターだ。
だがその体はでかい。ダンジョンの天井に付きそうなほどの大きさだ。
体を覆う剛毛は剣や炎が通じない厄介な相手だ。

バキッ、バキッ
「ぎゃあああーーーー」

俺は動きの、のろいモンスターの足を次々へし折り、胸の毛をむしった。
こうなってしまえば狩るのは楽だ。

「フォリスさん、暗黒の爪を装備してとどめをさして下さい」

フォリスさんの爪は、ダンジョンの宝物庫にあった、オリハルコンの爪に俺が魔法で加護を付与したものだ。
フォリスさんは最初ためらったが、一匹目にとどめを刺した。
するとモンスターの体は消えて、一瞬で魔石に変わった。
フォリスさんはそれで、モンスターが生物ではないのをわかってくれた。

十体のモンスターは、次々フォリスさんにとどめを刺されて、魔石に変わった。
フォリスさんと、パーティーを組んでいるイルナの、二人の体が六回輝いた。

「冒険者さん、魔石は必要無いので、置いて行きます。もしいるのなら、自由に持って行ってください」

「本当か。俺はチーム、光の絆のデュオンだ」

「デュオンさんですか。構いません。僕たちはギルドに登録していないし、する気もありません。魔石はギルド以外に売れませんから必要ありませんので、気にせずにどうぞ」

「ありがとう」

「こちらの、四人は大丈夫ですか」

俺は、倒れている四人を見た。
明らかに死んでいるようだが、少年の姿の俺はとぼけてみた。

「……うむ、大丈夫だ、気にしないでくれ」

ふふふ、俺たちに気を使ってくれている。
デュオンさんはいい人のようだ。
見た目も人の良さそうな感じがする。

「じゃあ、先を急ぎますので」

「ま、待ってくれ、名前を教えてはくれないだろうか」

「僕の名前はトウで、美しい女神の様な女性が、フォリスさん、ちびがイルナだ」

俺は偽名を使った。
美しい女神の様な女性と言われて、フォリスさんが赤くなってもじもじしている。か、かわいい。

「父ちゃん、おいらの紹介ひどすぎだよう」

イルナが怒っている。

「ふふふ、縁があったらまたお会いしましょう」

こうして、デュオンさんと別れ、三十一階層に向った。





――いっぽう、アスラと分かれた、チ-ム天神

「ぎゃーーーーーはっはっは」

俺たち五人は腹を抱えて笑っていた。

「見たかよ、アスラの顔、泣きそうになっていたぜ、本当にくそ勇者だよな。なにが天神の勇者だよ。いい気になりすぎなんだよ」

俺の言葉に全員がうなずいた。

「さあ、いつまでもこんな所にはいられねえ。移動魔法を使ってくれ」

俺が魔女のパレスに向って移動魔法でダンジョンからの脱出を頼んだ。

「ロドン、私には使えないわ。神官様はどうなの」

「私にも使えません」

「なんだって、嘘だろう」

「じゃあ、移動魔法は、アスラしか使えないのか」

全員の顔が青ざめた。

「だめだ、ぐずぐずしていたら、モンスターが復活する。走って出来るだけ上の階へ逃げるぞーーー」

俺たちは、ダンジョンの中を必死で上の階層へのぼった。
二十階ほどのぼったら、モンスターがすでに何匹か復活していた。

「ちっ、復活しているぜ」

「ロドン、雑魚モンスぐらい倒していきましょう」

「わかった、戦士の俺が一撃加える、援護頼む」

目の前にいる、オークに渾身の一撃を加えた。

ガキィーーン

オークの一番柔らかい腹に一撃を加えたが、高い金属音と共にはじき返された。
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