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第五十四話 心服
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「この者達を治癒し、装備を全てかえしてやれ」
「なっ……」
俺が装備を全て返却するとシジセイが下を向いた。
泣いているようにも見える
「オウブ様、俺たちを一度解放しては貰えませんか」
「ふふふ、構わぬ自由にするがよかろう」
「あの、このまま帰ってこないとか考えないのですか」
「俺は、シジセイという男を信じた。それでよかろう」
「はっ」
「いや、待て!!」
「……!?」
シジセイが驚いた顔をしている。
「これを持って行け」
俺は、まがまがしい、あれを出した。
「こ、これは?」
「魔王様から全兵士に配られている、エリクサーだ。けがも体力も魔力も全開して、素早さが二時間ほど上昇する。二個ずつ持って行け」
「……」
シジセイは肩をふるわせながら受け取ると、兵士達と村を出て行った。
いくつかの村と町を復旧させて、進軍しているとすでに三日たっていた。
シジセイの事は、すっかり忘れてしまっていた。
「オウブ様、町から煙が出ています」
「うむ」
「オウブさまーー!!」
町の防壁でシジセイが手を振っている。
そして、門を開放すると、五千人程の兵士が出て来た。
「近隣出身の兵士です。魔王軍の末席にお加えいただくよう、伏してお願い申し上げます」
俺の前で臣下の礼をとった。
「シジセイ、歓迎しよう」
シジセイの参入により、行軍が楽になり、進軍すればするほど兵士の数が増えた。
そして、巨大城塞都市イブリーに到着した。
「オウブさん、お疲れ様です」
「うおっ」
オウブさんは不意に後ろから声をかけられて驚いたようだ。
「やあ、シュブちゃんもシュオウちゃんも、久しぶり」
僕があいさつをすると、二人ともぴょんぴょん跳びはねて喜んでいる。
それを見るオウブさんが複雑な表情をしている。
「魔王様……」
オウブさんがつぶやくと、全軍が臣下の礼をとった。
遅れて、オウブさんも臣下の礼をとる。
「皆さん、楽にして下さい」
僕は笑顔で声をかけた。
「今日はお一人ですか」
「はい、何だか商売が順調で忙しいのと、兵士の数が増えてしまって、補給の手配が大変らしいので、こっそり一人で来てしまいました」
「あ、あのう……」
何だか凄い美形の武人が、恐る恐るオウブさんに話しかけた。
「おお、魔王様。紹介します、この者はシジセイです」
「シジセイです。誠心誠意お仕えいたします」
シジセイさんは律儀な人のようです。
再度臣下の礼をとってくれました。
「これは、シュザクとスザク。こっちがシュドウとシャドウです。手勢にお加え下さい」
シュザクを一人、スザクを十人、シュドウを一人、シャドウを五人転送した。
目をまん丸にして驚いています。
「あ、ありがたき幸せ」
「さて、どう攻めましょうか」
僕は猛将オウブさんと、シジセイさんに挟まれて、巨大な城塞都市を眺めました。
防壁は十五メートルを越えているでしょう。
そこに一万の兵士が城壁から弓を構えています。
こちらも、一万で兵士の数は互角です。
「敵将にリゴウという前魔王の将軍が来ています。何とか配下にしたいと考えているのですが……」
「なっ」
オウブさんとシジセイさんが驚いている。
「実は、一騎打ちをしたいと思っているのです」
「本気ですか」
「はい、そうしないとリゴウさんは納得しないと思います」
「……」
「ちょっと行ってきます」
「まっ……」
オウブさんは待ってと言おうとして、やめてくれた。
止めても無駄とわかってくれたようです。
僕はゆっくり、街へ近づきます。
弓が届くか届かないかのところで止りました。
「リゴウ、今降伏するなら、全て許す。降伏しろー」
僕はあえてゆるく言ってみた。
「……」
「負けてからの降伏なら、一兵卒に降格するぞー―」
「ぐぬぬ、き、貴様は、何者だーー」
すでに、頭に血が上っているみたいです。
「俺かー、俺は魔王だー。俺を殺せば戦争が終るぞー」
「お、お前のような奴が魔王だとー、ガキがふざけるなー」
「俺も暇じゃねーんだ、さっさと降りてこい!!」
僕があおったらリゴウさんの姿が消えた。
そして、門が開くとリゴウさんが出て来た。
「馬鹿が舐めおって、自分の愚かさを思いしれ!!」
太い棍をブンブン振り回して、ニヤニヤしながら歩いてきた。
近くで見ると、凄くでかい。
身長は二.五メートル、体重は五百キロを越えていそうだ。
「けがをしないうちに、降伏した方がいいと思いますよ」
「まだ言うかーー!! 叩き潰してやる」
振り上げた棍で僕をつぶす勢いで、振り下ろします。
僕は止っているように遅い棍を右に移動して、ギリギリで避けます。
そして、胸をトンッと押しました。
「かはっ」
城壁まで吹き飛び背中を壁にぶつけます。
「うわあああああーーーー」
我軍から、歓声が上がった。
歓声の中、リゴウさんにゆっくり近づく。
弓隊が我に返り、弓を射掛けてきた。
降ってきた矢に向って右手を伸ばして、収納魔法を発動した。
弓矢一万本、ありがとうございます。
そして意識を失っているリゴウさんの指をつかんでズルズル引きずって、弓の射程から外れます。
そして、両手両足を折りました。
「うおおおおおおおーーーでたーー本家アスラバキーーーー」
いやいやいや、そんな、歓声はいりませんよ。
しかも、なんですかその本家って、全員声が滅茶苦茶そろっているしー。
「なっ……」
俺が装備を全て返却するとシジセイが下を向いた。
泣いているようにも見える
「オウブ様、俺たちを一度解放しては貰えませんか」
「ふふふ、構わぬ自由にするがよかろう」
「あの、このまま帰ってこないとか考えないのですか」
「俺は、シジセイという男を信じた。それでよかろう」
「はっ」
「いや、待て!!」
「……!?」
シジセイが驚いた顔をしている。
「これを持って行け」
俺は、まがまがしい、あれを出した。
「こ、これは?」
「魔王様から全兵士に配られている、エリクサーだ。けがも体力も魔力も全開して、素早さが二時間ほど上昇する。二個ずつ持って行け」
「……」
シジセイは肩をふるわせながら受け取ると、兵士達と村を出て行った。
いくつかの村と町を復旧させて、進軍しているとすでに三日たっていた。
シジセイの事は、すっかり忘れてしまっていた。
「オウブ様、町から煙が出ています」
「うむ」
「オウブさまーー!!」
町の防壁でシジセイが手を振っている。
そして、門を開放すると、五千人程の兵士が出て来た。
「近隣出身の兵士です。魔王軍の末席にお加えいただくよう、伏してお願い申し上げます」
俺の前で臣下の礼をとった。
「シジセイ、歓迎しよう」
シジセイの参入により、行軍が楽になり、進軍すればするほど兵士の数が増えた。
そして、巨大城塞都市イブリーに到着した。
「オウブさん、お疲れ様です」
「うおっ」
オウブさんは不意に後ろから声をかけられて驚いたようだ。
「やあ、シュブちゃんもシュオウちゃんも、久しぶり」
僕があいさつをすると、二人ともぴょんぴょん跳びはねて喜んでいる。
それを見るオウブさんが複雑な表情をしている。
「魔王様……」
オウブさんがつぶやくと、全軍が臣下の礼をとった。
遅れて、オウブさんも臣下の礼をとる。
「皆さん、楽にして下さい」
僕は笑顔で声をかけた。
「今日はお一人ですか」
「はい、何だか商売が順調で忙しいのと、兵士の数が増えてしまって、補給の手配が大変らしいので、こっそり一人で来てしまいました」
「あ、あのう……」
何だか凄い美形の武人が、恐る恐るオウブさんに話しかけた。
「おお、魔王様。紹介します、この者はシジセイです」
「シジセイです。誠心誠意お仕えいたします」
シジセイさんは律儀な人のようです。
再度臣下の礼をとってくれました。
「これは、シュザクとスザク。こっちがシュドウとシャドウです。手勢にお加え下さい」
シュザクを一人、スザクを十人、シュドウを一人、シャドウを五人転送した。
目をまん丸にして驚いています。
「あ、ありがたき幸せ」
「さて、どう攻めましょうか」
僕は猛将オウブさんと、シジセイさんに挟まれて、巨大な城塞都市を眺めました。
防壁は十五メートルを越えているでしょう。
そこに一万の兵士が城壁から弓を構えています。
こちらも、一万で兵士の数は互角です。
「敵将にリゴウという前魔王の将軍が来ています。何とか配下にしたいと考えているのですが……」
「なっ」
オウブさんとシジセイさんが驚いている。
「実は、一騎打ちをしたいと思っているのです」
「本気ですか」
「はい、そうしないとリゴウさんは納得しないと思います」
「……」
「ちょっと行ってきます」
「まっ……」
オウブさんは待ってと言おうとして、やめてくれた。
止めても無駄とわかってくれたようです。
僕はゆっくり、街へ近づきます。
弓が届くか届かないかのところで止りました。
「リゴウ、今降伏するなら、全て許す。降伏しろー」
僕はあえてゆるく言ってみた。
「……」
「負けてからの降伏なら、一兵卒に降格するぞー―」
「ぐぬぬ、き、貴様は、何者だーー」
すでに、頭に血が上っているみたいです。
「俺かー、俺は魔王だー。俺を殺せば戦争が終るぞー」
「お、お前のような奴が魔王だとー、ガキがふざけるなー」
「俺も暇じゃねーんだ、さっさと降りてこい!!」
僕があおったらリゴウさんの姿が消えた。
そして、門が開くとリゴウさんが出て来た。
「馬鹿が舐めおって、自分の愚かさを思いしれ!!」
太い棍をブンブン振り回して、ニヤニヤしながら歩いてきた。
近くで見ると、凄くでかい。
身長は二.五メートル、体重は五百キロを越えていそうだ。
「けがをしないうちに、降伏した方がいいと思いますよ」
「まだ言うかーー!! 叩き潰してやる」
振り上げた棍で僕をつぶす勢いで、振り下ろします。
僕は止っているように遅い棍を右に移動して、ギリギリで避けます。
そして、胸をトンッと押しました。
「かはっ」
城壁まで吹き飛び背中を壁にぶつけます。
「うわあああああーーーー」
我軍から、歓声が上がった。
歓声の中、リゴウさんにゆっくり近づく。
弓隊が我に返り、弓を射掛けてきた。
降ってきた矢に向って右手を伸ばして、収納魔法を発動した。
弓矢一万本、ありがとうございます。
そして意識を失っているリゴウさんの指をつかんでズルズル引きずって、弓の射程から外れます。
そして、両手両足を折りました。
「うおおおおおおおーーーでたーー本家アスラバキーーーー」
いやいやいや、そんな、歓声はいりませんよ。
しかも、なんですかその本家って、全員声が滅茶苦茶そろっているしー。
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