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第百九話 行軍
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国境までは、魔人の国側は道路が整備されていますが、人間の国ロウロ領は整備されていなくて、細い道があるだけです。
細い道のまわりは、草木が生い茂り手入れがされていません。
「なるほど、これはしっかり手が入っていますね」
「えっ」
私が驚くと、アスラ様は説明してくれました。
「リコさんほら見て下さい、この先の山道がしっかり人一人が通れるくらいです。すれ違うのも横にならないと出来ないように、計算されて道の両サイドが掘られています。自然にこうなったわけではありません。人間が手入れをしています」
そう言われて、山の中の細い一本道の先を見ると太陽が明るく輝いているのにも関わらず、夜のように暗く感じました。
まるで魔物の口に続く道のようです。
今回アスラ様は、私達とフォリスさん、ジュウドウ軍団とシュザク五百人、スザク五千人だけで軍を編成しました。
スザクには甲冑をつけて人に偽装させています。
それだけ、この戦いを危険と感じているようです。
私もしっかりレベル上げもしましたが、戦争なんて初めてです。
すごく不安で緊張します。
「大丈夫ですかリコさん、顔色が悪いですよ」
「だ、大丈夫です」
フォリスさんが心配をして、声をかけてくれました。
「アスラ様と一緒なら安心していても大丈夫ですよ。あれでいつも回りを気にしていてくれています。私は一緒にいて、大けがをしたことはありません」
そうか、フォリスさんがアスラ様に対してもっている絶対の信頼は、そういう所にあるみたいです。
「すごいですね、掘った道が真っ直ぐ進んでいるから、山道の坂が登りにくいし、登り切ると、下りの時に後続から見ることが出来なくなります」
アスラ様は、この細い道にしきりに感心しています。
それだけこの道が危険と言うことなのでしょう。
四時間程歩くと、目の前にぬかるみが出て来ました。
道が沼のようなところに入り消えています。
三百メートルほど先に道が見えていますが、回り道はありません。
「スザクに先導してもらい、僕たちはシャドウの移動魔法で対岸に出ましょうか」
アスラ様は、スザクをぬかるみに飛び込ませました。
ぬかるみは、スザクの胸くらいまであり、泥はスザクでもゆっくり動くのがやっとでした。
スザクの先頭が、対岸につくのをまって、私達はシャドウの移動魔法でスザクの前に出ました。
沼を越えると道の両側が高くなり、さらに草木も多く茂り、周りの様子が全く見えなくなりました。
坂を下り出すと後ろの様子も見えなくなります。
ゴゴゴゴゴゴー
地響きのような音が聞こえました。
「やられましたね。これがファージさんの言っていた水攻めですか」
坂を、スザクをかき分けてもどると、沼地に大量の水が流れ込んでいます。
渡っていた、スザクの姿が水に沈み見えなくなっています。
「すごいですね。これが甲冑をつけている魔人なら、何百人溺死したかわかりませんね。さあ次が来ます。リコさん僕の近くでしゃがんで下さい。皆さん攻撃が来ます。備えて下さい」
私がアスラ様の横でしゃがむと、アスラ様は嬉しそうに微笑んでくれました。
少しその美しい顔に見とれていると、矢が大量に飛んできました。
アスラ様が、私にあたらないように全部受け止めてくれました。
矢が止ると、決死隊でしょうか、素早い動きの兵士が飛び込んできました。
「ぐあああああーーーー」
悲鳴は、決死隊のものです。
スザクには口がないのでやられても悲鳴を上げることはありません。
「すごい、コウケンさん達はこれだけの攻撃をうけていたのですか。全滅していても文句が言えませんね。よく無事で戻って来てくれました。さすがは、コウケンさんですね。そして、これだけの攻撃をするなんて敵ながらあっぱれです」
「あのー、嬉しそうに見えますけど……」
「ああ、そう見えますか。でもそうかもしれません。こんな策を使える人はどんな人なのかわくわくしてしまいました。会うのが楽しみです」
「うふふふ」
私は、家臣の敗戦を褒め、敵の策を喜んでいるように見える、無邪気なアスラ様という人に、あきれて笑えてしまいました。
水が引いて、泥に埋まったスザクを助け出した時には日が暮れていました。
細い道のまわりは、草木が生い茂り手入れがされていません。
「なるほど、これはしっかり手が入っていますね」
「えっ」
私が驚くと、アスラ様は説明してくれました。
「リコさんほら見て下さい、この先の山道がしっかり人一人が通れるくらいです。すれ違うのも横にならないと出来ないように、計算されて道の両サイドが掘られています。自然にこうなったわけではありません。人間が手入れをしています」
そう言われて、山の中の細い一本道の先を見ると太陽が明るく輝いているのにも関わらず、夜のように暗く感じました。
まるで魔物の口に続く道のようです。
今回アスラ様は、私達とフォリスさん、ジュウドウ軍団とシュザク五百人、スザク五千人だけで軍を編成しました。
スザクには甲冑をつけて人に偽装させています。
それだけ、この戦いを危険と感じているようです。
私もしっかりレベル上げもしましたが、戦争なんて初めてです。
すごく不安で緊張します。
「大丈夫ですかリコさん、顔色が悪いですよ」
「だ、大丈夫です」
フォリスさんが心配をして、声をかけてくれました。
「アスラ様と一緒なら安心していても大丈夫ですよ。あれでいつも回りを気にしていてくれています。私は一緒にいて、大けがをしたことはありません」
そうか、フォリスさんがアスラ様に対してもっている絶対の信頼は、そういう所にあるみたいです。
「すごいですね、掘った道が真っ直ぐ進んでいるから、山道の坂が登りにくいし、登り切ると、下りの時に後続から見ることが出来なくなります」
アスラ様は、この細い道にしきりに感心しています。
それだけこの道が危険と言うことなのでしょう。
四時間程歩くと、目の前にぬかるみが出て来ました。
道が沼のようなところに入り消えています。
三百メートルほど先に道が見えていますが、回り道はありません。
「スザクに先導してもらい、僕たちはシャドウの移動魔法で対岸に出ましょうか」
アスラ様は、スザクをぬかるみに飛び込ませました。
ぬかるみは、スザクの胸くらいまであり、泥はスザクでもゆっくり動くのがやっとでした。
スザクの先頭が、対岸につくのをまって、私達はシャドウの移動魔法でスザクの前に出ました。
沼を越えると道の両側が高くなり、さらに草木も多く茂り、周りの様子が全く見えなくなりました。
坂を下り出すと後ろの様子も見えなくなります。
ゴゴゴゴゴゴー
地響きのような音が聞こえました。
「やられましたね。これがファージさんの言っていた水攻めですか」
坂を、スザクをかき分けてもどると、沼地に大量の水が流れ込んでいます。
渡っていた、スザクの姿が水に沈み見えなくなっています。
「すごいですね。これが甲冑をつけている魔人なら、何百人溺死したかわかりませんね。さあ次が来ます。リコさん僕の近くでしゃがんで下さい。皆さん攻撃が来ます。備えて下さい」
私がアスラ様の横でしゃがむと、アスラ様は嬉しそうに微笑んでくれました。
少しその美しい顔に見とれていると、矢が大量に飛んできました。
アスラ様が、私にあたらないように全部受け止めてくれました。
矢が止ると、決死隊でしょうか、素早い動きの兵士が飛び込んできました。
「ぐあああああーーーー」
悲鳴は、決死隊のものです。
スザクには口がないのでやられても悲鳴を上げることはありません。
「すごい、コウケンさん達はこれだけの攻撃をうけていたのですか。全滅していても文句が言えませんね。よく無事で戻って来てくれました。さすがは、コウケンさんですね。そして、これだけの攻撃をするなんて敵ながらあっぱれです」
「あのー、嬉しそうに見えますけど……」
「ああ、そう見えますか。でもそうかもしれません。こんな策を使える人はどんな人なのかわくわくしてしまいました。会うのが楽しみです」
「うふふふ」
私は、家臣の敗戦を褒め、敵の策を喜んでいるように見える、無邪気なアスラ様という人に、あきれて笑えてしまいました。
水が引いて、泥に埋まったスザクを助け出した時には日が暮れていました。
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