魔王

覧都

文字の大きさ
85 / 208

第八十五話 前哨戦

しおりを挟む
翌朝、夜明けと共に街の防壁の上から、弓兵装備で弓兵に混じってアスラ魔王軍の様子を見ています。
アスラ魔王軍は旧魔王軍が、攻める気が無いとみて、ゆっくり朝食を取っているように見えます。
これは挑発も兼ねていますね。

旧魔王軍は、すでに溝の中に身を潜め、アスラ魔王軍の攻めて来るのを待ち構えています。
溝から飛び出して攻める気はまるでないようです。

やがて、食事の火が消えると、アスラ魔王軍はゆっくり街の正面に進軍してきました。
丁度、街の正面に小高い丘があり、そこに幕を張り本陣にしています。
本陣が出来上がると、その前にアスラ魔王軍が整列した。
一万ほどを後方の陣に残し、街の正面には六万の兵が一万ずつ六つに分かれて整列している。

それを受ける旧魔王軍は、街の防壁に弓隊を配置し、街の前の溝に兵士を配置し、予備兵が城に残っている。総勢は四万というところだろうか。
溝の中の兵士は五人で班を構成し、二人が大盾と剣を装備し、二人が長槍と弓を担当し残りの一人は、魔法攻撃をする準備をしている。

全兵士から、一言の話し声も聞こえず、風の音と、甲冑の金属音がカチャカチャ聞こえるだけだった。

「かかれーーーー!!!」

チョカイさんが静寂をやぶり号令をかけると、正方形の固まりが三つ走り出しました。

「うおおおおおおーーーーーー!!!」

アスラ魔王軍からの雄叫びが上がります。

「射程だー、弓隊放てーーー!!!」

旧魔王軍総大将コウケンさんが防壁の上から声をかけると、溝から弓が放たれます。
アスラ魔王軍重装歩兵隊は、矢の雨に打たれながらも速度を落とさず突き進みます。

「弓隊打て――!!」

チョカイさんが弓隊に指示しました。
重装歩兵に隠れて走っている弓隊が、弓を射かけます。
旧魔王軍は、溝を掘り、掘った土を東側に盛り上げて積み上げています。
矢は溝に体を沈めて盾の下に体を隠すと、全くあたりません。

それに対して、アスラ魔王軍はまるで的です。
大勢の兵士がバタバタ倒れていきます。
倒れた兵士の体はその瞬間消えていきます。
恐らくシャドウの働きでしょう。

「つっこめーーー!!!」

チョカイさんが盾を矢で一杯にしながら、檄を飛ばした。
兵士は溝に到着すると次々飛び込みます。
でも飛び込んだ先も地獄でした。
槍隊が待ち構え、飛込む兵士を次々突き刺していきます。
魔法陣を完成させている兵士は、飛び込む兵士に次々魔法攻撃を打ち込みます。

「ぎゃあああーーーー」

至る所で悲鳴が上がります。
何人も即死している人がいるように見えます。
立てない兵士は次々姿を消しています。
シャドウ達は忙しいでしょう。よい仕事をしてくれているようです。

「大丈夫ですか?」

フォリスさんが僕の腕をつかみ、心配そうに声をかけてくれた。
僕は、はじめて自軍が苦戦する様子を見ている。
僕が無茶な命令をしたために、死者が大勢出ている。

「お嬢、顔色が悪い、城に戻った方がいい。女の子が見るもんじゃない」

ドワードさんがこんな状況なのに優しい。
僕は唇をギュッと結び、首を振った。

「私はこの戦いを見ないといけない気がします」

それしか言えなかった。
その言葉の後、体が震えだし、涙が出そうになっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!

本条蒼依
ファンタジー
 氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。  死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。  大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...