魔王

覧都

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第八十三話 筒抜け

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「お嬢は、またやってんのかい」

「またやってますなー」

街の高い防壁の上から、最高幹部の四人が僕をのぞき見ています。
最近四人は僕の事をお嬢と呼びます。

僕が何をしているのかというと、街の中に入れない大勢の人達の為に、下水工事をしています。
人が大勢集まると、排泄物があふれ出します。
それを解決する為、四人に予算をせがんで、下水路を作っているのです。

「まあ、そのおかげで名案が浮かんだんだ。好きにさせておきましょう」

第三王子ジセイは、間もなく襲いかかる反乱軍を倒すため、街の東に規模の大きな用水路のようなものを造り始めた。
人の腰より深く掘り下げ、人三人が並んで通れるほどの下水路のようなものを作っている。

「報告します」

四人の最高幹部のもとに一人の兵士が駆け寄った。

「敵反乱軍、魔王都を出陣しました」

「ふむ、意外とはやかったな。もう少しかかると思ったが……」

コウケン魔将軍がつぶやいた。
今日まで、王都陥落から一月ほど経っている。

「で、陣容は?」

ドワード第二王子が聞いた。

「はっ、主力は敵将オウブ、副将はシジセイ、リゴウ、兵士数三万! 北をチョカイ軍二万、南をリョウメイ軍二万で進軍中」

「まあ、到着まで一週間というところか」

ドワード第二王子が目を閉じて言った。

「せっかくだ、飯でも食いながら戦略を練ろう。お嬢を呼んでくれ」

ジセイ第三王子が兵士に僕を呼ぶように命じた。



僕は、いつもの席に座って、食事をしている。
大きなテーブルの端で小さくなって食べていたのだけど、今はこの端っこに最高幹部が全員集まって、食事をするようになっている。
この幹部達はどれだけアズサが好きなのかとあきれてしまう。

「問題は自称魔王野郎が出てくるかどうかです」

ジセイさんは食事が終ったのか、テーブルの空いているスペースに歩き、大きな図を広げた。
そこには、ウーリエの街とその周辺が詳細に書き込まれていた。
今、作っている下水溝の様な物も詳細に書かれている。

「敵反乱軍は、恐らく避難民のいる南側は攻めないでしょう」

ウーリエの下側を示した。

「これで勝てるのか」

ドワードさんが質問する。

「自称魔王野郎が出てくるかどうかです。出てくれば、毒針二本を突き刺し勝ちます」

ジセイさんが無表情で言います。
毒針二本とは、究極魔法オフスウィータを持つジセイさんとファージさんのことだ。
この二人は、魔王を自分の父と重ね合わせ憎んでいる。
自称魔王野郎も魔人の国を支配すれば同じになると思っているのでしょうか。

僕は絶対にそんなことはしませんよー。信じて貰えませんかー。
と、大声で言いたかった。
この後、軍議は進みましたが、それは魔王アスラに全部筒抜けでした。
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