魔王

覧都

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第百二十八話 王都到着

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「うふふ」

「アズサ様、何が可笑しいのですか?」

「ああ、ごめんなさい。うまく隠していると思って楽しくなりました」

「やはりわかりますか。さすがは、アズサ様です」

「途中にあった山小屋も、全部パン食でしたね」

「はい、他国ではパンが主食ですから、そのためですが、アズサ様の考えておられる通り、米を隠す為でもあります」

チガーさんはいつも僕の横にいて、会話に付き合ってくれる。
フォリスさんの横にはレオナさんが片時も離れない。

僕たちはここ三日程、山道を歩かされている。
ドワーフの国と獣人の国の国境となっている山道、おかげで獣人の国の様子が見えない。
外人には国を見せないぞ、という強い意志を感じる。

「あっ」

山道の終わりが来た。
目の前に平野が広がる。
視界をさえぎっていた山が終わり、遠くまで見渡すことが出来る。

「ふふふふ、すごい麦畑です」

やはり、他国の人間にはイネを見せないつもりです。
でもさすがです。
綺麗に絨毯のように一面に麦畑が広がっています。
魔人の国の麦畑とは違います。

「はい、王都まではこの麦畑を抜けて、一本道です」

いくつかの村、大きな街を一つ通り、二日後に王都に着きました。
途中の村でも、街でも、そして王都を守る衛兵も、チガーさんとレオナさんの顔を知らない人がいなかったので、とてもスムーズに通行できました。
出会う人が皆、おびえていたのが少し気になりましたが……。

王城の門の前には、大勢の兵士が整列して僕たちに礼をして、迎えてくれました。

「いつも、こんな感じですか?」

「いいえ、アズサ様とフォルス様だからこそです」

「こちらです」

チガーさんに案内されると、数人のメイドさんがいる。

「俺とレオナは着替えてきます。ここから先はこの者達が案内します」

メイドさんが深々とお辞儀をしてくれました。
その後、お風呂に入り、僕のメイドさんに持たされたドレスを出すと、丁寧に着付けてくれました。
そして、化粧を念入りにされて、大きなテーブルのある部屋に案内された。

「うおおおー、うつくしい」

チガーさんが雄叫びを上げました。
その声が虎っぽいなーと感じました。

「か、かっこいいです……」

小声でもじもじしながら、フォリスさんに声をかけるレオナさんは、超可愛い子猫のように感じました。

「ふふっ、あなたも美しいですよ!」

そう言うと赤いドレスを着た、レオナさんに近づき顔を上げて、フォリスさんはレオナさんのうるんだ目をじっと見つめた。
レオナさんの顔がみるみる真っ赤になった。
こらこら、あんた達は女どうしだからね。

すすめられた席に座ると、遅れて体の大きな貫禄のある白髪の人が入ってきた。
贅沢な服を着ているその人は、一目で王様とわかりました。
僕が席を立とうとすると、手をひらひらさせ、そのまま、そのままと制した。

「余がバウルス、クーダじゃ」

「使者のフォルスです」

フォルスさんがきりっとあいさつをした。

「そして、あなたがアズサちゃんか。本当にかわいいのー」

僕の方を見て、とろけそうにニコニコしている。
そして、ショートさんに少しだけ視線を移し、うなずいた。

「そ、そんな……」

僕が、恥じらうように頬を赤らめ乙女を演じてみた。

「ぶっふぉ」

チガーさんの口から空気が漏れた。よくみたら王様も、メイドさんも吹き出している。
その後、フォリスさんがお決まりの口上を述べおわると、待ちかねたように王様が口をひらいた。

「さて、堅苦しいあいさつはお終いじゃ。まずはわが国の料理を堪能してもらおう」

その言葉を聞くとメイドさんが、慌ただしく動き出した。
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