底辺おじさん、助けた異世界転生美少女の異世界魔法と異世界アイテムそして特殊能力ゴミ処理で世界を救う

覧都

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第百十話 悪魔の影

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「素早いぞーー!!」

 いったい何者でしょうか。
 深夜の暗闇で、真っ黒な四人をこんなに速く見つけることが出来るなんて。
 金華山は、木が生い茂り視界も悪く、昼間でも人の気配などわかるはずが無さそうですが。

 私は全身に悪寒を感じた。

「こんな暗闇でこれだけ動けるなど、人間業じゃねえ。火を付けろ! あれの準備をしろー!」

 大声とともに火の手が上がった。
 暗さに慣れている目に火の光は眩しく感じた。
 私は少し離れた木の上にのぼり、葉の中に身を隠し様子を見る事にした。

 ――うわっ

 心の中で叫んだ。
 どうやら蜘蛛の巣があったようです。
 でも、すごいです。変身しているので直接肌に触っていないのに、こんなに小さな変化を感じることが出来るなんて。

 バチバチバチ

 この物資不足の中なのにガソリンでもまいたのか、勢いよく木が燃え始めた。
 山火事のように山が燃え始める。
 あらかじめこういうことを想定していたのか、山頂の城のまわりだけ、広く木が切り倒されている。
 城のまわりに、かがり火が焚かれた。

 オレンジ色に染まったお城の屋根に、四つの影が浮かび上がった。

「これを見ろーー!!!!」

 二十人ぐらいのボロボロの女性が拘束されて、城の外に運び出された。
 声の主は、身長が二メートルをはるかに超えている、角刈りの男だ。
 そんな大きな男が一人だけじゃ無い。
 四人いる。

 そのうちの一人は、他の三人よりさらに一回り大きい。
 手下が十五人、女性に刃物を突きつけている。
 手下も二メートルくらい身長がある。
 どいつもこいつも、筋肉が発達していて強そうです。

「どこにいる。出てこないと、女を殺すぞ!!」

「ひ、ひいいーーー」

 女性のおびえ方が普通じゃ無い。
 恐らく、こいつらの残虐性を見せつけられているのでしょう。
 かわいそう。
 四人は屋根の上で、しゃがんで、体を低くしている。
 男達は、まさかそんなところにいるとは思っていないのか、まだ気が付いていないようです。

「ふん、よし端から一人殺せ!!」

 ザッ

 坂本さんが城から高くジャンプして、どこから来たのか分からないように誤魔化して着地した。

「待ちなさい!!」

「ひゅーー、女だー!!」

 手下の一人が下品な声を出した。

「お前一人か?」

「そうよ」

 坂本さんは、自分が犠牲になって三人を守るつもりだ。

「おい、一人ころせーーー!!!」

「待ってーー!!」

「ふふふ、二人だったのか。一人じゃねえのは分かっていた」

 古賀さんも姿を見せた。

「隊長、体のシルエットだけでもいい女ですぜ!!」

 隊長と言われた角刈りも、二人の姿をじっくりゆっくり見ている。
 すごく気持ち悪い。
 腕に鳥肌がたちました。

「お前達は、美濃の人間なのか」

「いいえ、尾張の人間です」

 坂本さんが毅然と答えます。
 でも良く見ると、太ももが少しだけ震えています。
 古賀さんも、少しも動じていないように振る舞っていますが、指先が少しだけ震えています。

「ひゃああー、はっはっはっ」

 角刈りが、勝ち誇った様に笑います。
 恐らく、二人のおびえを肌で感じ取っているようです。

「お前達は、縁もゆかりも無い人間の為に出て来たのか? 正義の味方気取りか! 反吐がでるぜ!!」

「縁は、あります。同じ日本人です」

 今度は古賀さんが答えた。
 素敵な返事です。
 とうさんが喜びそう。

 とうさん! どうしよう。
 思えばいつもとうさんと一緒でした。涙が出そうになっています。
 私にはこの状況をどうすることも出来ません。
 男達だけなら倒す事が出来ると思います。
 でも、人質全員を助けることが出来ないと思います。
 人質の数が多すぎます。二,三人なら助けられるのに……。

 今から戻ってとうさんに来てもらおうかしら。
 私の移動魔法なら、数分のはず。
 でも、その間に何かあったら……。

 うっ、うっ、うっ

 声を出せずに泣いてしまいました。
 涙が、頬を流れます。
 きっと、愛美ちゃんもヒマリちゃんも同じだと思います。

「ガー! もういい。今、言ったこの馬鹿を殺せ」

「ガーーーッ!!」

 一番体の大きな男が大声を出した。
 その頭には毛がなく、でこぼこしている。
 顔もでこぼこで、目は全体が黒く、不気味に光っている。

「こいつはなあ、ハルラ様の強化魔法が強すぎて、脳が壊れている。今ではガーーしか言えねえ。だが、俺達の中では一番強え。こいつに一対一で勝ったら人質は解放してやる。せいぜい頑張りな!」

 角刈りの隊長が言うと。

「へへへへへ」

 部下の男達が不気味に笑った。
 勝ちを確信しているようだ。
 こいつらは皆、ハルラの強化魔法を受けている、ハルラの部下のようです。最悪です。控えめに言って、最悪です。
 人質も全員助けてもらえるとは思えません。

 ガーが古賀さんを目指して、一歩一歩近づく。
 古賀さんも覚悟を決めて前に出た。
 坂本さんが少し動いた。

「てめーは、馬鹿なのか! 一対一と言っただろうが」

「待ってほしい。私が代わりに戦う。たのむ」

 坂本さんは土下座した。

「ひひひ!! ならば尚更、そのままだ。どうせお前の方が強いのだろう。弱い奴が自分の目の前で死んでいくのを黙って見ていろ! アホが! 今度少しでも動いたら、女を一人殺すからな! 憶えておけ! ガーー!!! ころせーーー!!!!」

 隊長の声を聞くとガーが走り出した。
 巨体とは思えないほどのスピードで走り出す。
 そして、巨大なこぶしを振り上げ、古賀さんの頭の上に目にも止まらぬ速さで振り降ろしました。
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