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第百七十五話 名案
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「うぎゃああああああああああああーー」
魔王軍の悲鳴が更に大きくなりました。
バルビロ領の伏兵が、火計で混乱している魔王軍に矢の雨を降らせています。
「全軍撤退、撤退しろーーー!!!!」
ギール様の叫びです。
「私の攻撃は汚い卑怯な攻撃でしょうか?」
「……」
リョウキ様は、悲しそうな顔になりつぶやきました。
私はどう答えて良いのかわかりません。
リョウキ様は作戦を考えている時は、上機嫌でしたが、いざ策略が決まり大勢の人の悲鳴を聞いて、なにか反省をしている様に感じます。
「ですが、三十万の魔王軍に対し、我軍は十万です。個の強さも、魔人の方が体も大きく、魔力も多い。例えるならライオンに戦いを挑むネズミの様なものです。どんな手でも使い、勝とうとするのは当たり前です。魔王軍はもっと慎重に行動すべきでした。――魔王軍が天帝の騎士団の様に残虐非道なら良かった……」
リョウキ様は、自分に言い訳するように、そして納得するようにつぶやいています。
「魔王と勇者。なぜ魔人の世界と、人間の世界にあらわれるのでしょうか」
私は、ふと思った事が口に出てしまった。
「魔王と勇者……究極の力。本当ですね。この力は世界には無い方がいいですね。人類はおろかです、こんな力を手にすれば暴走します。ふふふ、神様がこの究極の力を、人間達がうまく使う姿を見たいのでは無いでしょうか」
「!?」
私は驚いてリョウキ様の顔を見た。
神様からすれば、魔王と勇者は人々の暮らしを豊かにする為に与えたプレゼントなのでしょうか。
「ふふふ、本当ですね。私達はいつも上手に使えないのですね。これでは人類が滅んでも文句は言えませんね」
「人類が滅ぶ!?」
今度はリョウキ様が私の顔を、目を大きく見開いて見つめてきました。
私はその視線を感じながら、黙って黒煙の上がる戦場を見つめました。
「リョウキ様、報告します!!」
「うむ」
私達は櫓を降りて、隣接する作戦室で早馬の報告を聞いています。
「バルゼオ様率いるライファ隊、ギール軍を撃破しました。敵被害は甚大、ライファ隊の被害は軽微とのことです」
「うむ」
「各部隊に伝令をお願いします。敵ではありますが魔王軍の死者には敬意を込め埋葬するように伝えて下さい。そして、埋葬した死者の数は正確に報告して下さい」
リョウキ様は敵魔王軍の被害を知りたいようです。
でも私は、この後の事が想定できます。そっちが心配で忙しそうにしているリョウキ様に話しかけました。
「あの、リョウキ様。よろしいですか」
「ライファ様、何でしょうか」
「はい。恐らくこの後、魔王軍は赤い鎧を着た魔王直属の部隊が来ると思います。ロウロ領で王国騎士団十五万を打ち破った部隊です」
「えっ、王国騎士団は魔王配下の七大将軍に負けたと聞いていますが」
「いいえ、本当に恐ろしかったのは、魔王直属の六千ほどの赤い部隊でした。彼らは何万もの兵士の圧力をものともせず、押し返していました。彼らがいたおかげで七大将軍は手柄を上げたのです」
「ふむ、ライファ様はその赤い部隊が最強と思っているのですね」
「はい、出来れば戦わない方が良いと思います」
「ふふふ、他ならぬライファ様が言われるのなら間違いないでしょう。今回の戦いで我軍は十分な戦果を上げていると思います。欲張らずに赤い軍団とは戦わず、次は決戦の地、水上戦で決着を付けることとしましょう。いえ、待って下さい。名案が浮かびました」
そういうと、リョウキ様は又もや顔に暗い影を落としニヤリと笑いました。
私は背筋が寒くなりました。
いったいどんなことを考えついたのでしょうか。
魔王軍の悲鳴が更に大きくなりました。
バルビロ領の伏兵が、火計で混乱している魔王軍に矢の雨を降らせています。
「全軍撤退、撤退しろーーー!!!!」
ギール様の叫びです。
「私の攻撃は汚い卑怯な攻撃でしょうか?」
「……」
リョウキ様は、悲しそうな顔になりつぶやきました。
私はどう答えて良いのかわかりません。
リョウキ様は作戦を考えている時は、上機嫌でしたが、いざ策略が決まり大勢の人の悲鳴を聞いて、なにか反省をしている様に感じます。
「ですが、三十万の魔王軍に対し、我軍は十万です。個の強さも、魔人の方が体も大きく、魔力も多い。例えるならライオンに戦いを挑むネズミの様なものです。どんな手でも使い、勝とうとするのは当たり前です。魔王軍はもっと慎重に行動すべきでした。――魔王軍が天帝の騎士団の様に残虐非道なら良かった……」
リョウキ様は、自分に言い訳するように、そして納得するようにつぶやいています。
「魔王と勇者。なぜ魔人の世界と、人間の世界にあらわれるのでしょうか」
私は、ふと思った事が口に出てしまった。
「魔王と勇者……究極の力。本当ですね。この力は世界には無い方がいいですね。人類はおろかです、こんな力を手にすれば暴走します。ふふふ、神様がこの究極の力を、人間達がうまく使う姿を見たいのでは無いでしょうか」
「!?」
私は驚いてリョウキ様の顔を見た。
神様からすれば、魔王と勇者は人々の暮らしを豊かにする為に与えたプレゼントなのでしょうか。
「ふふふ、本当ですね。私達はいつも上手に使えないのですね。これでは人類が滅んでも文句は言えませんね」
「人類が滅ぶ!?」
今度はリョウキ様が私の顔を、目を大きく見開いて見つめてきました。
私はその視線を感じながら、黙って黒煙の上がる戦場を見つめました。
「リョウキ様、報告します!!」
「うむ」
私達は櫓を降りて、隣接する作戦室で早馬の報告を聞いています。
「バルゼオ様率いるライファ隊、ギール軍を撃破しました。敵被害は甚大、ライファ隊の被害は軽微とのことです」
「うむ」
「各部隊に伝令をお願いします。敵ではありますが魔王軍の死者には敬意を込め埋葬するように伝えて下さい。そして、埋葬した死者の数は正確に報告して下さい」
リョウキ様は敵魔王軍の被害を知りたいようです。
でも私は、この後の事が想定できます。そっちが心配で忙しそうにしているリョウキ様に話しかけました。
「あの、リョウキ様。よろしいですか」
「ライファ様、何でしょうか」
「はい。恐らくこの後、魔王軍は赤い鎧を着た魔王直属の部隊が来ると思います。ロウロ領で王国騎士団十五万を打ち破った部隊です」
「えっ、王国騎士団は魔王配下の七大将軍に負けたと聞いていますが」
「いいえ、本当に恐ろしかったのは、魔王直属の六千ほどの赤い部隊でした。彼らは何万もの兵士の圧力をものともせず、押し返していました。彼らがいたおかげで七大将軍は手柄を上げたのです」
「ふむ、ライファ様はその赤い部隊が最強と思っているのですね」
「はい、出来れば戦わない方が良いと思います」
「ふふふ、他ならぬライファ様が言われるのなら間違いないでしょう。今回の戦いで我軍は十分な戦果を上げていると思います。欲張らずに赤い軍団とは戦わず、次は決戦の地、水上戦で決着を付けることとしましょう。いえ、待って下さい。名案が浮かびました」
そういうと、リョウキ様は又もや顔に暗い影を落としニヤリと笑いました。
私は背筋が寒くなりました。
いったいどんなことを考えついたのでしょうか。
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