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第百九十話 第二の秘策
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「まあ、今となっては使うことが出来ませんが、この水上戦も火計を使おうと思っていたのですよ」
机の上に魔王軍の闘艦の模型を並べながら、リョウキ様がいまいましそうに言いました。
「火計ですか?」
「そうです。この魚ヌルの身は、とても良く燃える脂で出来ています。火がつくと勢いよく燃え上がり、まわりの物を燃やし尽くします。あまりにも火力が強いので、火計くらいしか使い道がありません。食べることも出来ず、気軽に燃やすことも出来ない。まさに食べても、燃やしても使い物にならない厄介な魚です。ついたあだ名が、天神の勇者アスラです。まさに嫌われ者なのです」
「て、天神の勇者アスラ……嫌われ者……」
「お、おおおっ、どうなされました」
リョウキ様が慌てています。
気が付いたら、私の目から涙がこぼれ落ちていました。
「ずーーっ、いっ、いえ、何でもありません」
鼻をすすって、慌てて涙を拭きました。
天帝の勇者と教祖の策略で、王国内でアスラ様は全ての人から嫌われています。
私だって、最近までそう思っていました。
イルナ様も私達が、アスラ様を悪く言った時には、こんな気持ちだったのかと思うと、つい涙が出てしまいました。
「申し訳ありません。ひょっとするとライファ様は、天神の勇者アスラ様の本当の姿を知っているのですか?」
「えっ!?」
「ふふふ、世間では天神の勇者アスラ様を悪く言いますが、私はあの方の本当の姿を知っています。――数年前、この大河ライノに大蛇が出て暴れまわりました。冒険者ギルドに退治を頼んだのですが、S級冒険者でも退治ができませんでした。領兵で退治しようとしましたが、被害が広がるばかりでなかなか退治ができませんでした。困っていると、ある日突然、大蛇が真っ二つになってヌルの餌になっていました」
「……」
私はリョウキ様の顔を見つめました。
「誰がやったかは分かりませんが、剣で斬り殺した事は明らかでした。その後、私が調べてみると領民が困っていると、知らぬ間に、誰かが助けてくれている事案が沢山ありました。私は天神の勇者アスラ様が助けてくれたものと思っていました」
せっかく涙を拭いたのに、また、涙が出て来ました。
「やはりライファ様も天神の勇者様の、本当の姿をご存じだったのですね」
「リョウキ様は何でも分かってしまうのですね」
「いいえ、今も魔王軍の艦隊がどうやって運ばれたのかも分からない程度の爺です」
「ふふふ」
私は、嬉しくて笑顔がこぼれました。
私の笑顔を見ると、リョウキ様も満足そうな顔になり、戦場図に目を移しました。
「さて、ここを見て下さい」
リョウキ様は、魔王軍の艦隊の上流をさしました。
そこには漁村があり、村の少し上流に森が造られています。
「森ですね」
「ふふふふ、ここの森には木々に隠れて大きな池があります。この池は水門で河とつながっています。水門を開けると池の水は河に流れ込みます。……この池に漁の網にかかったヌルが大量に捨てられているのです」
「!?」
「さすがはライファ様です。気が付きましたね」
池の水門を開けば、大量のヌルが、魔王軍の艦隊のまわりに流れつきます。
「火を付ければ……」
「ふふふ、そうです。それが私の立てた第二の策略です。でも、それが使えないのです。あと、一週間あれば! せめて西風がとまれば! はやすぎる。魔王軍めーー!!」
リョウキ様がこぶしを握りしめ唇を噛みます。
私は、今からでも水門を開けば良いのではないかと、思うのですが何故出来ないのでしょうか。
「何故、今からでも水門を開けないのかと、言いたそうな顔ですね」
「えーーっ、何故わかるのですかー!!」
リョウキ様は恐すぎます。
でも、何故なのでしょう。
「ふふふ、ではそれについて説明しましょう」
「は、はい。お願いします」
私は、リョウキ様の顔を見つめ説明を待った。
机の上に魔王軍の闘艦の模型を並べながら、リョウキ様がいまいましそうに言いました。
「火計ですか?」
「そうです。この魚ヌルの身は、とても良く燃える脂で出来ています。火がつくと勢いよく燃え上がり、まわりの物を燃やし尽くします。あまりにも火力が強いので、火計くらいしか使い道がありません。食べることも出来ず、気軽に燃やすことも出来ない。まさに食べても、燃やしても使い物にならない厄介な魚です。ついたあだ名が、天神の勇者アスラです。まさに嫌われ者なのです」
「て、天神の勇者アスラ……嫌われ者……」
「お、おおおっ、どうなされました」
リョウキ様が慌てています。
気が付いたら、私の目から涙がこぼれ落ちていました。
「ずーーっ、いっ、いえ、何でもありません」
鼻をすすって、慌てて涙を拭きました。
天帝の勇者と教祖の策略で、王国内でアスラ様は全ての人から嫌われています。
私だって、最近までそう思っていました。
イルナ様も私達が、アスラ様を悪く言った時には、こんな気持ちだったのかと思うと、つい涙が出てしまいました。
「申し訳ありません。ひょっとするとライファ様は、天神の勇者アスラ様の本当の姿を知っているのですか?」
「えっ!?」
「ふふふ、世間では天神の勇者アスラ様を悪く言いますが、私はあの方の本当の姿を知っています。――数年前、この大河ライノに大蛇が出て暴れまわりました。冒険者ギルドに退治を頼んだのですが、S級冒険者でも退治ができませんでした。領兵で退治しようとしましたが、被害が広がるばかりでなかなか退治ができませんでした。困っていると、ある日突然、大蛇が真っ二つになってヌルの餌になっていました」
「……」
私はリョウキ様の顔を見つめました。
「誰がやったかは分かりませんが、剣で斬り殺した事は明らかでした。その後、私が調べてみると領民が困っていると、知らぬ間に、誰かが助けてくれている事案が沢山ありました。私は天神の勇者アスラ様が助けてくれたものと思っていました」
せっかく涙を拭いたのに、また、涙が出て来ました。
「やはりライファ様も天神の勇者様の、本当の姿をご存じだったのですね」
「リョウキ様は何でも分かってしまうのですね」
「いいえ、今も魔王軍の艦隊がどうやって運ばれたのかも分からない程度の爺です」
「ふふふ」
私は、嬉しくて笑顔がこぼれました。
私の笑顔を見ると、リョウキ様も満足そうな顔になり、戦場図に目を移しました。
「さて、ここを見て下さい」
リョウキ様は、魔王軍の艦隊の上流をさしました。
そこには漁村があり、村の少し上流に森が造られています。
「森ですね」
「ふふふふ、ここの森には木々に隠れて大きな池があります。この池は水門で河とつながっています。水門を開けると池の水は河に流れ込みます。……この池に漁の網にかかったヌルが大量に捨てられているのです」
「!?」
「さすがはライファ様です。気が付きましたね」
池の水門を開けば、大量のヌルが、魔王軍の艦隊のまわりに流れつきます。
「火を付ければ……」
「ふふふ、そうです。それが私の立てた第二の策略です。でも、それが使えないのです。あと、一週間あれば! せめて西風がとまれば! はやすぎる。魔王軍めーー!!」
リョウキ様がこぶしを握りしめ唇を噛みます。
私は、今からでも水門を開けば良いのではないかと、思うのですが何故出来ないのでしょうか。
「何故、今からでも水門を開けないのかと、言いたそうな顔ですね」
「えーーっ、何故わかるのですかー!!」
リョウキ様は恐すぎます。
でも、何故なのでしょう。
「ふふふ、ではそれについて説明しましょう」
「は、はい。お願いします」
私は、リョウキ様の顔を見つめ説明を待った。
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