魔王

覧都

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第百四十九話 激突

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翌日、魔王軍はデイラの領都から少し距離を取り、陣を築きました。
魔王は、丁寧に使者を出し、降伏勧告をしてきました。
もちろん領主様は、使者に拒否を伝え返します。
この日、魔王軍は攻撃態勢には入らず、陣の中から動く気配はありませんでした。

翌早朝、デイラ様は門を開け、自軍を防壁から出すと布陣を開始します。

「皆! 私達の任務はこの場所の死守だ。頼むぞ!!」

私の隊に、指示を伝えると、部隊の聖騎士の顔に緊張が走った。
彼女たちにとっては、やはり魔王軍は恐怖の対象のようです。

「はっ!!!」

五百名からの返事がそろった。たのもしい。

「私は防壁にのぼり状況を把握する。負けることは無いと思うが、万が一の時は戻ってくる」

私はそう伝えると、防壁にのぼった。
防壁の上にのぼった時には、デイラ軍は布陣がほぼ終っている。
魔王軍はまだ布陣を始めたばかりだ。

「良し! 勝った!!」

領主様の恐ろしい顔が、邪悪な笑顔になった。
視線の先を見ると、魔王軍の王の旗が、中央から右側に少しずれた丘の上にあがった。
領主様はここに魔王軍の本陣が築かれることを予想していたようだ。
きっと、その前に配置された兵士が、デイラの魔法兵団のようです。

ドドドドドド!!

地響きが後ろから聞こえます。

「王国兵ー! 遅れるなーー!!!」

総大将ザビロが騎馬に乗り兵士を率いています。
先日折られた手足が痛むのか、苦痛に顔をゆがめています。
騎士団は見る見るデイラ兵の前に布陣を開始しました。

「きさまーー、邪魔をするなーー!!」

領主様がザビロに叫びました。

「控えろー! ここでは俺様が王様だー!!」

「ちっ!」

見る見るデイラ兵の前に王国騎士団が布陣していきます。
領主様は用意してあった椅子にドカリと座ると目を閉じブルブル震えています。
これは恐怖による震えでは無く、怒りによる震えというのが伝わってきます。

「おい!!」

「はっ」

領主様は椅子の横に控える兵士に呼びかけました。

「白旗を用意しろ!!」

……!?
領主様は負けを確信してしまったようです。



目の前には、王国騎士団十五万人、デイラ領兵十万総勢二十五万人が布陣しています。
まだ、負けると判断するにははやい気がします。

「ふふふ、敵、魔王軍は前戦に、魔王軍十万、その後ろにロウロ兵十五万が控えている。これでは、魔王軍は前に出てこないだろう」

領主様は私に解説をしてくれているのでしょうか、それとも独り言なのでしょうか?
状況を話しています。
言葉通り、布陣が終って動きが無くなった両軍ですが、全く攻撃の合図が出ません。
しびれを切らしたのは、やはりザビロでした。

「王国騎士団の恐ろしさを見せてやれーー!! かかれー!!!」

「うおおおおおーーー!!!!」

喚声と共に王国騎士団が走り出しました。

「ばかめ!」

領主様が吐き捨てるように、言いました。
王国騎士団が全力で前進します。すごい量の砂埃が私達の所まで舞い上がります。
前が何も見えなくなりました。

「ぎゃああああああああーーーー!!!!!」

恐ろしい悲鳴が上がりました。
何千、いいえ何万の悲鳴に聞こえます。
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