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降霊術
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現在、公園の中央にある一本の木について話し合われている。
いつ誰が種を植えたのか分からない巨木についてである。
太く育った巨木は、こんな所にあっては邪魔以外の何物でも無い。
そしていざ切る日になると。
「この地には不思議な力がある。恐れ多いことはしない方が良い」
近所のおばあさんが、どこからとも無くやって来て、切り倒そうとする業者に訴えかけるのだ。
おばあさんが亡くなってからは、切ろうとするたびに業者がケガをしたり、交通事故を起こしたり良くないことが続いた。
結局今もその木はそのまま残っている。
昭和の時代、ここには神社があったと言われている。
ベッドタウンとして開発が進んだとき、地元民の反対を押し切って、神社を移転させたのである。
神社は無くなったが、この場所には立派なご神木が有り、その時も切る、切らないで大きくもめたのだ。
そしてその時は木を切り倒したのだ。
チェーンソーの刃が入ると、血のような赤い樹液があたりに飛び散ったと言われている。
こんな場所だから、地元の人間はこの地を恐れていた。
だが、開発の波はこの空き地を放置できなかった。
はじめこの場所には集合住宅が建ったのだが、深夜に原因不明の出火で全焼し何人も死者が出た。
しばらく放置されたのだが、大きなマンションの建設工事が始まった。だが、その建設工事は事故続きで何人も死者が出た。そのため建設が断念されるという、曰く付きの場所となった。
ずっと空き地になっていたが、いつからか公園になっている。
「美代! はやく来なさいよー」
その公園に四人の少女がやってきた。
美代と呼ばれた少女は、美しい長い黒髪の少女だった。
その少女は、他の少女のカバンを全部持たされ少し遅れて歩いている。
体には無数のあざがあり、教科書には酷い落書きもある。
「あんな子はほっといて、私達で始めましょう」
美代以外の三人は、公園の片隅の休憩スペースの机に、一枚の紙を置いた。
その紙はコックリさんの降霊術に使う為のものだった。
美代はそれを見て、ビックリした。そして美代の体は震えが止まらなくなった。
(この人達はここがどういう場所か知らないのだわ)
ずっと代々この地に住んでいる美代は、祖母からこの場所で遊ばないよう、口が酸っぱくなるほど言われてきた。
「コックリさん、コックリさん……」
三人は無邪気に、降霊の呪文を口にしていた。
その時、ざざざざーー、公園の生け垣が風も無いのに鳴った。
美代の体は驚きの余り少し飛び上がった。
だが三人の少女はまるで気が付いていなかった。
「クラスの男子で、私達のことを好きな人を教えて下さい」
質問は無邪気なものだった。
美代は、この三人から陰湿ないじめを受けていた。
毎日続くこの拷問は、美代の心を蝕んでいた。
(もう耐えられない、死にたい。私が死んだら誰か罰を与えて下さい)
美代は最近強く心に思っていた。
「うわー!」
「すごーい!」
「うごいたー!」
三人は喜んでいた。
三人は人差し指で、十円硬貨を押さえている。
それが、つつーと動いたのだ。
この降霊術は、紙に書いた文字の上に、指で押さえた硬貨がひとりでに動くという降霊術なのだ。
コックリさんと呼んで近くの力を取り込む降霊術は、時に強い力が呼ばれてしまうので、おそろしい降霊術の一つなのである。
「ねえ、誰か動かしていないよね」
三人のリーダー的存在、美加が質問する。
残りの二人が首を全力で振る。
何か得体のしれない物の存在を感じ、三人は熱くも無いのに汗が吹き出していた。
後ろで美代は、手を口に当て悲鳴を押し殺していた。
十円硬貨が動いた時、少し悲鳴が上がってしまったのだ。
最早、全身がガタガタ震えている。
「こ」
美加が恐る恐る言った。
「い」
「きゃー、恋だって」
この二文字で三人の緊張は解けて無くなってしまった。
「つ」
「ら」
「で」
「ねーー、つらで、って誰のことかな」
「津田君じゃ無い」
「そうね、きっとそうよ」
「い」
「い」
「井伊君だわ」
井伊君と言うのはクラスで一番人気の男子だった。
三人のテンションは上がった。
「の」
「か」
「きっと野田君だわ」
美加はわざとらしく、はしゃぐように喜んでいた。
「はい」
美代は無表情で何者かの呼びかけに返事をしていた。
「きゃー! 美代―、あんた何で急に声を出しているのよ」
背後からの「はい」と言う美代の返事に三人は大げさに驚いていた。
何者かの得体の知れない気配を感じ、三人は恐怖を強く感じているようだった。
三人は手元を見て驚いた。
十円硬貨が勝手に素早く動き、三人の指の下から飛んでいった。
この降霊術には、大きなルールがある。
降霊術が終るまでは決して硬貨から、指を離してはならないと……。
「きゃー!」
三人は悲鳴を上げると、すごい勢いで走り出した。
まるで何かに後ろを押されている様に。
キー!!
ドンッ
公園から飛び出すと、三人は道路を走っていたトラックの前に飛び出していた。
美代はいじめから解放されると、公園の中央に感謝の気持ちを込めて森で拾った木の種を埋めた。
その種は異常なほどの成長を見せ、数年で巨木に育った。
それは、この地に何か不思議な力があることを訴えているかのようだった。
神社は移ったが、不思議な力はまだこの地に残ったままなのだろう。
いつ誰が種を植えたのか分からない巨木についてである。
太く育った巨木は、こんな所にあっては邪魔以外の何物でも無い。
そしていざ切る日になると。
「この地には不思議な力がある。恐れ多いことはしない方が良い」
近所のおばあさんが、どこからとも無くやって来て、切り倒そうとする業者に訴えかけるのだ。
おばあさんが亡くなってからは、切ろうとするたびに業者がケガをしたり、交通事故を起こしたり良くないことが続いた。
結局今もその木はそのまま残っている。
昭和の時代、ここには神社があったと言われている。
ベッドタウンとして開発が進んだとき、地元民の反対を押し切って、神社を移転させたのである。
神社は無くなったが、この場所には立派なご神木が有り、その時も切る、切らないで大きくもめたのだ。
そしてその時は木を切り倒したのだ。
チェーンソーの刃が入ると、血のような赤い樹液があたりに飛び散ったと言われている。
こんな場所だから、地元の人間はこの地を恐れていた。
だが、開発の波はこの空き地を放置できなかった。
はじめこの場所には集合住宅が建ったのだが、深夜に原因不明の出火で全焼し何人も死者が出た。
しばらく放置されたのだが、大きなマンションの建設工事が始まった。だが、その建設工事は事故続きで何人も死者が出た。そのため建設が断念されるという、曰く付きの場所となった。
ずっと空き地になっていたが、いつからか公園になっている。
「美代! はやく来なさいよー」
その公園に四人の少女がやってきた。
美代と呼ばれた少女は、美しい長い黒髪の少女だった。
その少女は、他の少女のカバンを全部持たされ少し遅れて歩いている。
体には無数のあざがあり、教科書には酷い落書きもある。
「あんな子はほっといて、私達で始めましょう」
美代以外の三人は、公園の片隅の休憩スペースの机に、一枚の紙を置いた。
その紙はコックリさんの降霊術に使う為のものだった。
美代はそれを見て、ビックリした。そして美代の体は震えが止まらなくなった。
(この人達はここがどういう場所か知らないのだわ)
ずっと代々この地に住んでいる美代は、祖母からこの場所で遊ばないよう、口が酸っぱくなるほど言われてきた。
「コックリさん、コックリさん……」
三人は無邪気に、降霊の呪文を口にしていた。
その時、ざざざざーー、公園の生け垣が風も無いのに鳴った。
美代の体は驚きの余り少し飛び上がった。
だが三人の少女はまるで気が付いていなかった。
「クラスの男子で、私達のことを好きな人を教えて下さい」
質問は無邪気なものだった。
美代は、この三人から陰湿ないじめを受けていた。
毎日続くこの拷問は、美代の心を蝕んでいた。
(もう耐えられない、死にたい。私が死んだら誰か罰を与えて下さい)
美代は最近強く心に思っていた。
「うわー!」
「すごーい!」
「うごいたー!」
三人は喜んでいた。
三人は人差し指で、十円硬貨を押さえている。
それが、つつーと動いたのだ。
この降霊術は、紙に書いた文字の上に、指で押さえた硬貨がひとりでに動くという降霊術なのだ。
コックリさんと呼んで近くの力を取り込む降霊術は、時に強い力が呼ばれてしまうので、おそろしい降霊術の一つなのである。
「ねえ、誰か動かしていないよね」
三人のリーダー的存在、美加が質問する。
残りの二人が首を全力で振る。
何か得体のしれない物の存在を感じ、三人は熱くも無いのに汗が吹き出していた。
後ろで美代は、手を口に当て悲鳴を押し殺していた。
十円硬貨が動いた時、少し悲鳴が上がってしまったのだ。
最早、全身がガタガタ震えている。
「こ」
美加が恐る恐る言った。
「い」
「きゃー、恋だって」
この二文字で三人の緊張は解けて無くなってしまった。
「つ」
「ら」
「で」
「ねーー、つらで、って誰のことかな」
「津田君じゃ無い」
「そうね、きっとそうよ」
「い」
「い」
「井伊君だわ」
井伊君と言うのはクラスで一番人気の男子だった。
三人のテンションは上がった。
「の」
「か」
「きっと野田君だわ」
美加はわざとらしく、はしゃぐように喜んでいた。
「はい」
美代は無表情で何者かの呼びかけに返事をしていた。
「きゃー! 美代―、あんた何で急に声を出しているのよ」
背後からの「はい」と言う美代の返事に三人は大げさに驚いていた。
何者かの得体の知れない気配を感じ、三人は恐怖を強く感じているようだった。
三人は手元を見て驚いた。
十円硬貨が勝手に素早く動き、三人の指の下から飛んでいった。
この降霊術には、大きなルールがある。
降霊術が終るまでは決して硬貨から、指を離してはならないと……。
「きゃー!」
三人は悲鳴を上げると、すごい勢いで走り出した。
まるで何かに後ろを押されている様に。
キー!!
ドンッ
公園から飛び出すと、三人は道路を走っていたトラックの前に飛び出していた。
美代はいじめから解放されると、公園の中央に感謝の気持ちを込めて森で拾った木の種を埋めた。
その種は異常なほどの成長を見せ、数年で巨木に育った。
それは、この地に何か不思議な力があることを訴えているかのようだった。
神社は移ったが、不思議な力はまだこの地に残ったままなのだろう。
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