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第三十八話 お前の好きにはさせん!
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「では、どうぞ」
特に構えるでも無く、ゆったりと立ったまま桜木に声をかけた。
アンナメーダーマンは、武術の心得が無く、学校の授業で柔道を習っただけらしい。最初は攻撃をせず、避けに徹するつもりです。
「ほ、本当にそれでいいのか」
桜木は少し驚いているが、アンナメーダーマンがうなずくのを見ると、目にも止まらぬ速さで襲いかかった。
でも、アンナメーダーマンは、桜木の攻撃を紙一重ですべて避け当たりません。
昔見た、カンフー映画の達人の、戦いにも見えます。
あの人は相手を今まで見てきた中で最も強いと考えて、避けることに集中しているようです。
「すごすぎます!」私の前で坂本さんが、女の子になってこの戦いに感動しています。
「すげーー!!」まわりからは、男の子になった兵士とゲン一家の人達から声が漏れています。
それだけではありません、桜木の部下も身動き一つせずに目を見開き、この戦いを見ています。
「このやろーー!! デブのくせにちょこまかするなーー!!」
桜木がいらだち、アンナメーダーマンの耳元で声を出した。
その声が大きかった為か、アンナメーダーマンが顔を少しそむけた。
その隙を桜木は見逃さなかった。そして、渾身の一撃を放った。
「大体わかった。あんたの攻撃を俺は見切れる」
「!?」
アンナメーダーマンがその攻撃にあわせ、手の平を前に出した。
桜木の手は、私の目では残像が残るようにしか見えないけど、それでも目で追える。でも、アンナメーダーマンの手は消えてしまった。
ドン
低い音が響きます。
恐ろしい勢いで桜木の体が吹き飛んだ。
この戦いを後ろで見ている桜木の部下達三人の、足もとまで十メートル以上飛んだ。
「な、何をしている!! アンナメーダーマンを殺せー!!!!」
胸を押さえ、苦痛に顔を歪ませて部下に命じた。
桜木の部下三人は、拳銃を出しアンナメーダーマンに向ってあわてて走り出した。
パン、パン
三人は一人一発を発射する事も出来ず、桜木の横に吹き飛ばされた。
「くっくっくっ、あんた強いなー。俺の負けだ好きにしろ」
「一つ教えてくれ、お前達の主人の名は?」
「ふっ、隠す必要も無いだろう。ハルラ様だ」
その言葉を聞いた瞬間、貧血で倒れるようにあずさちゃんの体がかたむいた。
でも、地面に頭を打ち付ける前に、アンナメーダーマンが柔らかく包み込むように抱きかかえます。
はやいなー。
あずさちゃんは赤い顔をしてアンナメーダーマンの顔を見つめます。
恋人同士かよー! あんたら親子でしょー!!
しかも片方は、ヘルメットかぶっとるしー。
ちっ、考えたくないけど、少し頬が赤くなったあずさちゃんの顔は天使とも妖精とも思えるほどの可憐さでした。どうしても考えてしまう。女の私から見ても可愛すぎるんだよー。あー抱きしめたい!!
「大丈夫か?」
「はい、少しめまいがしただけです」
「それならよかった!」
「はい、でも、少し前世の記憶が戻りました」
「!?」
「ハルラは私を殺した勇者の名前です」
「な、なんだってーーー!!!」
「でも、思い出したのはそれだけです。それ以上は思い出していません」
「勇者ハルラが魔王城に乗り込んで、罪も無いメイドのあずさちゃんを殺したんだな。許せん!!」
驚きの事実です。
でも、勇者なら人間の味方なのでは無いでしょうか。
それがこんなことをするとは思えませんが。
「ふふふ、前世じゃあご立派な勇者かもしれねえが、この世界じゃあハルラ様は邪神を名乗っているぞ」
「邪神!?」
全員が驚いている。
私も驚いた。
神を名乗る馬鹿がいるとは。
でも、あり得るかもしれないと、私は思っていた。
「さあ殺せ、もう用は無いはずだ」
「ふふふ、殺さんよ。俺は元々底辺のただのおじさんだ。殺人は怖い。それに桜木さんには、ハルラに伝えてもらいたい事がある。この世界にはアンナメーダーマンがいる、お前の好きにはさせん!! ってね」
「ひゃーーははははは! いいのか、それは宣戦布告だぞ。ハルラ様は怖いぞ! 俺が引くぐらいにな!」
「えっ!?」
うわーーーっ
だめだこの人、せっかくかっこいいシーンなのに、言ったことをもう後悔しているよ。
でも、ダメダメなのに勇気を振り絞って頑張っているのよねー。
ふふふ、全然どこにもかっこいい要素がないのに、かっこいいわよ! アンナメーダーマン。
「じゃあな!!」
桜木は、部下を連れてゾンビの中に飛び込んだ。
――えーーっ
ゾンビの中に入って、ケガでもしようものならゾンビになっちゃうのに怖くないのかな。
「たすけてくれーー」
どこかから助けを呼ぶ声がします。
「ビルの上だ!!」
アンナメーダーマンがすぐに声の場所に気が付きました。
「ふふふ、ゾンビが出てくれて、よかった」
「えっ!?」
「だって、そうだろ。俺は生き残っている人を探していたんだ。でも皆、上手に隠れていて探せなかった。それが、ゾンビの洪水に恐れて、出て来てくれたんだ。ゾンビ様々だ!」
「ふーーん、そういう考え方もあるのね」
「あずさ、全員を藤吉のバリアの中に避難させてくれ」
「はい」
「ミサ、坂本さんと一緒に機動汎用鎧天紫で、他のビルも探してくれ」
「わかったわ。見つけたらテレポートさせれば良いのね。坂本さんお願い」
「はい」
「さて、俺は覚悟を決めるか!」
えっ、何の?
あの人はまた、何かをするつもりです。
特に構えるでも無く、ゆったりと立ったまま桜木に声をかけた。
アンナメーダーマンは、武術の心得が無く、学校の授業で柔道を習っただけらしい。最初は攻撃をせず、避けに徹するつもりです。
「ほ、本当にそれでいいのか」
桜木は少し驚いているが、アンナメーダーマンがうなずくのを見ると、目にも止まらぬ速さで襲いかかった。
でも、アンナメーダーマンは、桜木の攻撃を紙一重ですべて避け当たりません。
昔見た、カンフー映画の達人の、戦いにも見えます。
あの人は相手を今まで見てきた中で最も強いと考えて、避けることに集中しているようです。
「すごすぎます!」私の前で坂本さんが、女の子になってこの戦いに感動しています。
「すげーー!!」まわりからは、男の子になった兵士とゲン一家の人達から声が漏れています。
それだけではありません、桜木の部下も身動き一つせずに目を見開き、この戦いを見ています。
「このやろーー!! デブのくせにちょこまかするなーー!!」
桜木がいらだち、アンナメーダーマンの耳元で声を出した。
その声が大きかった為か、アンナメーダーマンが顔を少しそむけた。
その隙を桜木は見逃さなかった。そして、渾身の一撃を放った。
「大体わかった。あんたの攻撃を俺は見切れる」
「!?」
アンナメーダーマンがその攻撃にあわせ、手の平を前に出した。
桜木の手は、私の目では残像が残るようにしか見えないけど、それでも目で追える。でも、アンナメーダーマンの手は消えてしまった。
ドン
低い音が響きます。
恐ろしい勢いで桜木の体が吹き飛んだ。
この戦いを後ろで見ている桜木の部下達三人の、足もとまで十メートル以上飛んだ。
「な、何をしている!! アンナメーダーマンを殺せー!!!!」
胸を押さえ、苦痛に顔を歪ませて部下に命じた。
桜木の部下三人は、拳銃を出しアンナメーダーマンに向ってあわてて走り出した。
パン、パン
三人は一人一発を発射する事も出来ず、桜木の横に吹き飛ばされた。
「くっくっくっ、あんた強いなー。俺の負けだ好きにしろ」
「一つ教えてくれ、お前達の主人の名は?」
「ふっ、隠す必要も無いだろう。ハルラ様だ」
その言葉を聞いた瞬間、貧血で倒れるようにあずさちゃんの体がかたむいた。
でも、地面に頭を打ち付ける前に、アンナメーダーマンが柔らかく包み込むように抱きかかえます。
はやいなー。
あずさちゃんは赤い顔をしてアンナメーダーマンの顔を見つめます。
恋人同士かよー! あんたら親子でしょー!!
しかも片方は、ヘルメットかぶっとるしー。
ちっ、考えたくないけど、少し頬が赤くなったあずさちゃんの顔は天使とも妖精とも思えるほどの可憐さでした。どうしても考えてしまう。女の私から見ても可愛すぎるんだよー。あー抱きしめたい!!
「大丈夫か?」
「はい、少しめまいがしただけです」
「それならよかった!」
「はい、でも、少し前世の記憶が戻りました」
「!?」
「ハルラは私を殺した勇者の名前です」
「な、なんだってーーー!!!」
「でも、思い出したのはそれだけです。それ以上は思い出していません」
「勇者ハルラが魔王城に乗り込んで、罪も無いメイドのあずさちゃんを殺したんだな。許せん!!」
驚きの事実です。
でも、勇者なら人間の味方なのでは無いでしょうか。
それがこんなことをするとは思えませんが。
「ふふふ、前世じゃあご立派な勇者かもしれねえが、この世界じゃあハルラ様は邪神を名乗っているぞ」
「邪神!?」
全員が驚いている。
私も驚いた。
神を名乗る馬鹿がいるとは。
でも、あり得るかもしれないと、私は思っていた。
「さあ殺せ、もう用は無いはずだ」
「ふふふ、殺さんよ。俺は元々底辺のただのおじさんだ。殺人は怖い。それに桜木さんには、ハルラに伝えてもらいたい事がある。この世界にはアンナメーダーマンがいる、お前の好きにはさせん!! ってね」
「ひゃーーははははは! いいのか、それは宣戦布告だぞ。ハルラ様は怖いぞ! 俺が引くぐらいにな!」
「えっ!?」
うわーーーっ
だめだこの人、せっかくかっこいいシーンなのに、言ったことをもう後悔しているよ。
でも、ダメダメなのに勇気を振り絞って頑張っているのよねー。
ふふふ、全然どこにもかっこいい要素がないのに、かっこいいわよ! アンナメーダーマン。
「じゃあな!!」
桜木は、部下を連れてゾンビの中に飛び込んだ。
――えーーっ
ゾンビの中に入って、ケガでもしようものならゾンビになっちゃうのに怖くないのかな。
「たすけてくれーー」
どこかから助けを呼ぶ声がします。
「ビルの上だ!!」
アンナメーダーマンがすぐに声の場所に気が付きました。
「ふふふ、ゾンビが出てくれて、よかった」
「えっ!?」
「だって、そうだろ。俺は生き残っている人を探していたんだ。でも皆、上手に隠れていて探せなかった。それが、ゾンビの洪水に恐れて、出て来てくれたんだ。ゾンビ様々だ!」
「ふーーん、そういう考え方もあるのね」
「あずさ、全員を藤吉のバリアの中に避難させてくれ」
「はい」
「ミサ、坂本さんと一緒に機動汎用鎧天紫で、他のビルも探してくれ」
「わかったわ。見つけたらテレポートさせれば良いのね。坂本さんお願い」
「はい」
「さて、俺は覚悟を決めるか!」
えっ、何の?
あの人はまた、何かをするつもりです。
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