魔王

覧都

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第八十話 汚名返上

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「リアン王女、あんたはなにもわかってねえ」

ガイコツ男は言いながら、うつ伏せの体勢から仰向きに体勢を入れ替えようとした。
両手両足が折れているガイコツ男の腕や足が、変にねじれて、ブチブチ音がした。腱や血管、神経が切れている音だ。
少しつらそうな表情をしたが、夜空を見て少し微笑んだ。
部屋の光が明るくて、星はあまり見えませんが、月がとても綺麗です。

その顔は、全ての未練を断ち切った人の顔のようで、恐ろしい顔が少し優しげに見えました。
そして視線を、空から私達に向けました。

「ふーーーっ、滅茶苦茶つえーー相手が、お前達のように美しい女とはよーー」

折れた手足が痛いはずなのに、微笑んだ顔には、いたそうな表情が微塵もありません。
痛みを感じないのでしょうか……
私には生きることを諦めた為に、痛みを必要としなくなりスイッチが切り替わった、そんな感じがしました。

「俺が、受けた命令の第一目標は、リアン王女あんただ。そして第二目標はここに集まっている貴族全員だ。あんたが俺を見たのは、殺す目標の顔をしっかり確認する為に近づいた時だ。この意味がわかるか」

「……誰かが私を殺そうとしている。恐らく天帝の勇者か、教祖……」

「ふふふ、まあ依頼者が誰かは俺たちに知らされねえ。だが、あんたはどちらの陣営にも付かず、中立の立場を取っている。そして今日集まっている貴族は、そんなあんたを支持している。目障りになったんだろうな。だから国王を殺した事とは全く関係ねえ話ということだ」

「…………もしかすると両方から命を狙われたということかしら…………?!!! 国王を殺した事とは無関係ですってー!!」

「そうだ、俺は組織の最高幹部の一人だ。特に王族の暗殺をメインの仕事にしている。国王も第三王女も俺が殺した」

「な、なんですって、お姉様を殺した。……自殺じゃ無かったのですか」

アンちゃんが驚いたけど、私も驚いた。
この国では、第三王女は自殺って聞いている。
ライファさんの唇が震えている。

「そうだ、天帝の勇者からの直接依頼だ。組織にも秘密にしろと言われてやってやったが、その後執拗に殺そうとしやあがった。あいつは本当に糞野郎だ。まあ刺客は全員返り討ちにしてやったがな」

「その件についてもっと詳しく知りませんか」

後ろからエマさんが質問した。

「お、お前、どうしてここへ、手下はどうした」

「雑魚は、全員倒しましたよ」

「ふははは、雑魚だと。あれはうちの手下の中でも最強クラスだ。まいるぜ!!」

「そんなことより、第三王女のことを教えなさい!!」

エマさんの声が荒々しくなります。

「おいおい、何をそんなに熱くなっているのか知らねえが、俺は、あれが天帝の勇者が、天神の勇者アスラをはめる為にやった事ぐれえしか知らねえぜ。アスラってのは、かわぇえそうな奴だったぜ。ずっと教祖と天帝の勇者におとしいれられて、誰からも嫌われてよ。俺なら耐えられんぜ」

「なぜ、天神の勇者様を殺さなかったのでしょう」

アンちゃんが、疑問をぶつけた。

「なあーはっはっはっ、ありゃあ別世界の生命体だ。殺せるわけがねえ。強すぎるのさ。あいつは誰にも殺せねえ化け物……だから天帝の勇者も教祖も社会的に殺そうとして、あの手この手で嫌がらせをしたのさ。最もそれが、正直者の天神の勇者には効いていたみてえだがな。見ていてかわいそうだったぜ」

アンちゃんの目からツーっと涙があふれ出して小さな声でゆっくり話し始めました。
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