魔王

覧都

文字の大きさ
44 / 208

第四十四話 挑発

しおりを挟む
「うわーーーーーーーっ」

「ぎゃあーーはっはっはっ」

「ぐわーーーーーーっ」

「ぎゃあーーはっはっはっ」

「リコお嬢様。そんなに笑っては失礼ですぞ」

「だってロホウ。人が、人が、プッ、玉座に現れる度に悲鳴を上げるから、おかしくって」

私は、魔王の玉座での騒ぎの調査に来ている。
何故なのか、手足の骨を折られた男達が、玉座の上に降って来るのだ。
人が転送されてくる度、結界をはっている魔法使いが悲鳴を上げる。本当は失礼な事なのだろうけど、それを見て笑ってしまう。だって、面白すぎるんだもん。

「うわああーーー、またきたーーー」

「お前達、本気で結界を張っているのか。真面目にやれ――!!」

ロホウが魔法使いに怒りをぶつけます。
いい気味です。
魔法使い達は普段、私達騎士を馬鹿にしているのですから。

「ほ、本気ではっている。こんな結界をやぶれる者などおらぬはずだ。うわーーーーっ、また来たー」

「くーーっくっくっ……」

言っているはなから、次が送られてきました。
もう気の毒で、笑いを押し殺そうとしても、止められません。

「こ、これは、どうなっているのだー。――おい、しっかりしろ、しかりしろ」

魔法使いの一人が、口から泡を吹いて倒れた。

「ロホウ、見てあいつらの腕」

「ふむ、二匹の龍、闇の双龍とかいう組織の者ですな」

「お父様の支配地区の者ですね」

「そうですな」

「一体誰がやったのか、明日調査に行きましょう」

私は事の真相を探る為、明日、闇の双龍のアジトへ調査に行くことにした。

「はっ」

「ぎゃーーーーー、又来たーー」

「ぷーーーっ、くっくっくっ」

「凄いですなー、すでに四百人以上、来ておりますぞ」

明日が楽しみになりました。



翌日、

「ふむ、誰もいませんな」

ロホウが首をかしげます。
魔王城に近い街の一角に、闇の双龍のアジトがあります。
普段は人相の悪い男達が、大勢いるこの路地に人がいません。

「よかったわ、騎士団を三百人連れてきて、相当恐ろしい敵ね」

「結局千人以上の男達が、送り込まれたと聞きました」

「そうですね」

次から次へと、送り込まれる手足の折れた男達。
それを止める為、城にいる魔法使いが全員集められたが、防ぎ切れなかったと聞いた。
こんなことを出来る魔力の持ち主は、私の父を含む魔王の子か、森の魔女くらいだと言っていた。

――いったい、誰なのだろうか?



「あ、あれは?」

闇の双龍のアジトの並ぶ路地を左折して、裏側にまわった。
そこに見慣れぬ商会が出来ている。

「エドバン商会?」

聞いたことも無い商会だ。
こんな場所に、商会を立ち上げる馬鹿はいない。
昨日の、事件に無関係と思えるはずも無い。

「少しのぞいて見ます」

私は、窓から中をのぞいた。

「あーーーーーっ」

私と一緒にのぞいていたロホウも、声を上げた。

「しばらく、ここに待機していなさい。私とロホウはここで聞き取り調査をします」

配下の騎士を表に待たせ、私はロホウを護衛にして、商会のドアを開けます。

「いらっしゃいませ」

美しい女性が声をかけてくれました。

「やっぱり、あなた……」

奥にいる少年に見覚えがある。

「あっ、リコさん、ロホウさん」

私達に気が付いた美少年が、太陽のような笑顔で私達の名前を呼んでくれた。
明るいところで見る少年は美しくて、とてつもなく可愛い。
しばらく見とれてしまった。

「魔王様ですよね。ここで、いったい何をしているのですか」

「はい、お店の準備です」にこり

ぐはっ、なんだこの笑顔は、可愛すぎるだろう。
玉座の上で見た時は暗かったのでよく見えなかったのかー。
私がこんな少年に、ここまで心奪われてしまうとわ。

私はほてる顔を見られないように、うつむいてたずねた。

「昨日の事を聞きたいのですが……」

「あーーあれですか。あれはこの人達がやりました」

「この人達……」

「フォリスさんと、クザン、コデルさんと、シュラさん、シュリ、シュカです」

「な、何ですか、このシュリという人は、私にそっくりじゃあないですか」

「ほんとですね。驚きました」

「……、そ、そうではなくて、私は、この商会の裏の、闇の双龍という組織について聞いているのです」

「ですから、骨をポキポキ折って玉座の間に移動させたのは、僕とこの人達です。間違いありません」

このことは、誰もが知っていることではありません。
信じるしか無いようです。

「たった、これだけの人数で……」

しかも、まともに戦えそうな戦力は、クザンという大男だけです。
あとは、少年と少女、女が三人、エルフ美女が一人だ。

「し、信じられんそんなこと」

ロホウがつぶやきました。
私も信じられません。

「ふふふ、ロホウさんはお強いと思いますが、試してみますか、丁度この商館はまだ何もないので、試合ぐらい出来ると思いますよ」

「ふむ」

「こっちは、フォリスさんにお願いしましょうか」

少女がぴょんぴょん跳びはねて喜んでいる。
この子はこの子で可愛すぎる。
でも、女だからか心は、トキメかなかった。

「ま、まて、こんな少女では、殺してしまう」

ロホウがあせっている。
この者達は、知らないのだろうか。
ロホウは若いけど前回の武術大会では、猛将オウブを破って優勝した男なのですが……。

「なっ……」

その言葉を聞いて、少女の眉が吊り上がった。
なんて沸点の低い少女なのだろう。
ズダーーーン
そしてロホウの足を払って、倒してしまった。

「ぐああーーーー、な、なにをする」

さすがのロホウの顔にも少し怒りが宿っている。

「……」

少女は、倒れたロホウを見て、無言で笑っている。
可愛いくせに、感じが悪すぎる。

「ふむ、わかった。お相手しよう」

うわあ、ロホウが本気になっている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!

本条蒼依
ファンタジー
 氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。  死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。  大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...