魔王

覧都

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第百七十三話 初めての船

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私の聖騎士隊を領都の中に、婦女子の護衛をさせる為残し、私はリョウキ様とバルゼオさんに手を引かれるように、戦場に案内されています。
魔王軍の侵攻までは少し余裕がある為か、ゆっくり案内してくださいます。

「ここが決戦の地と考えていますが、ここに来るまでに出来るだけ兵力を削りたいと考えています」

決戦の地と言って、リョウキ様が指さす先は海の様な川でした。

「広い川ですね」

「それでも、このあたりでは、一番狭くなっている場所です。川幅は十二キロというところでしょうか。他の場所は、三十キロ以上あります」

川岸には船が大量に浮いています。

「ささっ、こちらへ」

バルゼオさんが船に案内してくれました。

「うふふ、私、船は初めてです」

「気を付けてください。隙間が空いていますので、落ちると大変です」

「ありがとうございます。バルビロ領の重鎮二人に大切に案内されて少し恐縮します」

「なんの、俺はライファ様の手下です。あごで使ってください」

バルゼオさんが言うと、リョウキ様が嬉しそうに微笑んでいます。

「この船には何人乗れるのでしょうか」

「漕ぎ手と兵士合わせて百人乗りです」

「そうですか、大きな船ですね」

「いえいえ、魔王軍は千人乗りの巨大船を作っています。それと比べれば小舟です」

リョウキ様が大きく首を振り教えてくれました。
魔王軍の事をよく調べているようです。

川を渡り、緑の中の道を通り騎馬で二日ほど走りました。

「ライファ様こちらへどうぞ」

高い櫓の横に作られた建物に案内されました。
中には大きな机があり、そこにこの地の地図が置いてあります。
私は思わず駆け寄り見つめました。

「本格的な軍議の場所は初めてです」

きっと私は、目をキラキラさせていたのでしょう。
二人の目が子供を見るような目になっています。

「リョウキ様! 斥候が戻りました」

リョウキ様が部屋に入ると、それを待っていたように、兵士が報告してきます。

「良し、すぐに通せ!」

「はっ」

兵士が扉から手招きをすると、埃まみれの兵士が入ってきました。

「ほっ、報告します!! …………」

そう言いながら兵士は黙ってしまった。
この兵士が斥候の兵士でしょうか。

「あっ、失礼します」

私は、察して部屋を出ようとした。
斥候の兵士は、部外者の私には聞かせたくないようです。

「ふふふ、ライファ様! その必要はありません」

リョウキ様は私に声をかけてくれた。

「ラ、ラ、ライファ様ーー!!」

斥候の兵士が何だかすごく驚いています。

「そうだ、だから気にせず報告せよ」

「は、はい!! そうですかあなた様が伝説の戦女神ライファ様ですか。お目にかかれて光栄です!! 噂と違いとても美しいです」

「はーーっ、どんな噂があるのですか?」

「あっ、何でもありません」

「……」

こんな言われ方をしたら気になってしょうがありません。

「バルゼオさん、教えて下さい。いいえ、教えなさい!!」

「うっ、ぐっ、こ、これは俺が言っているわけではありません。兵士達が言っている言葉です」

「はい! で、なんですか!!」

「そ、それは……、目が吊り上がり鬼の様な……ごにょ、ごにょ」

まあ、恐い顔と言うことでしょうか。
その位ならしょうがありません。
だいたいあっています。

「最後が全然聞こえません。ですが、まあいいでしょう」

「こ、こえーー、噂通りこえーー」

斥候の兵士さん、小声ですが聞こえていますよ。
私が斥候の兵士さんを見ると、ビクンと体を硬直させた。

「ライファ様、その位で許してやって下さい。では、報告を聞こうか」

その位って、リョウキ様、私は少し見ただけですよ。
でも、また口を挟むと報告内容が聞けません、ここは黙っておきます。
私も何が聞けるのか興味が有りますから。

「はっ、では改めて報告いたします」

「うむ、はじめてくれ」

リョウキさんが言い終わると、斥候の兵士は地図に近づき、指を指した。

「魔王軍はリョウキ様の用意した道を素直に進軍してきました」

「そうか! かかったか!!」

リョウキ様が鋭い目つきになり、空中を見つめます。
硬い表情ですが、言葉は嬉しそうでした。
いったい、なにがあるというのでしょうか?
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