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第七十九話 木田の恐ろしい大殿

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「俺は、常々思っていたんだ」

 柳川の迎えを待ちながら、店の前で何気なく空を見上げている。

「とうさん、一応聞きます。何ですか?」

「UFOと宇宙人は絶対いると思っていたんだ」

「へーーっ」

 む、娘よ!
 これ程関心の無い「へーーっ」は、ミサ以来だ。

「見ろー! UFOだー。すげーぞ! 俺は本物を初めて見たー!!」

 俺は空を高速で飛ぶUFOを発見したのだ。
 UFOを指さした。
 あずさめ、さぞや驚いただろう。

「とうさん、あれは、ハワイへ行った時に、とうさんが作った物です」

「えっ!?」

「はぁーっ、とうさんは本当に忘れるんですよねー。そういうの」

「わ、忘れてなどいないぞ。試したのさ。娘がちゃんと憶えているのかどうかを……」

「はいはい、それとアメリカンレディーは宇宙人ですよ」

「そ、そうだ。アメリカンレディーは、宇宙人だった」

「とうさん、アメリさんのヒーロー名は、アメリカンレディーではなくウルトラウーマンですよ」

「なっ、試したのかー!」

「本当にとうさんは、関心の無い事は全く憶えないのですから」

「そ、そんな事は無いのだけどなー」

 アメリちゃんが、少し頬を膨らして、上目遣いに見てくる。
 この金髪幼女は可愛すぎる。でも怒っているのか?

「とうさん、最新式の自衛隊の戦車の名前って何でしたっけ?」

「なんだ、アスラはそんな事に興味があるのか」

「はい」

「ふふふ、やっと目覚めたのだな、ひとまる式戦車だ。車重は、44トンこれは、日本の国道の橋を渡れるように設計されて……」

 俺は、知っている知識を、あずさに教えてやった。

「はいはい、とうさんは、関心のある事は、すぐに完璧に憶えるんですよねー。全くあきれてしまいます」

 うーーん、また、試されたようだ。
 あずさにあきれられてしまった。
 ちくしょー、おたくってそういうもんでしょー!
 そういう人種をおたくって、言うんでしょーよ!!!!!!
 心の中だけで大声で叫んでいた。



「大田さん、乗って下さい」

 柳川が店の前の道にUFOを下ろすと、手招きしている。
 乗ると中に、北条も乗っていた。

「ふん、俺は、アンナメーダーマンに降伏し忠誠を誓っているんだ。木田家には用は無いのだがな」

「ふふふ、そのアンナメーダーマンから、同行するようにとの事です」

「そんな事は、本当かどうか証拠が無いだろうがー!」

「では、ここで降りますか?」

「それこそ、断れるほどの根拠が無いわー。もし本当なら不義理をしてしまうだろうがー。ふんっ」

 北条は腕を組み怒っている。どうやら機嫌が悪いようだ。
 よほど木田家が嫌いなのだろう。

「お待たせしました」

 今川の殿とヒマリちゃんが来た。

「はるさんも、どうぞ」

「あたしも、いいのかい」

「ふふ、当然です」

 アメリちゃんとクザンとシュラが乗るのを待ち

「柳川さん、そろいました。やって下さい」

 柳川に声をかけた。

「はい、大田さん。では木田家本城へ」

 これでゴーレムUFOは勝手に飛んでくれる。

「柳川さんは、あの柳川さんですか?」

 今川の殿が質問する。

「あの、と言われますと?」

「失礼しました。ゲン一家の四天王の第三席の柳川さんですか?」

 今川の殿様が言い直した。
 これだけでも柳川を上に見ている事が分かる。

「四天王かどうかは知りませんが、ゲン一家の幹部の柳川です」

「げえぇ、ゲン一家の柳川!!!!!?」

 北条が驚いている。

「ゲン一家ってそんなに有名なのですか?」

「そうですか、大田さんは知らないのですね。ゲン一家は超有名ですよ」

「関東一円のワルで知らねえ奴はいねえ存在だ」

 北条が少しおびえた表情をしている。
 そ、そんなに有名なの!!

「どんな組織が喧嘩を売っても、それにことごとく勝利して、相手を壊滅するまで追い込む。血に飢えた狼の様だと言われていました。柳川さん、そんなゲン一家を従える木田さんとはどんな方なのですか?」

「ひーーひっひっひっひぃーー」

 やめろーーやながわーー!!
 振り返った柳川は、少しうつむきながら、顔に影を落とし、怪談を話す怪談師のように後ろを振り向く。
 そして、恐ろしい笑い声をだしている。

「ひっ」

 ヒマリちゃんが思わず小さく悲鳴を上げて、俺の腕に抱きつき震えている。

「あのーーかたなんですがね、……それは、もう、怖いんですよねー」

 おーい、柳川淳二になっとるぞー。
 しかも、お前の顔は、怖いんだよー。
 インテリ悪党顔なんだよーー。

 しかも、お前が、こわいってなんだよ。
 みんな、おびえちゃうでしょ。
 デブで、豚顔のおたくですからね。なーんにもこわくありません。
 むしろ顔だけなら、あなた達の方が怖いですよ。

「ふふふ、今更ですが会うのが怖くなりました」

 今川の殿様が緊張した顔になっている。
 顔に何本か、汗が流れた。
 冷や汗だろうか。

「やっぱり、俺は帰ろうかな。俺は、木田家は関係ねえんだからよ。アンナメーダーマンの配下だしな」

 北条は、本気で帰る気になったようだ。

「ぷっ」

 あずさは、事もあろうか噴き出している。
 でも、何とか笑わないように我慢しているようだ。
 でも、滅茶苦茶肩がゆれとるぞーー。

「皆さん、木田の大殿は、恐ろしい魔王の様なお方です。少しの粗相も無いようにお願いします。怒らせれば、私でもかばいきれませんので」

 おーーい。
 ますます怖がらせてどうするんだーー。

「あ、あたしは、もう行きたくないよ。帰らせておくれよ」

 はるさんが、泣き出しそうな顔をして帰りたがっている。
 北条も、今川の殿もヒマリちゃんも、滅茶苦茶うなずいている。
 その横で、あずさがひーひー言っている。

 そんな中UFOは、木田家の本城に到着してしまった。
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