底辺おじさん、助けた異世界転生美少女の異世界魔法と異世界アイテムそして特殊能力ゴミ処理で世界を救う

覧都

文字の大きさ
31 / 428

第三十一話 初めての保護

しおりを挟む
 大急ぎで声の方向を目指した。
 ここがどこだかわかってから見ると、川だと思っていた所が堀だとわかる。
 堀から伸びる太い道路を車でふさぎ土嚢が積まれている。その先で巨大な男が暴れている。
 男の後ろに見た事がある駅が見える。

「あれは東京駅か」

「あなた、本当に気付いて無かったの」

 当たり前だ。
 俺には全く関心が無い場所だ。
 東京駅は、新幹線に乗る時に使ったが、外に出た事もない。
 こんなに皇居と東京駅が近いとは全く知らなかった。

「ああ、気付いていなかった。ミサはここで待っていてくれ」

 俺は土嚢の手前で、ミサを下ろすと男の前に出た。
 男は、頭にボロボロの麻袋の様な物をかぶり、顔を隠している。目の所だけ開けていて、そこからのぞく目は吊り上がり鋭かった。
 全身が金属で出来ている様な銀色で、そこに毛がぼうぼうに生えていた。
 身長は二メートルをはるかに超えている。

 両手に兵士をぶら下げている。
 まるで重さを感じていないようだ。

「グイモノヲヨゴゼー!!」

 片言で、食い物を要求しているようだ。
 外人なのか?
 良く見るとすぐ脇の、茶色のビルの影にボロボロの服を着た人達が隠れている。
 子供もいる。
 こいつはあの人達の食料を調達しようとしているのか。

「その人達を離してくれないか」

 ぶら下げている兵士を見つめて開放を求めた。
 俺は、敵意が無い事を示す為、両手を挙げてやさしげに声をかけたのだ。

「ガーー!! オマエハナニモノダーー!!!」

 お前が何者だよー!
 両手の兵士を放り投げると、俺に向って走ってきた。
 放り投げられた兵士は、映画の様に勢いよく飛んで行った。

 パーーン
 ダダダダダ

 おーい、勝手に撃つんじゃねー。
 手から兵士を離した瞬間、銃撃が始まった。

「グアアーーー!!

 見ろ怒っているじゃねえかー。
 しかも全く効いていねー。
 銃が効かねえって、リアルで初めて見るわ。

 やっぱり恐いねー。体が震える。
 俺は元々、若い頃に喧嘩一つした事も無い平和主義の男だ。
 今だに人を拳で殴った事も無い。逃げ出したい。これが本音だ。
 ふふふ、ミサはこんな考えを読んでいるのかな。
 かっこ悪いなー。

 そんな俺が、こんな恐ろしい奴に立ち向かわなくてはならないのか。
 やれやれだぜ。
 大男が俺に近づくと、銃撃が俺に当たらない様にする為か、攻撃が止んだ。

「グオーーーッ」

 でかい拳で俺を殴ろうとしてきた。
 きっと、変なジャージのデブだから侮っているのだろう。
 攻撃が大きい。
 その手を伸びきる前につかみ、俺は体を回転させた。

 大男の攻撃の力が加わると強い回転の力になる。
 まるでダンスの様に何回転もその場で俺を中心にまわった。
 大男の体は遠心力で宙に浮いている。
 ブワッと竜巻の様な風がまわりのゴミを巻き上げた。
 回転の力が弱まると、俺はそのまま地面に叩き付けた。

 ドン!!!!

 音と共に震度三ぐらいで大地が震動する。
 地面に大男の体がめり込み、そのまわりが大きく丸く、くぼんでいる。
 くぼみの中央からいくつもひび割れが広がり、蜘蛛の巣の様になっている。
 ひび割れた道路が所々持ち上がっている。

「うおおおおお!!!!、アンナメーダーマーーーーーン!!!!!!」

 集まっている兵士から歓声が上がった。

「アンナメーダーマンダトーー!」

 くぼみの中央で大声がした。
 これだけの攻撃をくらって、まるで効いていないようだ。
 大男がゆらりと立ち上がった。

「チッ、やれやれだぜ。タフすぎだろー」

 俺はもう一度戦う覚悟を決めた。

「ウオオオオオオオオオーーーーーーーー!!!!! アンナメーダーマン」

 叫びながら走り寄って来る。こえーだろー。体が硬直した。
 大男は頭の袋を取ると、鋭い牙のオオカミのような顔が出て来た。
 どこかで見た事がある。向こうも俺の事を知っている様だ。
 オオカミ男から敵意が無くなった。
 俺は少しほっとしている。

 その隙をついてオオカミ男はあり得ない行動に出た。

 俺のジャージのズボンを勢いよく下ろしたのだ。
 勢いよく下ろしたので、ジャージのズボンだけで無く、海パンも半分脱げてしまった。

「な、何をするんだーーー」

 俺の汚いブツブツのできた尻が半分出てしまった。
 オオカミ男は、どこから出したのか、A4のプリントされた写真を見ている。
 俺の海パンの「激豚」と写真の「激豚」を見比べている様だ。

「オンナジダー!!」

 なんだか喜んでいる。
 俺も思い出した。

「お前は、アイアンウルフだな」

「チガウダー! アイアンファングダーー!!」

 ちっ、やれやれだぜ。
 感動の再会で相手の名前を間違えてしまった。
 でも、前にあった時は、こんな片言じゃ無かったぞ。

「それは、そうでしょう。私がテレパシーで通訳していたのだから」

 ミサが、あずさと共に俺の横に来た。
 ミサが危険は無いと判断して連れてきてくれた様だ。

「ウオーー、アズサチャンダーー。ヨウセイノヨウニウズグジー」

 妖精の様に美しいと言われて、あずさはスカートの端を持ちくるりと回転する。
 白い中身が露出する。

「おおおおーーー」

 見ている兵士達から声が漏れた。
 あずさめサービスしすぎだ。だが、安心して下さい。あれは水着です。
 ちなみに俺のジャージの中身も水着です。
 そして安心して下さい。尻も半分しか出ていません。
 俺は海パンをちゃんとなおした。

「アイアンファングは、日本語がわかるのか?」

「ワカルダ、オラノムラデハミンナニホンゴガワカル」

「そうか。それはいい。腹が減っているんだろ。あずさゆで卵を頼む」

 あずさが、かごに入ったゆで卵を出した。
 アイアンファングが隠れている人を呼んだ。
 その中にアイアンバリアの姿もあった。
 全員マヨネーズをたっぷりかけて、うまそうにゆで卵を頬張っている。
 ゆで卵は口から水分を奪うので、コップに水を入れて渡してやった。

「なあ、ウルフ。みんなで俺の町に来ないか。農業を手伝って欲しい。食事なら用意が出来る」

 俺は、子供の姿を見て保護してやりたいと思った。
 それに、もうじき秋が来る。米の収穫が近いので人手が欲しい。

「ウルフジャナイダ。ファングダ」

 し、しまったー。また間違えた。
 もう、ウルフにしてくれよー。

「アンナメーダーマンの申し出は嬉しいダニ。ここにいるのは、みんな農家出身ダニ。よろしく頼むダニ」

 アイアンバリアが答えてくれた。
 こっちは、流ちょうな日本語だが、癖が強いなー。
 こうして俺は、初めて困っている人を保護できた。
 全員で千人以上いる様だ。

「あの私は、さっきあずさちゃんの友達になった愛美と言います」

 一人の女の子が走り寄ってきた。

「は、はあ」

「私も一緒に町へ連れて行ってください」

 なんだか気品のあるお嬢さんが話しかけてきた。
 嫌な予感がする。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...