魔王

覧都

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第百三十三話 忍びの者

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牢は町外れに、木造で作られている。
連行されている時に見えた牢は、何棟もあり罪人が沢山捕まっていることが推測できる。

「静かですね」

フォリスさんが、つぶやいた。
フォリスさんの言うように、罪人が捕まっている気配が無い。

「黙ってあるけ!!」

兵士に怒られた。
僕たちは、兵士の詰め所に近い牢に、面倒くさそうに案内され全員放り込まれた。
晩ご飯にアジフライという食べ物が出て、僕たちは感動してご飯と一緒に食べた。



「お嬢様、お嬢様」

夜更けに、ジュウベイさんに来客があった。
天井に黒装束の女性がぶら下がっている。
全員起きているようですが、寝たふりを決め込んでいるようです。
ここは僕も寝たふりをしておきましょう。

「ツヅルですか」

「はい」

「ひさしぶりー」

「ひさしぶりー! では、ありません。お嬢様は死刑になりますよ。先程、早馬が出ました。死刑執行の許可を求める為の早馬です。王都から返事が来ればすぐさま執行されます」

「あーそれで、この収容施設に罪人がいないのですね」

「そうです。捕まればすぐに死刑執行され、今いる罪人は、お嬢様達だけです。ここはもう駄目です」

「何が駄目なのですか?」

「この街にいる傭兵はみんな賊です。食堂や旅館は奴らの狩場です。見慣れぬ者が来れば全員殺して、全てを奪います。腕が立つ者は、お嬢様のように兵士が呼ばれて死刑です。もうこの街は賊にのっとられているのも、どうぜんです」

「さっ、里の皆は無事なのですか?」

「私達は忍びの者です。逃げたり隠れたりは得意です。東の森にひそみました」

「そうですか。よかった」

「よかったではありません。逃げますよ」

「いいえ、逃げません。この方達と同行して、魔王様の元へいきます。そして、私は魔王様の元で働きます」

「死んでしまっては意味が無いでしょうに!」

「うふふ、死にませんよ。だってこの方達は魔王様の信頼がとても厚い方達なのです。恐らくすごく強いです」

「まさか、こんな可愛い子供達が?」

「はい」

「じゃあ、私も同行します。いざとなったら分身の術で助け出します」

「ニャにーーっ!! 分身の術ニャとーー」

アドが叫びました。

「あら、起こしてしまいましたか」

「そんなことはいいニャ。分身の術を教えるニャ」

「教えろといわれましても、忍術ですから。職業が忍者でレベルが五十を超えないと使えませんよ」

「アドは忍者でレベルは五十を超えているニャ」

「それでしたら九字の印を結び、術を発動させれば出来ますよ」

「九字の印がわからないニャ」

「では、お見せいたします」

ツヅルさんは手の平を胸の前で合わせ、目を閉じた。

「臨:兵:闘:者:皆:陣:列:在:前! 分身の術、四分身」

手の組み替えと同時に声を発した。
なんだかかっこいい。

「おおおおーー」

ツヅルさんの体が四つに分かれた。

「それをやらないと、使えニャかったのか」

「あの、アドさんはどんな術が使えるのですか」

「火遁の術、水遁の術、木遁の術、金遁の術、土遁の術、口寄せの術、他にもいくつか使えるニャ」

「ほぼ、全部じゃ無いですか。まさかアド様は上忍ですか?」

「ちがうニャ、アドは天神の忍者ニャ」

「聞いた事がありませんが、天神様なら恐らく忍者の中でも最上職かもしれません」

「アズサ、フォルス! アドは忍術の練習をしてくるニャ」

アドは言うがはやいか姿を消した。

「き、消えました。そんな術が使えるなんて」

ツヅルさんが言いました。

「あーそれは、シャドウの移動魔法で忍術は関係ありません」

一応言ってみましたが、ツヅルさんには聞こえてないみたいです。

「アド様は私達、ヤジ忍び衆を率いるお方なのかもしれません」

ツヅルさんが目をキラキラさせてつぶやきました。
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