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第百七十四話 やさしい軍団
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「あのー、続けてもよろしいですか?」
斥候の兵士は、じっと宙を見るリョウキ様に声をかけました。
「おお、すまん、続けてくれ」
「はい、魔王軍は総勢三十万で国境を越えました。リョウキ様が用意した三路を、中央ギール軍五万、北をオウブ軍五万、南をチョカイ軍五万で進軍中です。そして、バルビロ領に隣接する小領地へは、北にデイラ軍五万、南にイゴウ軍五万を向わせました。しんがりにはロホウ軍五万を国境近くに配置しています」
リョウキ様は斥候の兵士の言う通りに、歩兵の形をした模型を地図の上に置いていきます。
地図には左側に魔王国との国境が書いてあり、右に川の左岸が書いてあります。
地図の上下に五つずつ小領地が書いてあり、そこに一つずつ歩兵の模型が置かれます。
上がデイラ軍、下がイゴウ軍ですね。
そして、地図を三等分するように道が書いてあります。
この道のやや左寄りに、歩兵の模型が一つずつ置かれていきます。
上から、オウブ軍、ギール軍、チョカイ軍ですね。
そして、中央の道の国境近くにも、もう一つ模型が置かれました。
これが、ロホウ軍ですね。
ギール軍、オウブ軍、チョカイ軍のすこし前に薄く赤く塗られた場所があります。
「あの、ここの色が薄く赤いように見えますが、これはなんですか?」
「ふふふ、明日になればわかります」
リョウキ様はうつむきながら、答えました。
顔に影が落ちて表情は見えませんが、私の背中に冷たい汗が流れます。
私はバルゼオさんの顔を見ました。
バルゼオさんはそっと目をそらしました。
何かは、あるようですが私には言いたくないようです。
翌朝は晴天です。
空には雲一つありません。
私とリョウキ様は、櫓の上で地平線を見つめます。
緑の中に一本線を引いたように道が延びています。
バルゼオさんはライファ隊の指揮をとると言って、夜明けと同時に騎馬に乗り出かけました。
お昼近くになると、兵士の姿が見えてきました。
「あれは……?」
「ギール軍です」
「もうじき、薄く赤く塗られた場所ですね」
「……」
私が聞いた時、リョウキ様は返事をせず手を上げました。
すると後ろに、赤いのろしが上がります。
櫓の上から見ていると、遙か彼方、北に一本、南にも一本、のろしが上がります。
「もし、私が軍を率いていたのなら、他国の道は歩きません。魔王軍は自信があるのか、素直なのか、それとも他国の農地を荒らすのを遠慮したのか、道を歩いてきてくれました。それならば、やさしすぎますね。魔王がお人好しなのでしょうか……」
リョウキ様は静かに独り言の様に話しています。
「うわああああああああああああ」
微かに見えるギール軍からの声が聞こえてきました。
空に黒い煙がもくもく上がります。
天をこがすほどの煙です。
火薬を使用したのでしょう。空が黒く染まります。
魔王軍は、リョウキ様の火計にかかったようです。
リョウキ様は、今度は両手をあげました。
後ろに黒いのろしが上がります。
「私の立てた計略がうまくいきました。うまくいくと何故か暗い気持ちになるものですね」
リョウキ様は言葉通りの暗い表情になっていた。
斥候の兵士は、じっと宙を見るリョウキ様に声をかけました。
「おお、すまん、続けてくれ」
「はい、魔王軍は総勢三十万で国境を越えました。リョウキ様が用意した三路を、中央ギール軍五万、北をオウブ軍五万、南をチョカイ軍五万で進軍中です。そして、バルビロ領に隣接する小領地へは、北にデイラ軍五万、南にイゴウ軍五万を向わせました。しんがりにはロホウ軍五万を国境近くに配置しています」
リョウキ様は斥候の兵士の言う通りに、歩兵の形をした模型を地図の上に置いていきます。
地図には左側に魔王国との国境が書いてあり、右に川の左岸が書いてあります。
地図の上下に五つずつ小領地が書いてあり、そこに一つずつ歩兵の模型が置かれます。
上がデイラ軍、下がイゴウ軍ですね。
そして、地図を三等分するように道が書いてあります。
この道のやや左寄りに、歩兵の模型が一つずつ置かれていきます。
上から、オウブ軍、ギール軍、チョカイ軍ですね。
そして、中央の道の国境近くにも、もう一つ模型が置かれました。
これが、ロホウ軍ですね。
ギール軍、オウブ軍、チョカイ軍のすこし前に薄く赤く塗られた場所があります。
「あの、ここの色が薄く赤いように見えますが、これはなんですか?」
「ふふふ、明日になればわかります」
リョウキ様はうつむきながら、答えました。
顔に影が落ちて表情は見えませんが、私の背中に冷たい汗が流れます。
私はバルゼオさんの顔を見ました。
バルゼオさんはそっと目をそらしました。
何かは、あるようですが私には言いたくないようです。
翌朝は晴天です。
空には雲一つありません。
私とリョウキ様は、櫓の上で地平線を見つめます。
緑の中に一本線を引いたように道が延びています。
バルゼオさんはライファ隊の指揮をとると言って、夜明けと同時に騎馬に乗り出かけました。
お昼近くになると、兵士の姿が見えてきました。
「あれは……?」
「ギール軍です」
「もうじき、薄く赤く塗られた場所ですね」
「……」
私が聞いた時、リョウキ様は返事をせず手を上げました。
すると後ろに、赤いのろしが上がります。
櫓の上から見ていると、遙か彼方、北に一本、南にも一本、のろしが上がります。
「もし、私が軍を率いていたのなら、他国の道は歩きません。魔王軍は自信があるのか、素直なのか、それとも他国の農地を荒らすのを遠慮したのか、道を歩いてきてくれました。それならば、やさしすぎますね。魔王がお人好しなのでしょうか……」
リョウキ様は静かに独り言の様に話しています。
「うわああああああああああああ」
微かに見えるギール軍からの声が聞こえてきました。
空に黒い煙がもくもく上がります。
天をこがすほどの煙です。
火薬を使用したのでしょう。空が黒く染まります。
魔王軍は、リョウキ様の火計にかかったようです。
リョウキ様は、今度は両手をあげました。
後ろに黒いのろしが上がります。
「私の立てた計略がうまくいきました。うまくいくと何故か暗い気持ちになるものですね」
リョウキ様は言葉通りの暗い表情になっていた。
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