魔王

第八十四話 魔王軍襲来

とうとう、その日がやってきました。
僕は今、弓隊の装備をして、街の高い防壁の上にいます。

「見えました、反乱軍です」

旧魔王軍は、アスラ魔王軍を反乱軍と呼びます。
地平線に朝日が半分ほど昇っています。
その中に地面から水がしみ出すようにキラキラ白く輝くものがあります。
東の地平線が赤く染まる中、キラキラ輝く白い光はうっとりするほど綺麗です。

戦いの前の緊張感が兵士の中に広がり、僕まで手に汗を握り緊張しています。
太陽が持ち上がるのに同期するように、キラキラ輝く白い光りがしみだして来る。
ある程度一人一人が、わかる位にまで近づくとアスラ魔王軍は進軍を停止した。
工兵隊が柵を作り出し、陣を作り出した。

「今日の、反乱軍の攻撃はないだろうな」

近くにいる、千人隊の隊長が声を出した。
それを聞くと兵士から緊張感が解けていく。
僕は、その言葉を聞くと、下水工事の手伝いをする為に避難民のもとへ戻った。



夕食の為いつもの部屋に入ると、二人の王子の姿が無かった。
オフスウィータを持つ第三王子と第四王子の席が空席だった。

「あの、ジセイ様とファージ様はどうされたのですか？」

僕が、コウケンさんとドワードさんに聞くと、

「二人は、魔王を殺すためすでに準備をすました。戦いが終るまで戻ることはないだろう」

コウケンさんが答えてくれました。
お、恐ろしい。あの二人がすでに毒針を刺そうとすでに準備を済ませたようだ。
二人の位置を僕は知らない。
さすがに、どこにいますかなどと聞いたら怪しまれそうで聞けない。

「魔王が来れば、魔王の死と共にどちらかの王子か、または両方か、死ぬ事になるだろう」

そう言ったドワードさんの表情が暗くなります。

「二人の場所を教えて下さい。連れ戻します」

フォリスさんがナイスなタイミングでナイスな発言です。

「それは、俺たちも知らない。二人は俺たちにも秘密にしていた」

「なぜ、そんなに魔王を殺そうとするのですか」

「それは魔人の為だ。前の魔王も、魔王になる時は優しく振る舞った。魔王になると手のひらを返し、魔人を殺しまくったのだ」

ドワード王子が怒りの表情で話す。

「今の魔王も、同じだろう。どこの誰ともわからないものがふらっと現れて、魔人の繁栄だと、信じる方がどうかしている」

コウケンさんもドワードさんに同調した。

「この戦いで魔王を殺し、戦争を終らせる」

コウケンさんとドワードさんの声がそろった。
この人達を説得するのは無理なのでしょうか。
魔人の事を考えている人達を、僕は戦争によって力ずくで従えようとしている、完全な悪人では無いでしょうか。

僕が魔王だ、信用して下さいと言おうとして立ち上がろうとした。
その瞬間、フォリスさんが僕の腕をつかんで首を振った。

この日の夕食はお通夜のように暗く重苦しい食事になった。