魔王

覧都

文字の大きさ
50 / 208

第五十話 影の部隊

しおりを挟む
敵勢力がいなくなったのを確認し、兵士を休憩させて幹部に集まってもらった。

「さて、魔王軍最高幹部の皆さん、これからの目標をお伝えします」

「……」

一同は鎮まりかえって、ツバを飲み込んだ。
全員の顔をゆっくり見回して、僕は重々しい雰囲気を出します。

「魔王正規軍の次なる目標は、魔王の玉座です。皆さんの手で奪還し、僕をそこに座らせて下さい」

「……」

あれ、誰も反応が無い、僕みたいな子供が言ってもあんまり、リアクションも取れないのでしょうか。

「…………うおおおおおおおおおーーー!!」

オウブさんの声が一番大きいですが、皆さんが雄叫びを上げてくれた。感動していてくれたようです。

「では、オウブさん」

「はっ」

「オウブさんは、中央を進軍し、玉座奪還を目指して下さい」

「は、ははーーっ」

オウブさんが、丁重に頭を下げてくれた。

「チョカイさんは、北部を進軍し、玉座奪還を目指して下さい」

「はっ」

「リョウメイさんは、南部を進軍し、玉座奪還を目指して下さい」

「はっ」

「但し、占領した村や町からの略奪や虐殺は禁じます。もし、そんなことをする者がいれば、確実に死罪として下さい」

「はっ」

オウブさんと、チョカイさん、リョウメイさんの返事がそろった。

「そして、敵兵も捕まえたら、武器と防具を没収して逃がしてあげて下さい」

「逃がすのですか。また、敵としてむかってきますが……」

リョウメイさんが、疑問をぶつけてきた。

「はい、かまいません。いずれは魔王軍の一員となり、人間の国を攻める時の仲間になる人達です。何度でも逃がして、その都度勝っていけば、いずれ心から信服してくれるはずです。いいえ、信服させて下さい」

これはこれで本心ですが、僕はもう一つの事を考えています。
武器と防具を没収した兵士達は再度出兵する時、武器と防具が必要となり、エドバン商会から高い武器と防具を買う事になります。
それと、捕虜にすると、その食事や、管理に多くの経費がかかります。
逃がした方が、利があると考えているのですよ。僕わ。

「わかりました。魔王様はそんな先の事までお考えでしたか」

「はい、玉座の次は皆で人間達から国土の奪還をしましょう」

「はっ、わかりました」

リョウメイさんは理解してくれたようです。
オウブさんもチョカイさんもうなずいているので大丈夫でしょう。

「ルチョウさんは、引き続き居城の建設をお願いします。建設には、占領した町や村から、孤児や貧しい人を集め、仕事を与えて下さい。お昼ご飯は、全部魔王軍で費用をもって、欲しいという人には、どんどん食べさしてあげて下さい。魔王は国民にひもじい思いをさせないと広めて下さい。家の土地は、ただで分け与えて下さい。当然給料も、弾んで下さい」

「わかりました。しかし費用がかさみますが……」

「お金は、魔王都から、奪い取りますので気にしないで下さい。城の建設だけでは無く、町の開発までお願いします」

「はっ、わかりました」

「では、宴会でも始めましょうか」

「おーーーーっ」

僕の言葉で、食事の準備がはじまった。
皆が準備に入ったのを見て僕は足下に、目を落とす。
そして、気持ちよさそうにうっとりしている自由人の前に座った。
頭を撫でると。

「ニャーーー」

可愛い声を上げる。
うん、可愛い。
また、腹を出してきたので。

「おーよしよし、よしよし」

撫でてあげた。

「アスラ様!!」

「わっ!?」

急にフォリスさんが大声を上げた。
僕はその剣幕に驚いた。

「ど、どうしたのですか?」

「この方の鑑定をしてみて下さい」

「えーーと、天神の忍者……えっ天神の忍者ってどんなジョブだ」

「密偵みたいなもんニャ、生まれつきの固有ジョブみたいニャ」

「へーー、凄い」

僕の勇者みたいなものか。

「そ、そんなところで、止らないで下さい。もっと先です」

フォリスさんがあせっています。何でしょうか。

「えーーっと、天神の忍者、名前はアド、レベル百二十、なっ、レベルが高い」

フォリスさんは、このレベルの事を言っていたのか。
確かに個人でここまで上げたのなら、凄いことだ。

「ち、違います。どうしてそこで止めるのでしょうか」

フォリスさんにあきれられてしまった。
この先に何があると言うのだろうか。

「えーーっと、天神の忍者、アド、レベル百二十、年齢二十歳……えーーーーーっ」

二十歳!?
どう見ても、七歳か八歳……もっと下にも見える。
今、僕の手は、二十歳の女性の胸から腹にかけて上下している。

「うわあーーーーーっ」

思わず手を離した。

「ふふぃひ」

アドさんが変な笑い声を上げ、悪魔のような笑顔になった。

「うっ」

少し僕はたじろいでしまった。

「女をこんなにもてあそんだのなら、責任をとってもらわないといけないニャ」

「な、なんですって!!」

フォリスさんとリコさんの声がそろった。
ま、まさか、け、結婚しないといけないのか。
まずい

「ぼ、僕は、もうじき勇者に殺される身です……お、おんにゃの人と、そういう関係には、にゃ、なれないのれす」

う、ううう、うわずって、まともに話せなかった。

「それなら、なおの事ニャ、アドの飼い主になってもらうニャ。そして、飼い主の命は、アドが命をかけて守るニャ」

「はーーっ、そういう事ですか」

僕と、フォリスさんとリコさんの声が合わさった。

「クザン、ダンジョンの百四十階層の、エリアボスは何という名前だったかな?」

「はっ、我あるじ、ジュウドウです」

「うん、ジュウドウと配下の名前は?」

「はい、シュザクにあたるのが、シュドウ。スザクにあたるのがシャドウです」

「あいつら、姿と気配を消して、移動魔法を使うから戦いにくかった。だから密偵に良いと思うのだけど、配下になってくれないかな」

「配下になるかどうかは、ジュウドウ次第ですが、アスラ様とフォリス様の配下になりたくないモンスターはいないと思います」

「ちょっと、ダンジョンへ行って来る」

ジュウドウは喜んで配下になってくれた。
ついでにジュウドウ配下のシュドウ百人、シャドウ五百人も配下になってくれた。
ダンジョンの床に転がっている、ジュウドウとシュドウ、シャドウの魔石をあるだけ収納した。
ジュウドウは、クザンと同じ位の体格で色も似ているが、ちょっとインテリっぽいおっさん、シュドウは灰色でシャドウは真っ黒の人型モンスターだ。

「アドちゃん、いや、アドさん」

「アドでいいニャ、アドは飼い猫ニャ」

「アド、シュドウとシャドウを配下にして、影の部隊を作って、情報収集をお願い出来ますか」

「嫌ニャ」

「えっ」

「ちゃんと命令してほしいにゃ」

「アド、影の部隊を編成し世界中の情報を収集せよ」

「ニャーー」

アドは抱きついて来た。
お、お前こそちゃんと返事をしろーーー!!
まあ、可愛いからいいけど……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!

本条蒼依
ファンタジー
 氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。  死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。  大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...