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第七十四話 政略結婚
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「さて、お客さんは帰りましたので、事情をお聞きしましょうか。座って下さい。シュラ、全員に大トロ丼と飲み物を出してあげてください」
「はい」
「あーっ、あと、そこのフィッティングルームの影で出たり入ったりしている方も、座ってください」
恐らくヒマリちゃんの護衛の方だろうか。スーツの女性がフィッティングルームの陰にいる。
「あの、私もよろしいのですか」
「どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
少し嬉しそうに、席についた。
「さて、あず……、アスラさん、たった一日で何があったのか説明していただきましょうか?」
あずさを、どう呼んで良いのか悩んだ。
普段ならあずさだが、今は敵地、前髪を垂らして顔を隠しているなら「あずき」だが、今は可愛い顔を出してしまっている。
ここはアスラの方がいいと思ってそう呼んだ。
「ははは、はい」
珍しくあずさが動揺している。
俺が丁寧な話し方をしているのが、怖いのだろうか。
「アスラさん、初めての人がいるから丁寧に話しています。別に怒っていませんよ。っていうか、俺は基本こっちが本当の話し方です。いつもはゲンの手前ゲンを呼び捨てにするから、部下も呼び捨てにする。つい口調がゲンと同じになっているだけです」
「はい、では、説明します」
あずさは落ち着きを取り戻し、にっこりと笑った。
うん、いつも通り美しく光り輝いている。
「頼む」
シュラが、ヒマリちゃんとスーツさん、はるさんの順に丼を置いた。
あずさは話しをしようとしているので、最後にしている。
丼と飲み物が用意されたのを見て、俺は手でどうぞの仕草をした。
三人は嬉しそうな顔をして、箸を動かした。
「昨日、そこのスーツを着た女性、古賀さんが尾野上隊長の指示でお店にいらっしゃいました。そこで、うちの商品をみて驚愕されて帰って行きました。すると今度は佐藤一郎さんが護衛を連れてとんで来ました。商品を見ると、すぐにまた、とんで帰って行きました」
佐藤一郎は、今川の殿様の名前だ。
お忍びで、自分の目で確かめたという所か。
まあ、脅威の商品だっただろうな。
驚く顔が目に浮かぶ。
あずさはさらに、休み無く話しを続ける。
「その後、誰も来ないので、駐車場で呼び込みを始めました。でも、ここは人通りがありませんので、誰も来てくれません。だから目立とうとして、着替えて踊りながら呼び込みを始めました。それがだんだん楽しくなって踊っていたら、お城から大勢人が来て……」
「それで、駐車場にステージが出来たと」
「はい」
「そして、シュラまで巻き込んだと」
「だって、シュラちゃん可愛いいんですものー」
シュラがくねくねしている。
うむ、言われて見れば可愛い。
恐らく、普通に見れば、何かコスプレをしている、スタイルの良いおねーさんだ。
また、メイド服が良い。よく似合っている。
大きな動きをすれば、あのエッチな下着が丸見えになったはずだ。
ふむ、俺でもファンになるな。
「事情は大体分かった。で、ヒマリちゃん、あなたは、何故ここに?」
話しをヒマリちゃんに振ったとたん、あずさが丼をかき込みだした。
まるで、日雇いのおっさんの食い方だ。
いや、俺の食い方か。
まあ、小学生なら健康的で良い。
「あー、えーと、父様は政略結婚と言っていました。古賀さんは私のお世話役と」
「はーーっ!?」
この子、政略結婚の意味がわかっているのか。
しかも、誰と誰だよ。
「あの、古賀さん。政略結婚って誰と誰の?」
「えっ?」
「だから、誰と誰が政略結婚するんですか?」
「あっ、すみません。聞こえていないわけではありません。何故わからないのかが、わからなかったものですから」
俺は、はるさんとあずさの顔を見た。
二人とも、驚いた顔をして、ポカンと口を開け、箸でつまんだ大トロが口の前で止っている。
ポトリ
二人の箸から同時に大トロが丼に落ちた。
どうやら、二人にはわかった様だ。
「す、すみませんねえ、俺はそういうのに鈍感なので、誰と誰なのかわかりません。わかるようにお願いします」
「ほ、ほんきですか。仕方がありません。ヒマリ様と大田様です」
「あははは、なんだ、ヒマリちゃんと大田さんかー! 大田さんって誰よ?」
全員が驚いた顔をして俺を見た。
「あーーっ、俺は今、大田大だった。大田って俺かよー。なーんだ。やっと大田が誰かわかったよ」
「……」
全員が、黙って俺の次の言葉を待っている。
「えーーっ! おれーーーっ!!」
「駄目だこりゃあ!!」
全員の下唇が前に出ている。
改めて、ヒマリちゃんを見ると、この子はこの子でとても可愛い。
まあ、あずさの整い具合が完璧なので、それと比べると少し落ちてしまうが、目が少しうつろな感じで、大人びた感じがする美少女だ。
あずさと同じようなメイド服を着ている。それがとても似合っている。
「な、何で俺なんかと? 俺は豚顔のデブなただのおっさんですよ」
「はあーーっ、何を言っているんですか。こんなすごい商品を用意出来るなんて神業と言ってもいいと思いますよ」
「えーーっ、それは言い過ぎです。こんな物はとうさんにとっては、豆腐に釘を打つより簡単な事ですよ」
あずさの言葉に、古賀さんもはるさんも、驚きを隠せない。
「何を言っているのですか。ここの商品はすごすぎです。どこにもつながっていないのに、いくらでも富士の湧水が出てくるウォーターサーバーなんて、いくらお金を出しても手に入りません。殿は大田様を最高に評価されています」
「それが政略結婚と言う事ですか」
古賀さんは、こくりとうなずいた。
と、言われても、俺に結婚の意思はない。
とっとと帰ってもらいたいが、簡単に引き下がるとも思えない。
まあ俺なんぞ、ヒマリちゃんから見れば、ただのキモいおっさんだろう。
そのうち、嫌になるだろう。
大昔の政略結婚じゃあるまいし、本人が嫌なものを無理矢理とはいかないだろう。
しばらくは様子見するしか無いかと俺はあきらめた。
「はい」
「あーっ、あと、そこのフィッティングルームの影で出たり入ったりしている方も、座ってください」
恐らくヒマリちゃんの護衛の方だろうか。スーツの女性がフィッティングルームの陰にいる。
「あの、私もよろしいのですか」
「どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
少し嬉しそうに、席についた。
「さて、あず……、アスラさん、たった一日で何があったのか説明していただきましょうか?」
あずさを、どう呼んで良いのか悩んだ。
普段ならあずさだが、今は敵地、前髪を垂らして顔を隠しているなら「あずき」だが、今は可愛い顔を出してしまっている。
ここはアスラの方がいいと思ってそう呼んだ。
「ははは、はい」
珍しくあずさが動揺している。
俺が丁寧な話し方をしているのが、怖いのだろうか。
「アスラさん、初めての人がいるから丁寧に話しています。別に怒っていませんよ。っていうか、俺は基本こっちが本当の話し方です。いつもはゲンの手前ゲンを呼び捨てにするから、部下も呼び捨てにする。つい口調がゲンと同じになっているだけです」
「はい、では、説明します」
あずさは落ち着きを取り戻し、にっこりと笑った。
うん、いつも通り美しく光り輝いている。
「頼む」
シュラが、ヒマリちゃんとスーツさん、はるさんの順に丼を置いた。
あずさは話しをしようとしているので、最後にしている。
丼と飲み物が用意されたのを見て、俺は手でどうぞの仕草をした。
三人は嬉しそうな顔をして、箸を動かした。
「昨日、そこのスーツを着た女性、古賀さんが尾野上隊長の指示でお店にいらっしゃいました。そこで、うちの商品をみて驚愕されて帰って行きました。すると今度は佐藤一郎さんが護衛を連れてとんで来ました。商品を見ると、すぐにまた、とんで帰って行きました」
佐藤一郎は、今川の殿様の名前だ。
お忍びで、自分の目で確かめたという所か。
まあ、脅威の商品だっただろうな。
驚く顔が目に浮かぶ。
あずさはさらに、休み無く話しを続ける。
「その後、誰も来ないので、駐車場で呼び込みを始めました。でも、ここは人通りがありませんので、誰も来てくれません。だから目立とうとして、着替えて踊りながら呼び込みを始めました。それがだんだん楽しくなって踊っていたら、お城から大勢人が来て……」
「それで、駐車場にステージが出来たと」
「はい」
「そして、シュラまで巻き込んだと」
「だって、シュラちゃん可愛いいんですものー」
シュラがくねくねしている。
うむ、言われて見れば可愛い。
恐らく、普通に見れば、何かコスプレをしている、スタイルの良いおねーさんだ。
また、メイド服が良い。よく似合っている。
大きな動きをすれば、あのエッチな下着が丸見えになったはずだ。
ふむ、俺でもファンになるな。
「事情は大体分かった。で、ヒマリちゃん、あなたは、何故ここに?」
話しをヒマリちゃんに振ったとたん、あずさが丼をかき込みだした。
まるで、日雇いのおっさんの食い方だ。
いや、俺の食い方か。
まあ、小学生なら健康的で良い。
「あー、えーと、父様は政略結婚と言っていました。古賀さんは私のお世話役と」
「はーーっ!?」
この子、政略結婚の意味がわかっているのか。
しかも、誰と誰だよ。
「あの、古賀さん。政略結婚って誰と誰の?」
「えっ?」
「だから、誰と誰が政略結婚するんですか?」
「あっ、すみません。聞こえていないわけではありません。何故わからないのかが、わからなかったものですから」
俺は、はるさんとあずさの顔を見た。
二人とも、驚いた顔をして、ポカンと口を開け、箸でつまんだ大トロが口の前で止っている。
ポトリ
二人の箸から同時に大トロが丼に落ちた。
どうやら、二人にはわかった様だ。
「す、すみませんねえ、俺はそういうのに鈍感なので、誰と誰なのかわかりません。わかるようにお願いします」
「ほ、ほんきですか。仕方がありません。ヒマリ様と大田様です」
「あははは、なんだ、ヒマリちゃんと大田さんかー! 大田さんって誰よ?」
全員が驚いた顔をして俺を見た。
「あーーっ、俺は今、大田大だった。大田って俺かよー。なーんだ。やっと大田が誰かわかったよ」
「……」
全員が、黙って俺の次の言葉を待っている。
「えーーっ! おれーーーっ!!」
「駄目だこりゃあ!!」
全員の下唇が前に出ている。
改めて、ヒマリちゃんを見ると、この子はこの子でとても可愛い。
まあ、あずさの整い具合が完璧なので、それと比べると少し落ちてしまうが、目が少しうつろな感じで、大人びた感じがする美少女だ。
あずさと同じようなメイド服を着ている。それがとても似合っている。
「な、何で俺なんかと? 俺は豚顔のデブなただのおっさんですよ」
「はあーーっ、何を言っているんですか。こんなすごい商品を用意出来るなんて神業と言ってもいいと思いますよ」
「えーーっ、それは言い過ぎです。こんな物はとうさんにとっては、豆腐に釘を打つより簡単な事ですよ」
あずさの言葉に、古賀さんもはるさんも、驚きを隠せない。
「何を言っているのですか。ここの商品はすごすぎです。どこにもつながっていないのに、いくらでも富士の湧水が出てくるウォーターサーバーなんて、いくらお金を出しても手に入りません。殿は大田様を最高に評価されています」
「それが政略結婚と言う事ですか」
古賀さんは、こくりとうなずいた。
と、言われても、俺に結婚の意思はない。
とっとと帰ってもらいたいが、簡単に引き下がるとも思えない。
まあ俺なんぞ、ヒマリちゃんから見れば、ただのキモいおっさんだろう。
そのうち、嫌になるだろう。
大昔の政略結婚じゃあるまいし、本人が嫌なものを無理矢理とはいかないだろう。
しばらくは様子見するしか無いかと俺はあきらめた。
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