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第百八十五話 汚いおっさん
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「ロホウさーーん!」
「はっ!!」
大河の西岸の本陣の中で返事がします。
「闘艦が完成しました。いよいよ戦いが始まります!」
「そうですか」
返事は淡泊ですが、ロホウさんの表情が少し明るくなった。
これまでずっと、いつ襲いかかってくるか分からない、バルビロ領兵との長いにらみ合いに、疲れているのかもしれません。
「少し見張り台に、のぼってもよろしいですか?」
「ふふふ、大魔王様がなさりたいことを邪魔する者などおりません」
ロホウさんの手が櫓を示してくれました。
「ありがとうございます」
とはいえ、僕は決して偉そうにはしません。
それをしてしまうと、増長して暴君になってしまいそうだからです。
家臣にもちゃんと丁寧に御礼が言える、そんな大魔王なのです。
天帝の勇者とは違うのです。
「ふふふ、この櫓はしっかり作られていますね」
「はい、時間もありましたから太い木でしっかり作ってあります」
櫓の高さも頑丈さも、前の櫓とは大違いです。
「あああーー、やばい」
櫓にのぼるとすぐに恐怖に襲われました。
「えっ!?」
ロホウさんが僕の言葉に驚いています。
「い、いつからですか?」
「な、何の事でしょうか? 何の事かわかりません!」
ロホウさんが少し慌てています。
「す、済みません。なんの事かわかりませんよね。風です。風が弱いのです」
「風ですか?」
「はい、前回のぼった時にはスカートがまくれ上がる位の風がありました。でも今は髪が少し動く程度です」
「……」
ロホウさんはまだ良く理解が出来ないようです。
「ロホウさん、魔王軍の船は帆船です。風で動くのです」
まだ、少し西風は吹いていますが、随分弱々しくなっています。
いよいよ急がないといけないかもしれません。
もし東風にでもなった時には、戦う前から負けてしまいます。
「ジュウドウ!」
「はっ」
僕は櫓の上にロホウさんを残し運河に戻りました。
「闘艦を移動魔法で、戦場まで移動するのはシャドウに可能でしょうか」
僕は出来上がった闘艦を見て、どうやって運ぶのかを思案している。
「これだけ大きな物は、シャドウには難しいかと」
「そうですか」
となると、僕の魔法ですか。
今日の夜中に頑張って見ますか。
何隻かまとめて移動出来るといいのですが。
「おーーい、アスラ殿ーー!!」
「ああ、爺さん」
僕とジュウドウの姿を見つけて、爺さんがやってきた。
「はーーっ、はーーっ」
爺さんは走ってきた為か、息を切らせている。
「何でしょうか? そんなに慌てて」
「ちと紹介したい奴がおってのう」
「誰ですか?」
「この者じゃ!」
爺さんが後ろから走ってくる、汚い服を着てバサバサの髪の男を紹介してくれた。
「だ、誰ですか?」
僕と汚い男の声が合わさった。
「誰ですかでは無い、この方こそがお前が会いたがっていた大魔王様じゃ!!」
「えーー! この女の子がーー!!!」
そうです。女の子の格好をした僕が大魔王なのです。
「ば、ばか者!! これこそが世を忍ぶ大魔王様の仮の姿じゃ!」
「なるほど、世を忍ぶ事が完璧に出来ています。とても可愛らしい。提督に言われなければ絶対に信じられません。うん、すごい」
すごい勢いで見てきます。
臭い吐息が顔にいっぱいかかります。
「こ、こら!! さっさと自己紹介をせんか!!」
そ、そうだ、そうだ、いったい誰なんだよお前は!!
「はっ!!」
大河の西岸の本陣の中で返事がします。
「闘艦が完成しました。いよいよ戦いが始まります!」
「そうですか」
返事は淡泊ですが、ロホウさんの表情が少し明るくなった。
これまでずっと、いつ襲いかかってくるか分からない、バルビロ領兵との長いにらみ合いに、疲れているのかもしれません。
「少し見張り台に、のぼってもよろしいですか?」
「ふふふ、大魔王様がなさりたいことを邪魔する者などおりません」
ロホウさんの手が櫓を示してくれました。
「ありがとうございます」
とはいえ、僕は決して偉そうにはしません。
それをしてしまうと、増長して暴君になってしまいそうだからです。
家臣にもちゃんと丁寧に御礼が言える、そんな大魔王なのです。
天帝の勇者とは違うのです。
「ふふふ、この櫓はしっかり作られていますね」
「はい、時間もありましたから太い木でしっかり作ってあります」
櫓の高さも頑丈さも、前の櫓とは大違いです。
「あああーー、やばい」
櫓にのぼるとすぐに恐怖に襲われました。
「えっ!?」
ロホウさんが僕の言葉に驚いています。
「い、いつからですか?」
「な、何の事でしょうか? 何の事かわかりません!」
ロホウさんが少し慌てています。
「す、済みません。なんの事かわかりませんよね。風です。風が弱いのです」
「風ですか?」
「はい、前回のぼった時にはスカートがまくれ上がる位の風がありました。でも今は髪が少し動く程度です」
「……」
ロホウさんはまだ良く理解が出来ないようです。
「ロホウさん、魔王軍の船は帆船です。風で動くのです」
まだ、少し西風は吹いていますが、随分弱々しくなっています。
いよいよ急がないといけないかもしれません。
もし東風にでもなった時には、戦う前から負けてしまいます。
「ジュウドウ!」
「はっ」
僕は櫓の上にロホウさんを残し運河に戻りました。
「闘艦を移動魔法で、戦場まで移動するのはシャドウに可能でしょうか」
僕は出来上がった闘艦を見て、どうやって運ぶのかを思案している。
「これだけ大きな物は、シャドウには難しいかと」
「そうですか」
となると、僕の魔法ですか。
今日の夜中に頑張って見ますか。
何隻かまとめて移動出来るといいのですが。
「おーーい、アスラ殿ーー!!」
「ああ、爺さん」
僕とジュウドウの姿を見つけて、爺さんがやってきた。
「はーーっ、はーーっ」
爺さんは走ってきた為か、息を切らせている。
「何でしょうか? そんなに慌てて」
「ちと紹介したい奴がおってのう」
「誰ですか?」
「この者じゃ!」
爺さんが後ろから走ってくる、汚い服を着てバサバサの髪の男を紹介してくれた。
「だ、誰ですか?」
僕と汚い男の声が合わさった。
「誰ですかでは無い、この方こそがお前が会いたがっていた大魔王様じゃ!!」
「えーー! この女の子がーー!!!」
そうです。女の子の格好をした僕が大魔王なのです。
「ば、ばか者!! これこそが世を忍ぶ大魔王様の仮の姿じゃ!」
「なるほど、世を忍ぶ事が完璧に出来ています。とても可愛らしい。提督に言われなければ絶対に信じられません。うん、すごい」
すごい勢いで見てきます。
臭い吐息が顔にいっぱいかかります。
「こ、こら!! さっさと自己紹介をせんか!!」
そ、そうだ、そうだ、いったい誰なんだよお前は!!
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