130 / 428
第百三十話 不意打ち
しおりを挟む
戦場は静まり返った。
俺は静まり返った戦場から視線を上に移した。空は雲一つ無い快晴、秋の青空は、夏の青空と違い涼しさを感じる。
風が吹くと、肌寒ささえ感じた。
その風で、並んだ旗がパタパタと音を立てる。
両軍が静かになると旗の音がうるさく感じるほど良く聞こえる。
「てめーーらーー!! これは日本人同士の小競り合いだー。殺し合うことはゆるさーーん!! 武器を捨てて戦えーー!!!」
ゲンは配下に武器を捨てるように命じた。
機動偵察陸鎧の部隊は手にしたブレードを捨てた。
銃を持つものは、銃を捨てた。
敵軍も銃や槍を捨てようとした。
「馬鹿野郎ー!! なんでお前達まで捨てるんだー!! こっちは持ったままで良いんだー。そろそろ射程だろうがー! 撃って撃って撃ちまくれーー!!!!」
敵の本陣から声がする。その声を聞くと、前線の兵士が銃を構えた。
パパパパパパ
ダーン、ダーーン!
銃撃が始まった。
コンコン、カンカン
軽い音がして機動陸鎧が弾丸をすべてはじく。
「うおおおおおーーー!!!」
機動陸鎧隊が敵の銃装兵の中に突入する。
機動陸鎧兵が、巨大な拳で銃装兵の腹を殴ると、一撃で動けなくなった。
機動陸鎧兵の五百人が、一人で二人を倒すだけで敵兵千人があっという間に沈黙した。
残る部隊は、手作りの槍を持つ、貧相な槍隊である。
手に持つ槍は棒に刃物を針金やテープでつなげた物で、出刃包丁が付いている物までいる。
槍隊は、けなげにも銀色に美しく輝く機動陸鎧に攻撃を加えた。
だが銃撃すらものともしない、銀色に輝く機動陸鎧隊に、傷を付けることすら許されなかった。
槍隊もあっという間に、行動不能となった。
機動陸鎧はゆっくり歩き、敵の本陣を囲んだ。
「くそーー、何が武器を捨てて戦えダーー!! この銀色のロボは武器じゃねーのかよーー!!!」
敵本陣から叫び声が聞こえる。
「それは、鎧だー! 防具だー! 武器じゃねえー!!」
ゲンの声がビリビリ空気を揺らした。
「くそーー!! こんな決着は有りえねえ!! この状況の中言えた義理じゃねえが、たいまんで決着をつけてーー!!!」
「ふざけるなーー!! もう決着は付いている。さっさと降参しろー!!」
本陣を囲む機動陸鎧隊の兵士から声がした。
「全軍下がれーーー!!!!」
ゲンが吠えた。
「……」
機動陸鎧隊が無言で自軍へ下がった。
「道を開けろーー!!!!!」
両軍の本陣から声がした。
敵軍もゲン一家も、左右に分かれ、真ん中に一本の道が出来あがった。
その道を、赤い機動陸鎧が戦場の中央へ勢いよく進んでいく。
敵本陣からは、茶髪の大男がのそりと出て来た。
その男の身長は百九十センチに近いと思われるがっしりとした筋肉質の男で、髪は量の多い茶髪、その風貌から獅子のたてがみのようにも見える。顔も片目に眼帯をした獅子のようにみえる。
中央に進むと獅子のような眼帯男が言う。
「おいおい、ロボに乗ったままやるって言うんじゃねえだろうな。それじゃあ、俺に勝ち目はねえんだが……」
キイィィ
ロボの背中のハッチが開いた。
中からゲンが飛び出した。
もう勝負が付いたこの戦いで、たいまんを張るつもりなのだろう。
ゲンらしい。
ゲンが男の前に進むと、子供の様に見える。
ゲンの体つきは眼帯男の前では貧弱に見える。
眼帯男はニヤリと笑い、勝ちを確信したようだ。
パーーン
敵の本陣横の、物見櫓から銃声がした。
狙撃だ!
カン
ゲンの赤い専用機動陸鎧が、勝手に動きゲンの体をかばった。
もし、機動陸鎧が動いていなければ、ゲンは撃たれていただろう。
機動陸鎧は、ゴーレムだから、誰も装備していなくても動くことが出来る。
普段、主人が装備していない時はじっとしているだけで、主人の命が危なければ勝手に動き主人を守るのだ。
「バカヤロー! 勝手なことをするんじゃねえ!! そいつをぶち殺せーー!!」
眼帯男が激怒して叫んだ。
勝ちを確信した勝負に、水をさされて怒っているようだ。
本陣を護衛していた男達が狙撃手に銃をむけた。
狙撃手は、すべてをあきらめたように、銃をだらんと下ろし目を閉じた。
パパパパ
一斉に発砲した。
「このやろーー、何をするんだ!!! 人の命を何だと思っているんだ。てめーが指示を出したんじゃねえのかよー」
俺は、飛び出して、狙撃手の命を救っていた。
勝手に体が動き、狙撃手をかばい、弾丸をすべて吸収した。
高みの見物をするつもりだったのに、そうはいかなくなった。
「よう、兄弟!!」
ゲンが俺を見て、いつも通りの無表情で、嬉しそうな声で言った。
「とうとう、ばれちまったな」
「なにをいいやがる。ここの田んぼが綺麗になっている時点で俺は気付いていたさ。兄弟が、いると分かっていたから、武器を捨てさせたんだ。しかし、兄弟がいるとわかると、安心感が全然違うぜ」
「ふふふ、ゲンにはまいるぜ。すべてお見通しかよ! 折角来たんだ、立会人を務めさせてもらうぜ」
「おう、よろしく頼む。さて、立会人もそろった、そろそろ始めようじゃねえか」
「ふん、金髪の豚が立会人か、しょぼい立会人だぜ! うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」
眼帯男は、不意を突いてゲンに殴りかかった。
俺は静まり返った戦場から視線を上に移した。空は雲一つ無い快晴、秋の青空は、夏の青空と違い涼しさを感じる。
風が吹くと、肌寒ささえ感じた。
その風で、並んだ旗がパタパタと音を立てる。
両軍が静かになると旗の音がうるさく感じるほど良く聞こえる。
「てめーーらーー!! これは日本人同士の小競り合いだー。殺し合うことはゆるさーーん!! 武器を捨てて戦えーー!!!」
ゲンは配下に武器を捨てるように命じた。
機動偵察陸鎧の部隊は手にしたブレードを捨てた。
銃を持つものは、銃を捨てた。
敵軍も銃や槍を捨てようとした。
「馬鹿野郎ー!! なんでお前達まで捨てるんだー!! こっちは持ったままで良いんだー。そろそろ射程だろうがー! 撃って撃って撃ちまくれーー!!!!」
敵の本陣から声がする。その声を聞くと、前線の兵士が銃を構えた。
パパパパパパ
ダーン、ダーーン!
銃撃が始まった。
コンコン、カンカン
軽い音がして機動陸鎧が弾丸をすべてはじく。
「うおおおおおーーー!!!」
機動陸鎧隊が敵の銃装兵の中に突入する。
機動陸鎧兵が、巨大な拳で銃装兵の腹を殴ると、一撃で動けなくなった。
機動陸鎧兵の五百人が、一人で二人を倒すだけで敵兵千人があっという間に沈黙した。
残る部隊は、手作りの槍を持つ、貧相な槍隊である。
手に持つ槍は棒に刃物を針金やテープでつなげた物で、出刃包丁が付いている物までいる。
槍隊は、けなげにも銀色に美しく輝く機動陸鎧に攻撃を加えた。
だが銃撃すらものともしない、銀色に輝く機動陸鎧隊に、傷を付けることすら許されなかった。
槍隊もあっという間に、行動不能となった。
機動陸鎧はゆっくり歩き、敵の本陣を囲んだ。
「くそーー、何が武器を捨てて戦えダーー!! この銀色のロボは武器じゃねーのかよーー!!!」
敵本陣から叫び声が聞こえる。
「それは、鎧だー! 防具だー! 武器じゃねえー!!」
ゲンの声がビリビリ空気を揺らした。
「くそーー!! こんな決着は有りえねえ!! この状況の中言えた義理じゃねえが、たいまんで決着をつけてーー!!!」
「ふざけるなーー!! もう決着は付いている。さっさと降参しろー!!」
本陣を囲む機動陸鎧隊の兵士から声がした。
「全軍下がれーーー!!!!」
ゲンが吠えた。
「……」
機動陸鎧隊が無言で自軍へ下がった。
「道を開けろーー!!!!!」
両軍の本陣から声がした。
敵軍もゲン一家も、左右に分かれ、真ん中に一本の道が出来あがった。
その道を、赤い機動陸鎧が戦場の中央へ勢いよく進んでいく。
敵本陣からは、茶髪の大男がのそりと出て来た。
その男の身長は百九十センチに近いと思われるがっしりとした筋肉質の男で、髪は量の多い茶髪、その風貌から獅子のたてがみのようにも見える。顔も片目に眼帯をした獅子のようにみえる。
中央に進むと獅子のような眼帯男が言う。
「おいおい、ロボに乗ったままやるって言うんじゃねえだろうな。それじゃあ、俺に勝ち目はねえんだが……」
キイィィ
ロボの背中のハッチが開いた。
中からゲンが飛び出した。
もう勝負が付いたこの戦いで、たいまんを張るつもりなのだろう。
ゲンらしい。
ゲンが男の前に進むと、子供の様に見える。
ゲンの体つきは眼帯男の前では貧弱に見える。
眼帯男はニヤリと笑い、勝ちを確信したようだ。
パーーン
敵の本陣横の、物見櫓から銃声がした。
狙撃だ!
カン
ゲンの赤い専用機動陸鎧が、勝手に動きゲンの体をかばった。
もし、機動陸鎧が動いていなければ、ゲンは撃たれていただろう。
機動陸鎧は、ゴーレムだから、誰も装備していなくても動くことが出来る。
普段、主人が装備していない時はじっとしているだけで、主人の命が危なければ勝手に動き主人を守るのだ。
「バカヤロー! 勝手なことをするんじゃねえ!! そいつをぶち殺せーー!!」
眼帯男が激怒して叫んだ。
勝ちを確信した勝負に、水をさされて怒っているようだ。
本陣を護衛していた男達が狙撃手に銃をむけた。
狙撃手は、すべてをあきらめたように、銃をだらんと下ろし目を閉じた。
パパパパ
一斉に発砲した。
「このやろーー、何をするんだ!!! 人の命を何だと思っているんだ。てめーが指示を出したんじゃねえのかよー」
俺は、飛び出して、狙撃手の命を救っていた。
勝手に体が動き、狙撃手をかばい、弾丸をすべて吸収した。
高みの見物をするつもりだったのに、そうはいかなくなった。
「よう、兄弟!!」
ゲンが俺を見て、いつも通りの無表情で、嬉しそうな声で言った。
「とうとう、ばれちまったな」
「なにをいいやがる。ここの田んぼが綺麗になっている時点で俺は気付いていたさ。兄弟が、いると分かっていたから、武器を捨てさせたんだ。しかし、兄弟がいるとわかると、安心感が全然違うぜ」
「ふふふ、ゲンにはまいるぜ。すべてお見通しかよ! 折角来たんだ、立会人を務めさせてもらうぜ」
「おう、よろしく頼む。さて、立会人もそろった、そろそろ始めようじゃねえか」
「ふん、金髪の豚が立会人か、しょぼい立会人だぜ! うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」
眼帯男は、不意を突いてゲンに殴りかかった。
0
あなたにおすすめの小説
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる