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第百八十九話 一つ目の秘策
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「この地は、あと少しで西風が止み、北風が吹き始めます」
「!? と、いうことは魔王軍の船は動けなくなるのですね」
「いいえ、帆船は真正面からの風で無ければ前に進みます。まあ、西風よりも操作が難しくなるのは間違いありません、ですが、私の狙いは他にあります」
「な、なんですか」
「ふふふ、レノさん、あれをこちらへ」
リョウキ様は部屋の外に声をかけました。
「はい」
あらわれたのは、甲冑を着けた美しい女兵士でした。
レノさんと呼ばれた女兵士は手に皿を持ち、私を見つめます。
そこには少し敵意のようなものを感じます。
「これが何だか分かりますか」
皿の上には白い固まりがあります。
うっすら赤みを帯びて、表面がテカテカ光り、皿の上をツルツル滑っています。
リョウキ様は私に見せる為に、あらかじめ用意をしてくれていたようです。
「これを食べてみて下さい」
その固まりから、角をほんの1センチ程切り取り、塩を振りました。
手で摘まもうとするとヌルヌルしてうまくつかめません。
仕方が無いので皿に口を付けて、指で口に運びました。
「お、おいしい!!」
思わず声が出るほど美味しい。
口の中に入れると、すっと溶けて、濃厚な脂のあまみが口一杯に広がります。
「ふふふ、これを、獣人族の秘密の調味料醤油で食べると、さらに美味しくて止らなくなります。ですが気を付けて下さい。この固まりはヌルという魚の身です」
リョウキ様が言うと、レノさんが皿をかたづけて、黒い魚を見せてくれました。
丸い卵のような胴体に、ひらひらの尾びれを付けた真っ黒な魚です。
「普通の魚は、平たくて、腹が銀色に輝くものですが、この魚はこんな見た目です。当然泳ぎも下手くそです。ですが、誰にも食べられません。なぜなら、この魚の脂は消化できないのです」
「えっ」
「ふふふ、この魚の身は一切れ食べると一週間、二切れ食べると二週間下痢が止らなくなります。そして三切れ食べるとその下痢が止ると言われています」
「三切れ食べると治るのですか?」
「いいえ、死んでしまうのです。ひっひっひ」
リョウキ様が、また暗い表情になり、口だけで笑います。
「えええええーーー!!!」
「あー大丈夫です。ライファさんが食べたくらいなら影響有りません。ですがこの身を一切れ食べたのなら、腸に脂がべっちょりくっついて、取れなくなります。毎日お湯を飲み、脂を少しずつ外に出さないといけません。その間は激しい下痢で体が衰弱します」
「お、恐ろしいですね。うふふ、最初こんな美味しい物をほんの少しだったので、もっと欲しいと思いました」
「この身を、漁師からの差し入れとして魔王軍に食べてもらおうと考えていました」
「な、なんですってーー!!!」
お、恐ろしい、恐ろしい、なんて恐ろしい事を考えるのでしょう。
万が一、魔王軍に醤油なんて物があったら、何人死人が出るでしょう。
もしかしたら、魔王様まで死んでしまうかも……。
醤油が無いことを祈ります。
「でも、まだ秘策があるのですよ。ひひひひひ」
リョウキ様が、面白そうに笑っている。
なんだか、私は背筋がまた寒くなりました。
いったい、これ以上何があると言うのでしょうか。
「!? と、いうことは魔王軍の船は動けなくなるのですね」
「いいえ、帆船は真正面からの風で無ければ前に進みます。まあ、西風よりも操作が難しくなるのは間違いありません、ですが、私の狙いは他にあります」
「な、なんですか」
「ふふふ、レノさん、あれをこちらへ」
リョウキ様は部屋の外に声をかけました。
「はい」
あらわれたのは、甲冑を着けた美しい女兵士でした。
レノさんと呼ばれた女兵士は手に皿を持ち、私を見つめます。
そこには少し敵意のようなものを感じます。
「これが何だか分かりますか」
皿の上には白い固まりがあります。
うっすら赤みを帯びて、表面がテカテカ光り、皿の上をツルツル滑っています。
リョウキ様は私に見せる為に、あらかじめ用意をしてくれていたようです。
「これを食べてみて下さい」
その固まりから、角をほんの1センチ程切り取り、塩を振りました。
手で摘まもうとするとヌルヌルしてうまくつかめません。
仕方が無いので皿に口を付けて、指で口に運びました。
「お、おいしい!!」
思わず声が出るほど美味しい。
口の中に入れると、すっと溶けて、濃厚な脂のあまみが口一杯に広がります。
「ふふふ、これを、獣人族の秘密の調味料醤油で食べると、さらに美味しくて止らなくなります。ですが気を付けて下さい。この固まりはヌルという魚の身です」
リョウキ様が言うと、レノさんが皿をかたづけて、黒い魚を見せてくれました。
丸い卵のような胴体に、ひらひらの尾びれを付けた真っ黒な魚です。
「普通の魚は、平たくて、腹が銀色に輝くものですが、この魚はこんな見た目です。当然泳ぎも下手くそです。ですが、誰にも食べられません。なぜなら、この魚の脂は消化できないのです」
「えっ」
「ふふふ、この魚の身は一切れ食べると一週間、二切れ食べると二週間下痢が止らなくなります。そして三切れ食べるとその下痢が止ると言われています」
「三切れ食べると治るのですか?」
「いいえ、死んでしまうのです。ひっひっひ」
リョウキ様が、また暗い表情になり、口だけで笑います。
「えええええーーー!!!」
「あー大丈夫です。ライファさんが食べたくらいなら影響有りません。ですがこの身を一切れ食べたのなら、腸に脂がべっちょりくっついて、取れなくなります。毎日お湯を飲み、脂を少しずつ外に出さないといけません。その間は激しい下痢で体が衰弱します」
「お、恐ろしいですね。うふふ、最初こんな美味しい物をほんの少しだったので、もっと欲しいと思いました」
「この身を、漁師からの差し入れとして魔王軍に食べてもらおうと考えていました」
「な、なんですってーー!!!」
お、恐ろしい、恐ろしい、なんて恐ろしい事を考えるのでしょう。
万が一、魔王軍に醤油なんて物があったら、何人死人が出るでしょう。
もしかしたら、魔王様まで死んでしまうかも……。
醤油が無いことを祈ります。
「でも、まだ秘策があるのですよ。ひひひひひ」
リョウキ様が、面白そうに笑っている。
なんだか、私は背筋がまた寒くなりました。
いったい、これ以上何があると言うのでしょうか。
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