魔王

覧都

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第百十一話 道の終わり

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敵の攻撃はロウロ領に近づくほど激しくなっていきます。
昼も夜も攻撃を受け、その間隔が短くなっていきます。
そして目の前に今までとは違う光景が広がりました。

「まあ、スザクには影響ないでしょう。さっさと進みましょう」

アスラ様は、なにが仕掛けられているのか分かった様です。
壁が今までより徐々に高くなっていきます。
すでに頭よりはるかに高くなっています。
幅は変わりないのに、狭く感じて圧迫感を強く感じます。

高い壁はかなり長く続き先頭の私達がやっと抜けると、まだ全体の半分は高い壁の中に入ったままになっています。

「やれーーい!!!」

声と共に蓋の開いた樽が大量に放り込まれます。
油がたっぷり入った樽です。
その後すぐに、火の付いた草束が投げ込まれました。
道に火薬も仕込まれていたようで、一気に火が道全体に広がります。
高い壁は、道から出られなくする為と、山に火が広がらないようにする為でした。

「ぎゃあああああーーーー」

悲鳴が上がります。
火の中に押し込み焼き殺す為に敵兵が、隊列に侵入してきたようです。
念の入った、計略です。
ですが、返り討ちに遭っているようです。
スザクは声を出しませんので悲鳴が上がると言うことは、敵兵の悲鳴です。

「あの、アスラ様」

「はい、なんですか」

「なぜ、森に入って敵兵を討たないのですか」

私は不思議に感じて質問しました。

「ふふふ、こんな優秀な兵士を殺したらもったいないじゃ無いですか。こっちに被害は何も無いのですから」

とても嬉しそうに答えてくれました。
アスラ様は、この兵士を自分の配下にしたいと考えているのかもしれません。
火攻めが終わり、数度の弓攻撃を受けた後、長い山道は急に終りました。

「うわあああーーー」

アスラ様とフォリス様の姿が叫び声と共に消えました。
細い道が急に無くなりその先が断崖絶壁になっています。
五十メートル程の高さのところで急に道が無くなっているのです。
手が込んでいるのは、断崖絶壁の前の道は、坂にしてあり先がわからないようになっているのです。

「いまだーーおせーーー!!!」

後ろから敵兵が押し始めたようです。

「ぎゃーーーーーー!!!」

まあそうなるでしょうね。
私は、アスラ様の後ろにいたので落ちずに済みました。
壁に手を当て、様子を見ると、ロウロの領都が平野の中にはっきり浮かんで見えます。流れる川や、小さな森が何カ所かあります。
領都の南の平地に大勢の兵士の姿が見えます。
先日見た十五万人程の兵士に見えます。
高い位置から見る遠景は見とれるほど美しく感じました。

「あっ、アスラ様」

私は、思い出したように叫ぶと足下を見ました。
ふふふ、あの二人がこんなことで、けがをするはずがありませんね。
元気に手を振っています。
私達は敵の目もあることから、ゆっくり崖を降りました。
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