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第五十五話 人質
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動けなくしたリゴウさんと本陣へ移動した。
「オウブさん、タイミングが丁度良さそうなので、チョカイさんのところへ行ってきます」
返事も聞かず、チョカイさんの戦場に移動した。
そして、動けなくした、魔将軍バーツを連れてもどってきた。
「オウブさん、二人の魔将軍の見張りをお願いします。リョウメイさんのところも丁度頃合いです。行ってきます」
返事も聞かず、リョウメイさんの戦場に移動した。
そして、動けなくした、魔将軍エイグを連れてきた。
「くっくっく、お前達もアスラバキを喰らったのか。で、俺たちをどうするつもりだ魔王さんよう!」
リゴウさんがバーツさんと、エイグさんを見て笑い、鋭い目つきで、僕をにらんだ。
「出来たら、配下になって欲しいのですが。くすっ、一兵卒として」
「ふ、ふざけるなー、誰が貴様の配下になどなるかーー!!」
リゴウさんと、バーツさんとエイグさんの声がそろった。
とんでもない大声です。耳が痛くなりました。
「困りましたねー。家族でも人質になってもらいましょうかねー」
「ふふふ、魔王城内の事を何も知らないくせに、何を言っている」
僕は後ろを向いて収納魔法で収納してある、あれとあれを出した。
それを、つけてくるりとまわった。
「なっ、アズサちゃん!!」
またまた、3大魔将軍の声がそろった。
相変わらず声がでかい。
僕は変装用のカツラと口紅を出してアズサに変装したのだ。
ついでにわかりやすいように、メイド服も着てやったのだ。
「アズサちゃんが魔王だったというのかー。ファンだったのにー」
三大魔将軍の声がそろった。
あんなに大声のくせに、後ろの方は妙に小声になっている。
――えっ、なんだって、後ろの方がよく聞こえなかったけど、背筋に寒いものが走った。すごい鳥肌が立っている。
「あなた達のことは、こうして魔王城に入り込んで調べました。これで信じて貰えますか」
「……」
三大魔将軍は、黙り込んで僕を見つめている。
ちょっと待って下さい。
この人達の顔から怒りが消えています。
それどころかほっこりして、頬が赤くなっているように見えます。
――おっさんたちがすごく気持ちわるいんですけどー。
「これを見て下さい」
僕は三人にそれぞれ一枚ずつ紙を渡した。
「こ、これは……」
三人は紙に目を落とす。
「その紙にはあなた達の、一族郎党の名前が書いてあると思います。過不足はありますか」
「そんなことを答えると思うのか!!」
「いいえ、答えなくても大丈夫です。うちの諜報部の長官アドが徹底的に調べてくれたものですから、間違いは無いはずです」
「そ、それがどうしたというのだ。まさか人質にすると言うのか」
「いいえ、その人達はすでに、全てアルアド領に監禁しました。あー、でも心配しないでください監禁と言っても、快適に暮らせるように、配慮はしています」
「な、なんだって……」
「あくまでも人質ですよ。配下になるのが嫌なら、捕虜としてのんびり隠居生活でもして下さい。でも、家族には会いたいでしょ。家族離ればなれは悲しいですからね」
「うおおおおおおーーーー」
オウブさんが、急に大声で泣き出しました。
兵士の中にも涙ぐんでいる人が何人もいます。
きっと最初からいる古参の人でしょうか。
今の言葉で僕とイルナの事を思い出したのでしょう。
オウブさんが、大粒の涙を出してくれているその前で、メイド服を着てふざけている僕を、許して下さい。
「魔王様、そこまで我らのことを考えて下さったのか」
大魔将軍が寝返ったとなれば、士気に大きな影響があります。
いまのこの状況なら、寝返りが判明すれば、家族も一族郎党ごと死罪になることが考えられます。
だから、寝返ることが出来ないのです。
僕は人質と言いながら、三大魔将軍の家族を助けておいたのです。
「治癒」
僕は三人に治癒を施し全開させた。
「三人は、治癒魔法は出来ないようですが、鑑定は使えますか」
「わしらの使える魔法は、攻撃魔法だけだ」
リゴウさんが代表で答えてくれた。
「そうですか。じゃあ、自分で言います。僕は天神の大魔王、アスラ、レベル1、12歳です」
「大魔王」
「レベル1」
「12歳」
三人がそれぞれのところで、驚いている。
「僕は正真正銘、魔王です。だから魔人の繁栄を心から願っています。どうか手伝っていただけないでしょうか」
「……」
三人は真剣な顔をして、黙っている。
そして決心がついたようだ。
吹っ切れた顔になり、さらにいたずら小僧のような顔になった。
「アズサちゃーーん!!」
「や、やめれーーー!!」
三人の大男が頬ずりしてきた。
僕はあわてて三人をアルアド領に転送した。
しばらく、のんびりして、前戦に戻ってもらおうと思います。
「ふーーーっ」
僕は深いため息をついて、オウブさん達の方を向いた。
そして、真面目な顔をする。
人間切り替えが肝心です。
「では、これより城塞都市イブリー攻略戦を開始したいと思います」
「……」
全員黙って、僕の次の言葉を待ってくれています。
全員の顔を、静かにゆっくり端から端まで見つめます。
「すでに、一騎打ちで敵の将軍は生け捕りました。士気は極限まで落ちていると思います。スザクを前面に立て城門を破壊し攻め込みましょう」
「……」
なんだか、皆の反応が悪い。
兵士も、オウブさんも、あの生真面目そうなシジセイさんまで、集中している様に見えない。
――あっ、僕はメイド姿のアズサの姿のままだったことを、やっと思い出した。すごく恥ずかしくなって、真っ赤になった。
「オウブさん、タイミングが丁度良さそうなので、チョカイさんのところへ行ってきます」
返事も聞かず、チョカイさんの戦場に移動した。
そして、動けなくした、魔将軍バーツを連れてもどってきた。
「オウブさん、二人の魔将軍の見張りをお願いします。リョウメイさんのところも丁度頃合いです。行ってきます」
返事も聞かず、リョウメイさんの戦場に移動した。
そして、動けなくした、魔将軍エイグを連れてきた。
「くっくっく、お前達もアスラバキを喰らったのか。で、俺たちをどうするつもりだ魔王さんよう!」
リゴウさんがバーツさんと、エイグさんを見て笑い、鋭い目つきで、僕をにらんだ。
「出来たら、配下になって欲しいのですが。くすっ、一兵卒として」
「ふ、ふざけるなー、誰が貴様の配下になどなるかーー!!」
リゴウさんと、バーツさんとエイグさんの声がそろった。
とんでもない大声です。耳が痛くなりました。
「困りましたねー。家族でも人質になってもらいましょうかねー」
「ふふふ、魔王城内の事を何も知らないくせに、何を言っている」
僕は後ろを向いて収納魔法で収納してある、あれとあれを出した。
それを、つけてくるりとまわった。
「なっ、アズサちゃん!!」
またまた、3大魔将軍の声がそろった。
相変わらず声がでかい。
僕は変装用のカツラと口紅を出してアズサに変装したのだ。
ついでにわかりやすいように、メイド服も着てやったのだ。
「アズサちゃんが魔王だったというのかー。ファンだったのにー」
三大魔将軍の声がそろった。
あんなに大声のくせに、後ろの方は妙に小声になっている。
――えっ、なんだって、後ろの方がよく聞こえなかったけど、背筋に寒いものが走った。すごい鳥肌が立っている。
「あなた達のことは、こうして魔王城に入り込んで調べました。これで信じて貰えますか」
「……」
三大魔将軍は、黙り込んで僕を見つめている。
ちょっと待って下さい。
この人達の顔から怒りが消えています。
それどころかほっこりして、頬が赤くなっているように見えます。
――おっさんたちがすごく気持ちわるいんですけどー。
「これを見て下さい」
僕は三人にそれぞれ一枚ずつ紙を渡した。
「こ、これは……」
三人は紙に目を落とす。
「その紙にはあなた達の、一族郎党の名前が書いてあると思います。過不足はありますか」
「そんなことを答えると思うのか!!」
「いいえ、答えなくても大丈夫です。うちの諜報部の長官アドが徹底的に調べてくれたものですから、間違いは無いはずです」
「そ、それがどうしたというのだ。まさか人質にすると言うのか」
「いいえ、その人達はすでに、全てアルアド領に監禁しました。あー、でも心配しないでください監禁と言っても、快適に暮らせるように、配慮はしています」
「な、なんだって……」
「あくまでも人質ですよ。配下になるのが嫌なら、捕虜としてのんびり隠居生活でもして下さい。でも、家族には会いたいでしょ。家族離ればなれは悲しいですからね」
「うおおおおおおーーーー」
オウブさんが、急に大声で泣き出しました。
兵士の中にも涙ぐんでいる人が何人もいます。
きっと最初からいる古参の人でしょうか。
今の言葉で僕とイルナの事を思い出したのでしょう。
オウブさんが、大粒の涙を出してくれているその前で、メイド服を着てふざけている僕を、許して下さい。
「魔王様、そこまで我らのことを考えて下さったのか」
大魔将軍が寝返ったとなれば、士気に大きな影響があります。
いまのこの状況なら、寝返りが判明すれば、家族も一族郎党ごと死罪になることが考えられます。
だから、寝返ることが出来ないのです。
僕は人質と言いながら、三大魔将軍の家族を助けておいたのです。
「治癒」
僕は三人に治癒を施し全開させた。
「三人は、治癒魔法は出来ないようですが、鑑定は使えますか」
「わしらの使える魔法は、攻撃魔法だけだ」
リゴウさんが代表で答えてくれた。
「そうですか。じゃあ、自分で言います。僕は天神の大魔王、アスラ、レベル1、12歳です」
「大魔王」
「レベル1」
「12歳」
三人がそれぞれのところで、驚いている。
「僕は正真正銘、魔王です。だから魔人の繁栄を心から願っています。どうか手伝っていただけないでしょうか」
「……」
三人は真剣な顔をして、黙っている。
そして決心がついたようだ。
吹っ切れた顔になり、さらにいたずら小僧のような顔になった。
「アズサちゃーーん!!」
「や、やめれーーー!!」
三人の大男が頬ずりしてきた。
僕はあわてて三人をアルアド領に転送した。
しばらく、のんびりして、前戦に戻ってもらおうと思います。
「ふーーーっ」
僕は深いため息をついて、オウブさん達の方を向いた。
そして、真面目な顔をする。
人間切り替えが肝心です。
「では、これより城塞都市イブリー攻略戦を開始したいと思います」
「……」
全員黙って、僕の次の言葉を待ってくれています。
全員の顔を、静かにゆっくり端から端まで見つめます。
「すでに、一騎打ちで敵の将軍は生け捕りました。士気は極限まで落ちていると思います。スザクを前面に立て城門を破壊し攻め込みましょう」
「……」
なんだか、皆の反応が悪い。
兵士も、オウブさんも、あの生真面目そうなシジセイさんまで、集中している様に見えない。
――あっ、僕はメイド姿のアズサの姿のままだったことを、やっと思い出した。すごく恥ずかしくなって、真っ赤になった。
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