魔王

覧都

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第七十四話 縛り付ける鎖

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「ね……!!」

「ね!!!」

三人の王子とコウケン魔将軍が大きな声をあげた。
僕の口から出た苦し紛れの言葉を繰り返したのだ。

「ネズミでーーす!!」

「な、なにーーー!!!」
「ネズミだと――!!」
「どこだーー」
「ひいいいい!!」
「ネズミはやめてーーー!!!」

三人の王子とコウケン魔将軍、フォリスさんが椅子の上に立ち怯えている。
僕は、震える手でネズミを指さした。
指の先には、先日アドのご褒美に、口の中に放り込もうとして失敗したネズミが、トテトテ歩いている。

メイドさんがほうきと、ちり取りで連れだした。
君は後で助け出すからね、しばしの別れだ。

「ほうーーぅぅぅぅー」

長いため息が部屋中に響いた。

「ネズミがいたのならしょうが無い」
「うむ、誰でも驚いて悲鳴を上げる」

ジセイ第三王子と、ファージ第四王子の目が生き返っています。
な、何とか誤魔化せたようです。

「ネズミ騒ぎで、中断されましたが驚きました。アズサさんがこの魔法のことを知っていると思いましたよ」

げふっ、まだ疑っているよジセイ第三王子。
僕は、首を小さく振って、にっこりと世界一の笑顔になりました。
三人の王子と、コウケン魔将軍が、赤い頬になりとろけそうな顔をしています。
これで、何とかいけたかな。

「ところで、そのオッフ何とかという魔法はどんな魔法ですか」

コウケン魔将軍が質問した。

「この魔法は、自分の命を消費して、自分より強い敵の命を奪いとる魔法だ。魔王が強ければ強いほど、効果のある究極魔法だ」

「な……」

コウケン魔将軍が驚いている。

「まあ、使えば、使用者も死にますがね」

ジセイ第三王子がまた、あの狂気の表情になって言いました。

「ここまで聞いた以上、三人をこの街から出す事が出来なくなった訳ですが……」

そしてファージ第四王子も、狂気の表情になり見つめてきます。

「丁度よかったです。私はしばらくこの街で暮らしたいと思っていた所なのです。住むのはこのお城で良いのですか」

僕は、ここにいられる事を無邪気に、敵意の一つも無いように喜んでみた。
そして、この事が魔王にとっての最悪の情報であることを、まるでわかってない振りをした。
あくまで、反アスラ魔王軍のサダル王子の娘リコのメイドだった少女を演じたのだ。

もともとこの街に来たのは、避難してきた人達が心配で来ている。
この四人のもとの方が楽に避難民の保護が出来そうだ。

「そ、そうですか。すぐに部屋の手配をします」

第三王子と、第四王子が嬉しそうな表情に変わり、歓迎してくれるようだ。
このコロコロ変わる表情が、僕は恐ろしいと思っている。

「嫌な事は続くものじゃ」

ランロンが話しかけてきた。

「……」

僕は誰にもわからないように、無言でランロンを少しだけ見た。

「新しい勇者の誕生じゃ。天龍の勇者が誕生した」

これで、魔王を殺せる者が四人になった。
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