魔王

第二百四話 勝利！

天帝の騎士団の逃げる先をふさぐように、上空のドラゴンが舞い降り、多くの天帝の騎士を踏み潰した。
敵兵はパニックにおちいり、くるりと反転して走り出した。
全力で走る敵兵は、縦に長い隊列となり、私達の方に走って来ます。

「どけーー！！」
「じゃまだーー！！」

天帝の騎士団が武器を振り上げこちらに向ってきます。
私達は、私を中央に、左にロホウさん、右にバムードさんが待ち構えています。
オウブさんは私の後ろで、ずいぶん間隔を開けて待ち構えています。

「ぎゃああああーーーー！！！」

先程、囲まれて戦った時とは違い、左右に力強い味方がいることに加え、一度に大勢を相手にしなくても良いので、私は余裕で剣を振ることが出来た。
敵兵は、次々悲鳴を上げている。

私達の攻撃を切り抜けた敵兵は、今度はオウブさんの恐怖の攻撃にさらされ、次々二つに切られていく。
敵兵はその攻撃に、悲鳴すら上げることが出来なかった。
数分で、動けない兵士で地面が覆い尽くされた。

「……」

戦場から、叫び声と悲鳴が少しずつ無くなり次第に静かになっていく。
最早私達の前の兵士達は走ることを諦め、茫然自失で立ち止まっている。

「魔王様は今、領都におられる。降伏する者は武装を解除しその意を示せーー！！！！」

オウブさんが大声を出した。
その声を聞くと、天帝の騎士達はのろのろと武器を捨て、鎧を脱ぎ捨てた。
そして、領都の方向に向き、ひざまずくと額を地面にこすり付けた。

「うおおおおおおおおおーーーーーーーー！！！！！

領兵と聖騎士、ドラゴンの地響きのような雄叫びが上がった。

「さすがはライファ殿ですな！　魔王軍の大将軍にも見劣りがしませぬ」

ロホウさんがお世辞を言ってくださいました。

「ラ、ライファ様！！　申し訳ありませんでした！」

領兵の隊長がひざをつき、私にすまなそうに謝ってきました。
領兵の皆さんがそれにならって、全員ひざまずいた。

「いいえ、私は当然のことをしたまでです」

「ち、違うのですライファ様、私達はいわば反ライファ派の人間です。リョウキ様やバルゼオ様がライファ様を、ちやほやする度に、何故聖騎士四番隊の者などをもてはやすのかと、リョウキ様に文句を言っていました。そのため領都に居残りをさせられていたのです。今、ライファ様の実力を目の当たりにしてリョウキ様の言っている意味が分かりました」

「そんなことですか。私はその様な事は気になりません。聖騎士四番隊はいつもその様に評価されていましたから」

私は、笑顔を領兵の皆さんに見えるようにしました。

「ラ、ライファ様……」



私はこの後、魔王の支配を良しとしない人や、王国に家族のいる人などを護衛して王都へ向いました。
国境まではオウブさんとロホウさん、バムードさんまで一緒になって送って下さいました。