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第八十六話 魔王の決意
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日が傾くと早々に、アスラ魔王軍は兵を引き上げた。
旧魔王軍は十分距離が離れると、戦死者を街の中に運び込んだ。
戦死者は五百人以上いるようだ。アスラ魔王軍はその数倍はいるだろう。
けが人はエリクサーにより回復しているが、戦死者は蘇生しない。
死者のところに次々家族が集まり、大声で泣く人や、静かに泣く人様々だったが、全員心から悲しんでいた。
「何をお考えですか」
フォリスさんが、僕の横に近づいてくると、悲しむ人達の姿を必死で見ている僕に、質問してきた。
「うん、僕は何をやっているのかと、自分を叱っていました」
「……」
フォリスさんは僕の顔を、じっと見るだけで何も言いませんでした。
なんだか、全部見透かされているようで、恐怖を感じました。
僕は、防壁を降りると、亡くなった兵士と家族の為、朝まで体を動かした。
ドワードさんもコウケンさんも、黙って好きにさせてくれました。
きっと僕が魔王だとわかれば、あんたのせいでこうなったと罵声を浴びせられるのでは無いでしょうか。
こんなことを考えている時点で、魔王は失格でしょうね。
翌朝、僕はお化粧をいつもより念入りにして一番可愛いアズサになり、一番可愛いメイド服を着て、誰にも見せませんが、一番可愛い下着を着けて、朝食のテーブルについた。
二人のおじさん、ドワードさんとコウケンさんがチラチラ僕を見ながら赤い顔をしています。
「行ってらっしゃい」
食事が終った二人を、とびきりの笑顔で見送ると、僕はしばらく椅子に座って、じっとしていた。
フォリスさんも、ジュウドウも何も言わず、僕と同じように椅子に座っている。
「わああぁぁぁぁーーーああ」
外から喚声が聞こえてきた。
これは、恐らくアスラ魔王軍の総攻撃が、はじまったということだろう。
「フォリスさん、ジュウドウ、二人ともここで待っていて下さい」
僕は二人を見つめ、ゆっくり噛みしめるように言った
そして、移動魔法でアスラ魔王軍の本陣へ移動した。
本陣には、オウブさんと、シュブさん、シュオウさんスザクが十人いた。
「お、おお、魔王様!!」
「オウブさん、魔王の旗を揚げて下さい」
「おお、旗を見れば一段と士気が上がりますな」
オウブさんが嬉しそうにした。
「本陣の留守番は僕が引き受けました。旗を揚げたら、オウブさんも出撃して下さい」
僕は本陣で一人になろうとしている。
一人になれば、恐らく毒針が二本襲いかかってくるだろうと思っている。
むざむざ、殺される気もないけれど、この戦いで一気に戦争を終わらせようと考えています。
「な、なぜ、来たのですか!?」
せっかく一人になったのにフォリスさんとジュウドウが現れた。
「うふふふ、死なせませんよ。死ぬのは私が先です」
フォリスさんの顔が怒りにも似た表情になっています。
単純な怒りでは無いのは、その表情の中に優しさが感じられるところでしょうか。
「はあ、はあ。やっぱりだ。どうせこんなことだろうと思った」
オウブさんが息を切らせて戻って来た。
「ダメです。オウブさんは逃げて下さい」
フォリスさんが、オウブさんに叫んだ。
全くこの二人は、せっかく魔王が戦う決意をしたのに、台無しにする気です。
「ぜはーーーっ、ぜはーーーっ。よおおおおーーーしーー間に合ったーー」
チョカイさんと、リョウメイさんまで来てしまった。
「な、何ですか皆さん、将が勝手に持ち場を離れたら、前戦の指示が出来ないじゃ無いですか」
「そ、そんなことより敵はどこだーーー!!」
チョカイさんとリョウメイさんが叫んだ。
「まだ、どこにいるかもわかりませんよ」
オウブさんとチョカイさん、リョウメイさんとフォリスさんが僕を囲んで盾になるつもりのようです。
でも、盾になるのはフォリスさんだけですよ。他の三人は二本の毒針より弱いですから。
でもその心がとても嬉しかった。
「皆さん聞いて下さい。敵は究極魔法を持って戦いを挑んできます。僕でも勝てるかどうかわかりません。一人にしてはいただけませんか」
「最早、魔王の命は、我らの命より重い、我らに魔王の盾になることを許していただきたい」
オウブさんが必死で訴えてきます。
天神の勇者として生を受け、孤独の中に生きてきた僕は心から感動していた。このまま死んでもいいと本気で思ってしまった。
旧魔王軍は十分距離が離れると、戦死者を街の中に運び込んだ。
戦死者は五百人以上いるようだ。アスラ魔王軍はその数倍はいるだろう。
けが人はエリクサーにより回復しているが、戦死者は蘇生しない。
死者のところに次々家族が集まり、大声で泣く人や、静かに泣く人様々だったが、全員心から悲しんでいた。
「何をお考えですか」
フォリスさんが、僕の横に近づいてくると、悲しむ人達の姿を必死で見ている僕に、質問してきた。
「うん、僕は何をやっているのかと、自分を叱っていました」
「……」
フォリスさんは僕の顔を、じっと見るだけで何も言いませんでした。
なんだか、全部見透かされているようで、恐怖を感じました。
僕は、防壁を降りると、亡くなった兵士と家族の為、朝まで体を動かした。
ドワードさんもコウケンさんも、黙って好きにさせてくれました。
きっと僕が魔王だとわかれば、あんたのせいでこうなったと罵声を浴びせられるのでは無いでしょうか。
こんなことを考えている時点で、魔王は失格でしょうね。
翌朝、僕はお化粧をいつもより念入りにして一番可愛いアズサになり、一番可愛いメイド服を着て、誰にも見せませんが、一番可愛い下着を着けて、朝食のテーブルについた。
二人のおじさん、ドワードさんとコウケンさんがチラチラ僕を見ながら赤い顔をしています。
「行ってらっしゃい」
食事が終った二人を、とびきりの笑顔で見送ると、僕はしばらく椅子に座って、じっとしていた。
フォリスさんも、ジュウドウも何も言わず、僕と同じように椅子に座っている。
「わああぁぁぁぁーーーああ」
外から喚声が聞こえてきた。
これは、恐らくアスラ魔王軍の総攻撃が、はじまったということだろう。
「フォリスさん、ジュウドウ、二人ともここで待っていて下さい」
僕は二人を見つめ、ゆっくり噛みしめるように言った
そして、移動魔法でアスラ魔王軍の本陣へ移動した。
本陣には、オウブさんと、シュブさん、シュオウさんスザクが十人いた。
「お、おお、魔王様!!」
「オウブさん、魔王の旗を揚げて下さい」
「おお、旗を見れば一段と士気が上がりますな」
オウブさんが嬉しそうにした。
「本陣の留守番は僕が引き受けました。旗を揚げたら、オウブさんも出撃して下さい」
僕は本陣で一人になろうとしている。
一人になれば、恐らく毒針が二本襲いかかってくるだろうと思っている。
むざむざ、殺される気もないけれど、この戦いで一気に戦争を終わらせようと考えています。
「な、なぜ、来たのですか!?」
せっかく一人になったのにフォリスさんとジュウドウが現れた。
「うふふふ、死なせませんよ。死ぬのは私が先です」
フォリスさんの顔が怒りにも似た表情になっています。
単純な怒りでは無いのは、その表情の中に優しさが感じられるところでしょうか。
「はあ、はあ。やっぱりだ。どうせこんなことだろうと思った」
オウブさんが息を切らせて戻って来た。
「ダメです。オウブさんは逃げて下さい」
フォリスさんが、オウブさんに叫んだ。
全くこの二人は、せっかく魔王が戦う決意をしたのに、台無しにする気です。
「ぜはーーーっ、ぜはーーーっ。よおおおおーーーしーー間に合ったーー」
チョカイさんと、リョウメイさんまで来てしまった。
「な、何ですか皆さん、将が勝手に持ち場を離れたら、前戦の指示が出来ないじゃ無いですか」
「そ、そんなことより敵はどこだーーー!!」
チョカイさんとリョウメイさんが叫んだ。
「まだ、どこにいるかもわかりませんよ」
オウブさんとチョカイさん、リョウメイさんとフォリスさんが僕を囲んで盾になるつもりのようです。
でも、盾になるのはフォリスさんだけですよ。他の三人は二本の毒針より弱いですから。
でもその心がとても嬉しかった。
「皆さん聞いて下さい。敵は究極魔法を持って戦いを挑んできます。僕でも勝てるかどうかわかりません。一人にしてはいただけませんか」
「最早、魔王の命は、我らの命より重い、我らに魔王の盾になることを許していただきたい」
オウブさんが必死で訴えてきます。
天神の勇者として生を受け、孤独の中に生きてきた僕は心から感動していた。このまま死んでもいいと本気で思ってしまった。
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