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覧都

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第百五十四話 腹黒猫

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右翼と左翼の魔王軍が恐るべき速さで、デイラ領兵に向ってきます。

「全軍止まれーー!!」

低いけれど力強い、遠くまで良く聞こえる声が響きました。
魔王軍は全軍急停止します。
領主様は防壁の上で大きな白旗を揚げています。

「良い判断ニャ」

アドちゃんが、悪い笑顔で笑います。

「アド様。我軍の前まで運んでもらえないだろうか?」

「いいニャ」

アドちゃんと領主様、二人の姿が領兵の前に現れました。

「全軍武器を捨て、平伏せよ!!」

領主様が大声を出すと、領兵は言われるまま平伏した。
それを確認すると、領主様も平伏しました。
その横でアドちゃんは、突っ立ったまま魔王様を待つようです。

「アドちゃん、あなたが今回一番の手柄のようですね」

黒い大きな男と、美少女と美少年の三人が、領主様とアドちゃんの前に現れ、その中の美少女が話しかけました。

「苦労したニャ」

「はーーっ」

領主様があきれ顔になりました。
その顔は、「あんたライファ様に撫でられていただけじゃねえか」と言っているように見えます。

「ふふふふ」

アドちゃんが勝ち誇ったように笑っています。

「あんた、まさか最初からこれを狙っていたのか?」

「くっくくく、ニャーーはっはっはっは」

領主様が言うと、もうこらえきれないように、大きな声で笑い出した。

「ちっ、アド様は腹黒いな」

「ふっふっふ、お前達とは人生経験が違うニャ!」

領主様が驚いた顔をして、アドちゃんを見つめている。
三人はアドちゃんの会話を邪魔すること無く静かに見つめています。
それだけで魔王様からの信頼の厚さがわかります。

私は、ここまでを見て領主様に依頼された護衛任務を遂行する為に、配下のいる領都の片隅へ移動した。



「あっ、副隊長!!!」

隊員が不安そうな顔して駆け寄って来ます。

「状況を教えて下さい」

「デイラ様は降伏しました」

隊員の顔が蒼白になりガクガク震え出しました。
多くの隊員が座り込み、腰が抜けたようです。

「ら、乱取りが始まります」

通常、戦に勝利した兵士達は荒れ狂う津波のように、乱暴、略奪を始めます。
いちはやく逃げないと、女は死ぬよりつらい目に遭わされます。

「大丈夫です。魔王様が来ていますから。恐れるのは魔王軍ではありません。この街に残っている一部の領兵と、王国兵、盗賊ぐらいです。魔王様が入城するまでの間、私達で守り抜きましょう」

「きゃああああーーー!!」

隊員が悲鳴を上げました。
街の中に火の手が上がっています。

「女はこっちだーー!!!!」

火の手の上がった方から、嫌な声が聞こえてきます。
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