魔王

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第百四話 悪の教祖の最期

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魔王の存在は、影響力が絶大で人間の世界に大きな動きを与えました。
私が人間としては最低だと思っている天帝の勇者の人気が、どんどん高まっています。
そのため、教祖とのパワーバランスが崩れ、国王がオニス王子に決まり、コモンドニス王朝十六代目の王となりました。

「大変です。国王と天帝の勇者が神殿に来ます!」

エマさんが私の所に息を切らせて、駆け込んできました。

「私の存在がばれる日が来てしまったのでしょうか」

「そうですね」

私は、はじめて聖女の正装をします。

「美し過ぎます」

エマさんとライファさん、アンちゃんの目がキラキラしています。
きっと、うちのメイドさんが全力で綺麗にしてくれたのでしょう。
お化粧を落とすのが恐いです。

三人に護衛してもらい神殿へ向いました。

「どういうことだ。これは?」

天帝の勇者が祭壇の前で教祖に詰め寄っています。

「何のことだ」

「とぼけるな。祭壇の玉が赤く光っているではないか。しかも、聖女の方も黄色く光っている」

「そうだ、勇者様はお前一人ではない。そして、大聖女様が存在している」

「隠していたなー!!!」

天帝の勇者の顔が、恐ろしい震えが来るような顔に変化した。

「な、何をする気だ!! ぐああああーーーーー!!!!」

天帝の勇者が、教祖の腹に剣を突き刺した。

「ハ、ハルラ、何をするのですか」

国王オニス様が天帝の勇者に質問した。

「ハルラだとーー!!」

「勇者ハルラ様」

天帝の勇者ハルラが国王オニス様を恐ろしい顔でにらみ付けます。
国王様は、勇者を恐れて様をつけて呼びなおしました。

「増長しすぎですね」

エマさんが私にだけ聞こえるように声をだしました。
私たちは、部屋の扉の外で、少し扉を開けて中の様子をのぞき見ています。

「ふん、国家反逆罪だ。文句はあるまい!!」

天帝の勇者は、駆け寄った聖騎士に向って一喝した。

「ふふふ、あーーはっはっはっーーーーー」

天帝の勇者は腹の底から笑い出した。
神殿中に響き渡るほどの大声で笑っています。
長年の天敵を殺すことが出来て心底嬉しそうです。

「今後は、この神殿の責任者は聖女に任せる。聖女を探し出せ」

勇者は、聖女なら自分の自由に出来るつもりなのでしょう。
教祖のあとがまに、聖女を指名しました。

「その必要はありません」

私は、扉を開けて中に入りました。

「何者だ!?」

勇者が私に質問します。
でも、私の姿を見て気持ちの悪い笑顔に変わりました。
もう私が誰かは、わかったようです。

「私は今、ここの責任者を任された、大聖女イルナです」

「おい、確認しろ!!」

勇者が、連れてきていた配下の兵士に指示をした。
指示された兵士が、祭壇の横に光輝く、聖女の玉の下にある石を取り出した。
その石を持って私に近づいてきた。
石は、強く明るく金色に光り出した。

「どうですか?」

「ふふふふ、確かにな!」

勇者が嬉しそうに笑っています。
私は十二歳の姿になってから、見た目は全く成長していない。
子供と思って、扱いやすそうに感じて、笑っているのでしょう。

「ふふふ、まだ餓鬼だがやってやれんこともないだろう。今から俺の寝室に来い!」

「ふ、ふざけるなーーー!!!」

あー、うちの猛獣二人が入ってきちゃいました。

「なんだてめーは」

「私は、聖騎士団四番隊隊長エマだ!!」
「同じく副隊長ライファだ!!」

「ふん、お荷物の女聖騎士か! おい、この馬鹿を痛めつけてやれ」

勇者は、取り巻きに声をかけた。

「ふふふ、俺は、天帝の戦士ロドンだ。この国じゃあ、最強の冒険者チームの者だ。生まれてきたことを後悔させてやるぜ」

「私も最強冒険者チームの一員、天帝の魔導師パリスだ。勇者様にたてつく奴は許さないよ」

子ネズミ二人が偉そうに能書きたれて、うちのライオンに歯をむき出しました。
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