152 / 428
第百五十二話 出店でおしゃべり
しおりを挟む
「ファングさん、ご一緒しませんか」
「イヤ、オラハ子供達ノ引率ガアルダ」
「そうですか。では」
「バイバーーイ」
ファングと子供達が手を振っている。
ファングの胸には俺がつけた手形が、へこんで残ったままだ、あれは治るのだろうか、少し心配だ。
ファング達と別れて、しばらく歩くと、海鮮お好み焼き屋が見えてくる。
「あ、あの」
「何ですか、上杉さん」
「はい、あれはどうやって、焼いているのですか」
「あれは、鉄板の下にある青い金属がそのまま加熱しています。後ろにある青い金属のボックスが冷蔵庫、流し台も同じ青い金属です。列車の機関車と同じ金属です」
「木田家の人々は、火を使わずに、あのコンロで調理が出来るのですか?」
「もちろんです」
「す、すごい! 上杉家では、ご飯を作るだけでも重労働です」
「まあ、全部、大田商店の商品なのですが、今度越後にも行商に行きますよ」
「そ、それは、楽しみです。ですが、どうしてその様な商品が作れるのですか」
「そうですねえ、良い機会です。皆さんには聞いて貰いましょうか」
俺は、そう言って、店からお好み焼きと、隣のたこ焼きをもらってきて、机に並べた。
当然、出店の商品は、お祭りなので無料である。
「これでも食べながら、聞いて下さい」
「は、はあ」
上杉と、一緒に来ていた、伊達、真田、本多と加藤とシュラも座った。
「実はな、俺の娘の前世の記憶がひょんな事から戻ってしまったんだ。何と異世界の魔王城のメイドだったらしい」
「な、何と!」
「まあ、にわかには信じられないだろうけど本当の事だ。あの青い金属の名は、ミスリルだ。列車を動かす動力も、コンロの熱も、冷蔵庫の冷気も全部魔法なのさ」
「ふふ、実際見ていなければ信じられませんが、今はそれが真実だと分かります」
「聞いて欲しいのはここからだ。実は俺の娘は、異世界で勇者に魔王もろとも殺されてしまったらしい。幸い勇者と魔王は相打ちで、二人とも死んだようだ。だが、その勇者がこの日本に生まれ、前世の記憶を取り戻している」
「それが、どうしたのですか。勇者と言えば、正義の味方でしょう」
「ふふふ、娘の前世の世界では、勇者は残忍で無慈悲だったらしい。大勢の人間を殺したと聞いている」
「なんと」
「そして、今、この日本で同じ事をしている。ふふふ、正しい行動をする者を正義と言い、悪い行いをする者を悪とするならば、娘の世界では正義が魔王で、悪が勇者だったことになる。悪の勇者の名をハルラと言い、今、大阪にいる。ハルラは魔王を殺すほどの強大な力を持ち、西日本で今も好き勝手をしている。恐らく、西日本の人達は地獄を見ていると思う」
「……」
「さらに、越前に織田を名乗る者が現れた。織田と言えば第六天魔王を自称したほどの者だ。こいつが娘の主人の魔王なら歓迎だが、違うのなら厄介ごとが一つ増えたとしか思えねえ」
「大田殿、いえ木田様。私は私利私欲に動いていたつもりはありませんが、今のお話を聞いて、恥ずかしくなりました」
上杉さんは、頭を下げてずっと上げてくれません。
「頭を上げて下さい。俺は、あなたが頭を下げるほどの価値のある男ではありません。何故なら、速く厄介ごとをかたづけて、民主主義を取り戻し、投票で総理大臣を決めて欲しいと思っているのです。そしたら俺は、木田産業で廃棄物処理業者に戻り、仕事を適当にこなし、部屋でゲームをして暮らしたいと思っている程度の男なのですから」
「なっ、何ですと!!!」
お好み焼き屋の前のテーブルのほとんどから声が上がった。
知らない間に、木田家の重鎮が沢山お好み焼きとたこ焼きを食っていたようだ。
「ひゃあーはっはっはっ! やっぱり兄弟は面白れー!!」
ゲンまでいるようだ。
「まあでも、隕石が落ちる前の日本の総理大臣みたいに、国民のほとんどが給料の上がらない状態で、自分の給料を真っ先に上げるような、政策だけはしてほしくないですけどね」
「……」
ちぇっ、折角のギャグは空振りだった。
「ゲン、後ろの人達も食べてもらったら」
ゲンの後ろで、四人の男女が直立不動で立っている。
どうやら、新人のようだ。
「ほら、お許しが出た。お前達もそこに座って、食え! 食え! こいつらは仙台で見つけたのだが、全員特殊能力がある。見所のある奴らだ。兄弟に顔見せしておきてえと思ってな」
新人達は、待っていましたと言わんばかりにガツガツ食べ出した。
「おいひーです。ソースとマヨネーズなんて、すごく久しぶりです」
「上杉さんも食べて下さい。さっきから食べてないじゃないですか」
「は、はい」
なんだか真っ赤な顔をして食べ始めた。
俺は、ハルラだけでも頭が痛いのに、織田家などという厄介ごとに頭痛が倍になった気がしている。
「ゲン丁度いい、聞いてくれ。俺は織田家の柴田との戦いが終ったら、一度大阪へ行こうと思う。人々がどんな暮らしをしているのか見ておきたいんだ」
「一人で行くのか」
「危険だからね。俺の留守を頼みたい」
「うーむ、賛成はできねえのだがなー」
「柳川いるか?」
「当然いますよ。後ろを見てください」
「当然いるのかよー。ふふふ、柳川には俺の留守の間、学校の準備を頼みたい」
「まあ、分かりました。が、まずは柴田ですね」
「うむ、どの位の男なのか。わくわくすっぞ!!」
「兄弟、まずは柴田じゃねえ。ピーツインのコンサートだ」
ゲ、ゲンがコンサートを楽しみにしていたのかよー。
せっかく、あのものまねをしたのに、スルーされてしまった。
ガッカリだぜ!!
「イヤ、オラハ子供達ノ引率ガアルダ」
「そうですか。では」
「バイバーーイ」
ファングと子供達が手を振っている。
ファングの胸には俺がつけた手形が、へこんで残ったままだ、あれは治るのだろうか、少し心配だ。
ファング達と別れて、しばらく歩くと、海鮮お好み焼き屋が見えてくる。
「あ、あの」
「何ですか、上杉さん」
「はい、あれはどうやって、焼いているのですか」
「あれは、鉄板の下にある青い金属がそのまま加熱しています。後ろにある青い金属のボックスが冷蔵庫、流し台も同じ青い金属です。列車の機関車と同じ金属です」
「木田家の人々は、火を使わずに、あのコンロで調理が出来るのですか?」
「もちろんです」
「す、すごい! 上杉家では、ご飯を作るだけでも重労働です」
「まあ、全部、大田商店の商品なのですが、今度越後にも行商に行きますよ」
「そ、それは、楽しみです。ですが、どうしてその様な商品が作れるのですか」
「そうですねえ、良い機会です。皆さんには聞いて貰いましょうか」
俺は、そう言って、店からお好み焼きと、隣のたこ焼きをもらってきて、机に並べた。
当然、出店の商品は、お祭りなので無料である。
「これでも食べながら、聞いて下さい」
「は、はあ」
上杉と、一緒に来ていた、伊達、真田、本多と加藤とシュラも座った。
「実はな、俺の娘の前世の記憶がひょんな事から戻ってしまったんだ。何と異世界の魔王城のメイドだったらしい」
「な、何と!」
「まあ、にわかには信じられないだろうけど本当の事だ。あの青い金属の名は、ミスリルだ。列車を動かす動力も、コンロの熱も、冷蔵庫の冷気も全部魔法なのさ」
「ふふ、実際見ていなければ信じられませんが、今はそれが真実だと分かります」
「聞いて欲しいのはここからだ。実は俺の娘は、異世界で勇者に魔王もろとも殺されてしまったらしい。幸い勇者と魔王は相打ちで、二人とも死んだようだ。だが、その勇者がこの日本に生まれ、前世の記憶を取り戻している」
「それが、どうしたのですか。勇者と言えば、正義の味方でしょう」
「ふふふ、娘の前世の世界では、勇者は残忍で無慈悲だったらしい。大勢の人間を殺したと聞いている」
「なんと」
「そして、今、この日本で同じ事をしている。ふふふ、正しい行動をする者を正義と言い、悪い行いをする者を悪とするならば、娘の世界では正義が魔王で、悪が勇者だったことになる。悪の勇者の名をハルラと言い、今、大阪にいる。ハルラは魔王を殺すほどの強大な力を持ち、西日本で今も好き勝手をしている。恐らく、西日本の人達は地獄を見ていると思う」
「……」
「さらに、越前に織田を名乗る者が現れた。織田と言えば第六天魔王を自称したほどの者だ。こいつが娘の主人の魔王なら歓迎だが、違うのなら厄介ごとが一つ増えたとしか思えねえ」
「大田殿、いえ木田様。私は私利私欲に動いていたつもりはありませんが、今のお話を聞いて、恥ずかしくなりました」
上杉さんは、頭を下げてずっと上げてくれません。
「頭を上げて下さい。俺は、あなたが頭を下げるほどの価値のある男ではありません。何故なら、速く厄介ごとをかたづけて、民主主義を取り戻し、投票で総理大臣を決めて欲しいと思っているのです。そしたら俺は、木田産業で廃棄物処理業者に戻り、仕事を適当にこなし、部屋でゲームをして暮らしたいと思っている程度の男なのですから」
「なっ、何ですと!!!」
お好み焼き屋の前のテーブルのほとんどから声が上がった。
知らない間に、木田家の重鎮が沢山お好み焼きとたこ焼きを食っていたようだ。
「ひゃあーはっはっはっ! やっぱり兄弟は面白れー!!」
ゲンまでいるようだ。
「まあでも、隕石が落ちる前の日本の総理大臣みたいに、国民のほとんどが給料の上がらない状態で、自分の給料を真っ先に上げるような、政策だけはしてほしくないですけどね」
「……」
ちぇっ、折角のギャグは空振りだった。
「ゲン、後ろの人達も食べてもらったら」
ゲンの後ろで、四人の男女が直立不動で立っている。
どうやら、新人のようだ。
「ほら、お許しが出た。お前達もそこに座って、食え! 食え! こいつらは仙台で見つけたのだが、全員特殊能力がある。見所のある奴らだ。兄弟に顔見せしておきてえと思ってな」
新人達は、待っていましたと言わんばかりにガツガツ食べ出した。
「おいひーです。ソースとマヨネーズなんて、すごく久しぶりです」
「上杉さんも食べて下さい。さっきから食べてないじゃないですか」
「は、はい」
なんだか真っ赤な顔をして食べ始めた。
俺は、ハルラだけでも頭が痛いのに、織田家などという厄介ごとに頭痛が倍になった気がしている。
「ゲン丁度いい、聞いてくれ。俺は織田家の柴田との戦いが終ったら、一度大阪へ行こうと思う。人々がどんな暮らしをしているのか見ておきたいんだ」
「一人で行くのか」
「危険だからね。俺の留守を頼みたい」
「うーむ、賛成はできねえのだがなー」
「柳川いるか?」
「当然いますよ。後ろを見てください」
「当然いるのかよー。ふふふ、柳川には俺の留守の間、学校の準備を頼みたい」
「まあ、分かりました。が、まずは柴田ですね」
「うむ、どの位の男なのか。わくわくすっぞ!!」
「兄弟、まずは柴田じゃねえ。ピーツインのコンサートだ」
ゲ、ゲンがコンサートを楽しみにしていたのかよー。
せっかく、あのものまねをしたのに、スルーされてしまった。
ガッカリだぜ!!
0
あなたにおすすめの小説
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる