魔王

第八十二話 結成

「天神の勇者は、第三王女の時は無実を必死で訴えていたがそれ以降は、あまり無実を主張するのをやめていたな。何か事件があると、国王から犯人にされ、勇者ということで恩赦を受けて無罪になっていた。人々からどんどんネズミのように嫌われていった。にもかかわらず、あの勇者は、こそこそ隠れて人助けをしていた。それこそ、泥棒のように誰にも気付かれないように、大勢の人を助けていた」

エマさんとライファさんは、自分たちの知っている勇者の姿と違っていて驚いているようです。
アンちゃんは涙が止らないようで、綺麗なお化粧がとれてしまって、目のまわりが真っ黒になり、そばかすがもう全部出てしまいました。

「勇者は次第に誰とも関わりを持たず、人間不信になっているようだった。殺そうと付け狙っている俺が、なんとか助けてやりてーと思うぐらいだったのさ」

やっぱり父ちゃんはすごく立派な人だった。
賞賛と名声こそふさわしい人、おいらは父ちゃんの名声を高め、決して貶め無いようにしたいと心に誓った。

「エマ様、お話中すみません。来賓の避難が終りました」

第四聖騎士団の隊員が報告に来た。

「賊はどうしましたか？」

「はっ、全て絶命していましたので放置しました」

「そうですか」

エマさんはそう言うと少し暗い表情になった。

「では、お屋敷に火をつけて燃やしてしまいましょう。その前にちょっと必要な物を取ってきます」

アンちゃんがすごく大胆な事を言います。

「ふふふ、それなら火薬を仕掛けてある。この屋敷は木っ端微塵に爆破出来る」

ガイコツ男が、不敵に笑った。
アンちゃんは、チリチリ頭のカツラをしてメガネをかけて、学校の用品を持って戻って来た。

「じゃあ、ガイさんお願いします」

アンちゃんはガイコツ男を勝手にガイと呼んでいる。

「ガイって俺の事か。俺には王族殺しっていう、ちゃんとした名前があるのだがな」

ちゃんとしてないと私は思った。
私は、このガイにもシャドウを一人監視につけて移動魔法でアンちゃんとライファさんの三人で聖女屋敷に戻った。
その後、ガイは屋敷を爆破すると、アンちゃんの毛を手土産に組織に帰っていった。
聖騎士隊は屋敷の後始末を済まして、リアン王女を失ったことを報告した。

厳しい罰が与えられるかと思った第四聖騎士団でしたが、教祖は上機嫌で、来賓を助け賊を大勢倒した功績で、罰が与えられることはなかった。

翌日、私とアンちゃん、エマさん、ライファさんの四人で誰にも秘密で反天帝の勇者、反教祖を目指すことを誓い合った。

ここにチーム、聖女の誓いが結成された。